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ペルソナ〜罪と罰〜
最終回・希望>>夢(ノゾミ>>ユメ)

(最終回に至るまでのあらすじ)
「ペルソナ2」と世界観を共有した、もう一つの物語。
主人公・木場一実は夢の中で出会ったフィレモンから「もう一つの自分」…ペルソナ能力を授かる。
そして同じ時期に一実の親友・清水里人も行方知れずになるが、再会した彼はペルソナを刈る存在…「刈り手」として一実の前に立ちはだかる。
同じくペルソナ能力を持つ計都(ケイト)、成衣(なるい)、鈴音(りんね)たちと出会い、共に須間瑠市にある「四つの鍵」を探すため、そして「刈り手」たちと戦うため仲間になることに。
「刈り手」たちを率いているのは化粧品メーカーとしても有名な「ネンフィア・ジャポン」の支社長・日下耶雲(ちなみに里人は専属のモデルでもある)。
耶雲の本当の名は日野精一郎であり、彼の目的は「黒の書」を開き、歴史を改竄する事であった。それには妹・成衣と共に幼少期に親や親族から受けた虐待、覚醒したペルソナで両親を殺害した「罪」を改竄する目的があった。そして里人も一実と共通の幼なじみの少女・土屋マナを死なせた罪を償うために刈り手となっていた。
耶雲は「黒の書」を開くための「赤の書」である鈴音を捕らえ、一実達は鈴音を救うためネンフィアへと乗り込む。
そして黒(シュバルツ)システムの内部まで一実は単身乗り込むが、その時に耶雲から彼が若き日に自殺をしようとしたときに止めたことが今回の事件の引き金となったことを知る。
その言葉に絶望に捕われ、一度は耶雲の甘言に乗せられかけるが、J・F(ジャックフロスト)の命をかけた行動により鈴音は解放され、里人を無意識の世界へと誘う。そして一実も目を覚まし、耶雲を止めるため戦うことを決意する。
計都、成衣も駆けつけ、いよいよ最後の戦いが始まろうとしていた。

(本文)
 フィレモンの間にて。
フィレモン「決戦だな。諸君、よくぞここまで――」
??「相変わらずの高みの見物ですか?フィレモン」
 耶雲の部下を名乗っていた、羅喉(ラゴ)が現れる。
羅喉「なかなか楽しめる連中でしたね。我が実験材料としては」
フィレモン「……自ら敢えて一線から退くことで、時の歯車の進みを替えるとは」
羅喉「私――、いつも見ているだけのあなたとは違いますので。とは言え、そんなあなたも今回は珍しく人間の行動に干渉した――。"赤(ロート)"という少女のペルソナを使ってね。それも自らの力を削いでまで!人間ごときの可能性に賭けるなど、愚かに過ぎますよ!!」
フィレモン「去りたまえ。昏き意志、"這い寄る混沌"…!」
 羅喉はその本当の姿、「ニャルラトホテプ」の姿を曝し、嘲笑を浮かべる。
俺達の戦いは続くぞ
心の海の深淵に 果てがないようにな
運命の行方を握る"特異点"は まだまだいくらでもいるのだ――――――!!

 ネンフィア・黒システムの間。
 一実、計都、成衣のペルソナが耶雲を攻撃するが耶雲は3つのペルソナを同時発動させ耐える。
計都「ぐ…こいつ――同時に3つのペルソナを……!!」
耶雲「"書"に選ばれし者、それはすなわち無限の力を手にする者…!!僕の全身全霊をもって"書"の力の全てを、その功罪の全てを見せてやる!!その上で尚も挑む意志が君達にあるかな!!?」
耶雲(刻の車輪!!)
 刻の歯車を歪めた力が一実達を襲う!
一実「ぐああっっ!!」

 一方、普遍的無意識の中。
里人「一実――!?」
 鈴音は一つの鍵を取り出す。
鈴音「ここは普遍的無意識と呼ばれる心の海――聞こえるよね?みんなの心の声が…!」
里人「マナ…俺は――」
心を開いて あなたの本当の望みは こんな事じゃ無かった筈

