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機甲戦記ドラグナーの最終回


(ナレーション)

掃討作戦は果てることなく続いていた。
壊滅した友軍の支援、ギガノス帝国の復活の幻想を心頼みに、虚しい戦闘が行われていた。

それは宇宙でも同じであった。
敗北を認めることを潔しとせず、愚かな幻想の虜になった将兵たちが、徒労の戦いを続けていた。
そして彼らが最後の頼みとしていたギガノスの機動要塞も、敗北の坂を転げ落ちて行った。

太陽発電衛星の電磁波攻撃によって、機能の崩壊が始まった宇宙機動要塞では、ミン大尉の策略に乗せられたドルチェノフ総統が自ら口を割り、ギルトール元帥暗殺の真犯人は自分であることを告白してしまった。

そして今、宇宙機動要塞はコントロール機能を失い、月面へと突き進んでいた──。



おお宇宙ぞらの凱歌


地球連合軍旗艦。

ダグラス「要塞は完全にコントロールを失ったようですな」
プラート「既に月の引力に引き込まれておる」
ダグラス「激突までの時間は?」
ローズ「51分20秒後です」
プラート「急がにゃいかんなぁ……」

スタンバイ中のドラグナーD2から通信が入る。

タップ「こちらD2。発進準備完了」
ローズ「タップ……」
タップ「わかってるよローズ。ケーンやリンダたちは、必ず見つけて戻るからな!」
ローズ「あのさぁ」

通信が切れてしまう。

ローズ (あなたたちも気をつけてね……ライト……タップ……)

D2、D3が飛び立つ。

「D2、D3、発艦終了しました!」「各ブロックの機密、再確認!」「各艦、第一級戦闘体制のまま待機!」


崩壊しつつある機動要塞の中。
ギガノスの兵士たちがパニックに陥っている。

「消火活動を優先しろ!」「もう駄目だ、手がつけられん!」
「制御コンピューターが完全にいかれちまってるんだ、いつ爆発するかわからん!」
「コンピュータールーム! コンピュータールーム! 誰かいないのか! 応答してくれ!」

アナウンス「当機動要塞は投棄されました。全てのクルーは一刻も早く脱出して下さい」


母アオイの救出に成功したケーンのドラグナーD1が、アオイ、リンダ、ベン軍曹を乗せたカプセルを抱え、出口を目指す。

ベン「これはひどい……」
リンダ「この様子じゃ、ここも長くは持ち堪えられないわね」

リンダの視線が、マイヨのファルゲンたちを見つける。

リンダ「はっ……兄さん……!」
アオイ「どうかなさったの?」
リンダ「い、いえ……何でも……」


機動要塞に到達したD2、D3。
無数の宇宙船が要塞を飛び立ってゆく。

タップ「奴ら、脱出していくぜ」
ライト「急ごう! ルーニー軍曹、聞こえるか! 聞こえたら返事をしてくれ!」
タップ「ライト、どうした?」
ライト「駄目だ。爆発の影響で、電波の状態が悪い」
タップ「参ったな……こうなりゃ、突っ込んで行くしかないな!」


