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轟轟戦隊ボウケンジャーの最終回
ナレーション「ゴードムの心臓を奪われ変身も禁じられて追われる4人。だが 自分だけの宝を守りたいという気持ちで再び結集したとき、ボウケンブラック・伊能真墨も復活したそして デスペラートとの死闘の中──ついに!」
一度は倒れた魔人デスペラートが巨大化。ゴーゴービークルが封印された今、もはやこれまでか……
そう思われたその時、ダイボイジャーが出動。コクピットには、リュウオーンとともに炎の中に消えたはずの明石暁がいた!
明石「ボウケンジャー! 冒険の始まりだ」
伊能真墨、最上蒼太、間宮菜月、西堀さくら、高丘映士の5人が歓喜の表情でダイボイジャーを見上げる。
映士「明石……明石だぁ!」
蒼太「やっぱり、“不滅の牙”だ……」
菜月「チーフ……!」
さくら「……」
喜びのあまりか、さくらは言葉に詰まる。
真墨「美味しいところを持っていくのは、相変わらずだな!」
明石「おい、お前たち! 俺を1人で戦わせる気か!?」
真墨「よし、総員ダイボイジャーに搭乗して、デスペラートを倒すぞ。アタック!」
パチンと指を鳴らした真墨と共に、映士が駆け出す。
菜月「まだチーフやってる」
真墨のチーフぶりを笑い合いつつ、菜月とさくらも後に続く。
蒼太も続こうとするが──
蒼太「あれ……あの子は?」
ゴードムの心臓を守っていた少女の姿は、いつの間にか消えている。
一方、ゴードム神殿。
繭にこもっていたガジャが、ボウケンジャーの戦力復活を悟る。
ガジャ「ボウケンジャーめ……」
Last Task
果て無き冒険魂
ダイボイジャーのコクピット内。
真墨たちが座席に就く。背後には大剣人ズバーンも立っている。
5人乗りのダイボイジャー、菜月の座席に映士が無理矢理割り込もうとする。
菜月「ちょっと映ちゃん、邪魔だよぉ」
さくら「チーフ、ご無事だったんですね」
明石「あぁ。ズバーンのお陰でな」
ズバーン「ズバーン!」
回想。
プレシャスバンクが自爆。
バンク内にいた明石までもが、炎に包まれそうになったとき。
明石が持っていた聖剣ズバーンが咄嗟に大剣人に変形し、明石を守っていたのだ。
さくら「ズバーン、ありがとう……」
ズバーン「ズン! ズン!」
菜月「無事なら無事って言ってよ、もう〜」
明石「牧野先生やスタッフと、急遽ネオパラレルエンジンの改造をしていたんだ……それまではお前たちが時間を稼いでくれると、信じていたからな」
映士「勝手に信じるな!」
真墨「結局明石は、明石だな」
明石「よく帰って来たな……真墨」
真墨「フン……」
斜に構えながらも笑顔の真墨。
明石「さぁ、デスペラートを倒すぞ!」
一同が頷き合う。
蒼太「オールシステム、異常なし!」
一同「ファーストギア・イン!!」
迫り来る巨大デスペラートにダイボイジャーが挑む。
明石「ボイジャーキャノン、全門発射!!」
凄まじい砲撃が全弾命中するが、全く苦にしないかのようにデスペラートが迫り来る。
菜月「全然効いてないよ!?」
デスペラートが反撃に転じる。
鋭い鉤爪が長く伸びてダイボイジャーを突き、コクピットに火花が散る。
明石たち「うわぁっ!!」
さらにデスペラートがダイボイジャーを引き寄せ、鉤爪で連続攻撃。
あまりの威力に吹き飛ばされつつも、倒れずに持ちこたえるダイボイジャー。
明石「総員、意識を集中しろ!!」
一同「くっ……!」
明石の合図で、一同が歯を食いしばってデスペラートを睨みつける。
意識の集中と共に、6人の体から光が発せられる。
それに呼応するかのように、エンジン音が高まり、ダイボイジャー自体も黄金色の光に包まれる──。
さくら「これは!?」
蒼太「パワーが上がってる……!?」
真墨「凄ぇ!」
明石「ハイパーチャージ!!」
ダイボイジャーの胸のビッグホイールがエンジン音と共に高速回転。
