これまでのあらすじ
帝都ロンドンを攻撃し地獄に変えたミレニアム。英国を守らんとするHELLSING機関は、多大な犠牲と死闘の果てにミレニアムを
追い詰めたが、最強の吸血鬼アーカードはミレニアムを率いる”少佐”の策謀により虚数となって消滅してしまった。
残されたHELLSING機関長インテグラと女吸血鬼セラスは少佐の喉元に喰らいつき、息の根を止めることに成功。
こうして、ひとつの闘争に終止符が打たれたのであった・・・・
ROMANCIA
(どこかの一室、ファイリングされた報告書を読む一人の青年)
「英米同時バイオテロ事件 別名『飛行船事件』第17次報告」
「被害者 米国全閣僚を含む6万4300名」「英国 371万8917名」
パサッ(ファイルをテーブルに置く青年。彼に話しかける者がいる)
?「今日は剣撃の訓練の日ではないのか いかなくて良いのか」
青年「ええ もう少しサボってから向かいます」「それに私は、もう一度この30年前の事件がおきても」
「私は武器を取らずに解決させるのが役割です」
(そう言う青年に話しかけたのは大英帝国円卓会議議長であるロブ・ウォルシュ退役大将)
ウォルシュ「アイランズよ、お前さんそういう顔をすると、本当にお前のひいじいさんに良く似てるよ」
ザアアアア(ばら撒かれる報告書の山)
(ところ変わって、剣撃の訓練をしている二人。一方が、相手の剣を弾き飛ばした)
?「……ッ…ッ………ッ!」
(衝撃で腕が痺れている相手)
セラス「そこまで、勝負あり!」「インテグラ様の勝ち」
(メットを取るとそこには、左眼に眼帯をした老いた姿のインテグラ)
(時は2030年。ミレニアムとの戦いから30年が過ぎたロンドンだ)
パンパンパン(インテグラに送られる拍手)
?「御見事、御見事、御腕は少しも衰えになりませんな」
インテグラ「十三課(ヴァチカン)の……!!」「応接間でお待ちを願ったはずだが」
(顔に傷のある法皇庁第十三課イスカリオテ機関の男が不敵な様子で笑みを浮かべる)
男「いやいや、ただ待つのは性に合わないたちでしてね。それに待てど暮らせど茶の一杯も出ない。いささか飽きがきたんですよ」
インテグラ「勝手に歩き回られると困る。お戻りいただく」
男「はいはい。では戻るか」
(部下を引き連れて歩いていく男。その影にいるハインケル・ウーフー。セラスと目を合わせる)
ハインケル「シィッ」
セラス「ニッ」
(不敵な笑みを浮かべあう二人)
(邸内を戻っていく十三課の機関員たち)
十三課機関員「間久部機関長。邸内の警備は相変わらずザルです。今なら勝てます」
ハインケル「はひは、ほまへろへはほうほふら(ガキが、お前の目は盲目だ」
(30年前に受けた傷のためしゃべりにくいハインケル)
ゴッ(間久部が突然廊下の壁を殴る)
?「痛ッ」
(どこからか聞こえてくる声。)
機関員「!? これは…!?」
?「痛えだろ、何しやがる!!」
(声と共に闇に覆われていく邸内)
間久部「セラス・ヴィクトリアのカゲだ。館の全域を我々ごと包んでいたのだ」
(冷や汗を浮かべる機関員)
ハインケル「ひはひ、わらひとひかんちょうとひひはえに、へんはくのはんふんはとへる」
(しかし、私と機関長と引き換えに、円卓の半分は殺れる)
間久部「まだだまだ!!我々は失いすぎた。第九次十字軍後、ヴァチカンは戦力を失いすぎた」
「なに、待つさ。我々は500年待った。あと100年、200年何の事も無い。次の第十次はうまくやるさ」
インテグラ「今日はここまでのようだ。皆様御苦労様でした。解散とする」
(先ほどの剣撃の相手をねぎらうインテグラ)
インテグラ「ペンウッド卿、御苦労様でした。良い剣筋です。上達された」
ペンウッド「は、はい、いえまだまだで…ありがとうございます」「あ、あの…おじいさまいえ、
私の祖父も剣技を習われていたのでしょうか」
(祖父譲りの気弱な表情で話すペンウッド卿。それを気の毒そうな顔で見るセラス)
インテグラ「………あなたのおじいさまは、せまりくるナチス兵をちぎっては投げちぎっては投げ、まさに英国無双といった
