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かみちゃまかりん 最終話



「姫香を助けてあいつの指輪を狙うんだ!」
「…うん!」
「おまえたちの指輪をすべて壊し…「真の神の力」を手に入れる…!」
姫香を人質にとった烏丸キリオ、否、キリオの精神をのっとった烏丸桐彦は指輪を掲げた。
「全知全能の神 ゼウスの力で…!」
ドン!
「…わっ!」
和音が吹き飛んだ。
「…っ!」
「和音くん!」
「いい…!オレにかまうな!」
和音は、心配する花鈴にそう言った。
「おまえは姫香を…あいつの指輪を…!」
「フフフ…九条をもかんたんに…オレの指輪はおまえのものより勝るということか…」
桐彦は和音の様子を伺うと、興味深そうにそうつぶやいた。
「ならば一気にケリをつけよう」
桐彦の指輪がパァっと光った。
「!」
「覚悟しろ 九条…!!」
カッといっそう強く指輪が光った。
「和音くん危ないっ!!」
花鈴は和音を庇い、桐彦の攻撃を受け止めた。
「…っ」
しかし、桐彦の力は強く、花鈴は押され始めていた。
「受け止めるとはな
 が… このゼウスの力にどこまでたえられるかな…」
「どうして…どうしてそんなに神さまの力がほしいの…!?
 そんなに強くなって…何がしたいの!!?」
「では おまえはどうなのだ!!」
「えっ…」
予想外の返事に花鈴は驚いた。
「おまえだってその「神の力」を自分の目的のために使っているだろう
 大いなる「神の力」を…!! ちがうか!?」
「わ…私はそんなんじゃ…!」
「フフ…スキだらけだ… おまえの指輪は…それか!!」
「キャッ!!」
パン!
花鈴の指輪が壊れた。
「!」
「花鈴!!」
「私の…神化が……」
指輪が破壊され、花鈴の神化はとけてしまった。
「フフフ…まずは一つ…」
「花鈴ちゃん!」
桐彦に捕えられている姫香が悲痛な声をあげた。
(どうしよう…)
花鈴は人間に戻った自分の両腕を見、ぐっと手を握った。
(私の両親の形見…そして…神化が…!!)
「バカ――!姫香ちゃんを放しなさいよ――」
花鈴はやけになって桐彦をポカポカと殴った。
そんな花鈴を、和音は桐彦からひっぺがした。
「キャッ」
「無茶すんな花鈴…! だいじょうぶ まだ オレがいるだろ」
和音は花鈴に笑みを向けた。
「ご…ごめん」
「フフ…仲のいい夫婦だ 十年まえと同じ…」
「え!」
花鈴は動揺を隠せないようだった。一方和音は気まずそうな顔をした。
「…?いま…なんて…?えっと…夫婦…?何 十年まえ?」
頬を赤く染め、花鈴は和音を見やる。
「…」
和音も頬を赤らめ、黙っていた。
「和音くん…!?」
「とにかく姫香を渡せ 姫香はオレたちの大事な…一人娘だからな」
(オレたち――!?)
和音の突然の告白に、花鈴は頬をさらに赤く染め、驚いた。
「え――何?何?」
姫香は状況を理解できないようだった。
「ご…ごめん…さっきいえなくて…面とむかっては…その…ごめん…!」
(え――!和音君が話してくれなかったのは 私は…九条教授の奥さま――!?)
「じ じゃあ私もコピー……??」
「い…いや…おまえはちがう」
「フハハハ…何をいっている」
突然桐彦が割って入った。
「おまえは九条の妻 九条鈴花 そしてヤツの実験体」
「ちがう…!!ちがう…!!守るためなんだ!!」
和音は慌てて否定すると再び構えた。
「烏丸!!さっさとしょうぶつけるぞ」
「フフフ…のぞむところだ」
「オレの身体は神化用にいじってあってな…
 瞬間的にフツーの神化の何倍もの力が出るようになってんだ
 そのぶんすごく負担が大きくてさ」
「じゃ いまそんなことしたら和音くんの身体が…」
「…そんなモン…いま気にしてられっかよ」
和音はそう叫ぶと、力を発動し、桐彦に突撃した。
桐彦は姫香を抱えていない右手で和音の攻撃を防ごうとした。
「…!」
「…くっ…!!!」
和音は桐彦を押し倒し、そののど元に杖を向けた。
「おわりだ じゃあな烏丸桐彦!!」
その時、
「……!」
和音は血を吐いた。床にポタポタと和音の血が落ちていった。
杖を取り落とし、和音は倒れこんだ。
「和音くん!」
「…く…くそ…あとすこしなのに…!」
和音は息を荒げ、悔しそうにつぶやいた。
「形勢逆転だな…」
桐彦はすっと立ち上がり、和音に「力」をかけた。
「ぐあっ!!」
「か…和音くん!!」
「自分でいじったというだけはあったな
 おまえの力にはすこしおどろかされたぞ
 だが…それもここまでだ」
「くはっ…」
(和音くん…死んじゃう…!!)
「おわりはおまえのほうだ 九条!!」
桐彦の指輪が光った。
(和音くんが)
「ダメ―――!!」
花鈴は和音を庇うように和音を抱きかかえた。
「…うっ!」
「…か…かり…ん…」
「じゃまするな!実験体!!どけ!!」
「いや!!絶対どかない!!これ以上和音くんになんかしたら私が許さない」
「…か…花鈴ちゃん…」
「ほっといてもこいつは死ぬ」

