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第50話 星に願いを

エウレカ「私には大切なものがある。リンク、メーテル、モーリス、そしてレントン。みんな大好き。愛してる。私の大切なもの。私の家族。何もなかった私に色んなことを教えてくれた。何もなかった私を全部受け入れてくれた。私を私でいさせてくれる。私が大好きで、そして一番守りたいもの、リンクと一緒にいたい。メーテルと一緒にいたい。モーリスと一緒にいたい。そしてレントンと。だけどそう願うことで私の大切なものが失われてしまうなら、そう願うことでみんなの住む星がなくなってしまうのなら、私は願うのをやめよう。でも許されるのなら、もう一度みんなに会いたい、会いたい、会いたいよ、レントン・・・」指令クラスターに変わりつつあるエウレカの姿

ユルゲンス「ここにいたのか」
ホランド「ん?」
ユルゲンス「いいのか、こんなところで油売って」
ホランド「LFOの無いLFOライダーなんて陸に揚がった魚だからな」
ユルゲンス「そうか」
ホランド「すまないな、スーパーイズモの燃料をいただいちまって」
ユルゲンス「気にするな。そのときできる最大限のことをする。軍人なんでな」
ホランド「ありがとう」
ユルゲンスが煙草に火をつける
ホランド「その手はどうした?」
ユルゲンス「ああこれか、デューイの子供達にやられてな」

アゲハ隊の少年「大佐は言ったんだ、生き残って新世界秩序の礎となれって!お前らとは違う、大佐は優しくしてくれた!こんな汚い体の僕達を大佐はきれいだって言ってくれたんだ!」

ユルゲンス「あの少年達はワルサワの難民キャンプで拾ったんだそうだ」
ホランド「民族浄化の落とし子か・・・実感ねえな・・・」
ユルゲンス「ニュースが流れなければそんな事実が無いものと考えるのが人間だ」
ホランド「耳が痛いな・・・」
ユルゲンス「世界を呪って生まれてきた、望まれずに生まれてきたあの子達を救ったのは同じく世界を呪った男だったというわけだ」
ホランド「兄さんは何故そこまでして世界を呪ったんだろうか・・・」
ユルゲンス「さあな、そんなことはセラピストに聞いてくれ」
ホランド「だな」
ユルゲンス「あの子達を引き取ろうと思うんだ。こんな呪われるべき世界を創り出してしまった大人のせめてもの償いだよ・・・」
ホランド「償いか・・・ったく、えらい借金を残してくれたもんだ、デューイの野郎はよ」
ユルゲンス「個人で背負えるものとは思えんがな」
ホランド「背負わなきゃなんねえんだよ。背負ってやるさ、残りの人生をかけてでもさ・・・」
ハップ「ホランド、お客さんだ」
ミーシャ「エウレカ達の首輪は何らかの形でデューイ達の心肺機能と直結されていた」
グレッグ「恐らくCFSの技術を転用したトラパーの逆転因子システムだよ。これを自らの死が引き金になるよう仕込んでいたんだ」
ストナー「大佐は指令クラスターが破壊されていてもすぐにはクダンの限界が引き起こされないのを読んでいた」
ミーシャ「パニックが起こって物理法則が無視される瞬間ができたとしてもそれはすぐに収まる」
グレッグ「スカブコーラルも生き延びたいからね」
アネモネ「そこで大佐はニルヴァーシュに乗るエウレカかジエンドに乗る私を代理の指令クラスターに仕立て上げようとした」
ドミニク「そして二人の首輪の中にあらかじめ組み込んでおいた磁界プログラムをスカブに注入する」
ユルゲンス「我々は奴の掌の上で踊らされていたわけか」
ハップ「くそっ、なんて奴だ!」
ホランド「だが待て。それが未だにクダンの限界が起こっている理由にはならないぞ」
アネモネ「エウレカのお陰だと思う」
ホランド「何」
アネモネ「代理の指令クラスターになるのをエウレカが拒んでるんだと思う。だって・・・」
ホランド「この魂魄の輝きなのか」
ドミニク「そうです。この輝きの周期とテンシャン山脈上空に存在している球体からのサインの偏光周期が一致しています」
ホランド「つまりエウレカは・・・」
アネモネ「うん、まだ生きている」
意気消沈としたモーリス、メーテル、リンクそしてレントン
タルホが部屋に入って来る
モーリス・メーテル・リンク「タルホ!」
タルホ「お帰り。あんた達よく戻ってこれたわね」

