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仮面ライダー×仮面ライダー×仮面ライダー THE MOVIE 超・電王トリロジー EPISODE BLUE 派遣イマジンはNEWトラルのエンディング
見事にマンティスイマジンを撃破した仮面ライダーNEW電王・野上幸太郎。
幸太郎「やっぱり俺たち、最高のコンビだな!」
テディ「あぁ、最高だな!」
幸太郎「これからもずっと、うまくやっていけそうだな!」
幸太郎が振り向く。幸太郎を助けるためにオーナーとの契約を破棄したことで、テディの体が蒸発を始めている。
幸太郎「テディ……!?」
テディ「……幸太郎。私は、自分で自分の行き先を決めたのは、実は今度が初めてだ。気分のいいものだなぁ!」
テディが気持ち良さそうに、大きく伸びをする。
幸太郎「うん。だから…… 消えるな。……消えるなよ、テディ」
テディ「幸太郎。これを」
足から何かを取り出すテディ。
テディ「たぶん私のかわりに、お前を不運から守ってくれる」
テディの差し出すそれに、幸太郎が手を伸ばす。
手が触れる寸前、テディの体が跡形もなく、砂と化して崩れ落ちる。
テディの消えた虚空を呆然と見つめていた幸太郎が、がっくりと崩れ落ちる。
地面に積もった砂の中に、何かが光っている。
震える手で、砂をすくい上げる。
砂の中には、テディがターミナルの出店で見つけた、お守りのキーホルダー。
幸太郎「バカ…… これ、縁結びじゃないか…… お前がドジるなんて、初めて見た……」
幸太郎が泣き笑いのような表情で、キーホルダーを握り締める。
「わかってたつもりが、わかっていなかった。どれほど大切な存在なのか…… 一度失くさないと、気づけない……」
上原美来の家。
祖母・早苗のすでに他界した時間からやって来た美来が、涙をボロボロとこぼしながら、料理をしている。
嬉々としてその様子を見守る早苗。
バースデーケーキの乗ったテーブルを、美来と早苗が囲む。
早苗「お誕生日、おめでとう」
美来「ケーキに冬瓜じゃ、変かな?」
早苗「うぅん。とっても、おいしそう」
美来がろうそくを吹き消す。早苗が小さく拍手。
早苗「ありがとね」
美来「え……?」
早苗「きっと、どこか遠くから来てくれたのね。でも、美来は美来。最初に見たときから、本物だってわかった。孫が2人になったみたいで、今日は楽しかったぁ」
何も答えられない美来。その手に、早苗が手を重ねる。
早苗「大丈夫。きっと、この先もずっと楽しいって、おばあちゃん、わかってる」
今にも泣きだしそうな美来の肩を、早苗が優しく抱く。
縁側では、早苗の買った風鈴が、夜風に揺られて静かに鳴っている。
早苗「いい音……」
デンライナーの中。
放心状態の幸太郎。無言の一同。
良太郎が幸太郎の隣に掛け、何かを言いかけるが、言葉が見つからない。
ドアが開き、オーナーが現れる。
オーナー「いやぁ〜、皆さん。ずいぶん沈んでますねぇ〜。幸太郎くん? 心機一転、新しいイマジンと契約してみませんか〜?」
モモタロス「おい! 空気読めよ……」
オーナー「あらあら? でも、もう連れて来ちゃったんですよ〜。せっかくですから、ご紹介いたしましょ。アレ〜クサドルビッ〜チ!!」
オーナーと契約していたときのテディの名。一同が驚いてドアを見つめる。
ドアが開き、ためらいがちにテディが顔を出す。
モモタロス「お前!?」
キンタロス「テンドン!?」
リュウタロス「何でぇ!?」
幸太郎「……!?」
オーナー「幸太郎くんとの繋がりが強すぎたんですねぇ〜。契約の脱線ではなく、本線に戻った、ということなんですよね〜」
テディ「……こ、幸太郎…… もう一度…… もう一度、よろしく頼む!」
幸太郎「……テディ…… テディ! テディ──っっ!!」
テディ「幸太郎──っっ!!」
駆け出した幸太郎が、モモタロスの足につまづく。
転びかけた幸太郎を、テディがしっかり抱きとめる。
幸太郎「は、ははっ!!」
テディ「はは、まだ最悪ゾーンは抜けてないな!」
幸太郎「抜けた! メチャクチャついてるし、最高だよ!! ははっ!」
テディ「幸太郎!!」
幸太郎「テディ!!」
テディ「あぁ、最高だ! 幸太郎!!」
ナオミ「じゃあ、もうテンちゃんは幸太郎ちゃんと、ず〜っと一緒にいていいんですよね?」
オーナー「えぇ〜、私のほうの仕事も終わりましたし〜」
オーナーはなぜか、テディに磨かせたお玉でゴルフスイングの練習をしている。
ウラタロス「いい加減だよね。何の意味があったんだか?」
キンタロス「ホンマやな」
モモタロス「おい手羽野郎、手羽! てめぇはまた結局、何しに来てたんだよ!? 何か役に立ったのかぁ!?」
ジーク「何を言う? 私のおかげで、この食堂車に癒しの空気が満ち足りたであろうが」
モモタロス「てめぇは空気清浄機か!? おいナオミ!」
ナオミ「は〜い!」
ナオミが盆でジークをひっぱたく。
リュウタロス「ちょっとぉ! トリさん、いじめないでよぉ!」
幸太郎「オーナー、俺に教えてくれたのかも」
良太郎「え?」
幸太郎「甘えてたからさ。テディがいることに。だから……」
一同「無い、無い、無い!」
幸太郎「え? あ…… そう?」
一同が大爆笑。
モモタロス「よし、コーヒーだ! ナオミ、幸太郎にも入れてやってくれ!」
皆の笑い声を乗せ、デンライナーが時の中を行く。
そして、幸太郎のもとの時代。
デンライナーが走り去り、幸太郎とテディが降り立つ。
テディ「結局、デンライナーのみんなに定着してしまった……」
幸太郎「何が?」
テディ「『テンドン』だ」
幸太郎「ははっ、気にすんな! 俺は間違えないからさ。テンドン」
テディ「な…… 幸太郎! 取り消せ!」
幸太郎「ははっ! なんだよテディ、お前、そんなこと気にしてたのか?」
テディ「もちろんだ……」
幸太郎「もっと他にも気にするとこ、あんだろ?」
テディ「え? どこだ?」
幸太郎「ははっ!」
テディ「おい、教えてくれ!」
幸太郎「そうだテディ、お前、足んとこポケットだったのか?」
テディ「そうだ。知らなかったのか?」
幸太郎「何か出んのか? 何だ?」
テディ「幸太郎? 幸太郎? ははっ、幸太郎!」
幸太郎「行くぞ!」
2010年8月25日。
美来のもとの時代。
デンライナーが走り去り、美来が自宅の前に降り立つ。
自宅の無人の部屋。仏壇には祖母・早苗の遺影。
何かに気づく美来。遺影のそばに小箱があり、メッセージカードが添えられている。
「やっぱりずっと、楽しかった。ありがとう。お祖母ちゃんより」
美来がカードを握り締め、涙をこぼす。
祖母に逢った日と同じように、縁側では風鈴が風に揺られ、静かに鳴っている。
(終)