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キカイダー01 THE ANIMATIONの最終回


【解説】
本作は漫画「人造人間キカイダー」の後半部分をアニメ化した作品ですが、特撮TV作品として知られている「キカイダー01」は、原作漫画のキャラクターのみを流用した全くの別作品です。
そのため、ここで描かれている最終回は、原作に沿って制作されたエピソードであり、特撮版「01」とは全く異なるものとなっています。


最終兵器アーマゲドン・ゴッドの内部にギルハカイダーが帰還し、シャドウナイトを始めダークの部下たちが迎える。
ギルの手には、アキラの眠るカプセルが抱かれている。

ギル「よくぞここまで再建してくれた。礼を言うぞ」
シャドウ「ありがたき幸せ。最終兵器プロジェクトの完成こそ、我らの悲願……すべてはギル様の為に! ギル様、機は熟しました。今こそ我らダークによる世界支配を!」
ギル「フフフ……フハハハハハァッ!」


一方のジローたち。
未明の草原。リエコの墓が作られている。

ミエ子「私とリエコ……」
ジロー「どうしてもっと早く気づかなかったんだろう。ギルは、リエコさんも光明寺博士の設計だと言っていた」
ミエ子「私が彼女に感じていたものは……」
ジロー「僕が今、君に感じているのと同じもの……」
ミエ子「私たちは……兄弟?」
ジロー「君と僕たちも……」
イチロー「ジロー! お前こいつを信用するのかぁ!? こいつは奴らの手先……」
ジロー「兄さん!」
イチロー「あぁ?」
ジロー「……墓の前だよ」


夜が明ける。

丘の上に腰掛け、ミエ子が空を見つめる。

ミエ子「あんまりいい趣味とは言えないわね。女の子を追い掛け回すなんて」

木陰に隠れていた零が、姿を現す。

ミエ子「見張りってわけ? 疑われるのも無理ないけど、私だってわからないのよ。これからどうすればいいか……考えてたの。私たちは一体何なのか。私たちはただの機械、でもリエコの悲しみは私の胸に残っている。私たちに心なんてあるはずないのに……」
零「それは、あくまでメカニカルな作用に過ぎない……」
ミエ子「え……?」
零「似たような回路が干渉し、プログラムの一部が偶然リライトされた。それだけのことだ」
ミエ子「私のこの胸に残っているリエコの悲しみは……?」
零「ただのプログラム。感傷的になるのは、意味がない」
ミエ子「ただの……プログラム?」
零「ただのプログラムだから……それに従えばいい」
ミエ子「……!」


街中。

地上を行く人々を突如、巨大な影が覆う。
上空を見上げると、土偶を思わせる巨大なメカ──遂にアーマゲドン・ゴッドが出撃したのだ。

人々「わぁ!?」「なんだ、ありゃあ!?」

アーマゲドンの攻撃が人々を吹き飛ばし、次々に建築物を砕く。
報道ヘリコプターが飛ぶ。

アナウンサー「一体あれは何なのでしょうか!? 何が起こっているのでしょう!? 突如巻き起こった惨劇に、我々は為す術もないのでしょうか!? 富士樹海近郊より現れた……」

シャドウ「うるさい蝿め……ESE砲発射!」

機械のエネルギーを停止させるESE砲により、ヘリコプターが制御を失い、街中へと墜落。
続いて自衛隊の戦闘機が出撃。ミサイルを放つが、ESE砲によりミサイルもあらぬ方向へと飛んでゆく。
そして戦闘機自体にもESE砲が浴びせられる。

パイロット「うわぁ、何だ!? エンジンが……?」

戦闘機が次々に墜落。爆炎が上がり、機体の破片が弾丸のごとく地上の人々へと降り注ぐ。

シャドウ「順調な仕上がりです、ギル様。初号機では、ESE砲のエネルギー停止作用すら不安定でしたが……」
ギル「これくらいで感心するな。アーマゲドン・ゴッドの力を楽しむのは、これからだ」

アーマゲドン・ゴッド内の動力炉。薬液の満ちたカプセルの中で、アキラが眠り続ける。
アーマゲドンの両眼から閃光が轟く。
次の瞬間──爆音すら轟くことなく、一瞬にして街が壊滅。大地は巨大なクレーターと化している。

