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極楽丸
Vol.18 さよなら、川向町…!!の巻
極楽丸:
本当は必要ない…全部。
もし「極楽丸」や「図死王丸」がいなくなっても
やっぱり川向町はそれなりに朝昼晩が過ぎて行くと思うし。
図死王丸:
(極楽丸…さん…?)
極楽丸:
もし里と出会わなかったら…それでも俺は今頃 中学生やってると思うし
虫がこの世から消えても俺はいつか大人になるんだと思う。
図死王丸:
(そんなふうに言ってしまったら……
俺達はもう現世へは戻れない…
本当にあなたはそれでいいんですか……!?)
虫ってさあ バカだよね。
何のために生きてんだか全然分かんない。
極楽丸君 なんで虫なんて好きになれるのーーー?
虫嫌い〜。いなくなって欲しい〜。
でもキレイな虫とかはいてもいいかな〜。
ゴキブリと蚊はとりあえず要らねーよな。
害虫はねえ…。益虫はいてもいいけど…
私って…ジャマな人間…?
この青虫同じものばっかり食べててよく飽きないなァ……
ひたすら食べて大きくなって子孫残して死ぬだけ…
虫って何が楽しくて生きてるのか理解不能だよ〜
毎日毎日 働くだけ…いったい何のために生きてるんだか
極楽丸:
……俺 今まで何で人が死にたいと思うのか分からなかったんだ……
でも図死王丸と会ってから少しずつ分かってきた。
図死王丸に比べて極楽丸は役に立たないと思った。
だからやめてもいいかもと思った……
たぶんみんなも同じだったんだ。
役に立たないから。
意味無いから。
楽しくないから。
必要ないから。
やめてもいいかなって思ったんだ。
女神:
まさにここはそのようにして捨てられたものが集う場所。
極楽丸:
でもよく考えたら、本当はこの世に必要なものなんてないと思うから
「必要か?」なんて聞かれたって困るんだ。
違う質問にして下さい。
図死王丸:
あんた女神様をバカにしてんですかッ。
極楽丸:
別にそういうつもりじゃ……
図死王丸:
見て下さいよッ。あの青スジッ。
思いっきり怒らせてんじゃないですかッ。
きっともうニラヤから出してもらえませんよ!?
極楽丸:
……だって 俺…
昆虫って誰かにとって必要だから生きてるわけじゃないと思うし
役に立つから里と一緒に居たいってわけじゃないから…
図死王丸:
……ご…「極楽丸」はどうするんですか。
「必要ないから」やめたんでしょう……?
極楽丸:
ん? やっぱりやろうかな…
図死王丸
なんで!?
極楽丸:
さっき言っただろ。
必要なものがこの世にないんだったら…
必要かどうかなんて もう考えなくていいんだ。
俺は生まれつき極楽丸なんだから
極楽丸のままでいい。
だから一緒に帰ろう。
「図死王丸」も「極楽丸」も どっちも居ていいだろ。
図死王丸:
……しかし こんなことで戻れるんでしょうか……
だいたい女神の体をよじ登るなんて失礼な……
ん?
極楽丸:
わあーーッ。
図死王丸:
どうなってんですか これ……
極楽丸:
ここって…?
図死王丸:
さあ…女神の体の中では…?
どうしましょう。俺達食われちゃったんですよ…
極楽丸:
とりあえず登ってみるとか……
俺達と一緒に吸い込まれた魂も……ほら…
体の中ってことは…
進んでいくと おしりの穴とかから脱出するのかな…?
図死王丸:
それまでに消化されてなきゃいいですけどね…2人共…
極楽丸:
道が狭くなってる…
図死王丸:
この先進めるんでしょうか…?
極楽丸:
なん…とかっ…
図死王丸:
無理みたいですね。
戻りましょうか。
もう一度 女神様に頼んでみましょう……
極楽丸さん…!!
………
図死王丸:
あれ…?
これってどこかへ くぐり抜けたってことですか…?
ニラヤとは少し違うみたいだけど……
すみませーん。
HR長引いちゃって。
待ちました…?
え? また俺ん家ですか?
いいけど今日 父居ませんよ。
じゃいい……
ちょっと待てッ。
あんたやっぱり俺と付き合ってるのって おやじ目当て…
図死王丸:
もしかして…あの女運なさそうな男は……
極楽丸ー!
極楽丸ってば!
極楽丸:
………
図死王丸:
あれは…!!
極楽丸:
どうなってるんだ…?