 再び決戦の場。
計都「ひるむな」
一実「合体魔法!!」
一実・計都(地雷断)
 ヤマの剣とオーディンの雷が合わさって攻撃!
耶雲「…話にならんね!!」
 耶雲はさほどダメージにも思っていない。
一実「ちッ」
一実(攻撃力強化(タルカジャ))
 耶雲はそれを見越したかのように、
耶雲(泡沫の波紋!!)
一実「強化魔法が解かれた!!?」
 耶雲はペルソナをチェンジする。
耶雲(拡散閃影殺!!)
 影の波動が一実達を襲う!!一実達も大ダメージを受けた!!
耶雲「傷付いた魂は、絶え間無い痛みにいびつに歪む。気付いていたかい?その歪んだ心が悪魔たちを産み、ペルソナを産み出した事を。今の須間瑠は人の歪みそのものなのさ」
計都「くそ…打つ手がねえ…」
耶雲「須間瑠を…世界を救いたければ、歪みを正すしかない!歪みとの共生も、ささやかな延命処置に過ぎないよ。人が人である限り!!」
計都「ご立派だな。世界を救うため、妹を消すか」
耶雲「口には気をつけたまえ!!」
耶雲(メギドラオン)
 万能の力が一実達を襲う!!
一実「うああっ」
耶雲「まだあ!!」
 さらにペルソナを発動させるが、徐々にペルソナの姿も歪みつつある。
成衣「"黒(シュバルツ)"の…形が――」
一実「あの姿…あれは俺が初めて見た時の」
計都「刈り手の言った通りか。あの男の力でもペルソナの形態を維持できねえ――流石のあの男の精神も、壊れつつあるんだ…!」
 かつて"書"の力に取り込まれ、精神を破壊されていった刈り手たちの姿が被る。嘆く成衣。
成衣「もうやめて…!」
一実「成衣さん、泣いちゃ駄目だ」
成衣「一実…」
 決意を込めた眼で耶雲を見据える。
一実「あいつの心の声が聞こえる様だ。あの男…本気で何かを決意している」
あいつを止めるには 本当に止めたいなら、迷っちゃ駄目だ…!
それにまだ 俺達には――

再び普遍的無意識の中。
里人「…聞こえるよ、社長の声も。…そうか!あの人は自分の精神を犠牲に昏き思いを――」
鈴音「日野精一郎を助けてあげて。彼の心が完全に死んでしまう前に、哀しみから救ってあげて。たった独りの人間が、みんなの心を背負う必要は無い。そんなために書の力はあるんじゃないの。里人だって…同じ」
里人「…でも俺は」
鈴音「里人、一実は、一実には解ってる」
一実…
 うつむく里人。
里人「俺は…あいつのようにはなれなくて、だから強くなりたくて――」
鈴音「里人だって、頑張って強くなったじゃない」
里人「…強くなんかなりたくなかった…優しくも、なりたくなかった。ただ…ただ、ずっとみんなで一緒に――!」
 幼い頃の思い出を思い出し、里人も泣いていた。
鈴音「さようなら、里人……!」
 鍵を受け取る里人。

