戻る TOPへ

舞勇伝(ぶゆうでん)キタキタの最終回


キタキタおやじ、チキ、ルゥの3人はついに、世界征服を企む魔術師ガガルのもとへ辿り着いた。
どんな願いもかなえるアイテム「マインストの玉」に、キタキタおやじが「キタキタ踊りで世界征服」と願ったため、ガガルはキタキタ踊りで世界征服する男となってしまった。
キタキタおやじはガガルを、ついに見つけたキタキタ踊りの後継者と見なし、必死に説得を試みる──


最終蓑
「キタキタ最終決戦!!


おやじ「キタキタ踊りで悪いことをするのは許しませんぞ!!
ガガル「ほう ならばどうする?」
おやじ「口で言ってもわからないのでは 仕方ありませんな! 口で言ってもわからない人には…… キタキタはぁ〜 よいことに〜使う〜 宝なりぃ〜

チキ「口で言ってる〜っ

おやじの歌声を浴びたガガルが苦しみだす。

ガガル「うわぁああっ!!
おやじ「キタキタのぉ〜 使いみちはぁ〜 よいことに〜

チキ「えっ 効いてる!? これも… 『キタキタ』の戦い方なのか」
ルゥ「そうよ 歌もりっぱな攻撃なのよ!!」

ガガル「くっ…… そっ… そんな… そんなことはないぞ キタキタの力は世界を手に入れるちからぁ〜

チキ「歌が返ってきた〜っ!!

おやじ「なにをいいますか キタキタはそもそも 神をまつるためのおどり〜
ガガル「甘い甘い〜 世界を手に入れるための踊りぃ〜

チキ「すごいバトルだ!!

おやじ「とにかくダメですぞ〜 よい人間になりなされ〜
ガガル「うっさいわ ハゲ〜 キモジジイ〜
おやじ「なんですと もやしのようなわかめ男〜

チキ「直接的な表現が多くなってきた!!」

おやじ「もやしのような かいわれのような 散髪に行かないわかめ男〜

ガガルのビンタがキタキタおやじの顔面に炸裂する。

チキ「顔面をたたいた!!」
おやじ「何をしますか〜っ
ガガル「くどいんだよ!!
ルゥ「確かにくどかったわ」
おやじ「こ 後継者だからとようしゃしませんぞ ここからは手かげんなく本気でいきますぞ!!
ガガル「望むところだ 世界を手にするのは一人でよい!! どちらかが倒れるまで勝負だ!!」

キタキタおやじとガガルの2人が宙に舞い、空中で2人の踊りが繰り広げられる。

チキ「飛んだ〜っ!! こ… これは… キタキタ踊り空中決戦だ!!


このとき 世界中の人々が目撃したのである 空に映し出されたガガルとオヤジの姿を
いわゆる「キタキタの戦い」である

しかし… いったい何を見ているのか おかしいような不安になるような謎の映像であった


ルゥ「これは… どうなったら勝ちなの!?
チキ「やっぱ踊りがうまいほうじゃないですか?
おやじ「この勝負もらったぁ〜っ!!

突如、空から降り注いだ雷がキタキタおやじに命中する。
おやじの踊りにイラついた神が、踊りをやめさせるために落とす雷「キタキタドバーン」である。

おやじ「おわぁああっ!!
チキたち「ああっ オヤジさん」「こんなときに『キタキタドバーン』 神の怒りの雷が!!」
ガガル「フフフフフ なんの魔法を使ったかは知らんが 自爆するとはな!」
おやじ「ま… まだまだ! まだっ… 踊れますぞ!!」
チキ「ガガルは『キタキタドバーン』を知らないんだ」
ルゥ「そうだわ おじさまっ!!」

ルゥがおやじに耳打ちする。

ルゥ「ガガルよりキタキタ踊りをヘタに踊ってください」
おやじ「ええっ!?
チキ「そうか!! そうすれば神の雷がガガルのほうに!!」
ルゥ「おそらくキタキタの世界に通常の攻撃は効きません これしか勝つ方法はありません!!」
ガガル「何をしている さあ勝負だ!!」

おやじ (わたしがキタキタ踊りをヘタに踊りさえすれば魔王を倒せる── 世界を救える──)

おやじは、手を抜いて踊り始める

ガガル「ム? なんだ そのフニャフニャな踊りは!」

おやじ (世界が平和になる!! しかし…)
ルゥ「おじさま
チキ「オヤジさん!!

おやじ「で… できません キタキタ踊りをヘタに踊るなど それだけは… それだけはできませんぞ!!

チキたち (ああ…)

再び、おやじが全力で踊り始める。

ガガル「おっ なんだ 急にキレが戻ったな フッフッフッ それでよい! さぁ オレの人知を越えた悪のキタキタ踊り 暗黒の腰を振り尽くしてくれるわぁあ!!」
おやじ (チキどの ルウどの 許してくだされ 腰のキレ 手のさばきあってこそのキタキタ踊り わたしは踊りますぞ そして── キタキタ踊りとともに死にましょうぞ!!)

今度は2人目がけて、雷が落ちる。

2人「ぐわぁああ〜っ!!

