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ゲートキーパーズの最終回


松田のトラックが浮矢たちとゲートロボを乗せ、町を行く。
彼らを追う鉄球型インベーダーたち。

番長「追いつかれるぞ、おい! ここは、浮矢の疾風のゲートでなぁ!」
メガネ「ダメでヤンス! ここで浮矢先輩のゲート能力を使うわけにはいかないっス!」
フェイ「その通りだヨ! タイチョさんとゲートロボは、みんなの最後の希望!」
麗子「ここはぁ、任せてください〜」

フェイ (もう、大事なヒトいなくなるの、イヤだから!)
麗子 (今こそみんなの役に立つ、良い魔女さんになってみせますぅ〜)

フェイ「開門(カイミェン)!」
麗子「ゲート・オープンですぅ〜! 乙女の祈り〜!!」
フェイ「衝撃的神龍撃(チョンヂードゥシェンロンヂー)!!」



最終回
明日の笑顔のために



総理大臣の座に就いた影山が、側近たちに囲まれ、国会議事堂で報道陣を前に演説をしている。

影山「光を失って、ようやく気づくのです。自分たちが土の中のクソ虫だということを」
側近「影山総理、私たちの敵がこちらに向かっていると報告が……」
影山「ほぅ。続きは外でやるとしよう」
報道陣「はぁ?」
影山「面白いものを、放送できるかもしれない」


一方の浮矢たち。鉄球インベーダーは何度破壊しても、次々に襲って来る。
麗子とフェイがゲート能力で奮闘するものの、能力の多用で2人とも疲弊しきっている。

フェイ「はぁ、はぁ…… 爆熱的大熊猫(パオジュルドゥダーシュンマォ)!!」
麗子「ふぅ…… 幻惑のメロディですぅ〜……」
浮矢「フェイ、麗子さん、下がって! あとは俺が!」
かおる「ダメです! 先輩は影山さんのところへ着くまでは、何があっても戦っちゃダメです! でなきゃ、生沢先輩が可愛そうです!」
浮矢「かおるちゃん……」

インベーダーが無数の砲弾を発射。

フェイ「あぁっ!?」
麗子「フェイちゃん!?」

無数の砲弾の中に、フェイの姿が消える。

麗子「フェイちゃん……フェイちゃんがぁ…… よくも、よくもフェイちゃんをぉぉ──っっ!!」」

激昂とともに、麗子のゲート能力が凄まじく膨れ上がり、鉄球インベーダーが一つ残らず消滅する。

麗子「フェイ……ちゃん……」
フェイ「呼んだカ?」
麗子「え!?」

砲弾の中に埋れ、かろうじて無事のフェイ。

フェイ「麗子さん、キレると迫力ネ!」
麗子「フェイちゃん! ……キレるって、なんですかぁ?」

しかし今度は、以前倒したはずの怪獣型インベーダー・スピゴンが襲って来る。

番長「今度は、スピゴンじゃあ、スピゴンの逆襲じゃあ! 生きとったぁ!」
かおる「ここは私が!」
麗子「気をつけてください〜」
かおる「ゲートォ・オ──プン! かおるキッ──ク!!」

かおるがトラックから飛び出し、スピゴン目がけて強烈なキックを見舞う。
地面に残されたかおるに、浮矢が必死に手を伸ばす。

浮矢「かおるちゃん! かおるちゃん、早く!」
かおる「私のことはいいです! 行ってください!」
浮矢「松田さん、停めて!」
かおる「生沢先輩を助けたくないんですか!? もっと自分の気持ちに正直になってください。あんなに必死になって影山さんを助けに行こうとしたのは、本当は生沢先輩を助けたいからだって! 大切な人も守れない地球防衛なんて、そんなもの……そんなもの私、認めません!」
浮矢「かおるちゃん……」

かおるが涙を拭い、ピースサインを送る。

かおる「浮矢先輩なら、やれます!!」

トラックが地平線の彼方へと走り去る。
と、その彼方から番長が、猛然と駆け出してくる。

番長「うぉ──っ、かおる姫──!」
かおる「番長……!?」

しかし、かおるの背後目がけ、スピゴンの牙が迫る。


浮矢たちのトラックは、ようやく議事堂近くまでたどり着く。
しかし、インベーダーたちが巨大な壁に変形し、行く手を塞ぐ。

麗子「どうしましょう……?」
フェイ「万里の長城も、真っ青ネ」

一筋の雷が閃き、壁を切り裂く。
そこに現れたのは、イージス海外支部のジム、ジュン、操と、彼らの操るゲートロボ。

操「右22度、地下からET-11、2体。4秒後」
ジム「OK! 任せろ!」
浮矢「ジム! ジュンさんに、操さんも!」
ジュン「お礼なら、あなたたちの司令に言うことね」