要塞出口に到達したD1。
ベンがカプセルからリンダとアオイを降ろしている。

ベン「さ、急いで下さい。時間がありませんよ」
リンダ「ありがと」
ケーン「伏せろ! メタルアーマーだ!」
ベン「何!?」

爆風の中から現れたのは──D2、D3。

タップ「ケーン!」
ケーン「ライト! タップ!」
ライト「ケーン!」
ケーン「やったぞ! ついにお袋を見つけたぞ! 軍曹とリンダも一緒だ!」
タップ「ハハッ、本当に良かった……俺はお前を信じてたよ……」
ケーン「ありがとう……お前らには何かと迷惑かけたな……」
ライト「いいってことよぉ!」
タップ「慣れてますよ!」
ケーン「ついでと言っちゃ何だが、頼みがある」
ライト「何だ?」
ケーン「お袋たちを旗艦まで送り届けてくれないか。俺は戻って、ドルチェノフを一発ぶっ飛ばしてくる!」
タップ「何だってぇ!?」
ライト「よせケーン! どのみちこの要塞は月に激突する! 放っておいても奴は……」
ケーン「わかってるさ……でも、どうしても奴を一発ぶっ飛ばさねぇと、気が済まねぇんだよ! それに“蒼き鷹”も奴を追ってる」
リンダ「!」
ケーン「このままじゃ要塞と一緒に、リンダの兄貴も吹っ飛ばされちまう!」
ライト「……わかった。行って来いよ、ケーン」
タップ「あぁ、宅配便は引き受けた」
ケーン「ありがとう」
リンダ「ケーン! お願い、私も連れてって!」
ベン「ちゅ、中尉殿! そ、そんな無茶な」
アオイ「そうですよ、あなた。中の様子は見たでしょう? いけませんよ、ケーン!」
ケーン「……わかった。行こう、リンダ」

ケーンが、リンダをD1のコクピットに乗せる。

ライト「激突まで時間がないんだぞ!」
タップ「わかってんだろうなぁ!」
ケーン「あぁ、腕ずくでも連れ出してくるぜ!」

コクピットの中。
ケーンが自分のヘルメットをリンダに被せる。

ケーン「行くぜリンダ、しっかりつかまってろよ!」
リンダ「えぇ」


この始終が、ベンから旗艦へ伝えられる。

プラート「要塞内に引き返しただとぉ!?」
ベン「はぁ……ドルチェノフと“蒼き鷹”を追って」
プラート「どういうことじゃ」
ベン「はぁ……引き止めたのですが『どうしても“蒼き鷹”を連れ戻すのだ』と」
プラート「(マイヨもマイヨじゃ……今更ドルチェノフを追い詰めたところで、何がどうなるものでもあるまいに……) 司令官、すまんが……ひとつだけ、わしの頼みを聞いて下さらんか?」


要塞奥。
ミンの腕の怪我を、マイヨが手当てしている。

ミン「そんなオーバーにしないどくれよ……」
マイヨ「動くんじゃない」
ミン「あたいにはこんなの、蚊に刺されたくらいにしか感じられないんだからさぁ……うぅっ!」
マイヨ「あ、すまん……これでいいだろう。君の今回の働きぶり、忘れんぞ」
ミン「よしとくれよ。それより、あんたのメタルアーマーは持ちそうかい?」
マイヨ「あぁ。ドルチェノフのところまで持てばいい。燃料、弾薬も奴のために残してある。あの権力欲の権化は、まだこのどこかにしがみついているはずだ。ウェルナー! どうだ、コンバットルームの位置は掴めたか?」

レビゲルフの中、ウェルナーが索敵を行っている。

ウェルナー「それが、中のコンピューター回線がほとんど切断されていて……」
マイヨ「何としても探し出せ!」
ウェルナー「はっ! むっ……大尉殿、敵です!」
マイヨ「何!? ミン大尉、行けるか?」
ミン「あぁ、任せときな! あたいの役目はまだ終わっちゃいないからね!」

メタルアーマーたちが出現する。

マイヨ「ウェルナーを支援する。続け!」
カール「はっ!」

ウェルナー「くそぉっ!」

ウェルナーのレビゲルフに襲い掛かるメタルアーマーを、マイヨのファルゲンが蹴散らす。

ウェルナー「大尉殿!」
マイヨ「ウェルナー、お前は後退しろ。一刻も早くドルチェノフを見つけ出すのだ!」
ウェルナー「了解しました!」
ミン「手負い犬どもめが! 行くよぉ!!」
カール「ダン……貴様の無念、晴らしてやるぞ!」

