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仮面ライダーアギトの最終回


G3ユニットを外され、香川県警へ左遷された氷川誠。
四国ヘ向けて飛び立った旅客機を、小沢澄子が見送る。
小沢が空港を去ろうとしたとき、背後に足音。
振り返ると──四国行きの旅客機に乗ったはずの氷川がそこに。

小沢「氷川くん!? あなた……」
氷川「小沢さん……やっぱり僕にはできません……このまま帰るなんて、僕には……!」


翔一がアギトに変身して高位怪人・地のエルに挑むも、苦戦を強いられる。
バーニングフォームに変身し、反撃に転じる。


最 終 話


人を超える者=アギトの脅威を駆逐しようと、アンノウン保護の名目で、小沢からG3ユニットの指揮権を奪い取った北條透。
Gトレーラーに通信が響く。

「本部からG3ユニット。アギト出現との入電中。本部からG3ユニット。アギト出現との入電中」

北條「Gトレーラー、出動します」


バーニングフォームでもなお苦戦を強いられるアギト、シャイニングフォームに変身。
シャイニングカリバーで攻撃を繰り出す。
次第に追い詰められる地のエルが突然、光球と化し、飛び去る。
アギトがマシントルネイダーでそれを追う。


真魚が美杉家に帰宅する。

真魚「ただいまぁ」
太一「真魚姉、大変だよ!」
真魚「何よ、どうしたのよ?」
太一「菜園だよ、菜園の野菜が!」

庭に出てみると、菜園の野菜が枯れている。
翔一が美杉家を出た後、翔一に替わって真魚が育てていた菜園である。

太一「真魚姉、水やりすぎたんじゃない? それとも、変な病気とかさ。やっぱり駄目なんだよなぁ、翔一がいないと」


林の中に浮かぶ黒服の青年のもとに、エルが現れる。

エル「あ……新しい命を……私に……」

青年の手から光が迸り、エルに降り注ぐ。

そこへアギトも到着する。

アギト「あいつは……!」

アギトが再びシャイニングカリバーを抜いて挑むが、強化されたエルの前に劣勢を強いられ、シャイニングカリバーも折られてしまう。
さらにもう1体、風のエルまで出現する。


現場へ急行するGトレーラー。
その前に白バイと車が立ち塞がり、トレーラーを止める。
Gトレーラー内のモニターに、白バイ警官が映る。

北條「な……何事です、一体?」
警官「本部からの緊急命令です、ハッチを開けて下さい」

尾室がハッチを操作する。

北條「ま、待て!」

ハッチが開く。
中に乗り込んできたのは──小沢、そして白バイ警官の変装を解いた氷川。
小沢が北條へ銃を突きつける。

北條「あなたたちは……!?」
尾室「小沢さん、氷川さん!」
小沢「たった今から、G3ユニットの指揮は私が執ります。いいわね?」
北條「……何を考えているのです? こんなことをして、ただで済むと思っているのですか?」
小沢「どうかしら? ……ま、なるようになるわよ」

睨み合いが続く。

北條「きっと……来ると思っていましたよ」

心なしか、北條の顔に微笑が浮かんでいるように見える。
通信が響く。

「G3ユニット、応答願います。G3ユニット、どうかしましたか? 応答願います。G3ユニット、応答願います……」

北條が通信機のスイッチを切り、トレーラーを去る。

尾室「す、すみません! 小沢さん、氷川さん!、僕……僕、ずっと悩んでたんです。本当にこれでいいのかなって……」
小沢「わかったわかった、もういいから、早く席に着きなさい」
尾室「はい!」
小沢「氷川くん、いくわよ。G3-X出動!」
氷川「はいっ!」

氷川がG3-Xシステムを装着。G3-Xとなり、ガードチェイサーで発進する。
その様子をモニターで見る小沢の顔に、笑みが浮かぶ。
彼女の横顔を見る尾室が、涙ぐむ。


アギトが2体のエルの前に翻弄される。


地のエルに敗れて川に落ちた涼が、岸に流れ着いて倒れている。


エルたちの猛攻を受けたアギト、遂に変身が解け、翔一の姿に戻って倒れる。

翔一「おわあぁっ!! う……うぅっ……」
地のエル「塵に帰る時だ……」

そのとき、エルたちの足元に銃撃が炸裂する。
G3-Xが到着したのだ。
気を失った翔一のもとへ、G3-Xが駆け寄る。

G3-X「津上さん、しっかりして下さい! 津上さん、津上さん!」
翔一「あ……」
G3-X「津上さん……!」
翔一「その声……氷川さん……」
G3-X「はい。また戦いましょう、一緒に!」
青年「無駄なことを……あなたはただの人間だ……人の力では、何もすることはできません。人間の運命は、私の手の中にあります……」
G3-X「何!?」
青年「もうすぐ……人類はすべて……自らの手で……命を絶つことになるでしょう……」
G3-X「まさか……自殺者たちは、お前のせいで!?」
青年「やれ!!」