なかなか立とうとしないレントン。ホランドが部屋に入って来る。
タルホ「ホランド」
ホランド「立て。立てっつてんだろが!」
レントン「ホランド、俺何もできなかった。何もできなかったんだよ!」
ホランドがレントンの襟元を掴む
タルホ「ちょっと、ホランド!」
レントン「殴ってください。俺を殴ってください。俺は父さんも姉さんも助けられなかった。エウレカのことを守ってやれなかった。俺、何もできないただのガキンチョだった。俺はでかい口ばかり叩く最低の人間だったんだ・・・」
ホランド「気が済んだか?」
レントン「え!」
ホランド「だったらすぐに準備を始めろ。行くぞ」
レントン「行くぞってどこに?」
ホランド「決まってんだろ。エウレカのところにだ」

ホランド「いいか、俺達の目的はただ一つ。指令クラスターとなったエウレカと接触し、再度人類とスカブコーラルとの調停を行うことだ。ただし問題がある。エウレカから送られて来る信号が次第に小さくなってきている。俺達がたどり着くまでエウレカが意識を保っていられるよう呼び続けることだ。それはお前にしかできないことだ」
レントンとホランドが操縦室へ入る
ホランド「用意はできたか?」
タルホ「こっちは全部終わってる。いつでも発進できるわ。レントン、いい男になったじゃない!」
レントン「はい!」
ホランド「いいか、こいつは月光号のトラパーレーダーに反応している干渉波を演算装置を介して表示しているものだ。見ろ。このサインを利用して逆にこちらから通信を試みる。恐らく他でもないエウレカの家族であるお前達なら応えてくれるはずだ」
レントン「で、ホランド、エウレカのいるところまでたどり着けたら俺達は何をしたらいいの?」
ホランド「あ、悪い、何も考えてねえ」
レントン「だと思った」
ホランド「え?」
レントン「『ねだるな。勝ち取れ。さすれば与えられん』そうでしょ、ホランド」
ホランド「そいつは俺に向けられた言葉じゃねえ。きっと俺を通してお前に送られたんだよ。アドロック・サーストンからレントン・サーストンにな」
レントン「うん!」
再び飛び立つ月光号

アネモネ「いいなあ、エウレカは、あんなにいっぱい命を懸けてくれる人がいて」
ユルゲンス「わがまま言うな。お前にも一人いるだろ、ドミニクという男が」
ドミニク「か、艦長!」
アネモネ「そうだよね。私にはドミニクがいるもんね。エウレカの彼よりずっと二枚目の」
ドミニク「ま、今回ばかりはヒーローの座を譲ってやるか、レントン・サーストンに」

