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CLANNADの最終話


学校へ向かう朋也と渚

朋也「おっさんや早苗さんに挨拶しないでいいのか?・・・ん?」

渚は何だか元気がない

渚「さっきの写真」

朋也「え?」

渚「私のお父さん、役者をやっていたんです。高校の時から学生演劇では有名で、コンクールで優勝したこともあるそうです。私、知りませんでした。母さんが中学の先生だったことは聞いてましたけど」

立ち止まる二人

渚「写真の中の二人は、とても幸せそうでした。二人は夢を叶えていたんですから」

朋也「渚!」

渚「そして、それはずっと続くはずだったんです。私さえいなければ・・・」

朋也「そりゃ違う。それに、あの二人は今だって幸せなはずだ」

渚「夢は諦めてしまいました。違いますか?」

言葉を詰まらせる朋也

渚「そして今、私は二人の夢を犠牲にして、自分の夢だけ叶えようとしてるんです。私は酷い子供です。恩知らずです。岡崎さんにもそうです。自分の夢を叶えるために皆さんの時間をたくさん使わせてしまっています」

朋也「俺達は好きでやってるんだ。今、お前が挫けちまったら俺達のしてきたことが無駄になっちまう」

顔を上げる渚

朋也「皆でここまでやってきたんだ。頑張ろうぜ」


                                   影二つ


学祭は大いに盛り上がっている。

春原「ふぁ・・・すげえ眠いんですけど」

杏「あんた緊張感無いわね」

椋「渚ちゃん、どうしました?」

渚「え?」

朋也「渚も本番前で固くなってるんだ。だよな?」

渚「は、はい」

春原「渚ちゃん、何だかおかしくないか?」

朋也「ちょっと、色々あってな。お前は普段通りでいてくれ」

春原「ふーん・・・渚ちゃん、いいおまじない教えてあげるよ。手に字を3回書いて飲み込むんだ。人、人、人・・・」

ことみ「それ、人じゃなくて入るなの」

春原「気持ちが大事なの!気持ちが!」

杏「陽平。漢字書けないなら無理しなくていいわよ」

春原「書けますよ、このくらい!」

杏「またまたぁ」

春原「あなた、バカにしすぎですよ」

朋也「本番は午後からだし、ちょっと外に出てみないか?」

春原「ああ。僕、妹の相手しなきゃ」

杏「じゃ、時間まで自由行動ね」

外に出てきた渚と朋也

朋也「さてと、どこに行きたい?」

ボーッっとしている渚

朋也「渚」

渚「あっ。すみません、何でしょうか?」

朋也は渚の事がまだ心配なようだ

渚「ごめんなさい。しっかりしなくちゃって分かってるんですけど、つい色々考えてしまって・・・」

顔を上げ

渚「岡崎さんの言った通りです。皆で作り上げてきた舞台なのに、私のせいで台無しにしてしまうわけにはいかないです」

朋也「そうだな。しっかりやろうぜ」

渚「はい」

二人で色々回るが、やっぱり渚は元気がない

渚「岡崎さん?」

朋也と逸れたようだ

朋也「どこ行っちまったんだ、あいつ?・・・あ、早苗さん!」

早苗「あら、岡崎さん」

朋也「おっさんは一緒じゃないんですか?」

早苗「はい。先に行くように言われました」

朋也「見に来てくれるかな・・・?」

早苗「大丈夫ですよ。渚の晴れ舞台を見逃すはずがないです」

何かを思い出す朋也

秋生「全部知っちまったんだろ?」

朋也「俺が見つけた時は手遅れだったんだ」

早苗「渚はどこにいますか?」

朋也「それが逸れちゃって・・・」

磯貝「あら、古河さん」

早苗「あ、磯貝さん。それじゃ、私はこれで。渚の事よろしくお願いしますね」

資料室に来ていた渚

渚「失礼します」

有紀寧「あら、古河さん。どうなさったんですか?」

渚「あ・・・その・・・前に岡崎さんから聞いたんです。ここには高校演劇の資料が揃ってるって」

何かに気付く渚

有紀寧「お芝居の参考になさるんですか?」

渚「・・・はい」

有紀寧「午後の舞台、楽しみにしています。頑張ってくださいね」

渚「はい・・・」

有紀寧「私、少し外に出てきます。資料もビデオもご自由に見てくださいね」