上空にはYS-11旅客機、中には司令と、秘書の落合が。

司令「浮矢隊長! 周辺の敵は我々が引き受けた。君はシャドウを!」
浮矢「了解、イージス!」

レーダーが反応を示す。

落合「司令、これは!?」
司令「掴まっていたまえ、落合くん」
落合「もう、慣れました。これで2度目ですから」

浮矢がゲートロボに乗り、国会議事堂を目指す。

浮矢「オ──プン・ザ・ゲ──トォォ!!」


一方のかおるたち。かおるを襲うとしたスピゴンの牙を、必死に番長が押さえている。

かおる「番長!?」

かおるが番長を救おうとするが、間一髪間に合わず、顎が閉じられ、番長はスピゴンの口の中へ消える。

かおる「畜生! かおるパンチ!!」

番長を飲み込んだスピゴンに、かおるの怒りのパンチが炸裂。

かおる「出せ! 返せ! バカ野郎! 私たちの仲間を返せぇ──っ! ……はっ!?」

スピゴンの口からゲートの光が漏れる。

番長「ゲ──ト・おやぶ──ん!! うぉぉ! わしに力をぉぉ!」

力任せに番長が、スピゴンの顎を内側からこじ開ける。

番長「ハイパァ──内曲投げぇぇ──っっ!!」

土壇場で番長のゲート能力が発現。番長の投げ技でスピゴンがはるか彼方へ吹っ飛び、消滅する。
ニッコリと笑う番長に、かおるが抱きつく。

かおる「番長──!!」


国会議事堂前、浮矢のゲートロボの前に、影山が臆することなく姿を現す。

影山「地球防衛軍気取りかい?」
浮矢「そんなんじゃない!」
影山「ふぅん。お姫様を悪い魔法使いから救い出す、王子様ってわけかい。でもね、お姫様は一生、暗闇から出ることはできないよ。君たちクソ虫たちも全部。バカみたいに特別熱血クソ虫の浮矢くんのために、たった今から特別に、日照権剥奪法を適用してあげるよ!」

無数のインベーダーが空を真っ黒に多い、日の光が閉ざされてゆく。

影山「オープン・ザ・ゲート!!」

漆黒のゲートロボを召喚する影山。

浮矢「影山ぁ──っ!!」


一方、ルリ子は恵のもとで捕われの身となっている。

恵「憎むのよ…… あなたの本当の実力を認めようともせずに、蔑んだ奴らのことを。さぁ、憎みなさい……」


影山「シャドウエッジ!」

漆黒のゲートロボの攻撃が、次々に浮矢のゲートロボに突き刺さる。
その様子をカメラで捉える中継する報道陣、テレビレポーター。

レポーター「ご覧頂けますでしょうか? 素晴しき新総理・影山様に盾突く反逆者。反逆者がこの、国会議事堂前に乱入いたしました。しかし、我らが影山新総理は、悪の白いロボットを、その圧倒的な黒い力によって、排除しようとしています」

影山「教えてやろう。お前らが戦ってきたインベーダーが、どこから来たのか! 奴らは宇宙人なんかじゃない。はるかな昔、マイナスゲートキーパーが生み出した、人間の欲望を食らって増殖する擬似生命体。それがインベーダーだ!」

漆黒のゲートロボの手刀が、浮矢のゲートロボの頭を砕き、脇腹を貫く。

影山「高度経済成長などといって、欲望を撒き散らす日本のクソ虫ども! わかったか!? 貴様ら自身がインベーダーどもを呼び寄せ、増殖させたのさ! この先10年、20年、30年と、人間の際限なき欲望は、ますますインベーダーを増やしていく。お前らの求める争いのない未来など、最初からどこにもないんだよぉっ!!」
浮矢「言いたいことは、それだけかぁっ!?」

漆黒のゲートロボの拳が振り下ろされる。
浮矢は敢えてその攻撃を受け、隙を突いて渾身の拳を繰り出すが、拳は大きく宙を切る。

影山「ハハハ、『肉を切らせて』か? 最後の賭けだったらしいが、惜しかったな。シャドウエッジ!!」

漆黒のゲートロボの猛攻が、浮矢のゲートロボを容赦なく襲い、黒い触手が頭部を締め上げる。

メガネ「浮矢先輩!?」
影山「フフフ、俺には見えるんだよ。この国の真っ暗な将来が、絶望に満ちたこの国の明日が。お前たちはみんな、闇に蠢くクソ虫だ。弄んで何が悪い? 殺して何が悪い? 幼い俺の心を踏みにじったクソ虫ども、みんな捻り潰してやるぅぅっ!!」

