●前回までのあらすじ
ホムンクルスを操る黒幕・ダンテを倒しアルを取り戻すため、その本拠地たる地下都市へ乗り込んだエド。
ダンテにより”門の向こうの世界”に送られた彼は、再会したホーエンハイムから錬金術の真実を教えられる。
そして、元の世界に戻ってきたエドを待っていたのは、ホーエンハイムとエルリック兄弟を憎むエンヴィーの一撃であった・・・・
(地下都市の大聖堂。腕を刃物に変えたエンヴィーに胸を貫かれたエド)
(練成陣に括りつけられた姿でそれを見ているアル)
アル「兄さん・・・・・・・?」
エド「グハアッ・・・・」
ドサッ (夥しい血を吐き倒れるエド)
(その様子を呆然と眺めていたロゼ)
ロゼ「エドーーーーーーーーー!!!」
(エドに近づこうとするロゼだったが、ライラ(の体を乗っ取ったダンテ)に止められる)
エンヴィー「あっけないもんだ。人間は」
アル「兄さん! 兄さん!! そんな! 兄さんが死ぬわけない!!」
ラース「死ん・・・だ・・・・?」
(右腕と左足をもがれて地面に横たわっているラース)
エンヴィー「そうだ。死んだんだよ、どいつもこいつも。そして、ホムンクルスだけが生き残る・・・」
「ハッハッハッハハハハハハハ!!」
アル「兄さんは死なない! そんなのおかしい! 兄さんは・・・兄さんは・・・・!」
ダンテ「これが現実よ。あるいは代価が足りなかったのかしら? いつだって、代価は少し足りないもの・・・・」
グワアアッ (輝きを増していく練成陣。そこに横たわるアルを目掛けて理性を失ったグラトニーが突っ込んでいく)
(こちらは大総統邸附近。大総統キング・ブラッドレイの家族を護衛する兵士たち、捕まったホークアイが車で移動中)
兵士「?」
(大総統の家族が乗った車を運転している兵士が何かに気づく)
キイイイイイイイ!!(正面から走ってきた車と正面衝突する)
兵士「オイ! 大丈夫か!?」
(別の車の兵士が声をかける)
(大総統夫人と兵士が呻くが、大総統の養子であるセリムは無事のようだ)
(ぶつかった車から降りてきたのはフランク・アーチャー)
兵士「アーチャー大佐?!」
アーチャー「あの車借りるぞ」
兵士「大佐、どちらへ?」
アーチャー「大総統の御宅だ。賊が侵入したのだろう?」
兵士「それは勘違いでした。そちらのホークアイ中尉が・・・・」
アーチャー「ホークアイ・・・・・」
(ホークアイを睨みつけるアーチャー)
アーチャー「何でここにいる?!!」
(言うなり拳銃をぶっ放すアーチャー)
ホークアイ「!」
(拳銃を取り出して応戦するホークアイ)
兵士1「おやめ下さい!」
兵士2「大総統から、司令部で取り調べると・・・!」
アーチャー「きさま何を企んでいるのだ!!? ああ!?」
(兵士に取り押さえられるアーチャー)
セリム「・・・・・・」
(その隙を突いて車から降りるセリム)
(大総統邸。火の海と化した倉庫で息を切らしているロイ・マスタング)
マスタング「ハァッ、ハァッ・・・・・・!」
ズガアアアン!!(爆発する倉庫。消し炭のような状態のキング・ブラッドレイことホムンクルス・プライド)
ブラッドレイ「この程度では命が減るだけでね」
マスタング「!!」
(消し炭状態から見る間に再生を果たすブラッドレイ)
ブラッドレイ「五体バラバラになって爆発したらどうなるか少し興味はあったが」
(言い終わると同時に突っ込み、マスタングに剣を突き立てるブラッドレイ)
ブラッドレイ「そんなに大総統になりたかったかね?」
マスタング「くっ!」
ブラッドレイ「安っぽい野心などお見通しだ。だがそれなら時間をかけるべきだったな。暗殺の実行犯では君は二度と権力の椅子には座らせてもらえない」