明石「行け、ズバーン!!」
ズバーン「ズバ──ン!! ズバズバッ!!」
ズバーンが聖剣に変形、ダイボイジャーの前面の宙に浮く。
その剣身はデスペラートへと向けられている。
明石「食らえぇっ!!」
ダイボイジャーの高速回転の右パンチを叩き込まれた聖剣ズバーンが、砲弾の如く放たれる。
ズバーンがドリルのように回転しつつ、デスペラートの胴に突き刺さる。
呻き声を上げつつも持ちこたえるデスペラートに、ボウケンジャーが目を見張る。
デスペラートが石化、そしてボロボロに崩れ去り、消滅してしまった。
映士「やったぜぇ!!」
菜月「やったぁ!」
真墨「OK!!」
蒼太「よし!!」
ゴードム神殿。
ガジャ「こうなればゴードムの脳髄──この手で、直接──」
ダイボイジャーのもとへ、研究室の牧野森男からの連絡が届く。
牧野「ガジャの反応です。デスペラートが倒され、自ら動き出す予兆です!」
映士「奴はゴードムの脳髄を奪いに来るな」
蒼太「でも、ゴードムの脳髄は……あの女の子がどこかに……」
少女「心配ないよ」
いつの間にか牧野の隣に、あの少女がゴードムの心臓を携えて微笑んでいる。
少女「ここにあるから」
菜月「えぇっ!?」
さくら「あなたは……どうして!?」
明石「さて……ガジャが来る前に、こっちからお迎えだ」
ガジャの反応を追い、ゴーゴーボイジャーが海を渡ってゴードム神殿へ到着。
6人がボイジャーを降りて上陸。
真墨と菜月のボウケンジャー・テスト入隊後、初めてのミッションがここであったときの記憶が甦る。
真墨「ゴードム遺跡……ガジャめ、ここに戻っていたのか」
菜月「真墨が失敗して、浮上させちゃったんだよね」
真墨「余計なことを言うな!」
6人の目の前。繭を突き破ってガジャが出現。
さくら「あれは……!?」
さらに宙に浮いたガジャが、人ならぬ異形の怪物へと姿を変えて降り立つ。
明石「ガジャ! なんだ、その姿は!?」
ガジャ「我が名はガジャドム──」
ゴードムエンジンにより強化されたガジャが、ゴードムの心臓によりさらに進化した姿“ガジャドム”。
ガジャドム「かつて大宇宙より飛来し、巨大なる破壊神あり──その名はゴードム」
巨神ゴードム。このゴードム遺跡でボウケンジャーがダイボウケンで初勝利した相手だ。
ガジャドム「その脳髄と心臓は、偉大なプレシャスとしてゴードム文明に遺された──それを取り込み、我はゴードムを超える──神となる!」
ガジャドムが指を差すと、雷雲が轟き、落雷が明石たちを襲う。
明石たち「うわあぁっ!!」
ガジャドム「フハハハ……」
映士「心臓は食っちまっても、脳髄は絶対に渡さないぜ!!」
ガジャドム「ほざけ──わざわざビークルで来るとは、とんだ間抜けだな!」
ゴーゴーボイジャー目掛け、ガジャドムの手から電光が伸びてゆく。
蒼太「あぁっ!?」
菜月「チーフ、ボイジャーのプレシャスが盗られちゃうよぉ!」
真墨「落ち着け! 明石暁が、何も考えずに来るとは思えない!」
その言葉通り、明石は慌てるどころか、不敵な笑みを浮かべる。
ガジャドム「むっ……このビークルのパラレルエンジンには、プレシャスがないのか!?」
蒼太「プレシャスがない……!?」
明石「その通りだ。牧野先生が頑張ってくれた」
牧野の研究室。
牧野「いやぁ、苦労しました、うん」
傍らにいるあの少女が、牧野の疲れを癒すように肩を揉む。
牧野「すべてのゴーゴービークルから、プレシャスを取り除いたんですから、まぁ」
ゴードム神殿。
ガジャドム「なぜだ──それでは動かぬはず──?」
明石「ネオパラレルエンジンの最終リミッターを解除しただけさ」
ちらりと明石が仲間たちを見やる。
明石「とにかく、お前たちのビークルもすべて無事だ」
その言葉に喜び合う一同。
菜月「じゃあ、ボウケンジャーになれるの!?」
映士「マジかよ!?」
さくら「チーフ……!」