兵士「出力安定。アーマゲドンX、成功です!」
ギル「フフフ……」

地上では人々が逃げ惑い、道路は避難しようとする無数の車が渋滞を成す。
しかし、そのすべてがアーマゲドンの放つ閃光の中へと掻き消えてゆく。

シャドウ「もはや抵抗するものはありません。このまま都心へ向かいます」

そのとき──
どこからか閃いた強力なビームが、アーマゲドンの胴体に炸裂。

シャドウ「何事だぁ!?」
ギル「フン……!」


照りつける太陽の下、ビルの屋上でゼロワンがアーマゲドンを睨みつける。
頭部の太陽電池が太陽光を浴びて輝く。

ゼロワン「クゥ〜ッ! 抜群の天気だぜぇ! もう一発食らわしてやらぁ!」

ゼロワンの攻撃より先にキカイダーが躍り出、アーマゲドンの脚にビームを放つ。


兵士「推力低下、着陸します!」
シャドウ「おのれぇ……キカイダー!」

同じくビルの上にダブルオー、ビジンダー。

キカイダー「兄さん、あの中にはアキラくんがいるんだ。まずはあいつの足を止めるのが先決だよ」
ゼロワン「わかってらぁい!」
キカイダー「アキラくんは……?」
ビジンダー「えぇ、いるわ! あいつの心臓部に、何かエネルギーが集中してる」
ゼロワン「でも、どうやって助け出すってんだぁ? サンライズ・ビームの直撃を食らっても、大して効いてないみたいだぜぇ」

アーマゲドンの胴から発射口が開き、キカイダーたちを迎え撃つ為、敵メカが次々に出撃する。

ゼロワン「おいでなすったぜぇ!」
キカイダー「みんな、あの発射口から侵入するんだ!」
ゼロワン「あそこかぁ……そうと決まりゃあ!」

イの一番に飛び立つゼロワン。

キカイダー「兄さん! ……みんな、行くぞ!」

ゼロワンが敵メカの1体に馬乗りになり、戦いを楽しむかのように他のメカを撃ち落してゆく。
彼を追うキカイダーたち。
ビジンダー、ダブルオーも敵メカを次々に倒してゆく。

ゼロワン「ヒャッホォ──ッ! ハハァッ!」
キカイダー「兄さん! 無茶するなぁ!」
ゼロワン「ははっ……ちゃんと飛びやがれ!」

敵メカがゼロワンの乗った敵メカを撃墜。

キカイダー「兄さぁん!?」

ゼロワンがビルに叩きつけられる。

キカイダー「兄さん……」
ゼロワン「あっちゃあ……仲間ごとかよ、参るぜ」

ビジンダー「キリがないわ……零!」
ダブルオー「ブロー・アーップ!!」

ブローアップ形態に変形したダブルオーとビジンダーが、連携攻撃で敵メカを一掃する。

ビジンダー「今だわっ!!」
キカイダー「待つんだ、零! ビジンダー!」
シャドウ「馬鹿め!」

ダブルオーとビジンダーがアーマゲドンへ突撃。
だがESE砲が放たれ、2人ともその直撃を浴びて制御を失い、アーマゲドンの中へ取り込まれてしまう。
ゼロワンの救出に向かっていたキカイダーが、呆然とその様子を見上げる。

キカイダー「零……ビジンダー……!」
ゼロワン「チッ……くそっ! こりゃ『いらっしゃいませ』ってわけにゃ、いかねぇみてぇだな……ジロー、お前はまっすぐ射出口に向かえ」
キカイダー「兄さん、もう少し回復を待つんだ。無闇に突っ込んでも、零たちの二の舞になるだけだ!」
ゼロワン「ゴチャゴチャ言ってる場合じゃねぇだろ! 助け出すのが、3人になっちまったんだからなぁ」
キカイダー「無事だといいけど……」
ゼロワン「んなこと知るかぁ! 行くぞっ!」

2人が飛び立つ。

ゼロワン「うおぉぉ──りゃあっ!」
シャドウ「捕えろ! 破壊しても構わん!」

再びESE砲が放たれる。

ゼロワン「そう何度も同じ手に……!」

ESE砲をかわしつつ、ゼロワンが至近距離からサンライズ・ビームをアーマゲドンに叩きつける。もうもうと爆煙が上がる。

ゼロワン「へへっ! これだけ近くから食らわしゃあ、ただじゃ……あぁ!?」

爆煙がやむ──ゼロワンの油断を突き、ESE砲が放たれる。

キカイダー「電磁……エ──ンドッ!!」

キカイダーの渾身の電磁エンドが、アーマゲドンの射出口の装甲を裂く。

シャドウ「むおぉ!?」
兵士「キカイダーがB13ブロックに侵入しました!」
シャドウ「申し訳ありません、ギル様……直ちに、処理致します」
ギル「面白い」
シャドウ「はっ?」
ギル「案内してやれ。アキラのところまで。楽しいショーを見せてもらおう。例の物は?」
シャドウ「はっ、既に」
ギル「フフフ……」