2体のエルが襲い掛かる。
G3-Xは、電磁ナイフ・GK-06ユニコーンを抜いて応戦する。
その様子を、小沢たちがトレーラー内でモニターしている。

尾室「す、凄い……でも、大丈夫なんですか? 氷川さん」
小沢「彼を誰だと思っているの? 彼は氷川誠よ……決して逃げたことのない男よ!!」

G3-Xの奮闘が続く。

地のエル「お前はアギトではない。なぜこれほどの力を……何者なのだ、お前は!?」
G3-X「ただの……人間だぁっ!!」

青年が攻撃を放ち、G3-Xが翔一のもとへ吹き飛ばされる。

翔一「ひ……氷川さん……!」

そこへ駆けつけたバイク──地のエルに倒されたはずの涼。

涼「しっかりしろ! 津上、氷川!」
翔一「葦原さん……」
地のエル「お前は……!?」
涼「俺は……不死身だっ!! 変身っ!!」

涼がエクシードギルスに変身。
翔一も力を振り絞って立ち上がる。
青年の方を見やる。

翔一「人の運命がお前の手の中にあるなら……俺が、俺が奪い返す!!」

腹に変身ベルト・オルタリングが出現。

翔一「変身っっ!!」

翔一がアギト・シャイニングフォームに変身。

アギト、G3-X、ギルスと、地のエル、風のエルの戦い。
激闘の末、G3-Xの最強武器GXランチャーの放ったロケット弾が風のエルに命中。
さらにギルスがエクシードヒールクロウを見舞う。

風のエル「う……うぅっ……」

大爆発。


地のエルと戦うアギト。
空中に2つの紋章が浮かび上がる。
2重のエネルギー波を浴びたシャイニングライダーキックが、地のエルに炸裂。

エル「うぉぉ……うぉぉ──っ!!」

大爆発。


青年が光球と化し、空へ昇ってゆく。
アギトがキックの構えを取る。
大地に紋章が浮かび上がる。

ギルス「何をするんだ津上!?」
アギト「はぁぁ──っ!!」

アギトが頭上の光球目掛けてライダーキックを放つ。
光球の中にキックが炸裂。
光が揺らぎ、衝撃音とも悲鳴ともつかない音が響き渡る。

G3-X「一体、一体何が起こっているんだ!?」


ギルスとG3-Xが空を見上げる中、光球が大爆発──。

ギルス「津上──っ!!」
G3-X「津上さ──ん!!」


美杉家。

真魚「翔一くん……!?」

異変を直感した真魚が、家の外に出る。
空に広がっている暗雲。
辺りが暗くなり、暗雲から無数の光の粒が降り注ぐ。


やがて、空の色が元に戻る。
青年が身を隠していた洋館。
沢木哲也が静かに茶を飲んでいる。
窓の外、枯れた木に、1枚だけ葉が残っている。
彼の隣に、あの青年が現れる。

沢木「あんた……」
青年「あなたに与えた命は……残り少なくなりましたね……」
沢木「怖くはない……」
青年「私は……人間の側からアギトを滅ぼすための使者として……あなたを復活させた……だが、その必要はなかったようです……人間は……いずれアギトを滅ぼします」
沢木「いや……あなたは人間を創りながら、人間のことを何も知らない。人は……アギトを受け入れるだろう。人間の無限の可能性として」

青年「……では、見守ってみましょう……あなたの言葉が……正しいかどうか……人間とは何なのか、もう一度……この目で」
沢木「あぁ。きっと俺が……勝つさ!!」

満足そうな笑みを浮かべ、沢木が窓の外を見る。
1枚だけ残っていた葉が、風に飛ばされ、散る。
沢木が静かに目を閉じる。
青年の姿が消える。

動きを止めた沢木の体が、椅子から落ちる──。


一年後


尾室「諸君、訓練ご苦労だった! だが、我々G5ユニットは、未知なる敵の出現に備え、更なる鍛錬を続けなければならない!」

口髭を生やした尾室。
彼の前に数十人の警官たちが、ずらりと整列している。

尾室「諸君が憧れる氷川誠も、小沢澄子も、日々の精進を決して忘れることはなかった! 今や小沢澄子は警察を離れ、氷川誠も捜査一課で活躍している。だが、きっと2人も、陰ながら君らに大いなる期待を寄せているだろう。その期待を裏切らないようにしようではないか!」
一同「はいっ!!」
尾室「よぉーし! では、焼肉を食べに行こう!」
一同「はいっ!!」

