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仮面ライダーカブトの最終回


カブトとガタックの対決──

全人類をネイティブへ変えるという根岸の真の企み──

三島正人と根岸の結託によって失脚した加賀美陸──

最強のネイティブ・グリラスワームとなった三島──

彼の前に倒れたダークカブト──

そして……瓦礫の下へと消えた天道総司──


FINAL


高層ビルの上に設置されたスクリーンで、三島がZECT代表として演説をしている。
それを見上げる通行人達は皆、ワーム感知器とされるネックレスを身につけている。

三島「国民の皆さん、あと少しでワームを一掃できます。ネックレスの装着にご協力下さい。また、ネックレスをしていない人間は、ワームである可能性があります。そういう人を目撃した方は、是非ZECTまでご連絡下さい」


ネックレス配布場には相変わらず、ネックレスを受取ろうと大勢の人々が詰め掛ける。
たまたまそこを無視して通り過ぎようとしていた男性が、ネックレスを着けていないばかりに、たちまちゼクトルーパーに連行される。


病院。重傷を負った父・陸に付き添う加賀美新が、ロビーのテレビで、複雑な心境で三島の放送を見ている。
そこへ高鳥蓮華が現れる。

蓮華「先輩、これ……」

蓮華から手渡された手紙を、加賀美が開く。

加賀美「『俺に万が一の事があった場合はこれを加賀美に渡せ』……?」

裏には「天」の一文字。

加賀美「天道!?」

慌てて文面を読み始める。

加賀美「『奴らの狙いは人間をネイティブに変えることだ。だがネックレスが全人類に行き渡るのを待つはずがない。ネックレスは、いわばアンテナに過ぎない。そのアンテナにショックを与え……全人類を一斉にネイティブにする……そのための送信施設がどこかにある』……送信施設?」

テレビでは三島が演説を続けている。

三島「──人類の完全勝利宣言を、全世界へ向けて放送します」

テレビ画面に映る放送電波塔。

加賀美「これが……」

すっくと立ち上がる加賀美。

加賀美「親父……行って来る! 蓮華、親父を頼む」


加賀美が病院を出る。
目の前に田所修一と岬祐月が立ち塞がり、その後ろにはゼクトルーパーたちが並んでいる。

田所「ここを通すわけにはいかん」
岬「あなたとお父さんには、逮捕命令が出てるわ」

ひるむことなく加賀美が、前へ進み出る。

加賀美「俺は根岸の計画を止めに行きます」
岬「どうしても、行かなければならない理由があるの?」
加賀美「はい!」
田所「ひたすら前に突っ走るというのか……」
加賀美「はい!」

沈黙と睨み合いが続く。

田所「いいだろう」

加賀美のもとへ田所が歩み寄ると、ゼクトルーパーの方を振り返って一喝する。

田所「お前らぁ!! 俺の部下に指1本でも触れてみろ。ただではおかんぞ……!」

田所と岬が銃を抜き、ゼクトルーパーたちに向ける。
たちまちゼクトルーパーたちがネイティブに変身、田所・岬との戦いが始まる。

岬「加賀美くん、行きなさい!!」
田所「加賀美、行けぇ!!」
加賀美「……はいっ!!」


加賀美がガタックエクステンダーで道路を疾走する。
ガタックゼクターが飛来する。

加賀美「変身っ!!」

『HEN・SHIN』

加賀美がガタックに変身、そのまま放送施設を目指す。


放送塔の設けられた放送施設内。

様々な機器が並び、そこから伸びたコードの先には、ワームやネイティブが飛来した際の隕石を彷彿させる巨岩、そして気を失ったまま台の上に寝かされたダークカブト。

根岸「どうだ、準備の方は?」
三島「順調だ。午後3時には、全世界にネックレスが行き渡るだろう」
根岸「そして人間たちは、一斉にネイティブに変貌し、真の平和が訪れるだろう……今日はまさに、祝福の日だ」