マイヨたちが戦い続ける中、ウェルナーが索敵を続ける。

ウェルナー「ここだ! 大尉殿、見つけました! 無傷のコンバットルームに生命反応!」
マイヨ「よくやった、でかしたぞウェルナー!」
カール「大尉殿、ここは自分たちに任せて急いで下さい!」
ミン「大尉、時間がないよ! ここはあたいたちに任せて、あんたはドルチェノフを!」
マイヨ「わかった、頼む!」

ミンたちの支援を受け、メタルアーマー群を牽制しつつ、ファルゲンが飛び立つ。

マイヨ「私の相手は貴様らではない!」


その様子をドルチェノフがモニターしている。

ドルチェノフ「えぇい、どいつもこいつも役に立たん奴らめぇ!! この要塞は無敵なのだぁ!! それにわしは撤退命令など出しておらんぞぉ!! ギガノス魂はどうしたというのだぁっ!! この不滅の機動要塞を捨てるつもりかぁーっ!! SP隊、反撃しろぉ!! ギガノスの重罪人をを始末するのだぁ!!」

スクリーンに要塞内各所の様子が写るが、どこも兵士たちの姿はない。

ドルチェノフ「ハァハァ……おのれ! かくなる上はこのわしが今度こそ葬り去ってやるまで!!」


マイヨ「近い……ドルチェノフ、生きておれよ……私が行くまではな」

ミンたちがマイヨに合流する。

ウェルナー「大尉殿!」
マイヨ「ウェルナー、レビゲルフの動態センサーを作動させろ! ドルチェノフはこの近くにいる……」
ウェルナー「了解しました」

ウェルナーがモニターに目を走らせる。

ウェルナー「来た! 大尉殿、反応があります! 2時の方向、距離800、接近中です!」
マイヨ「全機、散開用意!」
ウェルナー「距離700、なおも接近! 500! 400!……おかしい? もう見えてもいいはずだ……」

一向に敵は現れない。

ウェルナー「……距離100! ……真下だぁ!!」
マイヨ「散開しろぉ!!」

一斉に散開するマイヨたち。
床をぶち破り、巨大な影が現れる。
巨大メタルアーマー、ギルガザムネ。

マイヨ「これは……!?」
ウェルナー・カール「あぁっ……」
ミン「ギルガザムネ……大尉、やばいよ!」

コクピットの中、ドルチェノフが不適に笑う。

ドルチェノフ「フハハハ……姦賊めぇ、いつまでもエース面させてなるものか! もはや貴様の時代は終わったのだということを、今教えてやるわぁ!!」
マイヨ「何としても、私は貴様を討つ!!」

マイヨたちが必死に応戦するが、ギルガザムネのパワーは圧倒的だ。

ドルチェノフ「小癪なぁっ!!」
ミン「いい加減に成仏しなよっ!!」

ミンのスタークダインがチェンソーで斬りかかるが、逆に片腕を切り落とされてしまう。

ミン「ああぁぁ──っ!!」
カール「ミン大尉!!」

ウェルナーのレビゲルフも、片腕が千切れ飛ぶ。

ウェルナー「うわぁ──っ!!」
カール「ウェルナー!!」

カールのヤクトゲルフが銃を撃つが、弾丸が尽きる。

カール「うっ、弾切れか!?」
ウェルナー「カール、俺のを使え!」
カール「済まん!」

レビゲルフが放った銃のマガジンをヤクトゲルフが装填。
しかしやはり、ギルガザムネには通用しない。

マイヨ「ドルチェノフ、相手は私だ!!」

マイヨのファルゲンがギルガザムネに挑むが、突如、ギルガザムネの姿が消える。

マイヨ「消えた……!? 後ろか!」

ギルガザムネがファルゲンの背後に回り、巨大な手でファルゲンを掴む。

マイヨ「し……しまった」
ドルチェノフ「フフフ……念仏でも唱えるんだなぁ! くたばれぇ!!」

ギルガザムネがファルゲンを壁面に叩きつける。

マイヨ「うわあぁ!!」
ミン「大尉! 大尉、大丈夫かい!? しっかりしとくれよ!」
ウェルナー・カール「大尉殿!」「大尉殿!」
ドルチェノフ「姦賊どもめ、まとめて地獄に送ってやるわぁ!!」

