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仮面ライダーキバの最終回


自らファンガイアのキングとなることを宣言し、キャッスルドランの玉座に就いた(くれない) 渡。
そこへ、キング・(のぼり)太牙(たいが)に反旗を翻したビショップが現れる。

ビショップ「玉座に座って王様気取りか……」
渡「言ったはずだ。僕がキングになると」
ビショップ「ふざけるな……紛い物のキングはこの私が倒す」
渡「望むところだ。いつでも挑戦を受ける」

少しも臆する様子のない渡。彼に詰め寄ろうとするビショップを、次狼(じろう)たち3人が制する。
不敵な笑みを残し、ビショップが立ち去って行く……。


最終話 フィナーレ・キバを継ぐ者


喫茶店、カフェ・マル・ダムール。
ファンガイアとの戦いで視力に異常を来たした名護啓介が、決意の面持ちで嶋 護にイクサナックルを差し出す。

名護「お世話になりました……嶋さん。視力が回復しない以上、俺がこれを持つ資格はありません……お返しします」
嶋「……ご苦労だったな」

嶋がナックルを受け取ろうとするが、横目で見ていた恵がやにわにナックルを奪い、名護の腕を掴む。
それを振りほどく名護。

恵「何逃げてんのよ! 何甘えてんのよ! 本気でファンガイアと戦いたいんだったらね、私とあなたのコンビネーション磨くしかないでしょ!?」
名護「……」


体育館で、名護と恵のコンビネーションの特訓が開始される。

恵「3時!」「9時」「6時!!」

恵の指示をもとに、名護が攻撃を繰り出す。

恵「11時!」「9時!」「10時!」「12時!」「9時!」「12時!」

特訓を終え、一息つく2人。

名護「なぜ俺のために……ハァ、ハァ……こんなことをしてくれるんだ?」
恵「私さ……あんたがこうなってから、気づいたことがあるんだ。私……心の中であんたを尊敬していたんだって」
名護「俺もわかったことがある。お前……優しい女だったんだな」


キャッスルドラン城内。渡のもとに、太牙が現れる。

太牙「渡……決着をつけよう」
渡「必要ない。もう決着はついたはずだ」
太牙「俺は新しい力を手に入れた」
渡「新しい力……?」
太牙「そう。闇のキバだ」

太牙の手には、キバットバットII世がいる。

太牙「母さんはお前に与えるつもりだったようだが、そんな裏切りは許されない。だから……この手で処刑した」
渡「……母さんを!?」

太牙を睨みつける渡の視線に、力がこもる。

太牙「戦う気になったか?」


林の中。
渡の変身したキバ・エンペラーフォームと、太牙の変身したダークキバが対峙する。

ザンバットソードを振るってキバが突進。
ダークキバも突進。2人が激突する。
だがそこにまたもやビショップと、彼の従える無数のファンガイアたちが群がる。

ビショップ「無能なキングと紛い物のキング、兄弟仲良く死ぬがいい」

次々に襲い来るファンガイアたちを、キバとダークキバが蹴散らす。
そこへ、怪人態に変身したガルル、バッシャー、ドッガの3人も駆けつけ、参戦する。

ガルル「手を貸すぞ! 音也(おとや)との約束だぁ!」
バッシャー「よぉし、倒すぞ!」
ドッガ「倒す!」
ガルル「俺が、ガルルだ!」
バッシャー「バッシャーだ!」
ドッガ「俺はドッガ!」

キバのザンバットソード、ダークキバの放った紋章が一気にファンガイアを全滅。
邪魔者が消え、再び2人が睨み合う。
キバの振るうザンバットソードをダークキバが受け止め、戦いが再開される。