祝福の意味合いか、テーブルの上に料理が並んでいる。
三島は、そんな食べ物は無用とばかり、荒々しく料理にフォークを突き立てる。


一方、ビストロ・ラ・サル。

竹宮弓子が見守る中、日下部ひよりがシェフ・デビューとしての新メニュー作りに取り組んでいる。

弓子「ひよりちゃん、いよいよね……」

ひよりの胸元に、弓子が新品のエプロンをあてがう。

弓子「これ、私からのプレゼント!」
ひより「ありがとうございます! 僕、頑張ります!」


放送施設内。

根岸「送信開始まで、あと5分……」
三島「愚かな人類の歴史は終わり、我々が、新たな歴史を刻む」

そのとき、壁をぶち破り、ガタックが突入して来る。

ガタック「待てぇ!!」
根岸「僕の力になってくれるんじゃなかったのかい?」
ガタック「この世界を、お前らの好きにはさせない!! どけ!」

ガタックが機器を操作する人々をどかし、機器を破壊しようとするが、それを三島が阻む。

三島「私は昔から嫌いだったんだよ……君のように、ただ真っ直ぐな男がぁっ!!」

三島がグリラスワームに変身。
ダークカブトをも容易に倒したグリラスの力は圧倒的。ガタックの攻撃も全く敵わない。

さらには、施設を護衛するゼクトルーパーたちがガタックを銃撃。
そしてゼクトルーパーたちが皆、ネイティブに変身してガタックに迫る。
彼らは元は人間、ましてガタック=加賀美の元同僚。反撃することができない。

ガタック「みんな、人間だったときのことを忘れてしまったのか!? 思い出してくれ、俺と一緒に戦ったことを! 目を覚ましてくれぇ!! 思い出すんだ! 目を覚ましてくれ!」

ネイティブたちに攻撃される一方のガタックの襟首を、グリラスワームが掴み上げる。

グリラス「戦いの神、戦いにおいて死すべし!!」

グリラスの背から触手が伸び、ガタックに突き刺さる。

ガタック「まだだ……負けて……たまるかぁ!!」

しかし、グリラスがとどめとばかりに爪をガタックの胴に突き立てる。
ついにガタックが倒れ、変身が解除される。


変身を解いた三島が、無情に加賀美を見下す。

根岸「時間だ。送信を開始する」

三島が機器を操作する。
巨岩とダークカブトから放たれたエネルギーが、コードを伝ってテレビカメラへと流れ、そのカメラが根岸を捉える。
高層ビルのスクリーンでは三島に替り、根岸が演説を始める。

根岸「人間の皆さん、私は誠に残念です。我々は人間とネイティブの戦いを見てきました……確かに、ワームは侵略者だ。しかし、人間には彼らと共存する気が全くなかった」

スクリーンを見上げるネックレス装着者が、次第に苦しみつつ倒れてゆく。

根岸「人間は、必ず争い合う。国家や民族の壁さえ越えられず、争い続ける人間に、我々ネイティブとの共存など、不可能です。だから我々は、人類をすべてネイティブにすることにしました。それが真の平和です」


放送施設内。

根岸「愚かな人間など、もう必要ありません」

加賀美「黙れ……」
根岸「……?」
加賀美「人間も……天道みたいな……凄い奴がいた……人間とか……ネイティブとか……分け隔てなく……あいつはいつも、上を見ていた……」

根岸がせせら笑う。

加賀美「たとえ世界を敵に回しても……あいつは、たった1人で……最後まであきらめなかった!」
三島「しぶとい奴め」

三島が加賀美を蹴り飛ばし、その胴を踏みにじる。

根岸「だがその天道ももういません」


その時──

どこからともなく、あの声が響く。


「おばあちゃんが言っていた……世の中で覚えておかなければならない名前はただひとつ……」


カブトエクステンダーが見上げる放送塔の上。

「天の道を往き、総てを司る男……」

そこにいたのは──天道総司!

天道「天道……総司」

放送塔からカブトエクステンダー目掛けて飛び降りる天道。


放送施設。

カブトエクステンダーが壁をぶち破る。
もうもうと上がる煙の中から、天道が姿を現す。
その手には、瓦礫の下敷きになった際、そばに咲いていた花が。

天道「俺は世界そのもの……世界がある限り……俺はある!」

天道が巨岩目掛けて花を投げつける。
花の茎が巨岩が突き刺さり、巨岩が暴走、機器が次々に火花を吹く。

天道「夢破れた男に花一輪……その花と共に、天に昇るがいい!」
根岸「己自身さえ変えられない、愚かな人間がぁ!」
天道「それがお前らの限界だ……人間は変われる! 人間もネイティブもあるもんか……この世界に生けとし生ける者、すべての命はみな等しい……」

ネイティブたちが天道に迫る。

天道「他者のために自分を変えられるのが人間だ。自分のために世界を変えるんじゃない……自分が変われば、世界が変わる!」

天道が天を指差す。

天道「それが天の道!!」

加賀美が力を振り絞り、身を起こす。

加賀美「そうだ……人間と、ネイティブ……一緒に暮らせる世界を……争いのない世界を、俺たちの手で……掴んでみせる!」
根岸「では敢えて言おう。そんな世界は必要ない。ましてや人間など必要ない!!」
天道「所詮……お前はその程度だ」
三島「やれ!」