ギルガザムネから、マイヨたち目掛けて巨大巡航ミサイルが放たれる。

ミン「あんたも道連れさぁっ!!」

スタークダインがグレネードを投げる。
空中でミサイルとグレネードが炸裂、爆発。

ドルチェノフ「う……!?」
ミン「ああぁぁ──っ!!」


リンダ「はっ……兄さん!?」
ケーン「どうした、リンダ?」
リンダ「もしや……兄の身に……」
ケーン「大丈夫さ……奴がそんな簡単にやられるもんか! 飛ばすぞ!」
リンダ「えぇ」


ゲルフ、スタークダインが倒れている。
ミンの機転でミサイルの直撃は避けられたものの、爆風の影響で深手を負ったようだ。

マイヨ「カール、ウェルナー、大丈夫か」
ウェルナー「はっ……しかし、身動きが取れません」
マイヨ「ミン大尉、君はどうだ? どうした……ミン大尉!?」

ギルガザムネの真正面にいたスタークダインが、最もダメージが大きかったようだ。

マイヨ「おのれドルチェノフ……!」
ドルチェノフ「貴様もギルトールのもとへ行けぇっ!!」

とどめとばかりにギルガザムネが大剣を振り下ろそうとしたとき──
銃撃が炸裂。
ケーンのD1が現れる。

マイヨ「ケーン・ワカバ!?」
ケーン「やいドルチェノフ! 色々てめぇには世話になったなぁ! 一発お返しするためにわざわざ来てやったぜ!!」
ドルチェノフ「おのれ小僧、邪魔しおって! こうなったら貴様から刀の錆にしてくれるわ!」
ケーン「ギガノスの鷹さんよ、奴を倒したかったら俺の言う通りにしてくれ! こいつには弱点があるんだ!」
リンダ「兄さん、ケーンの言う通りにして!」
マイヨ「リンダ!? お前も来ているのか!」
リンダ「お願い、兄さん!」
マイヨ「フッ……わかった。ならば共同作戦といくか!」

D1とファルゲンが一丸となり、ギルガザムネに突進する。

ドルチェノフ「フフフ……馬鹿め、手間が省けるというものだ」

ギルガザムネの砲撃を掻い潜る2体。

ドルチェノフ「このギルガザムネから逃げられると思うのかぁ!! 死ねぇ!!」

ギルガザムネの目前に躍り出たD1とファルゲンが、一直線に並ぶ。
ドルチェノフがトリガーを引くが、弾丸は出ない。
複数の標的が一直線上に並ぶと自動照準システムが混乱を来たす。ギルガザムネ唯一の弱点だ。

ドルチェノフ「!? なぜ弾が出んのだ!?」

D1とファルゲンが一斉に放ったミサイルが、ギルガザムネに命中。

ドルチェノフ「うぅっ……おのれ、小僧!! 許さん! 許さんぞぉっ!!」

マイヨ「帝国の崩壊と共に滅びされ、ドルチェノフ!!」
ケーン「お返しだぁっ!! ドルチェノフゥ──ッ!!」

D1とファルゲンがギルガザムネ目掛けて突撃。
2本のレーザーソードがギルガザムネのコクピットを貫く。

ドルチェノフ「うがぁっ!! わしは……わしはまだ死ねん! 死んでなるものかぁ……」

ギルガザムネがボロボロになりながらも、天井を砕いて飛び去る。

マイヨ「待て、ドルチェノフ!」
ケーン「よせ! 天井が崩れるぞ!」
リンダ「兄さん!」
ドルチェノフ「わしは死なんぞ……わしがいる限りギガノス帝国は滅びぬ……いずれこの手で再興してみせるわ!」