マスタング「私は自分の間抜け振りが許せないだけだ! そのために死んだ友に、詫びるにはこれしかない・・!」
ブラッドレイ「では一人で詫びに行きたまえ。ヒューズ准将によろしく」
(言いながら剣に力を込めるブラッドレイ。マスタングの傷口を抉る)
マスタング「ぐああああああああああ!!!」
ドン!(マスタングが絶叫する中、突然ドアが開きセリムが入ってくる)
セリム「お父様!」
(ブラッドレイに声をかけるセリム。柔和な表情で応えるブラッドレイ)
ブラッドレイ「心配ない。賊は捕まえた」
(ブラッドレイの言葉に笑顔を見せるセリム)
セリム「命令に従わなくてすみませんお父様! でも、僕を引き取ってくれたそのご恩に報いたいんです!」
(言いながらブラッドレイに近づくセリム。大きなカバンを抱えている)
(笑みを浮かべてセリムの肩に手を置くブラッドレイ)
マスタング「これが・・お前が・・・愚かだと言った人間だ・・・」「?!」
(表情を変えるマスタング。ブラッドレイがただならぬ様子で汗を流している)
セリム「・・お父様? どうしましたお父様?!」
ブラッドレイ「お前・・・・何を・・・!?」
セリム「あ・・・あの・・金庫から出してきました。火事になったらお父様の大切なものが・・・・」
(言いながらカバンから何かを出すセリム。その首をいきなり締め上げるブラッドレイ)
セリム「・・・?? お・・・・おとう・・・・さ・・・」
マスタング「?!」
(血が吹き出るのもかまわず、剣を強引に引き抜くマスタング)
ベキッ!(セリムの首をへし折ったブラッドレイ)
ブラッドレイ「ぬううっ!!」
(首の骨が折れたセリムを放り捨てるブラッドレイ。駆け寄るマスタング)
ブラッドレイ「!!だから愚かだというのだ!!」
(異常に疲労した様子のブラッドレイ)
(セリムの身を横たえたマスタング。カバンから頭蓋骨を取り出す)
(ホムンクルスの弱点。元となった人間の遺骸の一部だ)
ブラッドレイ「!!!?」
(頭蓋骨を掲げて立ち上がるマスタング。手の甲に練成陣を描いていく)
マスタング「キング・ブラッドレイ・・・・あなたは何度殺せば・・・・・」
(練成陣が発動すると炎が立ち上りブラッドレイに襲い掛かる)
ブラッドレイ「うおおおおおおおおおおおおああああああああああああああ!!!」
マスタング「死ぬのかな・・・?」
(地下都市では、アルがグラトニーに貪り食われている)
ロゼ「やめて・・・・・!」
パアン!(突然、聖堂内に広がる音)
ダンテ「何? 何をしたの?」
エンヴィー「グラトニー!?」
(グラトニーの下顎が崩れている)
エンヴィー「錬金術の・・・分解・・!?」
ダンテ「何てことを! 錬金術はいけないと言ったのに!」
(赤ん坊をロゼに渡してアルの側に近寄るダンテ)
ダンテ「またそんなに減って・・・!」
アル「来るな!!」
ダンテ「!?」
アル「僕にさわるな!」
(ダンテを制したアル。ゆっくりと歩いていく)
ダンテ「何をするつもり?」
(血を流し横たわるエドの側によるアル)
アル「兄さんはまだ死んじゃいない」
(エドに触れるアル)
アル「ほら、こんなに暖かい」「魂はまだ門の中にある。それを取り戻してくればいいんだ。兄さんがしてくれたみたいに・・!」
ダンテ「やめなさい! そんなことをしたら・・・・!」
アル「僕は! 多くの犠牲のおかげで賢者の石になった・・・いや・・もともと僕は・・あの日・・死んでいたのかもしれない・・・」
ロゼ「アル・・・・」
アル「だから・・・・・」
エンヴィー「・・・・・うらああああああああああ!!」