明石「あぁ」
ガジャドム「貴様ら──何を喜んでいる?」
明石たち目掛けてガジャドムが火の玉を放つ。火柱が上がり、6人の姿が掻き消える。
ガジャドム「ハハハハ……むっ!?」
炎の中から、明石たち6人がすっくと立ち上がる。
明石「熱き冒険者、ボウケンレッド!」
真墨「疾き冒険者、ボウケンブラック!」
蒼太「高き冒険者、ボウケンブルー!」
菜月「強き冒険者、ボウケンイエロー!」
さくら「深き冒険者、ボウケンピンク!」
映士「眩き冒険者、ボウケンシルバー!」
明石「果て無き冒険スピリッツ」
一同「轟轟戦隊ボウケンジャー!!」
変身前の生身の姿のまま、名乗りを決める6人。
ガジャドム「この私に勝てると思っているのか──」
迫り来るガジャドム。明石がアクセルラーを構える。
明石「レディ!」
一同「ボウケンジャー・スタートアップ!!」
次々にアクセルスーツに身を包み、変身を遂げる6人。
ボウケンジャーとガジャドムの最終決戦だ。
レッド「アタック!!」
一同「はぁっ!」「はぁっ!」
ガジャドム目掛けてレッドが飛び掛かるが、ガジャドムの吐くエネルギーに吹き飛ばされる。
イエローとピンクがサバイバスター、シルバーがサガスナイパーを撃つが、ガジャドムの姿が消える。
唖然とする3人の背後からガジャドムが現れ、攻撃を加える。
ブラックとブルーがサバイブレードでガジャドムに斬りつける。
が、ガジャドムはその剣身を素手で受け止められる。
ガジャドム「ガガガム・ゲードム──」
呪文と共に、サバイブレードが石と化してしまう。
地面に落ちたサバイブレードをガジャドムが足で踏み砕き、ブラックとブルーを吹き飛ばす。
ブルー「うわぁっ!」
シルバー「あいつには俺様たちの攻撃が通用しないのか!?」
レッド「いや……奴はまだゴードムの脳髄を得ていない。不完全だ。絶対に倒せる! そう信じるんだ」
ブラック「そうだな……そう信じる!」
ブラックがレッドの肩を叩くと、彼のサバイブレードを手にし、単身でガジャドム目掛けて突進。
ブラック「撃ってみろぉぉ!!」
ガジャドム「バカが……!?」
ガジャドムが次々に光弾を繰り出すが、それを浴びながらもブラックは捨て身で突進する。
サイバイブレードで斬りかかるブラックだが、ガジャドムに首を締め上げられる。
ガジャドム「死ね、ブラック──」
ブラック「それは……どうかなっ!」
すかさずブラックがサバイブレードを変形させ、ガジャドムの腹の外殻不完全部分に突きつける。
ブラック「サバイバスター!!」
密着状態で放たれたサバイバスターの光弾が、ガジャドムの胴を貫通する。
ガジャドム「ぐぁぁ……っ!」
ブラック「行くぜ、みんなぁ! はぁっ!!」
ブラックがラジアルハンマーを振るい、ガジャドムに叩きつける。
ガジャドム「うぉぉ──!?」
吹き飛ばされたガジャドム目掛け、それぞれの武器を構えたレッド、シルバー、ピンク、ブルー、イエローが突進。
レッドたち「うぉ──っ!」「はぁ──っ!」
ガジャドム「むっ!?」
レッド「レッドゾーンクラッシュ!!」
ガジャドム目掛け、レッドの必殺技・レッドゾーンクラッシュがに炸裂。
レッドの突進と共に、ブルーのブロウナックル、イエローのバケットスクーパー、ピンクのハイドロシューター、シルバーのサガスピアが次々に叩きつけられる。
ブルーたち「はぁっ!」「うりゃあっ!!」
とどめとばかりにレッドが渾身の力でボウケンジャベリンを振り下ろす。
レッド「うぉ──っ!!」
ガジャドム「ぐ……お……」
連続攻撃の末、ガジャドムが大爆発してしまった。
最期かと思われたとき、ガジャドムが再び立ち上がる。
レッドたち「うっ!?」
ガジャドム「ゴードムを超えるガジャドムの力を見よ──ゴゴム・ギードム・グードム──」
呪文と共にガジャドムが巨大化。文字通りの巨神と化す。
ガジャドムが巨大な火の玉を放ち、巨大な火柱がボウケンジャーを襲う。