しかし、ネイティブたちは困惑した様子で、天道を襲おうとはしない。

根岸「どうした!? やれと言っている!!」

ネイティブたちが次々に、元のゼクトルーパーの姿に戻る。

三島「お前ら……ネイティブの心を失ったかぁ!!」

天道がカブトゼクターを手にする。

天道「変身っ!!」

『HEN・SHIN』

天道がカブトに変身、さらに一気にライダーフォームに変身する。

三島が眼鏡を外して床に捨て、自分の足で踏み砕く。

三島「カブトォォ──!!」

グリラスワームとなった三島がカブトに襲いかかる。
カブトとグリラスの戦い。
当初は互角に見えたものの、カブトと同等の能力を持つダークカブトすら倒したグリラスの前に、カブトは次第に劣勢に追い詰められる。

加賀美「天道ぉ──!!」

グリラスの攻撃で吹き飛ばされたカブトが、加賀美のそばへ倒れる。

加賀美がガタックゼクターを手にする。

『HEN・SHIN』

加賀美が再びガタックとなり、カブトを助け起こす。

ガタック「しっかりしろ!」

2大ライダーがグリラスに挑む。
だがカブトとガタックが2人がかりでも、グリラスの優勢は一向に変わらない。
グリラスが2人の攻撃を次々に受け止めつつ、強烈な攻撃を2人に叩き込む。
そしてグリラスの左右の腕が、カブトとガタックの首を掴み上げる。

もはやこれまでか──と思われたとき、カブトの左腰にハイパーゼクターが出現する。

『Hyper Cast Off』

ハイパーフォームとなったカブトが、グリラスの拘束を振り解く。
さらにザビー、ドレイク、サソードゼクター、そしてパーフェクトゼクターが飛来して次々にグリラスを攻撃。
パーフェクトゼクターに3つのゼクターが合体する。

『All Zecter Combine』

パーフェクトモードとなったパーフェクトゼクターで、カブトが反撃に移る。

『Maximum Hyper Typhoon』

最強技・マキシマムハイパータイフーンの巨大な光の剣身が、グリラスの肩に叩きつけられる。
激しいエネルギーのスパーク。
しかし爆発と共に、パーフェクトゼクターの方が粉々に砕け散ってしまう。
爆発によってカブトも吹き飛ばされてしまう。

グリラス「私の勝ちだぁぁ──っ!!」

勝ち誇るような叫びと共に、カブト目掛けて突進するグリラス。
しかし、その油断の隙をつくように、光の刃が次々に飛来してグリラスの胴を裂く。
ガタックの放ったダブルカリバーだ。

カブト「行くぞ」
ガタック「よし!」
カブト「ライダーキック!!」
ガタック「ライダーキック!!」

2人がグリラス目掛けて突進し、その体が宙に舞う。

2人「だああぁぁ──っっ!!」

カブトとガタックの渾身のライダーキックが、グリラスに炸裂。

グリラス「ぐ……ぐぉぉ……」

痛烈なダメージを受けたグリラスが、ふらふらと歩きつつ、巨岩に激突。
巨岩がグリラスもろとも爆発、大きな炎が上がる。

すかさずカブトが、ダークカブトのもとへ駆け寄る。

カブト「おい、起きろ!」
ガタック「おい、天道! 爆発する! 逃げるぞ!」
カブト「おい、おい! おい!!」


放送塔が大爆発。

かろうじてカブトとガタックの2人が、外の放送施設屋上へ脱出。
屋上では根岸がゼクトルーパーたちと争っている。

根岸「カブトォォ──!!」

根岸がネイティブに姿を変え、カブト目掛けて突進。
そのとき、炎に包まれた放送塔からダークカブトが駆け出し、根岸を捕らえる。

ダークカブト「カブト、この世界を頼んだよ。僕たちの……世界を!」

ダークカブトもまた、ネイティブへと姿を変え、根岸を道連れに放送塔の炎の中へと自ら飛び込んでいく……


爆発のやんだ放送施設屋上。

カブトが変身を解く。
天道が、役目を終えたカブトゼクターに別れを告げるように、空へ解き放つ。
ガタックもまた変身を解く。
加賀美もしばらくガタックゼクターを見つめていたが、同じように空へ解き放つ。

2つのゼクターが別れを惜しむように宙を舞っていたが、やがてどこへともなく飛び去っていく。


力を使い果たしたかのように、天道と加賀美が床に座り込む。

加賀美「やったな……」
天道「一度しか言わないぞ。『同じ道を行くのは、ただの仲間に過ぎん。別々の道を共に発って行けるのが』……」
加賀美「『友達だ』。それは、おばあちゃんの言葉か?」
天道「……いや……俺の言葉だ」