(叫び声を上げ、アルに飛び掛るエンヴィー)
パアン!(それに動ぜず両手を叩くアル)
アル「危ないよ・・・・・」
(部屋中に巨大な練成陣が浮かび上がり、蒼い光に包まれる)
アル「兄さん・・・!」
エンヴィー「!!!」
(大総統邸では、マスタングとブラッドレイの戦いに決着が付いていた)
(息を切らせるマスタングの前には、赤い水に変わり果てたブラッドレイが)
マスタング「ハァ、ハァ、ハァ!」
ボウォ!!(錬金術を使い赤い水に火をつけるマスタング。その中に頭蓋骨を放り込む)
(炎に包まれた頭蓋骨は瞬く間に溶け崩れた)
(ふと横を見るマスタング。セリムの亡骸が目に入る・・・)
(セリムを抱え、大総統邸から出てくるマスタング。その前にアーチャーが現れる)
アーチャー「フッ!」
(笑みを浮かべて拳銃を構えるアーチャー)
ガンガンガン!!(その背後から駆け寄ってきたホークアイが発砲する)
アーチャー「グオッ!」
(弾丸をくらいながらも振り向こうとするアーチャーだが、力尽きて倒れる)
(マスタングの元へ急ぐホークアイ。大総統邸の入り口前で彼は血にまみれて倒れていた)
ホークアイ「大佐! 大佐! 大佐!! ロイ・マスタング!!!」
(呼びかけに応えないマスタング)
ホークアイ「!!? ウワアアアアアア〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」
(横たわるマスタングにすがって泣き叫ぶホークアイ)
(不思議な空間に佇むエド。一瞬アルの姿が見える)
エド「アル・・・?」
(アルに続き現れるエンヴィー)
エンヴィー「な・・なんだ!? どこだここは!?」
エド「門だ」
エンヴィー「えっ!?」
(振り向いたエンヴィーの前に巨大な門が出現する)
エンヴィー「どこにつながっている!?」
エド「確か、俺のときはロンドンとかいう町だったな。親父が言うには・・・」
エンヴィー「親父!? 光のホーエンハイムのことか!?」
エド「ああ・・」
エンヴィー「奴はまだ生きているんだな!!」
(門に向き直るエンヴィー。強引にこじ開けようとする)
エド「やめたほうがいい。何が起こるか・・・」
エンヴィー「ホーエンハイムに会う! 僕は奴を・・・・殺す!」
(門をこじ開けたエンヴィー。向こう側から無数の目がにらみつける)
エンヴィー「連れて行け! ホーエンハイムのところへ!」
(真っ黒い触手に絡まれ、門の中に引きずり込まれるエンヴィー)
(笑みを浮かべていたが、その手足には黒い赤ん坊のようなものがまとわり付いていた)
エンヴィー「邪魔するな!!」「僕は行くんだ!!」
(エドに変身して赤ん坊を吹き飛ばすエンヴィー)
エンヴィー「ホーエンハイムのところへ!」「あいつのところに!!」「父さんのところに!!!!」
(エドの姿から本来の姿へ、さらに巨大な龍のような姿になったエンヴィーは、門の向こう側へと消えていった・・・・)
(エドの目の前で門が閉じる)
エド「アル・・・・・・・・・」
(やがて気がついたエド。眼を開けるとロゼの姿が見える)
ロゼ「エド、生きてるの?」
エド「ああ・・・」
(エドの目から涙が溢れている)
エド「何で涙が・・・?」
(涙を”右手”で拭うエド)
エド「あれ?」
(失ったはずの右手と左足が戻っている。驚いて起きるエド)
ロゼ「アルが・・あなたを練成したの・・・・死んだあなたを・・・」
アル「賢者の石で魂と肉体を復活させた・・・それでアルは!?」
(エドの問いに答えられず目をそむけるロゼ)
エド「アルが・・・消えたっていうのか・・・!?」「アル!! アル!! アル!!」「アルーーーーーー!!!!」