 三度決戦の場に舞台は移る。
耶雲「昏き思いの果て無き力は消せない!!!」
耶雲(メテオクラッシュ)
 隕石の雨が一実達を襲う!!
一実「ぐは」
成衣「ああっ!!!」
耶雲「ここまでだ、運命の少年!!」
 狂気の哄笑を上げる耶雲。
まだ… 俺達には――!
その時、黒システムが光りだした!!
耶雲「!!!何…?」
 「鍵穴」に4つ目の鍵が刺さっていた。
耶雲「か…っ、鍵穴に…」
成衣「あれは!」
計都「4つ目の、鍵…!?」
一実「……里人…!」
 里人の姿が現れる。
耶雲「運命に日和ったかぁ!!!」
里人「ペルソナ!!」
 鈴音が使っていたペルソナ・ヴァルナが発動する!!
ヴァルナ(私は水面の上にあり、秩序を維持する者ヴァルナなり!!)
計都「ヴァルナだと?」
成衣「それに…あの姿――」
一実「鈴音と…融合したみたいに…」
里人(アクアリータイド!!)
水の力が耶雲を攻撃する!!
耶雲「ぬっ」
さようなら マナ…!!
 ヴァルナの力が耶雲を貫く!!
計都「…スゲエな」
一実「ああ!あれが…俺の親友だ!」
 鍵が変化した剣を構える里人。
一実「…絶対来るって信じてたよ」
里人「…だから俺は、おまえが大嫌いだ…」
 里人、そう言いながらも笑顔を見せる。一実も微笑み返す。
計都「力は抑えた。でもまだ"黒"の暴走は止まっていない」
一実「ああ、早く決めねーと手遅れになる。あの男を…救い出すんだ」
計都「一気に行くか…!」
 耶雲は再び立ち上がる。ペルソナは歪んだ龍の形に変わっている。
耶雲「昏き心は果てんよ……!!」
 その表情も、ペルソナに呑まれつつある。
計都「一実!ヤマのLVじゃ話にならん、P(ペルソナ)チェンジを」
一実「嫌だ」
計都「…一実?」
一実「俺は、俺の中にいたヤマ(こいつ)の力を知らなかった。地獄の裁判官としてのもう一人の俺が他人を傷つけていたことも。けど――、けど今、俺はやっとヤマを自分の一部だって認められるんだ。ヤマの力を、俺は最後まで信じる…!!」
耶雲「討てるかい。この身諸共に!!」
 耶雲もペルソナを発動させる。
一実「来る!!」
ヤマ「我が分身よ、昏き心に非情の裁きを」
一実「行くぞ!!」
里人「社長、俺もやっと解ったよ。"書"は心を操る為に産まれたんじゃない。心を無限の海へと解き放つ為に、見失ってしまった心の声を探し出す為に産まれたんだ!」
計都「俺達にもう"家訓"なんぞ必要ねぇ。思いっきり行けぇ!!!」
 鈴音の姿が浮かぶ。
聞こえるよね みんな
私はいつも みんなの心の中に――――!
耶雲「"書"よ――!!心を――」
一実・計都・成衣・里人「合体魔法!!!」
四天修羅 誅滅剣舞!!!
 ヤマ(閻魔天)・インドラ(帝釈天)・ビシャモンテン(毘沙門天)・ヴァルナ(水天)の剣が、耶雲のペルソナに剣の嵐を浴びせる!!!
耶雲「ぐっ、ぐあああああっ!!!」
 叫びを上げ、倒れる耶雲。
これで やっと――
あるべき所へ あるべき形で "書"を繋いで――

 そして平和が戻った須間瑠市。
??「一実く――ん!」
 一実のクラスメイト・伊藤が呼びかける。
一実「おう」
伊藤「ごめーん!待たせた〜」
一実「行くか!」
伊藤「うん!」
 そして歩き出していく二人。
街は 平静を取り戻した
誰も知らない 世界の未来を賭けた戦い…
俺達は 勝ったんだ

 耶雲との最後の死闘の後。"黒"システムも停止する。
計都「…終わったな」
一実「うん。…ネンフィアはどうなるのかな?」
計都「さあな。パリの本社で騒ぎの原因は探るだろうが、"黒"システムの正体を知るには相当掛かるだろうし、当の社長も――」
 成衣、昏睡状態になった耶雲の頭を膝の上に乗せる。
一実「これで…いいんだよな、鈴音」
 その時、鈴音の姿が現れ、そしてフィレモンの声が聞こえる。
彼のお蔭で 昏き思いは心の海深くに封印された
これで本当に"書"を 人の手に委ねることが出来る――
一実「鈴音!」
 そして、二つの光が一実と里人の元へ。
一実「これは…!」
 そう、それは"赤の書"と"黒の書"であった。
一実「俺達が、"赤の書"と"黒の書"を――?」
これが フィレモンとの最後の約束――――
人が背負った辛い運命に 負けない方法
その答えが "書"の中にはきっとある――
一実と里人なら出来るよ
これからは2人で――
 そして、鈴音…マナは消えていく。
成衣「鈴音は、本当に私達の女神だったのね」
計都「ああ」
成衣「私達の夢が、その姿になって――、私達を結び付けて――」
里人「ありがとう。もう…ゆっくり眠ってくれ…」
一実「さようなら、マナ…」

 再び平和の戻った須間瑠市に舞台。
俺はみんなと別れて 元の暮らしへと戻った
戻った俺に 周囲は当然安心と好奇の目で答えたが
何も説明しない俺に 次第に関心を失っていった様だ
両親も ほとんど俺を叱らなかった
全てが夢だったかの様に 何もかも元通りになっていた――
事の始まり 学園(セブンス)祭も無事終わり 季節は冬に――
 ふと横を見る一実。
伊藤「どうしたの?」
一実「あ…いや」
でも 夢なんかじゃない
 看板に張られていたネンフィアのポスターも、里人の写真が白く塗りつぶされている。
ネンフィアは 日本からの撤退を表明した
公式には 収益がどうのと言っていたが
実は 事件の重大さに 必死の収拾を図ったのだろう
 伊藤とデートしている一実。
やっぱり 何から何まで変わったままで――
両親が俺を叱らなかったのも 2人が俺の変化に戸惑ったかららしい
何より
里人は結局 戻ってはこなかった
まるで あの男の心の様に――