途端に一同が帽子を投げ捨て、浮かれまくる。
満足げな笑顔を浮かべた尾室が、彼らを見つめる。


パトカーを降りた氷川と河野が銃を手に、どこかの倉庫へ突入する。

氷川「柴田秀樹! 強盗殺人容疑で逮捕する!」

倉庫の中での銃撃戦の末、弾丸を切らした犯人が逃走する。

氷川「おとなしくしろ!」

氷川と河野が連携プレーで犯人を捕らえ、氷川が手錠をかける。


事件を解決した氷川と河野が、いつもの屋台でラーメンを啜る。

河野「そう言えば、どうなったんだろうなぁ」
氷川「何でしょう?」
河野「一時、アギトをやっつける法案とかの噂が、まことしやかに囁かれていたじゃないか」
氷川「あくまで噂ですよ……そんな法案が成立するはずがないじゃないですか。人間はそんなに馬鹿じゃありません」
河野「ま、それならいいんだがな」

携帯が鳴る。

氷川「はい?」

外国の大学。
校門には「UNIVERSITY OF WEST LONDON」の文字。
教授室で、小沢が電話をとっている。

小沢「氷川くん? 久しぶり。どう、その後調子は?」
氷川「小沢さん! えぇ、元気でやってます。そちらはどうですか? 確か今、ロンドンだと聞いていますが?」
小沢「まぁまぁってとこかしら……啖呵切って警察辞めたのはいいけど、どうも教授って柄じゃないわねぇ、私の場合」

ドアのノックの音。

小沢「YES!」

女性が入ってくる。

女性「(英語) 先生、授業をお願いします。もう30分も遅れていますが」
小沢「(英語) 細かいことを気にしないの。すぐに行くから」
女性「(英語) わかりました」
小沢「ごめん! 氷川くん、またかけるから」

電話を切る小沢。
相変わらずだな、といった調子で氷川が苦笑する。


大学内、階段を降りている小沢。
下から昇ってくる、見覚えのある姿は──

小沢「北條くん……!?」
北條「お久しぶりです、小沢さん」
小沢「何であなたがここにいるのよ!?」
北條「えぇ、少々あなたが恋しくなりましてね……と言うのはもちろん冗談ですが、実はある事件の捜査でこちらに来てるんです。ついでに挨拶をと思いまして」
小沢「さっさと消えなさい。ロンドンまで来てあなたの顔なんて見たくないわ」
北條「相変わらず口の悪い人だ……それにしても、今ではプロフェッサーですか……どこに行っても、お山の大将がお好きなようですね」
小沢「何だったらあなたも私の授業を受けたらどう……? 少しは賢くなるかもしれないわよ」
北條「いえ、結構です。必要な知識は全て、この頭に入っていますので」
小沢「そうね……嫌味を言う知識だけは詰まってそうね。目一杯」
北條「ま、それはお互い様……ではないですか?」
小沢「はいはい。じゃね」

北條を残し、小沢が階段を降りる。
ふと、その顔に微笑がこぼれる。
それを見送る北條にも、微笑が浮かぶ。


美杉家。
真魚と浩二が勉強に勤しんでいる。

浩二「違うよ、真魚ちゃん。ここはXの4乗だってば」
真魚「違うって。だってほら、ここがこうなってぇ」
浩二「ああ、そうか! ははは」
真魚「もう〜そんなんで本当に医大受かるのぉ?」

美杉「おい2人とも、勉強するのはいいが、もう少し穏やかにできないものかな?」
浩二「あ……すいません……」

太一が階段を駆け下りてくる。

真魚「どぉれ……なんでここ、こうなんの?」
浩二「だってここ、カッコ1プラスX……」
太一「真魚姉、そろそろ晩飯の用意したら?」
真魚「今日は駄目! 勉強があるんだからぁ」
太一「げっ……!」
美杉「よし! じゃあ、あれだ。気分転換に、今日は外でパーッと飯でも食うか?」
真魚「本当!?」
美杉「ん……!」
太一「……って、またあの店ぇ?」
真魚「当たり前じゃない! 他にどこ行くってわけ?」


夕陽が照らす中、涼が土手にバイクを停め、草原に寝転んで空を見つめている。
彼の孤独な境遇を慰めるかのように、1匹の子犬がやって来る。
涼が子犬を抱き上げる。

涼「行くか? 一緒に……」

鼻を鳴らす子犬を胸に抱き、バイクに跨る。

涼「行くぞ」

涼がどこへともなく走り去ってゆく──。


レストランへやって来た真魚たち。

太一・真魚・美杉「こんばんは!」

出迎えたシェフの胸のタイには、アギトのマーク──津上翔一。

翔一「いらっしゃいませ!」

美杉「いらっしゃいました!」
翔一「さ、こちらへどうぞ!」

3人がテーブルにかける。
笑顔で応対する翔一。
レストランの看板には「Restaurant AGITO」の文字。


翔一「何になさいますか?」
美杉「……翔一スペシャル!」
太一「同じ!」
真魚「私も!」

翔一「かしこまりました!」



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