割って入ろうとするビショップ。そこに名護が立ち塞がる。恵も駆けつける。

名護「決着をつけよう。その命……神に返しなさい!」

『レ・デ・ィ』

名護「変身!」

『ラ・イ・ジ・ン・グ』

名護が一気にライジングイクサに変身。
ビショップも怪人態のスワロウテイルファンガイアに変身する。

恵「2時!」「12時!」

イクサが恵の指示で攻撃を繰り出すが、逆にスワロウテイルの攻撃を浴びる。

スワロウテイル「貴様、見えないな? そんな姿で私と戦うなど……嘗めるな!」

次々に剣撃を浴び、イクサが倒れる。

イクサ「うぅっ……」
恵「名護くん……」

イクサが力を振り絞り、立ち上がる。

スワロウテイル「あの世で後悔するがいい」

強烈な燐粉攻撃がイクサを襲う。だがイクサは気合を込め、持ち堪える。

スワロウテイル「何!?」
イクサ「天魔覆滅!!」

逆上して突進するスワロウテイル。

恵「12時! 丁度! 上段! 脇!」

スワロウテイルの剣をイクサが跳ね返し、逆に剣撃を浴びせる。

恵み「真っ向!!」

イクサカリバーがスワロウテイルを両断、さらにイクサライザーの銃撃。
続けざまに、イクサの体が宙に舞う。

イクサ「イクサ……爆現!! うぉぉ──っ!!」

受け止めようとしたスワロウテイルの剣を真っ二つに折り、イクサのとどめの一撃が炸裂。
怪人態への変身が解け、ビショップが倒れる。

ビショップ「バカな……この私が……!? だ、だがこれでよい。この命、真のキングに捧げる……私と真のキングがひとつとなり……すべてを滅ぼす……!」

不敵な笑みを残し、ビショップが大爆発。
そのライフエナジーが光球と化し、空の彼方へ飛んで行く。

恵「やったわね、名護くん」

がっくりと膝をつくイクサ。

恵「名護くん!?」

力を使い果たしたかのようにイクサの変身が解け、名護が地面に倒れる。

恵「名護くん、名護くん!?」
名護「はぁ、はぁ…… 恵……」

恵の顔に手を伸ばす名護。その視界の中、次第に恵の顔がはっきりと映る。

恵「……目が、見えるの?」
名護「あぁ……見える。恵……」

痛みに顔を強張らせつつ名護が体を起こし、恵を抱きしめる。
恵も優しく、その腕を名護の背に回す。

恵「バーカ……」


山中。
ファンガイアたちのライフエナジーを受けて復活しつつあるキングのもとへ、ビショップのライフエナジーが飛来する。
激しい爆音とともに、キングがついにバットファンガイアの姿となって復活を遂げる……。


一方の渡と太牙。すでに2人とも変身が解けている。

太牙「どうした、戦わないのか? 俺は母さんを手にかけたんだぞ……」
渡「はぁ、はぁ……」

渡が憔悴しきった足取りで太牙に歩み寄ったかと思うと、いきなり彼を抱きしめる。

太牙「うっ、渡!? 何のまねだ!」
渡「わかる。兄さんの孤独が。僕がそばにいるよ、ずっと……」
太牙「お前は俺からキングの座を奪うんじゃなかったのか!?」

そこに現れる嶋。

嶋「それは違うな! 渡くんはお前を守るために、キングを名乗ったんだ」
太牙「……どういうことだ?」



回想──

嶋「太牙を……君に頼みたいんだ」
渡「わかってます。そのために僕が、キングになるつもりです」
嶋「君が? なぜだ?」
太牙「兄さんはキングとして命を狙われています。だから僕がキングになって、兄さんを助けます」