 どこかの病院。昏睡状態のままの耶雲が眠り続けている。
医師「では、ご本人にその意志がおありでも、臓器の提供はなさらない――――と」
成衣「ええ、兄は必ず戻ってきます」
医師「…全く…脳死は植物状態とは違うんだぞ。医学的に見て蘇生限界を越えてるんだ!きっと、あと数日で――」
親類「仕方ないさ。本人だけじゃなく家族の了解もいる事だ」
成衣「医者になんか判らない。あなたの心が生きてるって事。私にしか――」
 ふと横を見ると、成衣が幼い日に召喚したペルソナ・キジムナーの姿が見える。
成衣「…そうよね、これでやっと始まり――また一からのやり直し…でも今度は、私が癒してあげる」
 慈愛に満ちた視線を送る成衣。

 3度須間瑠市に舞台。
伊藤「ねえっ、知ってる!?最近噂の"浄化様"ってお呪いの話。インチキ臭くて信じないよねー。ね――♪」
"罪の浄化"
その言葉の通り昏き心を背負って 倒れていった日野精一郎
里人は あの男の後を追ってしまうのだろうか…
 ふと、伊藤が気付く。
伊藤「…あ!雪だよ一実君!!」
一実「本当だ!」
伊藤「ひゃあ珍しい!まだ11月なのに」
 須間瑠市に降りゆく雪。
その時俺達は 同じ空を見ていた

 恵比寿海岸。あの日以来消えたはずの里人がいる。
里人「…雪か。…綺麗だ」

 そしてもう一度、須間瑠市に舞台。
 雪の降る空を見つめる一実。
里人 おまえだって解ってる筈だよな
俺達はみんな 心の海を通して一つに繋がっていると言う事
決して孤独に 罰に怯えるだけの罪人なんかじゃ 無いと言う事を
だから… いずれ――
 金色の蝶がガードレールに止まる。その時、
ヒ――ホ――!
一実「!!」
『オイラ 霜の精(ジャックフロスト)』
『冬になったら また遊べるホー』
一実「あ…」
 懐かしいJ・Fの声が聞こえてきた。
一実「あは…J・F…心配掛けやがって…!」
そうだよな
もう あの頃には戻れなくたって
俺達の心は いつも一緒だ…!
伊藤「やだ!も〜、やっぱ一実君優しすぎ〜。確かにロマンチックだけどさ、そこまでって…」
一実「え…?何で…?」
伊藤「何でってホラ――、一実君」
 伊藤はハンカチを差し出す。
伊藤「…泣いてるよ」
 街灯の上で、J・Fが座っている。
J・F「ホー」

 舞台は変わってどこかの埠頭。計都と黒服の男が話している。
黒服「これが例の、擬似精神システムか」
 "黒"システムのパーツを渡す計都。
計都「…の一部だ。ドサクサの中、どうにかそいつだけ手に入れた。無茶させるぜ」
黒服「ネンフィアJ(ジャポン)の不穏な動向を探る――――それが君の仕事だ」
 計都、皮肉に微笑む。
黒服「よくやった。どうやってもあの社長には近づけなかったのだが。約束の金と…例の"彼女"だ」
 黒服、そう言って計都に書類を渡す。
計都「見つけたか。流石は天下の南条コンツェルンだな」
黒服「"彼女"はある街で母親と暮らしている。つつましいが幸福そうだった、と言う話だ。高校生位の時分の話かね?若気の至り――?」
計都「そんな所だ。それでもどうしても、警官になりたくてな。身上調査で傷が付くと思い込んで、捨てた。俺の正義なんてその程度の代物さ」
 計都、煙草を足で揉み消す。
黒服「で?どうするのかね?」
計都「会うさ。ぶん殴られてもののしられても、今ならはっきりと言える。娘(こいつ)は…俺の"女神"だ」
 写真にはどこか計都に似た眼差しの少女が写っていた。

ペルソナ〜罪と罰〜・完

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