「あっ!姫香さん 無事なんだね」
みちるが部屋に入ってきた。
「ミッチ――!!」
「心配になってもどってみたんだけど」
「ミッチ――たいへんなの――」
「あ…花園さん…!!」
みちるが花鈴を見ると、和音を庇い桐彦の攻撃を受けているところだった。
「キャアアア!!」
「…う か…かり…ん…も…もう…いい オレは…もう」
「イヤ…!イヤだよ絶対イヤ!!」
「か…りん…」
和音は花鈴を見て、こう続けた。
「キレイ…だな…そのカッコ…お姫さま…みたいだ…
 …ちょっと…思い出すな……劇んとき…」

  ……やめてって…いったのに…
  でもうすうす私はこうなることがわかっていました…

(コンクールの劇…!!)
「楽し…かった…な…」

  あなたは命つきるまで戦いをやめない…

(あの劇…あの劇の最後)
「…ホント…におまえの腕の中な…んて…な…」
和音は途切れ途切れに言った。

  最期がおまえの腕の中とは…
  わたしは幸せ者だ…

「…でも…もう…いいから…花…鈴…」
(いや…やだよ…あの劇のとおりなんて…
 …でも私はもう何もできない…!!…でも…)
花鈴は目を閉じ、手を合わせ、握った。
(力がほしい…守りたい)

  その「神の力」を自分の目的のために使っているだろう

(でも…でも)

「やあ―――っ!!」
みちるが背後から桐彦に一撃を食らわせた。桐彦はのびてしまった。
「ミ…ミッチ――!」
「だいじょうぶかい?二人とも
 もどってきちゃった 思い出してね これを…」
みちるはそう言うと紙切れを手に取った。
「…あ…あの手紙……?」
「ああ 教授の遺言だよ
 なんて書いてあると思う? ちゃんと教えたくてさ…」
みちるは手紙を読み始めた。
「『みちるくん もしきみが将来わたしたち夫婦に会ったら…こう伝えてほしい
 みちるくんの指輪はほんとうに守りたいもののために使ってくれ…』
 和音くんには手紙つっかえされたけどね」
(ほんとうに守りたいもの…守りたい…どうしてもどうしても…)
「ミッチ――!指輪…私に貸して!!」
(守るために力がほしい)

「アイアムゴ――ッド」

 「守る」という気持ちが「強さ」に…
 「強さ」は「力」に…

花鈴はみちるの指輪で神化した。
「なんだ…あの神化は…くそっ…この光は…く…苦しい…」
「……っ身体が…」
花鈴の神化の光を受け、桐彦は苦しがっている。
それに比べ、和音は少しではあるが回復したようだった。
「烏丸…」
「く…九条…さきまで虫の息だったのに」
立ち上がった和音を見て、桐彦は驚いた。
「和音くん…!!」
「花鈴…力を貸してくれ…オレは…守りたい…おまえたちを…守りたいから…」

 「守りたい」気持ちは…
 …「力」…

「この気持ちを込めた「強さ」がなけりゃ…この「神の力」は使えない…!!」
(守りたい…強くなりたい…!)
「「力」だけを求める「強さ」なんかに負けるわきゃね――よ」
(和音くん 守ろう…!!)
「花鈴……オレな…すごい飛び飛びでないも同然なんだけど」
ふと、和音は言った。
「親父の記憶…ほんのすこしだけあるんだ…
 ときどき頭をちらつくものが最初はよくわからなかった
 十歳んとき…じーさんにオレが何者か教わって…ショックだったけど
 でも…オレは姫香を守ろうって思ったんだ…
 会ったことのない…でも記憶をたどると気持ちがいっぱいになる…
 オレとだれかとの子どもなんだから……って
 花鈴とはじめて会ったとき…こんなヤツなわけねえって最初は思ってた…
 でも……覚えてるか? オレがあんときいったこと…」

 一目…会えてよかった…

「おまえと会えてよかった…」
和音は花鈴を見た。
「…和…」
「いまは…そう思ってる…」
すっ
和音は杖をかまえた。
「絶対守る…!!」
和音は光り輝いた。
「…くっ…くそっ」
桐彦に向かって、和音は走り出した。
「うわああああ」

バァアアアン!!


――二週間後
「あの指輪…」
「うん やっぱり見つからなかった…」
花鈴は烏丸家の前で、烏丸霧火と話をしていた。
「兄さん…?ああ…意識ももどり 今は快方にむかって……
 新学期にはちゃんとまにあったよ」
「…そうですか」
「いろいろとごめんね 花鈴ちゃん」
霧火は申し訳なさそうに言った。
「…いえ…!…先輩 そんな…
 でも…あれから二週間 和音くんは見つからなかったなんて…」
「心配だよ…無事だといいけど 父さんももちろんそうだけど…ぼくらも…
 人間に似つかわしくないほどの力なんて持つものじゃないかもしれない…
 大きすぎる力なんて…バランスを欠いて不幸になるだけだ
 なのに どうして人は強くなりたがるんだろうね」

帰り道
(和音くん…どこにいるんだろ)
花鈴の目に涙が浮かんだ。
(だめ…泣いちゃ しっかりしなくちゃ
 もっと強くなんなきゃ…! 強く…!)

「…おまえ…泣いてんのか…?」

声のした方向を見ると、そこには……
「花鈴 ひさしぶり」
和音が立っていた。
「和佐につれられて いままでずっと集中治療室づけでさ」
「和音くん!」
花鈴は和音に抱きついた。
「よかった!よかった!どこにいっちゃったかと思ったよ」
「え?キューじいさんいってねーんかよ 人がわるいな――」
「よかった…死んじゃったらどうしようって…」
「おまえが守ってくれたからだよ おまえがいなきゃ…オレは…おまえはオレの……ってトコかな」
和音は笑って花鈴を見た。
「和音くんも私の……」
花鈴は涙を拭った。

 きみが いるから…
 みんながいるから
 私はもっと強くなれる
 あなたは私の神さまだから…

 …いつまでも



かみちゃまかりん おわり

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