初めて友情を確かめ合うような2人──


そこへ岬、蓮華が嬉しそうに駆けて来る。後ろからは田所も微笑を浮かべて現れる。

岬「加賀美くん!」
蓮華「師匠!」

蓮華が天道に、岬が加賀美に抱きつく。

蓮華「師匠──!」
加賀美「お、おい!?」
天道「蓮華!?」


ビストロ・ラ・サル。

ついにひよりの料理が完成した。

弓子「わぁ〜、美味しそう! じゃあこれ、出しとくね!」

弓子が「HIYORIMIランチ 始めました」と書かれたボードを出し、嬉しそうに店の外へ向かう。

自分の作った料理を見つめるひより。

ひより (お前のお陰で、完成したよ……)


一 年 後


蕎麦屋の服装の田所が、岡持ちを片手に自転車を漕ぎ、ビストロ・ラ・サルを訪れる。
店内には岬、蓮華、天道樹花が。

田所「よぉ」
一同「わぁ!」「田所さん!」
田所「いやぁ、もう蕎麦屋は大変……ん?」

岬はこれまでのZECTスタイルとは一変、綺麗なスーツに身を包んでいる。

田所「あれまぁ! 何だお前、そんな格好して?」
蓮華「ねぇねぇ田所さん、岬さん、社長になったんですよ」
田所「社長!?」
岬「はい」

田所が岬の名刺を目にする。

田所「ディスカビル・コーポレーション……どんな仕事なんだよ?」
岬「レストランの経営です。コンセプトは、剣くんが愛したじいやの味。ディスカビル家再興のため、ぜひ皆さんで食べに来て下さいね!」
樹花「行く行く!」

ドアが開き、今度は風間大介とゴンが現れる。

風間「こんにちは」
田所「おぉ!」
岬「あらぁ、久しぶりね!」
ゴン「こんにちは!」

早速、風間が岬のテーブルに就く。

風間「相変わらずお美しい。たとえて言うなら、その……えっと……」
ゴン「百合子のように」
風間「そうそう、それそれ! ……って、ゴンの本名だろ」
ゴン「私だってもう名無しの権兵衛は卒業だもん」
田所「いやぁ〜よし、平和でいい! よーし、蕎麦でも打つかぁ!」


並木道を、ひよりが自転車で駆ける。


やがて、ひよりがラ・サルに着く。
店の前から見える東京タワーを、ひよりが見つめる。
その胸に過ぎるのは、天道の姿だろうか……

いつしか、ひよりの隣に樹花が並ぶ。

樹花「『そばにいないときは、もっとそばにいてくれる』……だよね、ひよりお姉ちゃん」
ひより「うん……」

隣に弓子が並び、一緒に東京タワーを見つめる。

弓子「ひよりちゃん……HIYORIMIランチ、オーダー入ったよ」
ひより「はい」


店内。

ひより「お待ちどう様ぁ〜!」
樹花「お待ちどう様ぁ!」
蓮華「お待ちどう様ぁ!」
弓子「お待せしましたぁ!」

4人が次々にHIYORIMIランチを運んでくる。
店内は既に超満員。大人も子供も皆、笑顔満面で料理を味わっている。

ひよりも笑顔で客に応対している。1年前とは別人のようだ。
微笑ましくその様子を見守る田所たち。


街中。

幼稚園帰りらしき幼児たちが、交番の前を通り過ぎる。

幼児たち「こんにちはぁ! かがみぃ!」

振り向く巡査。加賀美である。

加賀美「かがみ『さん』だろ」


横断歩道を渡る幼児たちを、加賀美が旗を持って先導する。
その様子を、停まっている車の中から、父・陸が頼もしげに見つめている。

幼児たち「かがみぃ! ……さぁん!」
加賀美「ばいばい、気をつけてね!」

その中の1人の少女が立ち止まり、加賀美を見上げる。

少女「ねぇ、『てんのみちをいくひと』はどこへいってしまったの?」

加賀美がしゃがんで視線を合わせ、優しく語りかける。

加賀美「あいつはね、今……豆腐を買いに行ってるんだ」
少女「ふ〜ん……」


作務衣姿、下駄を鳴らす音、手には豆腐を入れたボウル。
1年前のあの日と同じように、天道が歩いている。

しかし背後には、東京タワーならぬエッフェル塔がそびえ立っている。


凱旋門の前。1人のフランス人の男性が、天道を通り過ぎ、足を止める。

男性「(フランス語) お、お前はたしか……?」
天道「(フランス語) おばあちゃんが言っていた……」

その指が天を指す。


天道「俺は天の道を往き、総てを司る男──天道……総司だ」


Fin
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