レッド「ゴーゴービークル!」
『発進シフト・オン!』
光を取り戻した地下格納庫ボウケンパーキングから、ゴーゴービークルが次々に出動する。
牧野「ボウケンドライバー、射出!」
牧野の指示で、5つのボウケンドライバーが射出され、ボウケンジャーの元に届く。
ゴーゴーボイジャーにはシルバーが乗り込む。
シルバー「ゴーゴーボイジャー、スタンバイ!」
その上に、レッドたち5人を乗せたダイボウケンが搭乗。
一同「ボイジャーダイボウケン、搭乗完了!」
シルバー「行くぜ!」
一同「ライディングアドベンチャードライブ!!」
ダイボウケンが轟轟剣を振り下ろすが、ガジャドムはそれを素手で受け止め、ダイボウケンを投げ飛ばす。
コクピットに火花が飛び散る。
一同「うわぁっ!」
さらにガジャドムの攻撃がゴーゴーボイジャーを直撃。
シルバー「うわぁっ! ぐっ!!」
激しい攻撃の末、ゴーゴーボイジャーの合体が解け、ゴーゴーコマンダー以下5機のビークルに分離してしまう。
ガジャドム「プレシャスがないビークルでは、話にもならん──むっ!?」
ダイボウケンが単身でガジャドムへ立ち向かう。
ブラック「それはどうかな?」
ブルー「まだまだだよっ!」
レッド「究極轟轟合体だ!」
『合体シフト・オン! ドリル・ショベル・ミキサー・クレーン・ジェット』
ゴーゴードリルからゴーゴージェットまでの5機が次々に発進。
レッド「シルバー、お前も来い!」
シルバー「あぁ!」
『アルティメットフォーメーション』
ダイボウケンに5機のビークルが合体。
一同「アルティメットダイボウケン、合体完了!!」
コクピット内、シルバーがレッドの座席の隣に立つ。
シルバー「明石……!」
レッド「みんな行くぞ!」
一同「オーバートップギア・イン! はあぁぁ──っ!」
デスペラート戦と同様、6人の体が光を放ち、アルティメットダイボウケンが黄金色の光に包まれる。
レッド「アタック!!」
高空からのアルティメットキックがガジャドムを直撃。
ガジャドム「ぐぉぉ……なんだ──このパワー!? うぉぉ……」
レッド「ダイボウケンのパワーの源は今……俺たち自身だ!」
イエロー「えっ!?」
明石の言葉に、ガジャドムばかりかボウケンジャー一同も驚きを隠せない。
ガジャドム「有り得ぬ──人間がパワーとなるなど!」
レッド「人が夢見る様々な可能性、その想いがプレシャスを創った。パラレルエンジンはプレシャスに込められた人の想いを、現実の力に変える装置だ。だからリミッターを全解除したとき!」
ピンク「パラレルエンジンは……私たちひとりひとりの想いを?」
イエロー「希望を……夢を!」
ブルー「そのまま、力に変える!」
シルバー「まるで、俺様たちがプレシャスになったみたいだな!」
ブラック「フン……さぁ行くぜ、プレシャス諸君!」
一同「おぅ!!」
ガジャドム「人間がプレシャスだと──有り得ぬ!」
ガジャドムの放つ電撃を、アルティメットダイボウケンが宙に舞ってかわす。
一同「アルティメットブラスター!!」
火の鳥を象った超火炎ビーム・アルティメットブラスターがガジャドムに炸裂。
レッド「ドリルアタック!!」
アルティメットダイボウケンが右手のドリルを撃ち込む──が、目に見えない壁に阻まれてしまう。
ガジャドム「無駄だ──」
近距離からガジャドムの放つ攻撃を受け、アルティメットダイボウケンが吹き飛ばされる。
コクピットに警報音が響き渡る。
一同「うわあぁっ!!」
レッド「まだだ……シルバー、お前のビークルも呼べ!」
シルバー「おぅ!」
レッド「分離だ!」
アルティメットダイボウケンが合体を解き、10機のビークルに分離。
ガジャドム「むっ……!?」
サイレン音を響かせ、ゴーゴーファイヤーが出動。シルバーが乗り込む。
シルバー「よし、行くぜ!」
レッド「すべてのビークルでガジャのゴードムエンジンを破壊する」
