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仮面ライダー龍騎の最終回


(前回のハイライト)

優衣の体が蒸発してゆく。

優衣「お兄ちゃんと……一緒に……」

優衣の差し出した手に、神埼が手を伸ばす。
手と手が触れ合う瞬間──優衣が消滅する。


真司「変身っ!」

真司が龍騎に変身、モンスターの大群と戦う。
しかし致命傷を負い、倒れる。

蓮「おい!」
真司「蓮……お前はなるべく……い、生きろ……」
蓮「お前こそ生きろよ! ……城戸……死ぬな……死ぬなぁっ!!」

真司の目が閉じる。

蓮「城戸……起きろぉっ!! 城戸ぉ──っ!!」


北岡の事務所。
令子とデートの約束を交わした北岡が、机に向かって思いつめている。
吾郎が2着の服を差し出す。

吾郎「先生。今日の令子さんとのデートは、どっちの……」
北岡「吾郎ちゃん。俺……やっぱり浅倉とは、ちゃんと決着つけてやんなきゃと思うのよ……」
吾郎「……でも先生、今の体じゃ……」
北岡「勝ち負けの問題じゃないよ……奴がライダーになったことには多少なりとも責任があるわけだし……デッキ、出してくれる……?」

椅子から立とうとした北岡だが、不意に体の力が抜ける。

吾郎「先生……やっぱり無理じゃないですか……」
北岡「行かせてよ吾郎ちゃん……このままじゃ俺、何かひとつ染みを残していく感じで……嫌なんだよね……」

まばゆい日光の漏れる窓を、北岡が見つめる。

北岡「それにしても……今日は天気が悪いね……吾郎ちゃんの顔が……見えないよ……」


蓮のもとに神崎士郎が現れる。

士郎「オーディンと決着をつけさせてやる。最後の仮面ライダーとして」
蓮「最後の……ライダー……」

力尽きた真司を蓮が見つめる。

蓮 (城戸……)

その脳裏に、真司の死に際の言葉が蘇る。

「でも……さっき思った。やっぱりミラーワールドなんか閉じたい、戦いを止めたいって……きっと、すげぇ辛い思いしたり、させたりすると思うけど、それでも止めたい……それが正しいかどうかかじゃなくて、俺もライダーの1人として、叶えたい願いが、それなんだ……」

蓮 (お前が最後に信じるものを見つけたように、俺にも信じるものはある……ライダーの1人として……)


最 終 話 最 終 話


廃倉庫に浅倉が佇んでいる。
あちこちの物陰から、機動隊の銃口が浅倉を狙っている。

浅倉「ハハハ……会いたかったぜぇ……北岡ぁっ!!」

ガラス片の中にゾルダの姿が。

浅倉「変身っ!!」

浅倉が王蛇に変身。ミラーワールド内でゾルダと対峙する。
ゾルダのマグナバイザーが、ギガランチャーが火を吹く。
王蛇はそれをものともせず、ベノサーベルを構えて突進する。


旧神崎邸を訪れた蓮。
邸宅の窓にオーディンの姿が浮かぶ。

蓮「……オーディンてのは大量生産らしいな」

窓に士郎の姿。

士郎「実体のない俺の代わりだ」
蓮「なるほど……ただの操り人形というわけだ」
士郎「それでもお前がオーディンを倒すことは不可能だろう」

蓮がカードデッキを窓ガラスに突きつける。

蓮「変身っ!!」

蓮がナイトに変身、窓ガラスの中に飛び込む。
ミラーワールドの中。腕を組んで不敵に構えるオーディンにナイトが対峙する。
ナイトがカードを引き抜く。オーディンはゴルトセイバーを構える。

「サバイブ」

ナイトがナイトサバイブに変身。


廃倉庫。
ゾルダと王蛇の激闘が続く。
ベノサーベルがゾルダの体を刻む。
マグナギガの砲撃が炸裂する。


旧神崎邸。
ダークレイダーが放つダークトルネードを、オーディンは瞬間移動で難なくかわす。
ゴルトセイバーがナイトに容赦なく炸裂する。

士郎「そうだ……戦え……」

邸宅の中の一室。
士郎の頭上に、黒い羽が降り始める。

士郎「もうすぐだ……もうすぐお前に……新しい命を与えることができる……」


花鶏。
優衣の誕生パーティの準備を終えた沙奈子の姿。

沙奈子 (優衣……あんたどこ行っちゃったのよ……でも、こうなること、ちょっとはわかってたって言うかさ……士郎がアメリカ連れてかれる時、そりゃあ暴れてね……)


