戻る TOPへ

仮面ライダー響鬼の最終回


威吹鬼と轟鬼が無数の魔化魍に立ち向かう。
響鬼が群がる魔化魍を蹴散らしつつ、オロチを鎮める為に音撃棒で大地を打ち鳴らし続ける……。

















甘味処たちばな。

一同「ありがとうございました〜!」

盆を運ぶイブキとトドロキが衝突、盆から滑り落ちた食器が床に散乱する。

トドロキ「わぁっ、イブキさん!」
イブキ「トドロキさぁん!」
勢地郎「おいおい、もう2人ともしょうがないなぁ〜ほら、早く片付けて」
日菜佳「こういうときに明日夢君がいれば、助かるんですけどねぇ〜」
香須美「そう言えばどうしてるかな、明日夢君。もう随分、顔見てないけど」
トドロキ「そうなんスよね。オロチを鎮めてから、もう1年スけど、ここのバイトも辞めちゃったし、俺も気になってはいるんスけど……」
勢地郎「さぁさ、仕事して、仕事!」


安達明日夢の通う城南高校2年B組。

先生「ではこの前の数学の試験を返します。平均点は58点。だらしないなぁ〜でもね、1人だけ満点がいました。安達君、あなたよ」
明日夢「よっしゃあ──っ!」

級友たちの歓声を浴びつつ、明日夢がポーズを決める。


明日夢と天美あきらが下校途中。

あきら「そうですか、安達君は医学部志望なんですね。凄いです」
明日夢「っていうわけでもないんだけどさ。天美さんは、将来の夢とかあるの?」
あきら「一応、福祉関係の仕事に就きたいと思ってるんですけど……そう言えば、桐谷君はどうしてるんでしょうか? 結局、学校にも来なくなりましたし」
明日夢「え……」
あきら「きっと、ヒビキさんのところで頑張ってるんでしょうね……安達君は、ヒビキさんには会っていないんですか?」
明日夢「……うん」

ヒビキの言葉が胸に蘇る。

(自分の生きる道を決められない奴に、何の人助けができるんだ)

明日夢「ヒビキさんとのことは、もう想い出かな……俺は俺で一生懸命頑張ってるし、充実してるし」
あきら「そうですか……なら、いいんですけど」
ひとみ「安達くーん! あきらくーん!」

持田ひとみが追いかけてくる。

明日夢「ははっ、お疲れ!」
ひとみ「お疲れ〜!」
明日夢「寒いっ!」
ひとみ「寒いね〜」


草原でキャンプ中のヒビキ。
草むらの中から、木刀を携えた京介が突如、襲い掛かる。
すかさずヒビキ、ポケットに手を入れたままで攻撃をやすやすとかわし、木刀を白刃取りで受け止めて投げ飛ばす。

ヒビキ「お前さぁ、攻撃がワンパターンなんだよ。ま、いつ襲い掛かってもいいっつったけど、俺まだオッサンじゃないもん」
京介「でもいつか必ず、一本取ってみせますよ!」
ヒビキ「いい弟子だ」


浩生会スズキ病院。
白衣姿の明日夢が患者を見送る。

明日夢「お大事に」
看護婦「安達君、こっちも手伝ってくれない?」
明日夢「はい!」
看護婦「えらいわね、安達君。病院で働いて。時給安いのに」
明日夢「いえいえ、少しでも医者の仕事に触れたいんで」
看護婦「先生言ってたわよ。安達君なら勉強次第でいいお医者様になれるって」
明日夢「本当ですかぁ!? ははっ、だといいんですけど」

病院の周りを掃除する明日夢を、遠くからヒビキが見守っている。
声を掛けるかどうか迷っていたような様子だが、やがて意を決したように声を掛ける。

ヒビキ「よっ!」
明日夢「ヒビキさん……!」
ヒビキ「久しぶりだな、明日夢」
明日夢「はい」
ヒビキ「あ……ラーメン食べに行こうか? な!」
明日夢「あ、あの今……ちょっと、仕事中なんで」
ヒビキ「……あ、そ? あぁ、この格好、良く似合ってるよ……な?」
明日夢「はは……あの、ヒビキさんも元気そうで」
ヒビキ「ははっ、鍛えてますから。シュッ! 若い奴にはね、まだ負けないよ」