ESE砲を浴びてしまったゼロワンもまた、アーマゲドン内部へ吸い込まれてしまう。


アーマゲドン内部を進むキカイダー。

キカイダー「おかしい、誰とも出くわさないなんて……まるで『入って来い』と言っているみたいだ。でも……進むしかない!」

やがて、キカイダーが動力室に辿り着く。
上方に巨大な球形カプセル。薬液の満ちる中、アキラが眠っている。

キカイダー「アキラくん……! これは一体……!?」

背後で扉が閉まる。
振り向くと、暗がりの中からゼロワンが姿を現す。

キカイダー「兄さん……! 無事だったのか!」

ギル「フフフ……ハハハハハ! ようこそキカイダー」

部屋の上方にギルハカイダーとシャドウナイトが現れる。

ギル「無駄だよキカイダー。アキラは既に覚醒し、この最終兵器アーマゲドン・ゴッドを制御している」
キカイダー「覚醒……制御? どういうことだ!?」
ギル「生まれつき微弱なものだったアキラの脳波が、お前との出会いで急速に覚醒したのだ。最良のパーツとなって、アキラは我が手に戻ってきた……!」
キカイダー「パーツだと……? アキラ君は道具じゃない!」
ギル「パーツだよ。この為に作られた、な。お前も見ただろう? あの破壊された都市を、逃げ惑う人間どもを。あれば全て、アキラの恐怖と不安の感情が生み出したものだ。お前が与えてくれたのだよ。人間らしい、破壊を望む感情をな。アキラの感じる恐怖と不安は、強力な脳波となってアーマゲドン・ゴッドを制御する……お前にも礼を言わねばな、キカイダー。ハハハハハ!」
キカイダー「……ギルゥッッ!!」

ギル目掛けて飛び掛るキカイダー。
しかしその前にゼロワンが立ちふさがり、いきなりキカイダーを殴りつける。

キカイダー「うぅっ……兄さん……な、何を……するんだ!?」

尚もゼロワンは無言のまま、キカイダーの首を締め上げ、床に叩きつける。

キカイダー「に、兄さん……一体どうしたんだ!?」

困惑するキカイダーに、ゼロワンの攻撃が炸裂し続ける。
そこへダブルオーも現れる。

キカイダー「れ、零……兄さん……一体!?」
ギル「ハハハハ! キカイダー、こやつらは私の命令に従っているだけだ」
キカイダー「お前の……? なぜだ!?」
ギル「フフフ、すぐにわかる。お前もそんな疑問を抱かずとも済むようにしてやる」
キカイダー「クッ……兄さんたちに、何を!?」
ギル「やれ。壊さぬ程度にな」

ギルとシャドウナイトの姿が消える。

キカイダー「待てっ!! ギルゥ!!」

ギルを追おうとするキカイダーに、ゼロワンとダブルオーの拳、銃弾が浴びせられる。

キカイダー「やめるんだ……零! 兄さん!」

2人の兄弟が相手では、キカイダーも反撃のしようがない。

カプセルの中のアキラが、うっすらと目を開ける。
その視界に、キカイダーたち3人の姿が映る。

キカイダー「兄さん……零……どうすればいいんだ……?」

ゼロワンとダブルオーの連携による必殺攻撃の前に、遂にキカイダーが倒れる。
その壮絶な光景が、アキラの目に焼き付けられる──


キカイダーが意識を取り戻す。
いつしか彼は、薬液の満ちた棺のような容器に入れられ、全身には無数のコードが接続されている。
その傍らにはギルハカイダーが。

ギル「お目覚めのようだな、キカイダー。気分はどうだね?」
キカイダー「ギ……ギル……」

キカイダーが腕を動かそうとするが、火花が飛び散る。体の自由がきかないようである。

ギル「慌てるな、キカイダー。すぐに開けてやる。お前に取り付けた“服従回路イエッサー”のスイッチを入れた後でな」
キカイダー「イエッサー……?」
ギル「私の命令に従ってもらうための服従回路だよ。ロボットとして従順にな」
キカイダー「馬鹿な……!」
ギル「お前の仲間にも取り付けさせてもらったよ。結果は見ての通りだ」
キカイダー「ギ、ギ……ギル……貴様ぁっ!」
ギル「だが、あいにくと良心回路を取り外すことができなくてな。簡単に取り外せぬよう、二重三重のガードがされている」
キカイダー「……!」
ギル「安心するのは早いぞ、キカイダー。服従回路が完全に作動すれば、不完全な良心回路の影響など、ゼロに等しくなるはず」
キカイダー「待て……ギル……やめろ!」