過去の回想。
アメリカの親戚へ引き取られることになった士郎が、沙奈子の抱く優衣から引き離されてゆく。

士郎「おじさん離して!! 俺は優衣のそばにいなきゃいけないんだ!! 優衣は俺が守る!! 優衣は20回目の誕生日に消えちゃうんだ!! 優衣ーっ! 優衣──っ!!」
優衣「お兄ちゃん!」
士郎「優衣──っ!」
優衣「お兄ちゃん!」
士郎「優衣──っ!」


花鶏。

沙奈子 (なぜか信じられたんだよ……)

沙奈子がバースデーケーキとプレゼントの箱を見つめる。

沙奈子「優……衣……」


廃倉庫。
ゾルダと王蛇の激闘が続く。

「ファイナルベント」「ユナイトベント」

ゾルダのもとにマグナギガが出現。
王蛇のもとにベノスネーカー、メタルゲラス、エビルダイバーが出現、3体が合体してジェノサイダーとなる。

ゾルダが最強技のエンドオブワールドを発動させるため、マグナギガにゾルダがマグナバイザーを接続──
その寸前、ジェノサイダーの毒液が降りかかる。
倒れたゾルダの手からマグナバイザーがこぼれ落ちる。

ゾルダ「うぅっ……」
王蛇「ハハハハハッ……!!」

王蛇が突進しつつ、カードをベノバイザーに装填する。

「ファイナルベント」

慌ててゾルダがマグナバイザーを拾い上げる。
が、時既に遅し……王蛇の両脚の蹴りが炸裂する。
王蛇の最強技「ドゥームズデイ」が発動。
ゾルダが吹き飛ばされる。
マグナギガが、ジェノサイダーの胴体に生じたブラックホールの中へと吸い込まれる。


ゾルダが倒れ、動かなくなる。
王蛇がゆっくりと歩み寄る。


レストラン。
テーブルについた令子が、窓の外に降りしきる雪を見つめている。


廃倉庫。

王蛇「北岡ぁ……っ! 北岡っ!! お前……」

ゾルダの変身が解除される。
その姿は、北岡ではなく──吾郎。

王蛇「うおぉぉ──っ!!」
吾郎「先生……また……美味いもん買って……帰ります……」

吾郎の動きが止まる。


北岡の事務所。
動かなくなった北岡が、ソファに横たわっている。


レストラン。
北岡がデートを熱望していた令子が、もう来ることのない北岡を待ち続けている。


廃倉庫に浅倉が立ち尽くす。

浅倉「なぜだ……なぜだ……なぜだ……なぜだ……」

廃倉庫の外に浅倉が現れる。
あちこちから突き出される銃口。
浅倉が地面に落ちている鉄パイプを拾い上げ、突進してゆく。

浅倉「うおぉぉ──っ!! うおぉぉ──っ!!」

銃口が一斉に火を吹く。
浅倉が倒れ、鉄パイプが地面にコロコロと転がる音がむなしく響く。


旧神崎邸。
オーディンの猛攻の前に反撃もできず、ナイトが遂に倒れる。
オーディンがカードを取り出し、ゆっくりとゴルトバイザーに装填する。

ナイト「あぁっ……」

そのカードは、最強技、ファイナルベントのカード。

「ファイナルベント」

黄金色の炎に包まれたゴルトフェニックスが飛来。
そのゴルトフェニックス目掛け、オーディンの体が宙に浮いてゆく。
黄金色の光が周囲に満ちる。
全ライダーの中でも最大最強の技、「エターナルカオス」が遂に発動。