(エドの呼び声に答える者はない。声に驚いたかロゼの赤ん坊が泣き出した)
エド「・・・・・!!」
(一方、地下からいち早く逃走したダンテ。エレベーターに乗っている)
ダンテ「なんて事! こんな状態なのに賢者の石を失くしてしまうなんて!」
(腐りかけたライラの肉体をはだけるダンテ)
ダンテ「プライドに馬鹿な人間たちを追い詰めさせないと!」
ズガアアン!!(突如、爆発音が響いてエレベーターが停止。床を壊して何かが現れる)
ダンテ「!」
(現れたのは食欲の権化となったグラトニーだった)
ダンテ「グラトニー! 何をしているのこんなところで!?」
グラトニー「ぶああああ!!」
(すでに思考能力を失っているグラトニーは唸るだけだ)
ダンテ「お腹がすいたのね? わかるでしょう!? 私が・・!?」
グラトニー「ぶろらああああああ!!」
パアン!! (食欲のまま主人に襲い掛かるグラトニー。両手を打って応戦しようとするダンテ)
(開いたエレベーターの中に二人の姿は無く、穴の開いた床があるだけだった・・・・・)
(地下では体に練成陣を描き、床の巨大練成陣の上で佇むエドの姿が)
(その少し前・・・)
エド「早く行け。悪いけど、あいつも連れてってやってくれ」
(手足をもがれて動けないラースを見るエド)
ロゼ「エドは?」
エド「俺は・・ここを破壊していく。もう二度と誰も賢者の石なんか求めないように・・・」
ロゼ「そうね。あなたもひとりで後から来られるわよね?」「だって今はもう・・・立派な足が付いてるんだから」
(ロゼの言葉に笑みを浮かべるエド)
(そして現在。練成陣を体に描いていたエド)
エド「親父の言うことが確かなら、今ならアルの肉体も魂も門の内側にある」「命の代価はほかに無い」
「俺の全てを捧げても無駄かもしれない」「でも・・・・お前が消えちまうことなんて無いんだ。戻って来い、アル・・・!」
パアアアン!!(両手を打ち、練成陣に手を添えるエド。体と床に描かれた練成陣が光を放つ・・・・)
シェスカ「みなさん、お元気ですか? セントラルもやっと、落ち着きを見せてきました」
(セントラル、大総統府の前で集結している軍人たち。ハボックたちもいる)
シェスカ「大総統が失踪したせいで、驚くほど早く実権は新政府のものになり、軍は政治的な決定権を議会に譲ることになりました」
(グラマンやアームストロングらクーデターを起こした軍人たち。黒服を着た人々も並んでいる)
シェスカ「でも、あちこち攻込んでくる国と戦争は続くみたいです」
(書庫で本を読んでいるシェスカ。ロスとブロッシュが顔を見せる)
シェスカ「それでも、イシュヴァール政策は一変したし、それ以外のこともちょっとずつ良くなっていると信じたいです」
(イシュヴァール人のキャンプ。追放者の老人とレオとリックの兄弟がいる)
シェスカ「マスタング准将の復帰は当分先だと思います」
(ベッドに座っているマスタング。それを看病するホークアイはどこか暗い顔でリンゴの皮をむいている)
マスタング「そんな目をするのはやめたまえ」
(そう言うマスタングは左眼に眼帯をしている)
ホークアイ「作戦は完璧でした。なのに私が間に合わなかったために・・・」
マスタング「完璧などありえない。この世界は不完全だ」「だから、美しい」
(ホークアイの髪に優しく触れるマスタング。そんな彼の口にリンゴをつきつけるホークアイ)
(そんな様子を見ながらのんびりと床で寝そべっているブラックハヤテ号)
シェスカ「その後、アルフォンス君の様子はどうですか?」
(肉体を取り戻したアルが犬のデンと遊んでいる)