ギルガザムネは逃げ去った。

マイヨ「大きな借りを作ってしまったな……ケーン・ワカバ」
ケーン「なぁに、俺は“蒼き鷹”じゃなく、リンダの兄貴に味方しただけだよ」
リンダ「まぁ……兄さん、この要塞はもうすぐ月面に激突するわ。ケーンはそれを知らせるために危険を冒して……」
マイヨ「わかった。カール、ウェルナー、ミン大尉を頼むぞ。私もすぐ行く。先に脱出しろ」
カール・ウェルナー「大尉殿……」「大尉殿……」
ミン「あんたたち、情けない声出すんじゃないよ。命令が聞こえなかったのかい? じゃ大尉、先に行ってるよ……」
マイヨ「うむ、2人を頼む」

カールとウェルナーのゲルフが、ミンのスタークダインを左右から抱えて飛び立つ。

ケーン「さぁて、俺たちも脱出しようぜ」

D1も飛び立つ。

ケーン「あと数分で、この機動要塞もただの鉄屑さ」
リンダ「兄さん!?」

ファルゲンは飛び立つことなく、要塞内に立ち尽くしている。

マイヨ「ケーン・ワカバ、リンダを頼んだぞ!」
ケーン「え、どゆこと? あんたどうすんだよぉ?」
マイヨ「ギガノス帝国が滅びようとする今、もはや私は無用の者……この要塞と共に散ろうと思う」
リンダ「兄さん……!?」

慌ててケーンが引き返す。

ケーン「ちょっと待ってよぉ! 冗談じゃねぇよぉ、俺の立場はどうなんだよぉ! あんたを見殺しにしたら、未来の舎弟として……」
リンダ「!?」
ケーン「あ、いや! ……い、今までのことは、水に流してやるからさぁ」
マイヨ「嬉しく思うぞ、ケーン・ワカバ……今の私は、充足感で満たされている。あらゆるわだかまりが全て氷解した気分だ……」
ケーン「だったらなおさら……!」
リンダ「兄さん、お父様もとても心配なさってるわ! せめて一目でも……」
マイヨ「すまないリンダ……父上には、私には会えなかったと伝えてくれ」
ライト「直接言うんだね」
マイヨ「何!?」

D2、D3、そしてドラグーンが現れる。

タップ「自分の親父さんにな」
ケーン「ライト、タップ! ……ってことは」
リンダ「お父様!?」
プラート「年寄りの冷や水と言わんでくれ」
マイヨ「父上……!?」

ドラグーンに乗っていたのは、プラート博士であった。

プラート「久しぶりだな……マイヨ。ケーン君、ここは……すまんが、2人だけにしてくれんか」
リンダ「お父様!」
ケーン「……わかりました、博士」
リンダ「ケーン……」


要塞奥。
動かなくなったギルガザムネの中、ドルチェノフが脱出を試みている。

ドルチェノフ「わしはまだ死なんぞぉ……死んでなるものかぁ……わしがいる限り統一帝国は存続するのだぁ! そうとも、帝国は永遠に不滅なのだ!」

ハッチの操作をするが、計器類の光が消えてしまう。

ドルチェノフ「ん? どうした、なぜ開かんのだ? 冗談ではないぞ、エアーはほとんどないんだぞぉ! 誰かおらんのか! わしは総統なるぞぉ! わしをここから出してくれぇ!」