ビジンダーが現れる。

キカイダー「ビジンダー! ……はっ、まさか……君も!?」
ビジンダー「ギル様、スーパーノヴァのスタンバイが完了しました」
ギル「そうか、わかった。この国の首都が消滅するところをお前にも見せたかったが、仕方あるまい……さらば、キカイダー! 我が忠実なる下僕として、また会おう」

遂に服従回路のスイッチが入る。

キカイダー「うわああぁぁ──っっ!!」
ギル「奴をしばらく、見張っていろ」
ビジンダー「はい、ギル様……」


ギルがキカイダーのもとを去り、司令室に戻る。

シャドウ「どうした、なぜ動かない!?」
兵士「アキラ様の脳波が著しく低下しています。アーマゲドンの制御による負荷が、原因と思われます」
シャドウ「このままではアキラ様の精神に影響を及ぼす恐れが……」
ギル「スーパーノヴァはどうなっている?」
シャドウ「エネルギーの充填はほぼ完了しています。しかしこの状態では、80%の出力しか望めないかと……」
ギル「むぅ……構わん! 発射しろ!」
シャドウ「はっ! 発射準備!」
兵士「発射します!」

動力室。
カプセル内のアキラの口が、苦痛に歪む。
カプセルに亀裂が走り、薬液と煙が吹き出す。

司令室。スクリーンに「EMERGENCY」の文字が表示され、警報が響く。

シャドウ「どうした!?」
兵士「動力室に異常発生! 緊急停止しました! 映像を出します!」

動力室のアキラの異常事態が映し出される。

シャドウ「ギル様……このままでは危険です。ひとまず、アキラ様をシステムから切り離します」
ギル「うむ……修理を急がせろ!」
シャドウ「はっ! システム停止! アキラ様をこちらへお連れしろ」
ギル「乳母ロボット……いや、ビジンダーを呼べ!」


囚われの身のキカイダーを見張っているビジンダー。

兵士「ビジンダー、ただちにコントロール・ブリッジへ!」
ビジンダー「はっ」
キカイダー「ビジンダー……ここから出してくれ、ビジンダー」
ビジンダー「ギル様の命令にないことは出来ないわ」
キカイダー「プロフェッサー・ギルの力になりたいんだ……何を迷うことがある?」
ビジンダー「でも、それは……」
キカイダー「信用しろ……開けるんだ、ビジンダー」