ナイト「お……おおぉぉ──っ!!」


神崎邸の中。

士郎が、優衣の言葉を思い出す。

「私はいらない……!」

士郎「お前は……きっと拒む……拒み続ける……また駄目なのか優衣っ……!! また……!!」

黒い羽が降りしきる。
士郎が絶叫する。

士郎「わああぁぁ──っ!! わああぁぁ──っ!!」

その絶叫に共鳴するかのように、邸宅の鏡が、窓ガラスが一斉に砕け散る。

ダメージを負ってサバイブ化の解けたナイトが、異変に気づく。
空の色が次第に暗くなってゆく。
そして突然、オーディンが苦しみ出す。

オーディン「う……ううっ……うおっ……!」
ナイト「あぁ……?」

オーディンの体が次第に蒸発し始める。

オーディン「最後の、ライダーは……お前……だ……」

オーディンが完全に消滅する。


大きなダメージを負ったナイトが、膝をついて大きく息をつく。
そのとき。
まばゆい光を放つ球体が、虚空に出現する。

ナイト「これが……新しい命……!?」

彼の脳裏に、消えていった優衣の姿が、死んでいった真司の姿が浮かぶ。
光球のほうへ手が伸ばされる。


OREジャーナル編集部。
大久保がパソコンに向かって記事を書いている。

大久保 (以上が、原因不明の失踪事件の真相であり、仮面ライダーと名乗る人間たちの、戦いの真実である)


街中。
ビル群の窓ガラスが一斉に砕け散り、歩く人々へガラス片が降り注ぐ。
そして街の景色自体が、ガラスが割れるかのごとく、次々に砕け散ってゆく。


大久保 (この戦いに、正義は……ない)


傷ついた体を引きずりつつ、病院の階段を昇る蓮。
胸に下げていた、恵里の指輪のついたペンダントを引きちぎる。


大久保 (そこにあるのは……純粋な願いだけである……)


病室のベッド。
眠り続けていた恵里が目を覚ます。
自分の指に、蓮が預かっていた指輪がはめられているのに気づく。

病室の片隅に、目を閉じた蓮がもたれかかっている。

恵里「蓮……そんなとこで寝てると……風邪ひいちゃうよ……?」


彼の目は、もう開くことはなかった──。


大久保 (その是非を問える者は……)


旧神崎邸。
士郎が苦悩に表情を歪めている。
鏡の破片の中に優衣の姿。

士郎「優衣……」
優衣「お兄ちゃん……また繰り返すの……?」
士郎「お前に……命を与えるために……」
優衣「もう……終わりにしよ……?」
士郎「お前を……失いたくない……」

優衣が悲しげに、首を横に振る。
いつしか士郎は、優衣と別れた頃の幼い姿に戻っている。

士郎「俺を1人にしないで……」
優衣「私はここにいる……お兄ちゃんのそばにいる……新しい命なんかなくても……絵を描いてた時みたいに……ただ願えば……」

鏡の中から優衣が消える。
士郎の隣に、同じく幼い姿となった優衣が現れる。

優衣「お兄ちゃん……」
士郎「優衣……」


鏡の中に、大人の士郎の姿。

そして鏡の中に、士郎、真司、浅倉、蓮、北岡、蓮、優衣の姿が次々に浮かぶ。


無邪気に絵を描き続ける、幼い姿の士郎と優衣。
そこへ大人の士郎と優衣がやって来、一緒に絵を描き始める。

4人がいるのは、一面、士郎と優衣の描いた絵に囲まれた空間。
彼らを取り巻くのはどれも、かつて2人が描いていたような、恐ろしげなモンスターではなく、優衣が願っていたような、みんなが楽しく暮らしている風景を描いた絵。
楽しげに笑い合いつつ、4人が絵を描き続ける。


神崎邸。

無人と化した部屋に、ただ1枚、士郎と優衣の2人を描いた絵だけが飾られている。


OREジャーナル。
皆が慌ただしく業務を続けている。大久保が電話を取っている。

大久保「いや、あの……申し訳ありません。その記事ねぇ、うちのバカ新人が書いたものなんですよぉ」」
めぐみ「!?」
大久保「いや〜うちとしても困り果ててましてねぇ〜」
めぐみ「私、バカ新人じゃありません〜」
大久保「いや、だからお前じゃなくて、もう1人のバカだよぉ」
めぐみ「あぁ、なんだぁ!」