レポーター「影山新総理が今、今…… えぇい、がんばれ! がんばってくれ! この国の、いや、人々の明日のために! 白いロボットよ、がんばれ! 悪の総理大臣を、その手で倒してくれ!!」

浮矢のゲートロボが串刺しにされ、装甲板が無惨に剥ぎ取られ、内部のゲートエンジンが引きずり出されてゆく。

浮矢「お父ちゃんのエンジンが!?」

浮矢は締め上げられているゲートロボの頭部を切り離し、かろうじて拘束から逃れる。

影山「往生際が悪い!」

浮矢家では、妹の朗美、母の和子がテレビ中継に見入っている。
頭部を失ったゲートロボの操縦席に、浮矢の姿が露わとなっている。

朗美「お兄ちゃん!? そ、そんなことない、違うよね!? あれ、お兄ちゃんじゃないよね!?」
和子「朗美。あんた、この世でたった1人のお兄ちゃんの顔を忘れたのかい?」
朗美「……お兄ちゃん、がんばれ! がんばれ、お兄ちゃあん!!」

ほとんど全壊の浮矢のゲートロボから、ゲートエンジンが引きずり出され、地面に転がる。

浮矢「くそぉ、まだだ!」

浮矢がゲートロボから飛び降り、ゲートエンジンに駆け寄る。

浮矢「こんなもんか、お父ちゃん!? あんたが命まで賭けたゲートエンジンは、この程度かぁ!? 動けよ、頼むよ、俺に力を貸してくれぇっ!!」
影山「フン…… 恵!」

恵が隣にルリ子を従え、姿を現す。

浮矢「ルリッペ!」
恵「さぁ、憎むの…… あなたの本当の実力を認めず、蔑んだ奴らを……」
浮矢「……ルリッペ?」
影山「フフ、どんな人間でも、心の奥底に憎しみと怨みを抱え込んでいる」
浮矢「まさか!?」
影山「見るがいい! 内なる憎悪によって呼び覚まされた生命のゲートのマイナス位相『殺戮のゲート』の力を!!」
浮矢「やめろ! やめるんだ、ルリッペ!」
ルリ子「違う…… 私は『鼻垂れのルリッペ』じゃない…… 誰も、私の本当の実力を知らない…… だから、だから……」
浮矢「そんな、ルリッペ!?」
ルリ子「ゲート…… オープン」

ルリ子が黒いゲートを展開する。

かおる「生沢先輩!?」
ジム「あれは!?」
操「ダメ……」
ジュン「どうしたの、操!?」
操「それを開いては、ダメ!」

ルリ子「私をルリッペと呼ぶ人は…… みんな消えるの。私を鼻垂れと罵った…… あなたも!」

ルリ子の手に、黒い弓矢が現れる。

浮矢「ルリッペ!?」
ルリ子「違う、ルリッペじゃない…… 私は……」
浮矢「ルリッペの、バカ野郎!!」
ルリ子「……!」
浮矢「本当に嫌いな子に、大事な宝物を渡すわけ、ないじゃないか! 誰が何と言おうと、ルリッペはルリッペだ! 子供の頃に一緒に遊んだ、俺の大好きな鼻垂れのルリッペだぁ!」

浮矢目がけ、一直線に黒い矢が放たれる。思わず浮矢は目を閉じる。
だが命中の寸前、矢が消滅し、黄金の光があふれる。

浮矢「生命の光!?」
ルリ子「浮矢……くん……」

倒れるルリ子。

浮矢「ルリッペ!? ルリッペ、ルリッペ!」
影山「これは、どういうことだ!? 恵!」
恵「負けだわ。あの女の唯一の憎しみ、その楔が抜き取られたの……」
影山「何をブツブツ言っている!?」
恵「憎しみの相手が、その本当の気持ちを口にすることで……」
影山「はっきり説明しろ! 何のために、お前のような薄気味悪い女を飼っていたと思っているんだ!?」
恵「……! 悔しい。私、最後の最後で…… 悔しい。やっぱり私は、負けた……」
影山「恵……!?」
浮矢「影山……影山零二! 人の心を弄ぶ、お前だけは絶対に許さん!!」
影山「フン!」