一同「おぅ!」
ゴーゴーダンプからローダー、計18機の攻撃にガジャドムもひるむ。
ガジャドム「むおぉぉ──! ……貴様ら人間の夢など、力を求めるものばかり──それがプレシャスという滅びの力を、生み出してきたに過ぎない──」
レッド「プレシャスは、滅びの力なんかじゃない。その真の意味は……未来へと受け継がれる、人類の生きた証!!」
ブラック、ブルー、イエロー、ピンク、シルバーも頷く。
レッド「常に未知の世界を求める、冒険者の魂だ!! ガジャドム、行くぞ! うおぉぉ──っ!!」
アクセルを全開にしたゴーゴーダンプの車体が大地を蹴り、宙を舞う。
他のビークルもそれに続く。
一同「うおおぉぉ──っ!!」
全ゴーゴービークルが次々に宙を舞い、ガジャドムに体当たり。
胸に埋め込まれたゴードムエンジンが火を吹き、爆発する。
ガジャドム「ぐぉぉ……バカな……!?」
そして、ガジャドム自身も大爆発してしまった。
研究室でモニターしている牧野が歓喜する。
牧野「やったぁ──やった、やった、バンザ──イ!!」
その喜びように、少女が腕を組んで微笑む。
レッド「……」
ブラック「よっしゃあっ!!」
ブルー「OK!! よっしゃ!!」
イエロー「きゃっはぁ!!」
ピンク「やりました──!!」
シルバー「うぉぉ、やったぜぇ!! ……ん!?」
轟音。
レッド「島が沈む。脱出だ」
全ゴーゴービークルが神殿を去る。
神殿上の大地では、元の人間体となったガジャが彷徨っている。
ガジャ「冒険者たちめ──」
神殿内の一室に入るガジャ。そこは自らが封印されていた場所だ。
ガジャ「またしても敗れるとは──愚かな人間の夢などに──」
封印されていた棺に、ガジャは自ら身を横たえる。
ガジャ「またいつか──必ず甦らん──」
ガジャの姿が石化し、棺の蓋が閉まる──
変身を解いた明石たち6人が岸壁に立ち、ゴードム神殿の沈み行く様子を見届ける。
蒼太「僕たちがプレシャスなんて、妙な気分ですね……」
さくら「プレシャスが人の夢なら……私たちの中にも、それはあります」
菜月「これからも菜月たち、冒険できるんだよね!」
真墨「あぁ、ネガティブはいなくなったりしないしな!」
映士「それにしても……たくさんのプレシャスが失われちまったな」
明石「また探せばいい。プレシャスのあるところならどこまでも行く。ボウケンジャーの冒険は、無限だ!」
爽やかな笑顔で岸壁を後にする6人……。
半
年
後
とあるビル街。ビルから火災が上がり、消防車が駆けつける。
消防員たち「急げ、間に合わないぞ!」「はい! ……班長!?」「ん?」
巨大な足音を響かせ、そこへ現れたのはシルバーの乗るサイレンビルダーだった。
消防員「サイレンビルダー……!」
サイレンビルダーのダブルウォーターシュートで、火災は瞬く間に消し去られる。
未だ火の残ったビルの片隅、幼い少年が座り込んでいる。
少年「あついよぉ、あついよぉ……たすけてぇ!」
そこへボウケンシルバーが駆けつける。
シルバー「大丈夫か!?」
少年「あついよぉ!」
シルバー「よし……!」
シルバーの手により、少年はビルの外へと助け出される。
少年「ありがとう……おじちゃん、だぁれ?」
シルバー「おじちゃんじゃねぇ、サージェスレスキュー!」
敬礼を決めるシルバー。
シルバー「だけどな、本当はボウケンシルバー」
しゃがんで視線を合わせつつ、シルバーが頼もしげに少年の肩を抱く。
シルバー「ボウケンジャーっていってなぁ……おっと、こいつは内緒だ」
少年の頭を撫でるシルバー。
シルバー「行け」
少年「うん!」
少年が駆け去っていく姿を見届け、シルバーが変身を解いて映士の姿に戻る。
映士「ふぅ……なんとかサマになってきたな。この仕事もなかなか冒険だぜ!」
ゴーゴーチェンジャーのコール音が鳴る。
映士「ん? おぉ──っ、真墨! 久しぶりだなぁ!」
真墨「おい野菜野郎、お前知ってるのか!? 明石のこと」