奈々子がパソコンで、OREジャーナルのホームページの社員紹介ページを眺めている。

奈々子「バカ新人くんの写真を撮らないとぉ〜」
めぐみ「あぁ! 私の写真、他のにしてって言ったのにぃ……ね、ちょっとこっちの写真にしよ! これこれ!」
奈々子「口出し無用〜」
令子「編集長! 例の坂浦商事不正事件、取材行って来ます」
大久保「お、頼む」

玄関から飛び込んできたのは──城戸真司。

真司「おっはよ〜っす! 城戸真司、ただいま出社しましたぁ!」
令子「行って来ま〜す」
大久保「真司ぃ! この野郎、遅刻なんだよぉ、お前は〜っ!!」

大久保が真司を羽交い絞めにし、慌てる真司に奈々子がカメラを向ける。

大久保「お前バツだ! お前この取材行って来い、これ。金色の蟹だ」
真司「わかりました、金色の……金色かよ!? 編集長、金色……」
大久保「お前はもう口動かさなくていいから足動かせよ!、おら、早く行けよ! もう」
真司「わかりやした、行って来ます!」
めぐみ「は〜い、行ってらっしゃ〜い」
大久保「ったくもう、朝からボケやがって……あいつと話すと何か疲れんだよなぁ……」


街中、真司がスクーターを押しながら横断歩道を歩いている。

真司「ガス欠かよ……意地でも行ってやるからな!」

横断歩道で停まっている車の中に、吾郎。
隣には、自分の写った新聞記事に見惚れる北岡が。

北岡「右斜め45度だよね、最高……!」


裁判所で、北岡が取材陣に囲まれる。

令子「北岡さん! 裁判に勝てる自信は!?」
北岡「スーパー弁護士ですから」
令子「何かコメントお願いします!」


街中を歩き続ける真司。
脇道から自転車が飛び出し、真司のスクーターを倒してしまう。
自転車の上には──東條悟。

東條「あ、ごめんね……大丈夫だよね……?」

そんな真司に声をかける道端の手相占い師──手塚海之。

手塚「あんた、今日の運勢は最悪だな」
真司「占い……?」

スクーターを止め、手相を見てもらう真司。
突然、そのスクーターを蹴り飛ばす通行人──浅倉威。

浅倉「邪魔だ」
真司「おわぁ!?」
浅倉「イライラさせるな……」

慌てて真司がスクーターを起こす。ヘッドライトが折れている。

真司「付かねぇ〜!」
手塚「俺の占いは当たる……」


スクーターを押しながら真司が歩き続け、花鶏の前を通りかかる。

真司「何なんだよ、今日は一体……? ここ、サテンだよな……?」

店の前に停まっているバイクの横に、並べてスクーターを止める。

真司「よいしょ……」

玄関をくぐろうとする──が、おずおずと後ずさりする。

真司「な、何だよ!?」

ちょうど店から出て来たのは──秋山蓮。

真司が横へよけようとするが、蓮もそちらへのけようとし、通せんぼになってしまう。
慌てて反対側へ避ける真司。しかし蓮もそちらへ避け、立ち往生を繰り返す。

蓮「どけ」
真司「どけって……あんたこそ!」

依然、立ち往生を繰り返す2人。
蓮が真司の胸倉をつかみ、強引によけさせる。
憮然として睨み合いつつ、真司は玄関のドアへ手をかけ、蓮はバイクに跨る。
ふと、「あいつ、どこかで……」といった面持ちで互いを振り返り、目が合う。


花鶏の店内。
沙奈子が静かに紅茶を入れていると、真司が飛び込んでくる。

真司「コーヒーください! コーヒー」
沙奈子「コーヒーはない。紅茶だけ」
真司「へ? あ、あの……じゃあ、それを下さい……」

カウンターに掛ける真司。
自分の紅茶を啜りつつ、沙奈子が無言で真司を見詰める。
バツが悪そうに、真司が愛想笑いで間を取り繕う。

真司「ハハ……いやぁ〜いい店っすね……お姉さん……紅茶を……ハハ、お紅茶を……」


沙奈子の脇に、写真立て。

写真の中、幼い優衣と士郎の2人が、仲良く微笑んでいる──。



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