ありさまで。近づく敵を片っぱしから真っ2つにして最終的に、全身に爆弾をくくりつけて敵の空中戦艦全艦ごと吹き飛んだそうです」
ペンウッド「・・・・・・・・・うそですよね」
インテグラ「本当です、すごく本当です、本当に」
(青ざめた顔で問いただすペンウッドだが、インテグラは平然としている)
インテグラ「本当なので新しいヘリの代金おねがいします」
ペンウッド「またですかーーーーーーーーーッ!?」
インテグラ「おねがいしますね」ギロリ
ペンウッド「は、はい」
(インテグラの迫力に言い返せないペンウッド卿)
ペンウッド「うわああああん」「ひどい」
インテグラ「おねがいしますね」
ダッ(泣きながら駆け出すペンウッド卿)
セラス「大変ですね、あの人も一族も。ほとんどマフィアのやり口じゃないですか」
インテグラ「良いのだ。苦労してもらわねば。今から散々苦労してもらわねばな。私が死んだらHELLSING(王立国教騎士団)も終わる。
以後は政府主導の国家機関がその任を担う、そうあるべきだ。一家が機関を統率する時代ではない。それに、いささか疲れたよ」
セラス「えっ、そんな風には見えませんけどね」
インテグラ「今朝、鏡を見たらまた小ジワが増えてたな」
セラス「えーーー」
インテグラ「で、シワを見ていたらなんだか、ウォルターを思い出してしまってな」
ウォルター(ファイトですぞおじょうさま)
(壁に手を当てて落ち込むインテグラ)
セラス「落ちこまない、そこ落ちこまない。まだダメですか克服できませんか。死んだらとか言わないで下さいよ。
何でしたら血吸いましょうか。ほらほらマスターのまね」
ゴッ(アーカードの格好を真似るセラスに蹴りを叩き込むインテグラ)
セラス「けることないじゃあないですか」
インテグラ「冗談でも言うなバカ。お前は何十年たっても変わらんな」
(すごい剣幕で怒るインテグラ)
インテグラ「大体アーカード何やってんだあのバカ。全然帰ってこないじゃないか。お前帰ってくるって言ったじゃないか!!」
セラス「帰ってきますよ。わかるんですよわたし。血吸われてますから」
インテグラ「………くるくるって言ってもう30年だぞ。30年だ」
(ヘルシング邸の地下。そこには30年前と変わらずアーカードの棺が置かれている)
インテグラ「お前は吸血鬼だからいいかもしれんが」
セラス「小ジワも増えませんしね」
インテグラ「お前は悪い子だ!!この口かこの口が言うか!!」
セラス「ごッごめんなさい、すいませんッ、すいませんッ」
(気にしていることを言われて怒るインテグラ)
(その日の夜。ヘルシング邸では書類をまきちらしてインテグラが眠っている)
(そこに現れた人影。ゆっくりとインテグラに近づき首筋に歯を・・・・)
バキューン、バンバン(飛び起きて拳銃を撃ちまくるインテグラ)
セラス「何事ですか、マスターッ!!」
ドカッ(大砲を持ちドアを蹴って飛び込んでくるセラス。)
パチッ(部屋の電気をつけるセラス。そこにいたのは・・・・)
アーカード「ク…クハッ、ハハッ 手荒い歓迎だ。それに相変わらずやかましい」
セラス「マスターーーーー!!」
インテグラ「襲い帰陣だなアーカード。何をしていた」
アーカード「殺し続けていた。私の中で私の命を。三百四十二万四千八百六十七。一匹以外は全員殺してきた」
「もう私はここにいる。もう私はどこにもいないしどこにでもいれる。だからここにいる」
インテグラ「遅い遅すぎる。遅いよアーカード」
アーカード「すまない」
インテグラ「血を吸う気だったのか、私を」
アーカード「ああそうだ。30年間何も食ってない。腹が減った」
インテグラ「私はもうおばあちゃんだぞ。私は」
アーカード「それがいい」
インテグラ「フン」
(右手の指を噛み血を滴らすインテグラ。それをアーカードに差し伸べる)
インテグラ「おかえり伯爵」
アーカード「ただいま伯爵」
(滴る血液の雫がアーカードの舌に落ちる・・・・)
HELLSING
WRITTEN BY
KOHTA HIRANO
THE END