ハップ「接近警報!最小空間は250mしかないぞ!」
ホランド「構うな!ドギー、行け!」
ムーンドギー「了解!月光号、水平飛行に戻ります」ハップ「弾道飛行の可能ポイントを算出した。第999コリドーを使えば4時間で到達できる。偏光ポイントまでなら6時間だ」
ホランド「6時間か、微妙だな・・・」
タルホ「あの子持ってくれればいいけど・・・」
ウォズ「いかん!抗体コーラリアン確認!0100と0140第999コリドー!」
タルホ「何ですって?!」
抗体コーラリアンが月光号を取り囲む
タルホ「そんな、最短コースに・・・」
ホランド「迷ってる暇はねえ!」
タルホ「分かってる」
タルホ「コンバットフォーメーション発令!主砲及びAAMを全射後、ブーストを使って中央突破する!」
乗組員「了解!」
月光号が砲撃を開始するが抗体コーラリアンが反撃を仕掛ける
ハップ「右舷後方に直撃!」
ジョブス「右ブースター圧力低下!だめだ!このままじゃ第1宇宙速度まで持って行けない!」
レントン「俺も戦う!」
ホランド「心配するな。戦闘は俺達に任せろ」
レントン「だけど・・・」
ホランド「お前らはエウレカのことだけ考えてればいいんだ。俺達を信じてくれ、レントン」
レントン「ホランド・・・」
モーリスとメーテルとリンクはエウレカを呼び続けている
メーテル「だめだ。全然応えてくれない」
モーリス「泣くなよ。絶対ママは聞いてくれてるよ」
リンク「そうだよ」
レントン「モーリス、これ預かっといてくれ。大切なものだから」
モーリス「どこいくの?」
レントン「ニルヴァーシュのところに行って来る。ニルヴァーシュのアミタドライブを使えば何とかなるかもしれない。もしかしたら動くかも。そうしたら、いいかい、モーリス、お前はお兄さんなんだからメーテルとリンクを守ってやるんだぞ」
モーリス「うん」
レントン「じゃあ、行って来る!」
モーリス「待って。レントン、これ持ってって。お守り」
レントン「これってエウレカの・・・」
モーリス「ニルヴァーシュはママがいないと動かないから」
レントン「ああ」
ケンゴウ「AAM残弾0!」
タルホ「残るはホーミングレーザーのみ・・・ドギー、高速回避もっと速く!」
ムーンドギー「無茶言うな!片肺なんだぞ!」
ホランド「諦めるな!ここでくじけたら一巻の終わりだ。必ずある。活路は必ずある!」
レントン「聞いてよ、ニルヴァーシュ。お前が俺の家に落ちて来てから俺達はずっと旅をしてきたよな。色んな人に出会って、分かれて、俺にはとても大切な思い出だよ。でもこの旅にはいつもエウレカが隣りにいたんだ。ずっと一緒に旅をしてきたんだよ、な。お願いだよ、ニルヴァーシュ、俺はこんな結末は嫌だ!俺の隣りにはエウレカが必要なんだ!」
ニルヴァーシュのアミタドライブが眩い光を発する
タルホ「直撃?!」
ウォズ「違う。この爆発は中からだ!中から!」
タルホ「まさか?!」
ハップ「ホランド、タルホ、上部甲板に未知のトラパー反応!」
ホランド「何?!」
ニルヴァーシュが姿を変え、月光号上部甲板に現れる
ハップ「何だ、こいつは?!」
ホランド「ニルヴァーシュだ」
ハップ「しかしこの形、一体何が?」
モーリス「レントンだよ。僕達には分かるんだ。あれに乗ってママを助けに行ってくれるんだ、レントンが」
ホランド「繋がった。レントン、そこにいたのか?」
レントン「アミタドライブが反応したんだ」
ホランド「何」
レントン「何だかよく分かんないけど、でも大丈夫。行けるよ!」
ホランド「しかしだな・・・」
モーリス「ニルヴァーシュが応えてくれたんだね」
レントン「モーリス・・・」
モーリス「お願い、ママを助けてきて。僕らのママを助けられるのは僕らのパパだけだよ!」
レントン「ああ、分かってる」
ホランド「行って来い、レントン。ほれた女ぐらい奪い取ってきやがれ!男だろ?」
レントン「うん!I can fly!」
ニルヴァーシュが飛び立つ
レントン「ごめん、エウレカ、俺、君の同族を倒さなきゃいけない。でも、それが罪というなら俺はそれを背負ってやる。俺はそれでもエウレカのところに行かなきゃなんないんだ!」
ニルヴァーシュが次々と抗体コーラリアンをなぎ倒すタルホ「行っちゃったね」
ホランド「ああ、行っちまった」
ストナー「ああ、しまった!ったく速えんだよ。最後チャンスだったのに・・・」
ホランド「残念だったな。ま、あいつが帰ってきたらゆっくり・・・」
ストナー「分かってねえな。前々からあいつはフレームに収まらねえ奴だったけどさ、とうとう俺達のフレームを飛び越えていきやがった」
ケンゴウ「戻ってくる訳無かろう。レントンは巣立っていったんだよ、ゲッコーステイトから。見送ってやろうじゃないか、息子の旅立ちを」
ホランド「ったく、勝手に卒業しやがって・・・ちびっこ達はちゃんと預かっとくから、必ずエウレカを取り戻して来るんだぞ、レントン」
レントン「エウレカ、待っててね、エウレカ。今いくから!」
エウレカの居場所へと急ぐレントンとニルヴァーシュ。エウレカの声が聞こえる。
レントン「エウレカ!」
ニルヴァーシュは指令クラスターのの壁を破った。
レントン「バイバイなんて言うなよ。一人で行こうとするなよ、エウレカ」
エウレカ「来てくれた。本当に来てくれた」
レントン「約束しただろ。俺は絶対君を守るって。君とずっと一緒にいるって」
エウレカ「けど私、もう戻れない・・・」
レントン「君がこの星を守るためにコーラリアンでなくなることを選ぶのなら、俺も人間であることをやめる。俺は君と出会えたこの星が大事だし、この星に生きるみんなも大切だ。でも俺はそのために君を失いたくない」
エウレカに髪飾りを付ける。
レントン「似合ってるよ」
エウレカ「レントン・・・」
レントン「一つになろう、エウレカ。君を一人ぼっちになんかさせないよ!」
エウレカ「うん、レントンと一緒なら耐えられる」
口付けを交わすレントンとエウレカ。
世界に光があふれその光は月へと届く。
ニルヴァーシュ「ありがとう」
レントン「ニルヴァーシュ?」
ニルヴァーシュ「あなた達の想いは全て私の魂魄に刻まれた。これでやっと悟りを開くことができる。生きなさい、この星で。共に生きてこの星に生きる全てのものに道を指し示しなさい。希望という名の光をもって」
エウレカ「ニルヴァーシュ・・・」
ニルヴァーシュ「全ての存在がこの地にはとどまれない。半分は私達と共に行くわ。だけどレントン、エウレカ、もしこの星に降りてより良い進化を遂げて二つが一つになれたなら、私達は再びあなた達の前現れる。その日が来るのを信じているわ」
ニルヴァーシュはこの星に生きるコーラリアンと共に消えていった
エウレカ「ありがとう、ニルヴァーシュ」
レントン「ありがとう、みんな」
エウレカ「レントン、帰ろう」
レントン「うん、俺達の星に」