図死王丸:
まだ女神の体の中みたいですね…
極楽丸:
明るい…
図死王丸:
なんか外に出られそうですよ…
極楽丸:
ここは…?
図死王丸:
わあ!
彼岸の女神:
私は彼岸の神。
極楽丸:
彼岸の女神……!!
彼岸の女神:
極楽丸とは一度だけ会ったことがある。
極楽丸:
(そうだ この感じ…
「暗闇の門」で……)
彼岸の女神:
見るがいい。
極楽丸:
彼岸……
彼岸の女神:
2人と共にニラヤから戻った魂が
痩せていた天上の鎖に戻りつつある。
図死王丸:
あれは浄化した魂が集まったものだって…
彼岸の女神:
魂がニラヤへ捨てられてしまうと
鎖へ帰る魂の量が減る。
鎖が痩せると あそこから地上へ生まれ返る生命の量も減る。
小さな命からだんだんと…
極楽丸:
そっか…それで川向町から昆虫が減ってたんだ…
図死王丸:
俺がニラヤの扉を破ったから……
ちょっ…ちょっと待って下さい。
何故 川向町だけそんな極端に彼岸の影響が…
彼岸の女神:
私が気まぐれで極楽丸を与えた事で
川向町は地上で最も彼岸に近い場所となった…
だからこそお前達には
注意深く あの町を見守っていって欲しい…
―――――――――――
図死王丸:
お父様。
健三郎:
何?
図死王丸:
俺 もう図死王丸を続けられなくなりました。
ニラヤから戻った時 体中のアザみたいなのが無くなったのに気付いたんですけど
その時に右手の図死王丸の印も一緒に消えてしまったみたいなんです…
健三郎:
そっか…
図死王丸:
でも俺 やっぱり極楽丸さんには負けません。
大人になったら
彼岸に負けないくらい楽しい遊園地を作りたい。
大人も子供も時を忘れて 心から夢中になれるような。
「今日は遊びつくしたから明日は仕事や学校に行ってやるか」
って言えるような…
それから…前から言おうと思ってたんですけど
俺もう 手つないでもらわなくても一人で歩けますから…
健三郎:
知ってるよ。
……ちょっと悔しいけど お前の手は
きっとそのうち俺のより ずっと大きくなるんだろうなあ。
図死王丸:
あ そうだ。
それから未来の俺の恋人には手出さないって約束して下さい。
健三郎:
何?
―――――――――――
小錦:
じゃあつまり…
自殺者が増えると命自体の量が減ってくって事?
“極楽丸”の本当の仕事はそれを食い止める事だったのか…
里:
食い止めるっていっても…
龍口:
川向町…だけ…
小錦
そうだよなー。極楽丸が居るのは川向町だけなんだよなー…
何考えてんだか「彼岸の女神様」とやらは…
里:
だから…それは…
極楽丸っていうのは…
彼岸の女神様の
気持ち
なんだと思います。
里の母:
里! 急行来たわよ!!
早く! これに乗らないと新幹線の乗り換えに遅れちゃう。
里:
はあい。
小錦:
もう行っちゃうのか……
ダメだろ!!
別れはこう もっとしつこ〜く。ねばっこ〜く。
例えば川原で待ち伏せてソーラン節踊ってみたりとか!!
みんなで囲んであげくの果てに胴上げしてみたりとか!!
里:
じゃ…
陽子:
前田 里ー!!
陽子様が御見送りしようってのに待たない気!?
小錦:
先代 「御」つけるとこ間違ってます。
里の母:
急いで里ーー!!
里:
あっ うん。
小錦:
あーあー。行っちゃったよ。
龍口:
里…
極楽丸:
……
小錦:
僕はてっきり極楽丸君が電車の後追って転んだり
ホームの切れ目で「里ーー」とか叫んだりするものとばかり…
ったく いいのか? 女心は変わりやすいんだぞ。
極楽丸:
大丈夫。
俺 知ってるから……
小錦:
知ってるって何を!?
ああー。もっと盛り上げてくれないと受験っつぅ現実に引き戻されるだろ〜〜〜〜〜〜〜。
龍口:
今度…里と会うのは夏休み……
陽子:
一緒にウチ泊まる?
極楽丸ってば!
…今日付けで…
川向署に配属されました前田 里です。
…………
なんだ…ちょっとは驚いてくれると思ったのに……
里が帰ってくること…?
知ってたよ。
ずっと前から…
極楽丸 END