チキたち「両方におちた!!」「やった! ガガルもこれでおしまいだ!!」
ガガル「クックック……」
チキたち「ええっ!?」

おやじは雷に倒れたが、ガガルは無傷で立ち上がる。

ガガル「雷とはまた 戦いにふさわしいスポットライトだな!」
チキ「ガ…ガガルは無傷だ!!
ルゥ「おじさま〜っ!! お…おじさまにガガルに勝てる装備を!!」

強力な補助魔法を操るルゥの魔法のカツラ。しかしカツラがパンチパーマのような妙な形に変形してゆく。

チキ「えっ な…何かカツラの様子がおかしいよ!」

ついにカツラがルゥの頭から勝手に分離し、どこかへと飛び去ってゆく。

チキ「え〜っ!?
ルゥ「魔法のカツラが逃亡したわ!!」
チキ「ええっ じゃあガガルに勝つということは 神も魔法も不可能なの?」
ガガル「ハーッハッハッハ しょせん素人魔法使いのカツラはその程度だ! 一流魔法使いとは違うわ!」

その言葉に、ルゥが何かに気づく。

ルゥ「チキくん 勇者の剣を!!」
チキ「えっ これ!?」

その剣は、剣身に間抜けな人形のようなカバーが付いており、しかも戦闘時に剣が抜けず役立たずの代物。

チキ「どうすんの? これで攻撃を? とてもじゃないけど戦力には…」
ルゥ「ガガルのカツラを取って!!
ガガル「何ッ!?
チキ「ガ… ガガルがカツラ!?」
ルゥ「おねがい 早く!!」
チキ「よ〜し 行け〜っ!!

チキの剣身の人形がびよ〜んと伸び、ガガルのカツラを取り上げる。
ハゲ頭を晒したガガルが、急に苦しみだす。

ガガル「ぐわぁああああああっ!!

チキ「ホ… ホントにカツラだ!!」
ガガル「なっ… なぜわかった!!
ルゥ「『素人魔法使いのカツラと一流魔法使いのカツラは違う』ってさっき言ったわ! もしかしたらと思ったのよ 裸になっても魔力が強いのも何かあるって ガガルのために神さまの用意した勇者の剣は… 厳密には剣ではなく カツラをとるための道具だったのよ!」
ガガル「うおぉぉ 魔力が… オレの魔力がぁ〜っ!!

ガガルが全身から煙を噴き上げ、大爆発──

チキ「わぁ〜っ

煙がやんでゆく。

チキたち「ど どうなった?」「ガガルは…?」

爆発の跡にいるのはガガルではなく、何の変哲もないハゲ頭の老人。

チキ「え…」
ルゥ「おじいさん…? どうなってるの?」
老人「わ わしは…」
チキ「だいじょうぶですか 何があったのですか」
老人「わしは… 考古学者のウラガじゃ そのカツラは… 古い遺跡から出た 悪魔の毛で作られたというカツラなのじゃ」
チキ「悪魔の毛!?


その老人、ウラガの回想──
ウラガが、自分の発掘したカツラの美しさに見惚れる。

「こ… これは なんと美しい」

(しかし うかつにもわしは よく調べもせずにかぶってしまった その結果…)

カツラをかぶった途端、得体のしれない衝撃がウラガを包み込む。

うわぁああ


ウラガ「ものすごい魔力を感じ… そこから先は覚えておらんのです」
ルゥ「おじいさんはカツラの魔力にあやつられて『ガガル』になったのね!」
おやじ「ともあれ我々は… 『ガガルを倒した』ということですかな……」
チキ「そう…ですね… や…」

一同「やったぁ〜っ!!


ガガルをたおした!


悪魔のカツラはチキたちによって燃やされ── その灰が世界にふりそそぐと
ルゥの故郷モヨリ王国では 石にされた人々が元に戻りはじめ──
魔物(モンスター)に殺されたという人々も 何と無傷で戻ってきた!!


モヨリ王国で、石化した人々が元に戻ってゆく。

動ける!!」「動けるぞ!!


チキの故郷の村。殺されたはずのチキの両親が帰って来る。

両親「チキはどこだ」「あの子は?」
村人「あっ お父さんとお母さん!! チキくんはですね 今…」


今……



チキ「あ〜あ ついにやっちゃったね ボクら ところで… 『キタキタ踊りで世界征服』というのはどうなったんですかね」
ルゥ「あ そういえば… ガガルは倒したけど 世の中がキタキタ踊りだらけになってるなんてことは…」

神の声「それはない

チキ「わっ びっくりした!! 唐突に神の声が」
おやじ「『キタキタ踊りで世界征服』をしたガガルを倒したのですから キタキタ踊りの天下はあのひとときだけで終わったのです」
チキたち「あ そうか…」「なるほど…」

おやじ (しかし… 魔王とはいえ あんなにも胸を熱くしたキタキタ踊りのひとときが キタキタ踊りの後継者が── 幻だったというのですか── わたしは──)

月夜の下、おやじがキタキタ踊りを舞い始める。

おやじ (今宵踊りましょうぞ 幻のキタキタ踊りの後継者のために── たとえひとときでもキタキタ踊りが天下を取り── そして わたしは確かに『後継者』と熱く踊ったのだ──!!)

チキ (オヤジさん… 今夜のキタキタ踊りは なんだかビターでメランコリックですよ!)

おやじ「さて チキ殿 わかりましたかな

チキ「えっ?」
おやじ「この旅を通じてキタキタ踊りのことが理解できたでしょう キタキタ踊りはキレが命! そして世界を左右する大切な遺産なのです! ということで弟子入りを許しましょう」

チキ「えっ この旅って… 魔王を倒す旅じゃあ…」
おやじ「魔王よりキタキタ踊りです!!

チキが一目散に逃げ出す。

おやじ「あっ チキ殿 どこへいくのですか〜っ



こうして ボクとルゥとへんな変態のおじさんの旅が終わりました
今回の旅の思い出は一生の宝物ですが
キタキタ踊りは やはり一生踊らないでしょう


ちなみに 必ず戻ると言って国に帰ったギップルは
予想通り ちいとも帰ってきませんでした



舞勇伝キタキタ 完 inserted by FC2 system