ギルハカイダーらのもとにビジンダーが現れる。

ギル「ビジンダー、アキラを落ち着かせるのだ。お前とリエコは同じ設計図をもとに作られた、言わば姉妹ロボット……お前にならできるはず」

アキラを収めたカプセルが、ビジンダーの手に託される。

ギル「任せたぞ、ビジンダー」
ビジンダー「アキラ……」


囚われの身から解放されたキカイダーが、部屋を去る。
その背後には、衛兵ロボットの残骸が無数に転がっている。


ギル「どうした、ビジンダー!?」
ビジンダー「私の……私は……私は……!」
ギル「何!?」

ビジンダーの姿にリエコの姿がだぶる。
やがてビジンダーが、アキラを抱いたまま背を向け、立ち去ろうとする。

シャドウ「待て! どこへ行く、ビジンダー! 止まれ!」


もう泣かないで、アキラ君。
お姉ちゃんがお話ししてあげる……

そう、ピノキオのお話……


動力室の壁を裂き、キカイダーが現れる。
アキラが収められていたカプセルは、既にも抜けの空。

キカイダー「アキラ君……」


アキラを抱いて佇むビジンダーに、シャドウナイトが銃口を向ける。

シャドウ「おのれぇ……!」
ギル「待て! 撃つな! アキラが……」

銃声──

シャドウ「ぐぉぉ……ギ、ギル様……なぜ……?」

彼がビジンダーを撃つと同時に、ギルがハカイダーショットでシャドウナイトを撃っていたのだ。

シャドウ「ギ……ギル……」

シャドウナイトが倒れる。
銃撃でアーマゲドンの壁面に大穴が開いている。ビジンダーとアキラの姿はない。機外へ吹き飛ばされたようである。

ギル「アキラ!?」

そのとき── 突如、アーマゲドンの左胸が爆発を起こす。
そして司令室にいた兵たちが、次々に悲鳴と共に残骸となって倒れる。

ギル「何だ!?」

ゆっくりと足音を響かせ、キカイダーが現れる。

キカイダー「動力室は破壊したよ……お前の野望は潰えたんだ」
ギル「き、貴様キカイダー……! どうやって!?」
キカイダー「ビジンダーを騙して脱出したんだ」
ギル「騙しただとぉ? 馬鹿な、お前にそんなことが……」
キカイダー「そうだ、ギル……もう僕は、嘘をつくことも……」

ギルを守る為、ゼロワンとダブルオーが現れる。

ギル「やれ!! キカイダーを殺せぇ!!」
キカイダー「兄弟を……」

キカイダーの両目から迸った破壊光線が、一瞬にしてゼロワン、ダブルオーをバラバラに砕く。

キカイダー「殺すことも……できる!!」
ギル「あ……あ……!?」

ゼロワンとダブルオーが粉々の残骸と化し、床に散らばる。


地上。
シャドウの銃撃で吹き飛ばされたビジンダーが、ボロボロのままアキラを抱いて地上に転がっている。


キカイダー「そうだ、ギル……お前が組み込んだ服従回路イエッサーだ……確かにこの通り作動している……お前の望んだ“悪”の心が!」

ハカイダーショットの銃口がキカイダーを狙う。
引金が引かれる寸前、ギルハカイダーの腕がちぎれ飛ぶ。

キカイダー「だけど……」

続けざまに、キカイダーの目からほとばしる破壊光線の前に、ギルの両足が砕け散る。
退路を失ったギルに、キカイダーが迫る。

キカイダー「だけど、その悪の心が僕を強くした……『そんなものに負けちゃいけない』という心が、僕を強くした!!」
ギル「と、止まれ……止まれ、キカイダー……命令だ!! と、止まれ! キカイダー、止まれぇ──っ!!」」

キカイダーの両手が、ギルの頭部を掴み上げる。

ギル「な……何故だ……?」


地上。 アキラを抱いたまま、必死にビジンダーが地を這う。


うれしそうに、ピノキオはおじいさんに言いました

「ぼくはもう木の人形なんかじゃないんだ」


アーマゲドン内部の各所で爆発が起こる。
キカイダーの両手が、容赦なくギルの頭を締め上げ、ギルの頭部に亀裂が走る。
その姿が次第に、ジローの姿へと戻ってゆく。


力尽きたビジンダーを、風天和尚が見つける。

風天「むっ……これは……!?」


アーマゲドンの中。

ジロー「僕は……僕はこれで……人間と同じになった!」

その瞳からは、涙があふれ出ている。

ジロー「だけど……それと引き換えに、僕は……永久に……」
ギル「う……うぅっ……」


ジロー「悪と……良心の……心の戦いに……苦しめられるだろう……」


ギルの頭部が粉々に砕け散る。

そして、アーマゲドン・ゴッドが崩壊──


アキラが目を覚ます。
顔にポタポタと水滴。
見知らぬ少女が、濡れタオルをアキラの顔に乗せようとしている。
傍らには風天和尚。

少女「あ……起きた! お爺ちゃん、目ぇ覚ましたよ!」
風天「どうやら、もう大丈夫のようじゃな」
少女「ね、アキラ君っていうんでしょ? 私ね、リエコ!」
アキラ「リエ……コ……?」
少女「うん!」
アキラ「リエ……コ……」

アーマゲドンの猛攻により戦場跡のように崩壊した街を、風天が見つめる。

少女「お爺ちゃん?」


アーマゲドンの残骸の片隅、ボロボロに砕けたギルハカイダーが転がっている。


どこかの廃墟の片隅。
ボロボロになったビジンダーの手に、ピノキオの童話。



コウシテ ピノキオハ 人間ニナリマシタ

メデタシ メデタシ



赤々と夕日の照らす中、ジローがどこかへと去ってゆく。

その瞳に、大粒の涙を携えて──



だけど──

ピノキオは人間になって本当に
幸せになれたのでしょうか……?



(終)
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