戻る TOPへ

きまぐれオレンジロード 18

〜 永遠の夏!の巻 〜


これまでのあらすじ
春日恭介(かすがきょうすけ)は、中3の時、父親と双子の妹まなみ・くるみと
この街に引っ越してきた、ごくフツーの(現在)高校3年生――
家族全員が超能力者であることをのぞけば…!
恭介がこの街に引っ越してきて、一番最初に知り合ったのが、
つっぱりの美少女・鮎川まどか。
鮎川にひかれる恭介だが、鮎川を姉のように慕う檜山ひかるは恭介にぞっこん!
いちずなひかるの想いに、優柔不断な恭介の心は揺れて…。
鮎川は、恭介への想いをひかるのためにかくし続けていたが、ひょんなことから、
ひかるは、恭介と鮎川が惹かれあっている事を知ってしまう。
そんな中、鮎川は、ひかるのため、恭介のため、そして自分のため…
あることを決意したのだった。



キイイィィィ…
国際空港
「本当にいっちゃうのかよー」
「元気でね!」
「からだに気をつけてな!」
見送りに駆けつけたまなみやくるみ…友人達。
恭介と鮎川は、お互いをじっと見つめ合っていた…。

とある日の回想
夜の港…
美しい夜景が、恭介と鮎川を包み込んでいた。
「あたし…自分の気持ち、素直に言える決心がついたら
一度ぶらっと帰ってくる。」
「それは…いつ?」
恭介の問いに、鮎川は一瞬表情をくもらせ、そして言った。
「まだ…わからない。」
「でも…オレ待ってるよ、鮎川を。」
優しく微笑む恭介と、その笑顔にちょっと驚く鮎川。
そんな風に、恭介は言ってはくれないだろうと考えていた、
でも、本当は言って欲しかった言葉を聞いたから。
「あたし…きまぐれだよ。いつまで待たせるか…」
「いつまででも…!」
思い切って鮎川は、恭介に自分の決意を語った。
「アメリカ…へ!?」
「そう…両親のすすめもあって…ね。ロスアンゼルスのとある音楽学校。
留学するのもいーかなって…。」
「なぜ…なぜ急に!?」
夏の夜風が、鮎川の長い髪をふんわりと跳ね上げる。
髪を押さえながら、鮎川は遠くの星を見上げ…
「あたしは、春日くんも大切だし…ひかるだって大切な妹(みたいなもの)なの…
今、大切なものをあたしひとりのわがままで…くずしたくはないの…
…てなカッコイイこと言ってるけど…
本当はあたしって、すごく気が小さくって臆病者なのかもしれない。
ただ、それだけのことなのかもね。」
そう言って、この日、鮎川が初めて笑顔を見せた。
ドキッとして、赤くなる恭介。
「オレは…ひかるちゃんが好きだ。でも、それは恋人とゆーよりも、
兄としていとおしく想う…そんな気持ちが大きい…
鮎川に対する気持ちとは…ちがう!」
それを聞いて、恭介を見る鮎川…
そして、もう一度気持ちを確かめるかのようにこう尋ねた。
「Like or Love?」
「ひかるちゃんはLike…鮎川は…
あいしてる!」
じっとお互いの顔を見つめ合う二人。


『お知らせいたします。
JAL415便ロスアンゼルス行き14:05はまもなく…』
「それにしても、ひかるちゃんはまだこないのか?」
鮎川は、そろそろ搭乗時間だというのに…
と、そこへ走ってやってきたひかる。
頭には、以前鮎川が恭介にあげた真っ赤な麦わら帽子をかぶっている。
「まどかさーん!ハァハァ…
おくれちゃってすいませーん!バスが渋滞で…」
わざと明るく振舞うひかる。
「…ひかる!」
鮎川は、ひかるの頭の思い出の麦わら帽子を見て驚いた。
その時!
「ひかるちゃん…」
ひかるの前に土下座する恭介!
「ごめん…ひかるちゃん!」
おどろく鮎川…そしてみんな。
「立ってください…せんぱい。」
うつむくひかる。
恭介は立ち上がってひかるを見た。
(…あ!この帽子!!)
「せんぱい…あたしね…まなみちゃんたちから、すべて聞きました!
まどかさんとのこと!
…………………
せんぱい、目をつぶって歯をくしばって!!」
「……え!?」
パン!!帽子をおさえ、思いっきり恭介の左頬を平手打ちするひかる。
恭介も、みていた鮎川もびっくり!
「これでよし!……せんぱい、この帽子ちょっとお借りします!!」
ひかるはにっこりしてそう言うと、鮎川の所へ走った。
「まどかさーん!」
「…ひかる。」
「…まどかさん。」
ひかるは、鮎川の両腕をぐっとつかんだ。
「あたし、怒ってるんですよ!!だってみずくさいんだもん!
せんぱいがまどかさんのこと好きだったこと…」
「…ひか…る…」
「でも、おねーさん!早く帰ってきてください!!
あたしのために…そして…」
かぶっていた真っ赤な麦わら帽子を、鮎川の頭にのせるひかる。
「恭介…せんぱいのために…」
ひかるの目から、大粒の涙がこぼれた…
ぎゅっとひかるを抱きしめる鮎川。

ゴオオォォ…
鮎川を乗せた飛行機が飛び立ってゆく。
それを見上げる恭介とひかる。
「せんぱい…今はまだ…正直言って口をきくのはつらいけど…
せんぱいがまどかさんのこと…想う気持ちはわかるんです。
だって、まどかさん、ステキですもんね。
今まであたしひとり、せんぱいを独占してきたけど…
これからは、せんぱいにはもっと自由になって欲しい。」
「…ひかるちゃん。」
「みんな、まだまだ片想いなんですね…」
「ん!?」
ひかるの言葉を聞いて、ハッとする恭介。
(そーいえばオレ…まだ鮎川の気持ち
聞いてなかったっけ!?)

― でも…いつまでも待つよ 鮎川… ―

夏特有の力強い雲がいっぱいに広がった空…
それは確かに、鮎川の向かったアメリカに続いている。
そう思うと、恭介の心は、穏やかに晴れてゆくのだった…


― やがて…次の春がおとずれ…
オレ 春日恭介も 無事大学へ進学できてほっとしたころ… ―

公園の階段を駆け上がる恭介。
「97、98、99…100、ハァハァ…」
上りきったところで恭介を待っていたのは…?
「また、かぞえまちがえたわね!」
そう言って微笑む、鮎川まどかだった。
頭には、真っ赤な…あの麦わら帽子をかぶって!
「ハァハァ…限りなく100に近い99段だ!」
汗を拭う恭介…とびきりの笑顔を見せる鮎川。
ちょっと大人びた鮎川に、恭介が尋ねた。
「…答えてくれる?Like or Love?」
「Like!…限りなくLOVEに近い…ね!」
微笑む鮎川。
恭介は鮎川の腕をつかんで引き寄せ、
二人は、Kissっ!
真っ赤な麦わら帽子が、またおとずれた熱い季節の…
真っ青な空へと、舞い上がった。


― たとえれば「夏」 いくら年月が流れても
きっと ぼくらは この「季節」を忘れないだろう

4月 まどろむような陽射しの中で
初めて出会ったことや

6月 きらめく光と風の中を

8月 熱い浜辺をふたりでかけぬけて
いったことを

それは 単に 過ぎゆく「季節」ではなく
ともに過ごした「永遠の夏」の時代

夢のような80’s
このときめきは……忘れない ―


〜 きまぐれオレンジ☆ロード 完 〜

inserted by FC2 system