浮矢の手に木刀が現れ、彼の意思に呼応するように、地面に転がったゲートエンジンが轟音を上げる。

浮矢「ゲ──トォォ・オ──プン!!」

疾風のゲートを自ら纏い、木刀を携えた浮矢が突撃。

浮矢「ウルトラァ・旋風突きぃ──っっ!! うぅおおぉぉ──っっ!!」

漆黒のゲートロボが繰り出す。その掌を目がけ、浮矢の木刀が突き刺さる。
凄まじいエネルギーの応酬の末、木刀の切っ先がゲートロボの腕に食い込んでゆく。

影山「バカな!? こいつのどこに、これだけの力がぁ!?」
浮矢「影山ああぁぁ──っっ!! ううぅぅおおぉぉ──っっ!!」

浮矢の木刀がゲートロボの腕を裂き、胸を貫く。

影山「う、浮矢ぁぁ──っっ!!」
浮矢「影山ああぁぁ──っっ!!」

ゲート能力が際限なく膨れ上がり、巨大な光球が漆黒のゲートロボを包み込む。
溢れるエネルギーの奔流の中、浮矢が影山の胸倉をつかみ上げる。

浮矢「影山、なぜだ!? なぜ!? 本当のお前は、こんな奴じゃないはずだ! 影山…… 影山!!」

悲しげな微笑みを浮かべる影山。
ゲートロボが粉々に砕ける中、影山が浮矢を蹴り飛ばす。

浮矢が膨れ上がるエネルギーの外へ放り出される。
影山が、ゲートロボが、インベーダーたちが、次々に光球の中へと姿を消してゆく。


浮矢家。思わず朗美が外へ飛び出す。

朗美「お兄ちゃん!」
和子「朗美!?」

雪乃がいる。

朗美「雪乃ちゃん! お兄ちゃんが、お兄ちゃんが……」
雪乃「大丈夫…… だから泣かないで、朗美……」

朗美が泣きながら、雪乃の胸に飛び込む。


すべてのインベーダーを飲み込んだ光球が消え、激戦がウソのように静まり返った議事堂前。
意識を取り戻したルリ子に、浮矢が傷ついた体を引きずりつつ、歩み寄る。

ルリ子「浮矢くん……」
浮矢「ルリッペ…… やっと、見……つけ……」
ルリ子「浮矢くん!?」

力尽きて倒れる浮矢を、とっさにルリ子が支える。

ルリ子「浮矢くん、浮矢くん!?」
番長「浮矢!」
かおる「先輩!」
フェイ「タイチョさん!」
メガネ「先輩──!」
浮矢「ごめんな、ルリッペ…… もっと…… 早く…… 見つけて…… あげられな……くて……」
ルリ子「浮矢くぅん! 浮矢くぅん!! 浮矢くん…… 好きなの、大好きなの! だから…… だから、死んじゃいやだああぁぁ──っっ!!」


雪乃「うちなびく 春来たるらし 山の間の 遠きこのえの 先ゆく見れば──」


何日かが過ぎ── 病院の屋上。

麗子「なぁんで、目を覚まさないんでしょうかぁ〜?」
フェイ「センセさんは、もうダイジョブだって」
かおる「生沢先輩、いつもみたいにバシーンってやって、起こしちゃいましょう!」
ルリ子「え!? そ、そんなこと……」
メガネ「ここは、あっしの発明した、この全自動起床マシンで……」
番長「そりゃ、ただのデカい目覚まし時計では?」
麗子「こういうときはおとぎ話ではぁ、お姫様が王子様に口づけをするんですぅ〜」
フェイ「それ逆、違うカ?」
かおる「それやりましょう、生沢先輩! 女は度胸です!」
番長「なんと羨ましいぞえ!」
メガネ「ヤンス〜!」
フェイ「何、赤くなってるカ? かおる」
かおる「や、やるっきゃないですよ!」
ルリ子「えぇっ!?」

照れ隠しのように、ルリ子が慌てて一同に背を向ける。

ルリ子「そ、そんなこと、できるわけ…… あ!?」

いつの間にか、浮矢が一同のもとにやって来ている。
ルリ子が慌てていた弾みで、勢いあまり、2人の唇がスローモーションで近づいてゆく──


夕日に照らされた岬。

浮矢「あのさぁ、ルリ……」
ルリ子「ルリッペでいいわよ。何?」
浮矢「う、うーん…… いや、何でも」
ルリ子「変なの」
浮矢「ハハッ!」
ルリ子「ねぇ、知ってる? この間、閉幕した万博の記念に埋めたタイムカプセル」
浮矢「あぁ。確か、未来になったら地面から掘り起こすって奴か?」
ルリ子「あれね、一つ目のカプセルを開くの、西暦2000年の話なんですって」
浮矢「へぇ、30年も先の話かぁ〜」
ルリ子「……その頃、私たち……」
浮矢「え?」
ルリ子「あ…… あ、うぅん、その頃いったい、どんな世の中になってるのかなぁって」
浮矢「30年後か。そうだなぁ、きっと……」
ルリ子「きっと?」

岬に押し寄せた大波の音と、空を行くジェット機の轟音で、2人の声がかき消される……。


おわり
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