要塞が月面に迫る。


要塞内。 ケーンたちが飛び去った後、マイヨとプラートが2人だけで対峙している。

プラート「まだわかってもらえんのか、マイヨ……とにかくここはもう危険だ、ひとまずここを出よう」
マイヨ「いいえ、私の決意は変わりません。あなたと行動は共にできないのです」
プラート「フフフ……そう言うと思ったよ。おかしいじゃろ? 今さら父親面して説教を打つなど……お前にとってわしは、ギガノスの裏切り者というわけだからなぁ……だからと言って、わしはお前に謝る気持ちは持ち合わせておらん。お前がギルトールに心酔したように、わしも自分の信念を貫いたに過ぎん。男の生き方の相違というものかのぉ……しかし、お前はまだ若い。これから地球の復興に役立ってもらわにゃいかん。生き延びてくれ!」
マイヨ「……帝国の崩壊と共に、私の役割は終わったのです。そしてまた、私のような男はもはや無用です」
プラート「強情な奴じゃ……よぉし、わかった。わしも役目が終わった者の1人。お前がここに残るというのなら、わしも付き合ってお前の最期を見届けてやろうじゃないか」
マイヨ「えぇっ……!?」


宇宙。
機動要塞を脱出したケーンたち。

タップ「一体どうなっちまったんだよ……」
ライト「すぐ脱出してくるはずじゃなかったのか!?」
ケーン「来るさ……きっと来る!」
カール「ミン大尉……」
ウェルナー「我らが大尉殿をお迎えに!」
ミン「よしな! 命令通りにここで待つんだよ。大丈夫さ……きっと戻ってくるよ」


要塞内。
マイヨがヘルメットを脱ぎ、微笑む。

マイヨ「私は……あなたの子として生を受けたことを、誇りに思っています」

プラート博士の顔に、笑みが浮かぶ。

マイヨ「以前、あなたに別れを告げたように、これからもまた、己の信ずる道を歩んで行くつもりです」
プラート「マイヨ……」


要塞奥。
酸欠の影響で正気を失ったドルチェノフの脳裏に、ギガノスの軍旗、自分に集う将兵たちの幻影が浮かんでいる。

ドルチェノフ「勇猛なる全将兵の諸君、わが統一帝国は不滅だぁ! そうだとも……勇猛精鋭なる将兵諸君がいる限り、忠勇なる諸君がおる限り、統一帝国……統一帝国ギガノスは、常に諸君らと共に邁進するのみである……ハァ、ハァ……と……と……統一帝国、ギガノスに……栄光と、勝利を……」


連合軍旗艦。
ベン、アオイらが無事に着艦している。

「機動要塞はまもなく月面に激突します」


ケーンの肩に、リンダが顔を埋める。

リンダ「お父さん……」


ついに要塞が月面に激突。
火柱が上がる。


カール「大尉殿……」
ウェルナー「大尉殿……」
ミン「ば、馬鹿野郎……メソメソするんじゃないよ、お前たち……あたいたちはね、戦争をやってんだよ……」

強がりを言うミンの目から、涙があふれている。
リンダも、ケーンの肩に顔を埋めたまま、涙をこぼす。

リンダ「兄さん……」


ライト「おい、ケーン!」

火柱の中から、2つの影が飛び立つ。

リンダ「あぁっ……」


飛び立ったのは、手を取り合うファルゲンとドラグーン。

旗艦乗組員たちが沸き返る。

「おぉっ……」「やったぁ!」「やったぞぉ!」「やったぁ──!!」


ケーン「さぁ、行こうぜ、リンダ!」
リンダ「えぇ!」


ドラグナーたちが飛び立つ。
月面をバックに、ドラグナーたちとファルゲン、ドラグーンが触れ合う──。


宇宙をバックに、その後の皆の様子が映し出される。


地球で両親に再会したローズ。


ニューヨークで兄弟たちに再会したタップ。


イギリスでライトが仲間たちに乗馬を教え、ケーンが馬の上で落馬寸前になっている。


青森の田園。ケーンの祖母やアオイが見守る中、ケーン、ライト、タップが畑仕事に駆り出されている。


教会。ベンとダイアンの結婚式。
仲間たちの祝福を浴び、ウェディングドレス姿のダイアンがブーケを投げる。

ブーケを受け取ったのは──リンダ。
ケーンがリンダと見つめ合い、笑い合う。


蒼い鷹が、宇宙の彼方へと飛び立つ。


宇宙をバックに、マイヨの笑顔──。



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