いつものポーズを決めるヒビキ。とは言え2人の様子は以前に比べ、明らかにぎこちない。

明日夢「……あのぉ」
ヒビキ「ん?」
明日夢「……何でもないです」
ヒビキ「あ、そっか? ……ははっ」
明日夢「……」
看護婦「安達君、ちょっと手伝ってくれない?」
ヒビキ「ほら、早く行ってこいよ」
明日夢「……はい、すいません」


明日夢の家。
母・郁子と共に夕食をとりつつ、明日夢は分厚い参考書を広げている。

郁子「ねぇ、明日夢」
明日夢「……」
郁子「明日夢ぅ!?」
明日夢「……え?」
郁子「いや……あんた、それでいいの?」
明日夢「え、何? どしたの?」
郁子「いや、だからさ、ずっと前『やりたいことが見つかった』って言ってたけど、今の明日夢は本当にやりたいこと、やれてんの?」
明日夢「……あ、当たり前じゃん! 変なこといわないでよ」
郁子「あは、それならいいんだけどさ、ははっ、それならいいんだぁ。良かった」

ふと、明日夢が思いつめたように参考書を閉じる。

明日夢「……ご馳走様」
郁子「ん? お粗末様……」


甘味処たちばな。
ヒビキ、イブキ、トドロキ、みどりの4人がお茶を飲んでいる。

イブキ「で、どうなんですか? 京介君の修行は」
ヒビキ「あいつはさ、結構根性があるからね、これから楽しみなんだよね。へへっ」
トドロキ「でもいいんですか、ヒビキさん? 本当にこのままで」
ヒビキ「京介はね、ひょっとすると、俺よりも最短で、鬼になれるかもしれねぇな」
イブキ「明日夢君のことですよ! ヒビキさん、明日夢君の為を思って突き放したんですよね。それは、判ってるんですけど……ねぇ」
トドロキ「ねぇ」
ヒビキ「ねぇ……って、どうした?」
みどり「突き放したまんまで、本当にいいの?」
ヒビキ「……今、明日夢が過ごしてる時間はさ、一番大きくて、そして、一番長い時間だから……」
トドロキ「そんなもんなんスかね……」


昼の公園。
子供たちが遊ぶ傍ら、木のテーブルで明日夢が勉強中。

「誰か助けて! 誰かぁ!」

子供の悲鳴を聞き、明日夢が思わず悲鳴の方へ駆ける。
川岸の斜面の上で男の子が泣いている。

男の子「お兄ちゃんが……」

見ると、斜面の中腹にもう1人の男の子がうずくまっている。足を滑らせれば、川の中へ転落だ。

明日夢「助けを呼んできて」
男の子「うん」
明日夢「今行くから!」

明日夢が斜面を降りてゆく。

明日夢「大丈夫?」
男の子「足が……」
明日夢「足? よし、俺につかまって」

男の子を背につかまらせ、明日夢が斜面を登る。

足が滑り、明日夢が必死に堪える。
かつてヒビキと共に崖を登った時の記憶が蘇る。

再び足が滑り、懸命に堪える──が、既に息が上がっている。堪えるのが精一杯で、登る余力はありそうにない。

明日夢「ハァ、ハァ……もう駄目だ……ヒビキさん……ヒビキさん」


草むらの中、京介が木刀を片手にヒビキを狙う。
今まさに飛び出さんというとき、突然、ポケットから携帯を取り出す。
画面の着信表示に「安達明日夢」。

京介「もしもし?」
明日夢「もしもし、ヒビキさんいる?」
京介「いるよ」
明日夢「……やっぱりいいや、ごめん」
京介「ちょっと待てよ、どうしたんだよ?」

再び明日夢が自力で崖を登り始める。
ようやく登りきったと思った時、また足が滑る。
これまでか……と思われた時、誰かの手が伸び、明日夢の手をつかんで支える。それは……

明日夢「桐谷君!?」


病院。廊下で待つ京介のもとへ、病室から明日夢が出てくる。

京介「どうだった?」
明日夢「大丈夫だって。助かったよ、ありがとう」
京介「いや、人を助けるのが、鬼の仕事だからさ」


パネルシアターの帰りの、ひとみとあきら。

ひとみ「でもあきらちゃん、随分うまくなったよね。パネルシアター」
あきら「そんな、私なんてまだまだです」
ひとみ「そんなことないよ! でもさ、みんなが喜ぶ顔を見れるって、嬉しいよね」
あきら「はい!」
ひとみ「じゃここで。じゃあね」