ホランド「こいつは何だ?」
ハップ「まさか、これが・・・」
ゴンジイ「セカンド・サマー・オブ・ラブじゃよ。これからはお主らはこの宇宙で、わしらは別宇宙で人間とスカブコーラルの共生を模索するのじゃ」
ホランド「待て、何を言ってる?」
ゴンジイ「進化の道筋は一つでなくてはならない理由はない。今まで楽しかったぞ。ありがとう」
ホランド「ゴンジイ、まさかお前・・・」
ゴンジイの姿も消えていった。
ホランド「やれやれ、コーラリアンがずっと俺達のことを監視してたとはな」
タルホ「ホランド、それじゃあもしかして・・・」
ホランド「あいつはなっちまったんだよ、あいつの親父以上の本当の英雄にさ・・・」

1年後
モーリス、メーテル、リンクとレントンの祖父アクセルがビッグバーグで食事をとっている。
サーストン家の住民票にはモーリス、メーテル、リンクそしてエウレカの名前がある。
モーリス「おじいちゃん、食べないの?冷めちゃうよ」
アクセル「おお、そうだな。早く食べないと」
モーリス「やっぱり迷惑だった?僕らが来たこと」
アクセル「ビッグバーグを食べる、それが家族の絆を確かめたときのサーストン家の習わしだ。さあ、食べよう。早く食べないと月が昇っちまうからな」
モーリス「うん」
アクセル「わしの家族は皆この町を出て行っちまう。だがな、レントンだけは帰って来てくれた。今のわしには大切なひ孫がおる。それが何よりの証拠だよ」
リンク「おじいちゃん」
メーテル「トラムが来たよ」
アクセル「おお、急ごう」

アクセル「こ、こら、年寄りをそんなに走らせるんじゃ・・・」
月にはレントンとエウレカの名前が刻まれている。
リンク「姉ちゃん、何してるの?」
メーテル「お星様にお願いしてるの。ママとレントンが早く帰って来ますようにって」
リンク「僕も」
モーリス「僕も」
アクセル「早くあのお嬢さんと帰って来い、レントン。子供達が待っておるぞ」

地上へと降り立つ二つの眩い光

おしまい

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