渚「ありがとうございます・・・」

渚を探し回ってる朋也

朋也「宮沢!」

有紀寧「あら、岡崎さん」

朋也「渚をどこかで見なかったか?」

有紀寧「古河さんなら、資料室で昔の高校演劇の資料を」

朋也「ハッ!」

慌てて資料室へ向かう

朋也「渚!」

渚が見ていたのは、父秋生の高校時代の演劇だった

朋也「これ、おっさんの」

渚「お父さんが高校生の時のビデオです。演劇コンクールで優勝した時のものです」

朋也「・・・・・・」

渚「凄く上手です。私と同じ高校3年生なのに、私なんかと比べ物にならないほど」

記者「それでは部長の古河君に優勝の挨拶をしてもらいたいと思います。お願いします」

深く息を吸い

秋生「俺は芝居が好きだ!俺はこれからも一生舞台に立ち続ける!必ずプロの役者になることをこの場を借りて誓わせていただきます!」

記者「あの、ご自分の抱負はそのくらいにして、部の代表として一言」

秋生「演劇最高!」

ビデオを消す

渚「あ」

朋也「お前はお前だ。今お前に出来る事をやるしかない。そうだろ?」

そして本番前

アナウンス「以上、合唱部でした。次は演劇部による一人芝居「幻想物語」。脚本、主演、古河渚。準備まで少し時間をいただきます」

舞台裏。まだ渚は浮かない顔をしている

杏「渚!」

春原「いよいよこの時が来たね」

椋「大丈夫!絶対成功します」

ことみ「練習通りやれば、きっと上手くいくの」

杏「あんまり緊張しないで楽しくやりましょ」

ボタン「ブヒブヒ」

そして本番

アナウンス「お待たせしました。演劇部、「幻想物語」です」

朋也「渚・・・行くぞ」

幕を上げる

渚の様子がおかしいままだ

渚「私、知りたいです。知って謝りたいです」

椋「ん?」

渚の頭の中に両親の言葉がよぎる

早苗「任せておいてください」

春原「渚ちゃん?」

秋生「いいものを借りてやったぞ。ほら」

杏「変ね」

秋生「おう、お帰り。俺達の愛の結晶よ」

早苗「え?」

女子生徒A「どうしちゃったんだろ?」

女子生徒B「緊張してる?」

智代「どうした。しっかりしろ」

ことみ「渚ちゃん、様子が変なの」

椋「あがってしまったんでしょうか?」

春原「岡崎、どうする?」

杏「一旦、幕を下ろす?」

朋也「大丈夫だ・・・あいつなら絶対に」

さっきのビデオのインタビューの事が頭に浮かぶ

秋生「俺は芝居が好きだ!俺はこれからも一生舞台に立ち続ける!必ずプロの役者になる事を・・・演劇最高!」

泣き出してしまう

慌てて現れる秋生

秋生「夢を叶えろ、渚!」

杏「何?」

朋也「おっさん?」

秋生「渚!バカかおめえは!子供の夢は親の夢なんだよ。お前が叶えればいいんだ。俺達はお前が夢を叶えるのを夢見てんだよ!俺達は夢を諦めたんじゃねえ!自分達の夢をお前の夢にしたんだ!親ってのはそういうもんなんだよ!家族ってのはそういうもんなんだよ!だからあの日からずっと、パン焼きながらずっと俺達はずっとそれを待ち焦がれて生きてきたんだよ!ここでおめえが挫けたら、俺達は落ち込むぞ!てめえ、責任重大だぞ!てめえ!早苗、いるんだろ?お前も行ってやれ!」

早苗「渚、頑張れ!」

杏「何?どうなってるの?」

朋也が舞台袖に下りていく

杏「朋也」

朋也「俺達もだぞ、渚!俺や春原が出来なかった事を、今お前が叶えてくれようとしてるんだ!俺達の挫折した思いも、お前が今背負ってるんだよ!」

気を取り直し芝居を始める

渚「あなたを・・・あなたをお連れしましょうか?この町の願いが叶う場所に」

朋也「連れて行ってくれ、渚。俺達を」

渚「ここは、終わってしまった世界。私の他に誰もいない世界です。部屋の中にあるのは小さな木のテーブルと椅子。窓の外には何もない荒野が広がっています。建物は古く、いつ建てられたのかも分かりません。私はここで一人で暮らしています。時々外に出て必要なものを拾ってきます。外に出ても誰もいません。弱い日差しの中に小さな光がたくさん飛んでいます。私は木切れや釘や色々なものを拾ってきました。友達を作るためです。でも、こんな世界に生まれてしまう事はその子にとって幸せなのかしら?そんな疑問を胸の中に抱きながら」