あきらがひとみと別れた、1人帰途につくが……

ひとみ「きゃあ──っ!」

悲鳴を耳にし、あきらが追う。
そして目にしたのは、ひとみを抱えて走り去る魔化魍……


病院帰りの明日夢と京介。

明日夢「そっか。じゃ、うまくいってんだ? 鬼の修行」
京介「まぁな。でももう君には関係ないだろ? それに、悪いけどさ……俺はまだ君を許したわけじゃないから。自分勝手に鬼の修行を辞めた君をな」
明日夢「そんな……? 俺だって医者目指して頑張っ……」

京介の携帯が鳴る。

京介「はい、もしもし」

甘味処たちばなで電話をかけている日菜佳。

日菜佳「京介君!? 今あきら君から連絡があったんですけど、ヒ、ヒビキさんに伝えといてもらえるかな、ひとみちゃんが、魔化魍に……」

ちょうど、玄関を開けてヒビキが。

ヒビキ「よっ」
日菜佳「ヒビキさぁん……!」


京介「持田が……!?」
明日夢「……持田に、何かあったの!?」


謎の男女の住む洋館。
気を失ったひとみが、男女のもとへ運ばれている。

男「ふむ、丁度いい実験材料だ」
女「今度は何をするつもりなの?」
男「まぁ見てなって。やはり我々の分身となって働く者が必要だろ?」
女「うまくいくといいけど」
男「きついね……」
女「もう失敗作にはうんざりだから」


山林を走る明日夢と京介。

明日夢「持田が魔化魍に!?」
京介「あぁ。だからここは俺に任せろ。君には無理だ」

京介がディスクアニマルを取り出し、音叉で起動させて解き放つ。


洋館。
ひとみが薬液の水槽に浸けられる。
謎の男が、ビーカーから無数のヒルのような生物を水槽の中へ放つ。


京介が、帰還してきたディスクアニマルの1体の録音内容を再生する。

京介「当たったぞ。あっちだ」

洋館への侵入を阻止するかのように、魔化魍サトリが出現。

京介「だから言ったろ、来るなって!」

生身のまま果敢に応戦する京介だが、攻撃を食らい、気を失ってしまう。

明日夢「桐谷君!? 起きてよ! 起きてよ!」

京介の放ったディスクアニマルたちが、サトリに襲いかかる。
その隙に明日夢が京介を抱え、撤退。


気を失ったままの京介を抱えて河原に逃げてきた明日夢。

明日夢「桐谷君、起きてよ! 桐谷君、起きてよ! 桐谷君!」

京介が左肘を負傷し、血が滲んでいる。
明日夢がハンカチを取り出し、止血にとりかかる。
傷の痛みか、顔をしかめつつ京介が目を覚まし、明日夢の手馴れた手つきを目にする。

京介「なるほど……医者志望っていうのは、本当らしいな」
明日夢「大丈夫……?」
京介「それに……俺を背負って運んだのか? 鍛えてんだな……」
明日夢「まぁ、ちょっとは……」