シェスカ「発見された時、10歳の少年の姿だったこともそうですが、お母さんを練成しようとしたあの日からの記憶が、
失われていることには驚きました」
(アルが遊ぶ姿を見守っているウィンリィとロゼ)
シェスカ「まだ、彼は何が起きたか何も思い出せないままなのですか? それに、エドワードさんはほんとにもう・・・・・」
アル「あっ! 先生!」
(向こうからイズミとシグ、メイスンにピナコがやってくる)
(赤ん坊をあやしてやるアルやメイスンたち。その様子を見ているイズミ、シグ、ピナコ)
ピナコ「やっぱりエドはもう、どこにもいないのかねえ?」
イズミ「たとえ人の命を代価にしても、人体練成は叶わないでしょう。アルが、あの姿になったのは、彼らが費やした四年という月日の全てを、代価にしたということなのかもしれません」
ピナコ「アル、最近錬金術の本を読んでいるんだ。昔みたいに」「まるでエドのことを忘れまいとするみたいにね」
イズミ「・・・・・・・・」
ピナコ「それと、あのラースという子。ウィンリィが機械鎧(オートメイル)をつけてあげたよ。エドのために用意しておいたものをね」
(もぎ取られた右腕と左足にオートメイルだからをつけているラース)
シグ「今はどこに?」
ピナコ「いなくなっちまった」
イズミ「そうですか・・・・・」
(夕方、母・トリシャの墓の前に立つアル)
ウィンリィ「もういちど修業したい?」
(テーブルについているアルたち)
アル「うん、先生のところで。ダメですか?」「ぼく、もっと勉強したいんです。錬金術のこと、等価交換のこと、そしていつか、
兄さんとまた会いたい」
(その言葉にハッとするウィンリィ。何も言わないイズミやピナコ)
アル「どうすればいいかわからない。でも、錬金術を学んでいれば、いつかまた兄さんと会える。そんな気がするんです」
ロゼ「アル・・・・・」
アル「だめですか・・・・・?」
(何も言わずじっとアルの顔を見るイズミ。真剣な眼差しでそれを受け止めるアル)
イズミ「・・・その目には弱いねえ・・・」
アル「・・・・!」
(笑顔になるアル)
(リゼンブールの駅。列車に乗っているアルと見送るウィンリィたち)
ウィンリィ「アル。ひとつだけ約束して」
アル「?」
ウィンリィ「わたしも、もっともっと修業して最高のオートメイル技師になる。だから約束して、帰ってくるって」
「かならず、元気で帰ってくるって」
アル「大丈夫! 勉強して、きっと兄さんを見つけて帰ってくるよ」
(アルの言葉に笑顔で返すウィンリィ)
プァーーーーー!!(出発した列車。いつまでも見送るウィンリィ)
(ここはどこかの集会場。怪しい集団が怪しい呪文を唱えている)
?「今日はここまでにしましょう」
(鬚を生やした男が言うと皆が解散した)
男「お付き合いをいただいてありがとうございます。ホーエンハイム博士」
(外を連れ立って歩く男とホーエンハイム)
ホーエンハイム「あなたたちは、本当に魔術を?」
男「神話にあるトゥーレと呼ばれる島・・・・それを我々トゥーレ協会は、神の住まう土地と考え、そこにいたる道を探しているのです。
どうぞ、これからもよろしくお願いします」
ホーエンハイム「わたしも、道を探す者ですから。ハウスホーファー教授」
(町中を歩くホーエンハイム。貧しい様子の人々が多い)
ホーエンハイム「一個14マルク? ひどいなあ。まったく、このインフレってやつはいつまで続くんだ?」
(値段にぼやきながらリンゴを買うホーエンハイム)
●ミュンヘン1921
(ドアを開け中に入るホーエンハイム)
ホーヘンハイム「? どうした、エドワード?」
(見ると、エドがなにやら準備している)