ロボット(ナレーション)「この世界は、やっぱり終わってしまっていた。もう命は生まれない。命あるものは彼女しか存在しない。いつか遠い昔か遠い未来。僕は別の場所にいた。そこはとても賑やかな場所だった。でも、今はもう帰れない。僕には彼女が作ってくれた体あるから」

女の子「どうしたの?また作るの?」

ロボットは頷く

女の子「でも、動かないんだよ。友達はね、出来ないんだよ」

首を横に振り

女の子「別のものを作るの?」

頷く

女の子「何を?」

ロボット(ナレーション)「それは僕にもまだ分からない。でも、彼女はガラクタを組み合わせて、何か新しいものを作ることが出来る。それは僕には出来ない何か特別な事だ」

女の子「そうだね。時間をかければ何か素敵な物が作れるかもしれないね」

頷く

女の子「何を作ろうか?」

ロボット(ナレーション)「こんな風に心躍るものがいい。彼女が作って僕が手伝う。それはとても素敵な事だ。僕は彼女の近くにいよう。これからもずっと二人でいよう。そしていつかこの世界から出ていくんだ。昔僕がいた、暖かくて賑やかな世界へ」

大円団で終わる

渚「続きを思い出しました」

朋也「ん?」

渚「お話の続きです。女の子と人形はその世界を出ることにしたんです。人形はずっと遠くにもっと暖かくて賑やかな世界があることを知っていたからです」

朋也「それでどうなるんだ?」

渚「長い長い旅をして、その先で」

朋也「その先で?」

渚「歌を歌います」

朋也「マジかよ?」

渚「本当です。だからさっきの劇の最後に私が歌ったのは、ちゃんとお話しに合っていたんです」

朋也「でもその女の子、だんご大家族は歌わないだろう。さすがに」

渚「あれは私の趣味です」

朋也「皆拍手してくれてたけどさ、最後ちょっと微妙な雰囲気だったぞ。それまでの感動が台無しっていうか」

渚「どうしても歌いたかったものですから」

朋也「ま、いっか。最高だったよ、お前の劇」

渚「本当ですか?」

朋也「俺はお世辞は言わない。知ってるだろ?」

渚「知ってます。だから素直に喜びます」

現れたのは朋也の父、直幸だった

渚「いらして下さってたんですね?」

直幸「招待状をもらったからね」

朋也「えっ?」

渚「すみません、勝手なことをして。でも、ご連絡した方がいいと思って」

直幸「お芝居みせてもらったよ。いいお話しだったね」

渚「ありがとうございます」

直幸「昔の事を思い出したよ、色々と・・・じゃ私はこれで」

渚「はい」

朋也「あんまり飲みすぎるなよ」

疎遠にはなっていても朋也なりに心配していたようだ

渚「岡崎さん」

渚の頭に手を乗せ

朋也「明日、どこかに遊びに行くか?」

渚「え?」

朋也「振替休日だろ?たまには二人で出かけようぜ。ちょっと話もあるし」

渚「話?」

杏「あーっ、こんなとこにいた!皆部室で待ってるわよ。主役と演出がいなきゃ、打ち上げ始めらんないでしょ」

朋也「悪い悪い。行こう」

渚「はい」

打ち上げ、そして翌日の休日を楽しんだ。休日の学校に二人で来て

渚「勝手に入ってしまっていいんでしょうか?」

朋也「構わないさ。俺達はここの生徒なんだから」

渚「そうですね」

朋也「この頃さ」

渚「え?」

朋也「この頃、俺この学校が嫌いじゃなくなってきた」

渚「そうですか。それはよかったです」

何かに気付く

渚「あーっ、私日直になってます!」

朋也「あー、お前が休んでる時に書いたんだ。忘れてた」

渚「ちっとも気づきませんでした・・・あっ」

何かを思いつく

渚「お返しです。フフッ」

朋也「話があるって言ったよな、昨日?」

渚「はい、何でしょうか?」

朋也「その、何ていうか」

渚「ん?」

朋也「あ、明日朝起きたら俺達が恋人同士になってたら面白いと思わないか?」

渚「え?」

朋也「俺と付き合ってくれ、渚」

渚「・・・・・・・」

朋也「お前の事が好きだ。だから、これからもずっと俺と一緒にいて欲しい」

泣きそうな顔をするが、返事はOKだった

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