嶋「わかるか? 渡くんはキングを名乗ることで、お前の盾になろうとしていた」
太牙「そんな……!?」

そのとき、空の彼方から火の玉が飛来して地面に炸裂。
強烈な衝撃で吹き飛ばされる渡たち3人。
爆煙の中から、獣のような奇声とともにバットファンガイアが現れる。

渡「あいつは……!? 僕と父さんが、倒したはずなのに!?」

バットが攻撃を放つ。咄嗟に太牙が渡の身を守る。

渡「兄さん!?」
太牙「ビショップの企みだったんだ!」
渡「戦おう……兄さん!」
太牙「一緒にな!」

渡と太牙が、共にキング目掛けて駆け出す。
キングの攻撃。爆煙があがる。
その煙の中から、変身したキバとダークキバが飛び出す。

2人「うおぉぉ──っっ!!」

キバたちが同時攻撃。だがバットは少しも動じず、逆に圧倒的なパワーで2人を投げ飛ばす。
ダークキバが単身バットに挑むが、バットの攻撃を浴びて変身が解除される。

太牙「あ……?」
キバ「兄さん!?」

バットの矛先がキバへ。キバもまた猛攻撃の前に、変身を解除されてしまう。
さらにバットが渡の首を締め上げる。

太牙「渡ぅ!?」
渡「うぅっ……!」

渡が崖淵に追い込まれる。
バットの振るう爪が渡のキングの服を引き裂き、渡の体が宙に投げ出される。

渡「わぁ──っ!?」
太牙「渡ぅ──っっ!!」

斜面を転がり落ち、崖淵から眼下へと落ちてゆく渡。
咄嗟に、壁面から突き出ている何かにつかまる。
かろうじて落下は免れる。

渡「これは……!?」

彼の体を支えたのは、イクサの腕。
22年前の音也と先代キングとの戦いで、破壊されて飛び散ったイクサの腕の装甲だった。

渡「そうか……」

腕に力を込め、どうにか姿勢を持ち直そうとする渡。
だが、すんでのところで手がすべる。
あわや奈落の底へ……そのとき、誰かが渡の手をつかむ。

「渡……」

渡の視界の中、彼の手を支える音也の姿が浮かぶ。

音也「あきらめるな。お前の中には、俺がいる……俺たちはひとつだ」
渡「父さん……」

渡も、音也の手を力強く掴み返す。


太牙は単身バットに挑むものの、変身しない体では到底叶わない。

太牙「ぐぅっ……!」

さらにとどめを刺そうとするバットを、キバットたちが制する。

キバット「させるかぁ!」
キバットII世「やらせはせん!」

そして、渡も現れる。

太牙「渡……」
渡「兄さん、まだ戦える?」
太牙「当たり前だ!」
渡「行くよ……兄さん!」
太牙「行くぞ、渡!!」

立ち上がった太牙、そして渡が再びバットに立ち向かう。

キバット「ガブッ!」
キバットII世「ガブリ!」
渡「変身!」
太牙「変身!」
タツロット「それじゃ、いきますよ〜!」

渡がキバ・エンペラーフォームに、太牙がダークキバに変身。

キバとダークキバの足元から放たれた紋章が、バットを捕える。
紋章から弾き飛ばされたバットに、キバたちのパンチが、キックが炸裂。

キバたちの連続攻撃が次々にバットに浴びせられる。
バットの攻撃をかわし、ダークキバのジャコーダーがバットの体を貫く。

キバットII世「決めるぞ! 力を合わせるんだ!」

ジャコーダーが宙からバットの体を吊り上げる。

ダークキバ「今だ、渡!」
キバ「うん!」
タツロット「ウェイクアップ・フィーバー!」
キバット「キバれぇ──っっ!!」
キバ「だああぁぁ──っっ!!」

キバの最強キック、エンペラームーンブレイクが炸裂。
続けざまにダークキバのジャコーダーによる必殺技、スネーキングデスブレイクが炸裂。


断末魔の叫びとともに、バットファンガイアが大爆発──。


最後の戦いを終え、変身を解いて向かい合う渡と太牙。

太牙「渡……俺は多くの罪を背負った。決して許されない罪だ! お前でも俺を救うことはできない……」
渡「兄さんの罪は僕の罪だ。一緒に背負うよ、僕も……」

「太牙……渡……」

優しい声と共に、2人の母・真夜(まや)が現れる。

渡「母さん……? どうして!?」

太牙が手をかけたはずの真夜。
だが太牙の優しさは、ついに真夜の命を奪うことができなかったのだ。

真夜「いいのよ。太牙」

一度は自分の命を奪おうとした太牙に、真夜は優しく微笑みかける。

太牙「ビショップが言った通り、僕はキングとしてふさわしくないのかもしれない」
渡「違うよ。やっぱりキングは兄さんだ。兄さんならきっと、ファンガイアと人間に明るい未来を作ることができるはずだよ」
太牙「渡……! お前、でかくなったな。キングなんてものが、ちっぽけに感じるほど、でかく」
渡「兄さん……」
太牙「渡、もう一度戦ってくれ。そんなお前を乗り越えていきたいんだ」
真夜「戦いなさい……戦うことで、お互いの魂を感じなさい。戦うことで、2人が一つになれるように……」
太牙「行くぞ、渡」
渡「うん、兄さん」