映士「あぁ!?」
ボウケンジャー面々の集うサロンのドアが開き、映士が飛び込んで来る。
映士「明石ぃっ!! お前、宇宙に行くって……」
明石は既に脱ぎ去ったボウケンジャケットをたたみ、真っ赤な繋ぎのユニフォームに身を包んでいる。
既に答は決まっているようだ。
映士「本当なのか……」
明石「あぁ」
映士「『あぁ』って……え?」
映士が蒼太とさくらの方を見やると、2人は「仕方ない」と言わんばかりに頷く。
映士「そんあお前……バ……」
真墨「しかも、たった1人でだ! ボイジャーまで勝手に改造しやがって……無謀すぎる! 中止しろ!」
明石「ゴードムやハイド・ジーンのように、宇宙から来たプレシャスもある。宇宙にもプレシャスが散らばってるんだ……誰かが調査しなきゃならない」
さくら「古代文明の中には、宇宙に旅立ったものも、あるかもしれませんね。アトランティスとか」
蒼太「止められないんですよね……ワクワクが!」
菜月「ふふっ! チーフらしい、ね?」
真墨「だからって、1人で勝手に決めるなんて……!」
映士「お前らは平気なのかよ! さくら姐さんも!」
さくら「ん──……」
さくらは何故か、口を結んだまま視線を逸らす。
真墨「なんでだよぉ!? ボウケンジャーは無限だとか、お前が言ったんだぞ!? それがまた1人だけ……」
そう言って詰め寄る真墨の言葉を遮り、明石が言い切る。
明石「プレシャスがあるところならどこまでも行く」
真墨「……」
明石「真墨……後は頼むぞ」
握手を求め、明石が右手を差し出す。
真墨は黙ってその手を見つめていたが、握手ではなくタッチを交わすように、その手を叩いて背を向ける。
真墨「宇宙から戻って来ても、もう……お前の居場所はないからな」
明石「そのときは奪い返すさ。この“不滅の牙”がな」
最後に明石が自分のアクセルラーを取り出し、しばし見詰め、ボウケンジャケットの上に残す。
明石「みんな……元気でな」
さくらが無言の笑顔で頷く。
蒼太「チーフこそ、お元気で」
映士は呆れたようにため息をつく。
菜月「チーフ、火星のおみやげ忘れないでね!」
真墨は背を向けた、腕を組んで無言のまま。
明石「じゃあ行ってくる!」
アタッシュケースを手にした明石がドアをくぐる。
菜月「元気でね」
さくら・蒼太「行ってらっしゃい」
決意に満ちた表情の明石の姿が、ドアの向こうに消える。
ゴーゴーボイジャーが海から空へと飛び立って行く。
サージェスミュージアムの中庭で、一同がそれを見上げる。
無邪気に大きく手をふる菜月。
菜月「元気でね──!」
蒼太「先生、もういいですよ」
さくら「そうですか?」
さくらが顔を引き剥がす──なんと、さくら本人ではなく、牧野の変装!
牧野「ふぅ〜……」
真墨・映士「ああぁぁ──っ!?」
映士「本物のさくら姐さんは……どうしたんだ?」
真墨「……まさかっ!?」
事情を悟った真墨と映士が、やられた、という感じで座り込む。
真墨「あぁ〜、もう……」
牧野「大成功!」
笑顔の蒼太。牧野と菜月が拍手。
ゴーゴーボイジャーのコクピット内。
ただ1人、宇宙を目指す明石──のはずが、ドアが開いて現れたのはなんと、さくらだった。
明石「さくらぁ!? お前、なんでこんなところにいるんだ!?」
さくら「チーフ、いえ……明石、さん。私も……宇宙プレシャス探索に加えて下さい……お願いします!」
さくらが深々と頭を下げる。
明石「あ……? 何言ってんだ? これは危険な任務だ! だからお前を連れて行くわけには……」
彼の言い分を言い切る前に、ミスターボイスの声が響く。
ボイス「まぁ〜ついて来ちゃったものは仕方ないよ。2人とも、仲良くね!」
ひときわコミカルな笑顔のボイスのCG。
明石「……戻るわけにもいかないな」
さくら「はい!」
ぱっと明るい笑顔になったさくらが早速、隣の座席へ。