そこへサトリが襲ってくる。

京介「でもな、鍛え方が違うんだよ、お前とは! 見せてやる!」

京介が音叉を鳴らし、額にかざす。
その全身が青白い炎に包まれ──響鬼そっくりの、白銀色の鬼の姿へと変身を遂げる。

鬼となった京介がサトリと戦いを繰り広げる。
その様子を目にした明日夢が、変身能力を得るほどの彼の成長ぶりに驚愕する。

京介「安達……」

明日夢に気を取られた一瞬、サトリの攻撃が京介に直撃し、変身が解除される。

明日夢「桐谷君!?」

そこへイブキとトドロキの2人が到着。

イブキ「京介君!」
トドロキ「明日夢ぅ!」

2人が変身し、音撃斬と音撃管の連続攻撃でサトリを倒す。

威吹鬼「大丈夫?」
明日夢「桐谷君……」

しかし、地面を割って巨大な魔化魍ロクロクビが出現。
さらに洋館の男女も現れる。


洋館。
水槽の中のひとみに、無数のヒル状の生物が群がる……。


謎の男の攻撃に翻弄される威吹鬼、轟鬼。
だが突然、なぜか男が苦しみ出す。
謎の男が女に助けられつつ、2人とも撤退する。

2人が消えた後も尚、威吹鬼と轟鬼はロクロクビに苦戦を強いられる。

明日夢「イブキさん!?」
京介「トドロキさぁん!?」

そこへ凱火を駆って、ヒビキが到着。

明日夢「ヒビキさん!」
ヒビキ「待たせたな」

ヒビキの体が炎に包まれ、そしてディスクアニマルが群がり、アームド響鬼へ変身。


洋館に明日夢と京介が突入する。

明日夢「持田!?」

水槽の中から、ひとみを助け出す。

明日夢「持田、しっかりしろ! 持田ぁ! 持田! 持田、持田、しっかりしろ!」

ひとみの目が、微かに開かれる。
意識を取り戻したひとみを、明日夢と京介が抱え、洋館を脱出する。

京介「明日夢……認めてやるよ。お前も結構やるな」
明日夢「京介もね……」


謎の男が女に助けられつつ、山中を逃げ惑う。
その2人の前に、同じ顔をした洋装の男女が現れる。

洋装の男「悪いっ、餌の時間忘れてた! 餌、あげる」

餌と称する不気味な塊を謎の男が飲み込み、生気を取り戻す。

洋装の女「お前たちにはまだまだ働いてもらわなければ」


響鬼とロクロクビが戦っている場へ、明日夢が駆けつける。

明日夢「ヒビキさぁん!」

明日夢に襲い掛からんとするロクロクビ。
響鬼がアームドセイバーで「鬼神覚声」を放つ。

明日夢「わあっ!?」

ロクロクビが木っ端微塵になり、その余波で明日夢も吹き飛ぶ。
倒れた明日夢に、響鬼が駆け寄る。

響鬼「明日夢ぅ!」
明日夢「ヒビキさん……」
響鬼「しっかしろ、おい……明日夢、明日夢!」

明日夢の目に映る響鬼の姿がぼやけ、声が遠くなっていく……


海岸。

明日夢が目を覚ます。
サングラス姿のヒビキが海岸の岩に腰掛け、太陽を見つめている。

ヒビキ「出会った時、屋久島の朝日を一緒に見たの、覚えてるか? 太陽っていいよな」

明日夢がヒビキの隣に腰掛け、共に太陽を見つめる。

明日夢「一生懸命生きてきたつもりです。俺の弟子じゃないって、ヒビキさんに言われたから……響鬼さんに憧れてたんです。初めて逢った時から、ずっと……そして僕もいつか、ヒビキさんみたいになりたいって……」

やがて、意を決したように真意を吐露し始める。

明日夢「でもそれじゃ駄目なんじゃないかって、気が付いたんです……ヒビキさんに何でも頼って、ヒビキさんの真似をして、それじゃ、本当に僕が目的を持って良く生きてるってことにはならないんじゃないかって。それがヒビキさんが教えてくれたことなんだって……」
ヒビキ「……」

明日夢「僕は鬼にはなりません」
ヒビキ「……」
明日夢「でもわかったんです。もっと沢山の人を助けて生きたいって」

ヒビキがサングラスを外す。

ヒビキ「これでもさぁ……離れてた時間、ずっと明日夢のことが心配だっよ。難しいなぁ、強く生きてくって。俺は信じてるんだ。人間は、いつだって変われるんだって……鬼になることだけが、俺の弟子になることじゃない。鍛えたな、明日夢」
明日夢「ヒビキさん……」
ヒビキ「出逢った頃からずっと、明日夢は自慢の弟子だったよ。俺について来い」

ヒビキが立ち上がる。明日夢も立ち上がり、ヒビキと見詰め合う。

ヒビキ「これからも俺のそばで、自分らしく生きてみなよ」
明日夢「はい!」
ヒビキ「よろしくな! シュッ!」

いつものポーズを決めるヒビキ。
戸惑いつつも、ぎこちない仕草でそのポーズを真似る明日夢。

明日夢「……シュッ!」


2人が肩を抱き、太陽を見つめ続ける……。



inserted by FC2 system