おだやかに頷く真夜。
渡と太牙が静かに対峙し、そして激突する。

渡「変身!」
太牙「変身!」

真夜の見守る中、2人の拳が、蹴りが、そして互いの想いがぶつかり合い、受け止め合い、戦いが続く……。


そして、その数日後のこと──


紅邸に飛び込んでくる野村静香。渡が着替えに手間取っている。

静香「渡──! 渡、渡、渡! 何してんの? 遅れちゃうでしょぉ!?」
渡「でも ネクタイが……」


カフェ・マル・ダムール。正装姿の嶋と襟立健吾が飛び込んでくる。
マスターの木戸明は、マスク姿で黒い犬を抱いている。周りにはプレゼントや花束の山。

健吾「マス……何や こりゃ?」
木戸「僕からの贈り物。すごいでしょ? 持ってって」
嶋「マスター、早くちょっと支度して。ほら」
木戸「無理。今日は無理、無理。重症。風邪で」
健吾「もう〜何やねん、その犬?」
木戸「あ、これ? ブルマン、お産で入院しててね。僕ちゃん寂しいから、代犬・さゆりちゃん。早く! 時間ないでしょ!」
嶋「ちょっと、早く!」
健吾「もう〜」
木戸「壊れるでしょう!?」


教会の一室。ウェディングドレス姿の恵が佇んでいる。

恵「母さん……私、結婚します。ウェディングドレス姿、見せたかったな……」

恵の視界の中に、母・ゆりの姿が浮かぶ。

ゆり「とっても綺麗よ。恵」
恵「母さん……!」
ゆり「おめでとう。幸せにね……」

笑顔を交わす母子。いつしか、ゆりの姿が消える。

恵「ありがとう。母さん」


教会の結婚式場。
ウェディングマーチとともに、嶋のエスコートで恵が入場する。
拍手喝采で迎える出席者たち。
次狼たち3人、恵の弟・光秀、キバットやタツロットまでいる。

光秀「メグミン〜!」
キバット「モディリアーニ、フォーエバー!」
タツロット「本当に素敵ですねぇ〜!」

恵を迎える新郎──ひどく緊張した面持ちの、名護。
嶋が微笑み、恵の手を名護の手に預ける。


投資会社D&Pの会議室。

「それでは、新社長より、新しい会社の方針について、説明して頂きます」

役員たちにより社長の座から引き摺り下ろされた太牙が、再び社長として会議の場に立っている。

太牙「まず最初に、ライフエナジーに代わる新しいエナジーの開発を急務とする。提案書の最初のページを見てくれ。我が社にとって、2009年は勝負の年となる」


結婚式場。
名護が恵の顔のベールを上げる。冷やかしの声を上げる出席者たち一同。
キスを躊躇する名護に、恵が自分からキス。
歓声と拍手。名護も照れ笑いしつつ、幸せを噛み締める。

静香「それでは、新郎新婦の結婚を祝って 紅渡さんからお祝いの演奏です。どうぞ〜!」

渡が堂々とバイオリンを構える。
そのとき──

「パパぁ!」

教会に、サングラスで素顔を隠した奇抜な服装の青年が飛び込んで来る。

「パパ! 僕だよ、パパ。逢いたかったぁ!」

サングラスをはずす青年。その素顔は、音也にそっくり。

「正男だよ。正男。正しい男とかいてマ・サ・オ。お爺ちゃんとは違うでしょ?」

正男と名乗るその青年が、渡のもとに駆け寄る。

渡「誰、君!?」
正男「22年後から来た、パパの息子だよ」
渡「はぁ!?」
正男「『はぁ』じゃないよぉ! あ、そうだ。未来が大変なんだ! パパの力を貸してよ! 今こうしてる間にも、僕のことを敵が追って来るんだぁ!」

渡を教会の外へと連れ出す正男。恵や名護も慌てて後を追う。

恵「ちょちょ、ちょっと待って。息子って何?」

渡「正男……あれ何?」
正男「ネオファンガイアだよ。パパ」

教会の外。上空に、得体の知れない巨大な影が立ち込めている。
そこへ太牙も駆けつける。

太牙「渡!」
渡「兄さん!」
正男「伯父さん!?」

名護が渡たちのもとへ駆け出す。
ドレス姿のままで駆け出そうとする恵を、慌てて一同が制する。

恵「ちょ、ちょっと放してぇ!」

渡「行くよ……みんな!」
キバット「未来もキバるぜ!」
タツロット「そうこなくちゃあ!」
キバットII世「おう!」

キバット親子そっくりのモンスターも飛来する。

「イェーイ! 祭りだ祭りだぁ!」

渡たち「変身!!」

次狼、ラモン、力が怪人態のガルル、バッシャー、ドッガに変身。
渡はキバ・エンペラーフォーム、太牙はダークキバ、名護はライジングイクサ、正男はキバ・キバフォームに変身する。

ネオファンガイア目掛けて、7人が力強く大地を蹴る。

「はあぁっ!!」


未知の敵との、新たな戦いが幕を開けた──!


 Fin. 
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