明石「しかし、さくらがそんなに宇宙プレシャスに興味あったとはなぁ……?」
さくら「えぇっ!? 私が一緒に行きたいのはぁ……」
明石「……?」
さくら「……もういいです」
あまりの鈍さに呆れたかのように、さくらが座席に就く。
ゴーゴーボイジャーが大気圏を離脱する。
サージェス財団のとある一室。
ゴードムの心臓を守っていたあの少女が1人、デスクのPCに向かっている。
デスクには脳髄が置かれていた。
少女「まったくレッドくん、鈍感なんだから……」
少女がアクセルラーを手にし、キーボードを叩く。
PC画面に映ったミスターボイスのCGが、少女の操作に合わせて動く。
少女・ボイス「ピンクちゃん、がんばってね」
今まで正体不明と言われていたミスターボイス、その素顔はあの少女だった。
とある崖地。
ダークシャドウ・幻のゲッコウのもとへ、プレシャスを発見した風のシズカが。
シズカ「見つけました、ゲッコウ様! 孫悟空の如意棒!」
ゲッコウ「これは高く売れるぞ。ワハハハ!」
シズカ「ラッキー!」
そこへジャリュウ一族の生き残り2人が奇声を上げつつ現れる。
ジャリュウ「プレシャスを渡せぇ!」
シズカ「何よあんたたち、リュウオーンもいないくせに!」
ジャリュウ「陛下の遺志を継ぎ、ジャリュウ一族を!」
シズカとジャリュウが如意棒を奪い合っているところへ、銃撃音が響く。
ボウケンブルーがサバイバスターを構えている。
ブルー「はぁ〜い」
シズカ「ボウケンジャー! なんでいつも出てくるのよぉ!」
ブラック、聖剣ズバーンを担いだイエローも登場。
イエロー「ネガティブのみなさーん、プレシャスを」
ブラック「渡さないならこっちから行くぞ!」
ジャリュウ「あ〜来なくていいのに!」
ブラックとイエローが突進。
イエローの振るう聖剣ズバーンが一閃。逃げ腰のジャリュウの手から如意棒が宙に舞う。
すかさずそれを、シズカが受け止める。
シズカ「よし!」
ところがそこへ、シルバーまでもが登場。
シルバー「よっ!」
ボウケンジャー4人に囲まれてしまったシズカ。既にジャリュウの姿はない。
シズカ「う……なんなのよ!」
シルバー「はい、プレシャス確保!」
シルバーがシズカの手から、如意棒を難なく取り上げる。
そこへゲッコウが飛来する。
ゲッコウ「シズカ──っ、わしにつかまれぃ!」
シズカ「おぼえてらっしゃい!」
ゲッコウがシズカをぶら下げたまま、飛び去っていく。
ゲッコウ「お、おぉ……重い!」
シズカ「うるさい! 黙れ!」
イエロー「レスキューの仕事はどうしたの?」
シルバーが変身を解く。
映士「新しい赤いのと桃色が入るまで、頼りないチーフを助けてやれとさ」
一同も変身を解く。
蒼太「そうそう蒼太! まだまだ詰めが甘いよ、チーフ!」
菜月「がんばろ、チーフ!」
真墨「チーフ、チーフって……うるさいんだよ、お前ら」
不機嫌そうに真墨が映士から如意棒を受取り、歩き去る。菜月たちも笑いながら後に続く。
断崖の上、真墨がプレシャスボックスに如意棒を収納する。
真墨「ミッション完了だ」
大空を見上げる真墨たち。
真墨「見えるか? さくら姐さん、明石!」
宇宙の明石たちへ向けるように、真墨が天高く右手を掲げ、指をパチンと鳴らす。
真墨「未来は俺に任せろ!」
映士「いつまでも仲間だ!」
蒼太「また逢う日まで、お元気で!」
菜月「皆、ありがとう!」
大空の彼方、キラリと光が瞬く。明石たちが真墨たちに答えたかのように。
大宇宙を行くゴーゴーボイジャー。
真っすぐに前だけに向けられた明石の目は、まさに冒険者そのもの。
そんな彼の横顔を、さくらが見つめて微笑む。
さくら「これからも、よろしくお願いします!」
明石「どこまでも、行くぞ!!」
コクピットの向こうは星の海。
ボウケンジャーの冒険は終わらない。
広い地球の果てまでも、そして無限の宇宙の彼方までも、どこまでも果てしなく続く。
Bouken Dreams On