(彼の右手は動かない義手のようだ)
エド「それ」
(資料を指差すエド)
ホーエンハイム「『液体燃料ロケット・・・ゴダード』?」
エド「そいつはアメリカ人だけど、同じ研究をしているやつがトランシルバニアにいる」
ホーエンハイム「ドラキュラっていうんじゃないだろうな?」
エド「オーベルトっていう。まだ学生らしい。会ってくる」
ホーエンハイム「会ってどうする?」
エド「彼はロケットで宇宙に出ることを考えてる。俺の世界に、宇宙に出ることで近づけるかもしれない。あそこはエーテルもあるしな」
ホーエンハイム「アインシュタインは読んでいないのか?」
エド「あいつは胡散臭い」
ホーエンハイム「錬金術が使えないなら機械技術か・・・・・・・・」
エド「・・・・・・俺はあいつの魂と肉体を結びつけて再構築したはずだ。だけど、気づいたら俺だけこっちの世界に来ていた」
ホーエンハイム「自分の精神と肉体を失わぬには、こちらに抜けるしかない。無意識にそれをしたんだろう」
エド「だけど・・せっかくアルがくれたものをまた無くしちまった・・・・」
(自分の義手を見てつぶやくエド)
ホーエンハイム「すべてが完全というわけにはいかんさ。世界は不完全なものなのだからな・・・」
(身支度を整え、カバンを持って外へ出て行くエド。それを見送るホーエンハイム)
エド「俺・・・自分の命を代価にアルを練成したつもりだった・・・なのに俺は生きてる・・」
「結局俺は、代価無しに何かを得ちまったのかな・・・・?」「それとも・・・アルはあのまま・・・・」
ホーエンハイム「お前たちは旅をしてきた・・・・」
(ホーエンハイムの言葉に振り返るエド)
ホーエンハイム「その間に会った人・・見た物・・・苦しみ・・努力し・・体験した全てのこと・・・それが・・・」
「お前の代価じゃないのか?」
(ホーエンヘイムの言葉に笑顔を見せ、再び振り返るエド)
(列車に乗り、ロケットの設計図らしきものを広げるエド)
エド(今はまだ、どうすればお前のところに帰れるのかわからない。でも・・・きっと帰ってみせる・・)
(また会おう・・・・アル!!)
アル「人は何かを得るためには同等の代価が必要になる。等価交換の原則だ」
(イズミとともに列車にのっているアル)
アル「あのころの僕らは、それが世界の真実だと信じていた」
「でも・・・本当の世界は不完全で、その全てを説明できる法則なんて存在しなかった」
(エルリック兄弟の家の焼け跡)
アル「等価交換の原則も・・・・・」
(魂を持たぬ人形であるニーナを抱えるタッカーの姿)
アル「それでも僕らは信じている・・・・・」
(イシュヴァール復興に勤しむ人々)
(町で買い物をしているマスタングとホークアイ)
アル「それでも僕らは信じている。人は代価無しに何も得ることはできない」
(ヒューズの墓参りをしている家族とシェスカ)
アル「僕らが受けた痛みは、きっと何かを得るための代価だったはずだ」
(リゼンブールで暮らすピナコとロゼ)
アル「そして、人は誰でも、努力という代価を払うことで、必ず何かを得ることができると」
(何かを研究しているトリンガム兄弟)
(仕事に勤しむウィンリィ)
(なぜか筋肉を誇示しあうアームストロングとブレダ。それを見ている軍人たち)
アル「等価交換は世界の原則じゃない」「いつかまた会う日まで交わした・・・僕と兄さんの約束だ」
(窓の外へ”左手”を伸ばすアル)
(同じころ、エドは”右手”を窓の外へ伸ばしていた。その腕にオートメイルのイメージが重なる)
(世界は違えど、同じ時に伸ばされたふたつの手)
(エドの”右手”は太陽を掴むように拳を握る・・・・・)