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●前回のあらすじ

イリヤを誘拐し、聖杯の降臨を目論む言峰綺礼と英雄王ギルガメッシュ。

聖杯を破壊せんとする衛宮士郎とセイバーは、聖杯の降臨地である柳洞寺へ向かう。
永遠の別れが避けられぬことを感じながら。

今ここに、第五次聖杯戦争最後の戦いが幕を開けた・・・・




  (言峰の放った”この世全ての悪(アンリ・マユ)”、聖杯より溢れだした泥に飲まれた士郎)
  (そこには夥しい呪いが渦巻いていた)



死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね
  


  (無数の怨嗟の声が、苦悶に満ちた顔が士郎を取り囲み体を押さえつけている)

士郎「うわああああああ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!!」

  (手足を掴まれ絶叫する士郎)


死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね


士郎(こんなもの! 親父はこんなものを何年間も背負わされたっていうのか!?)


  (苦しむ士郎の脳裏に在りし日の切嗣との会話が浮かぶ)



  (縁側で座る切嗣と幼い士郎)

切嗣「子供のころ、僕は正義の味方に憧れてた」
士郎「まかせろって。爺さんの夢は俺がちゃんと形にしてやっから」
切嗣「ああ・・・・安心した・・」

  (微笑を浮かべる切嗣)



士郎(そうだ! 衛宮士郎が本当に衛宮切嗣の・・・・正義の味方の息子なら・・・・!!)



  (言峰に重傷を負わされた遠坂凛の姿を思い浮かべる士郎)

凛「士郎・・・やるからには死んでも勝ちなさい・・・」



士郎(!! 何があっても・・・・!!)



  (柳洞寺の戦いの前のセイバーの言葉を思い浮かべる士郎)

セイバー「言峰はあなたが倒すべき敵だ」



士郎(あの男には負けられない!!)



  (聖杯の泥を操る言峰の姿も浮かぶ)

言峰「命を賭けろ。あるいは、この身に届くやも知れぬ」



士郎「ぐううううう!! ぐああああああああ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!」



  (士郎の絶叫とともに、彼を捉えていた泥の球体にヒビが入っていく)

言峰「!!」

  (言峰の驚愕と同時に球体が粉砕され、解放される士郎)
  (苦しみながらも言峰を睨みつける)






●最終回 全て遠き理想郷





  (聖杯と化しつつあるイリヤの前で対峙する士郎と言峰)

言峰「バカな・・・アレを振り払ったというのか・・・・お前は・・?」
  
  (言峰の言葉に答えず、腰に差したアゾット剣を引き抜く士郎)

言峰「あきれたな。アレから逃れたかと思えばその短絡思考。もはや万策尽きたということか?」
士郎「うるさい! はじめっから策なんて、持ってねええええええ!!」

  (アゾット剣で言峰に斬りかかる士郎)

士郎「ああああ!!」
言峰「フフフフフフ!!」

  (再び聖杯の泥を投げつける言峰)

士郎「ううううああああああ!!!」

  (泥に雁字搦めにされた士郎は再び封じられた)



  (一方、セイバーとギルガメッシュは・・・)

ギルガメッシュ「天地乖離す開闢の星(エヌマ・エリシュ)!!!!」
セイバー「約束された勝利の剣(エクスカリバー)!!!!」

  (二人のサーヴァントの宝具がぶつかりあい、すさまじい衝撃を生み出している)

ギルガメッシュ「フハハハハハハハ!!」
セイバー「ぐ・・・・!!」

  (威力で勝るエヌマ・エリシュに押されたセイバーは吹き飛ばされてしまう)

セイバー「うわああああああああ!!!」

  バシューン!ドゴーン!(地面を削りながら後方へ弾き飛ばされたセイバー)

セイバー「ぐうう・・・・・」
ギルガメッシュ「フフ・・・」

  (余裕の表情で乖離剣エアの構えを崩さないギルガメッシュ)
  (その姿を睨みつけるセイバー)



  (再び”この世全ての悪”に飲まれた士郎。前回と同じく無数の悪霊に抑えられている)

士郎(これが・・俺の役目なら・・・まだできることが残っている!)





  (士郎が決意したころ、セイバーもまた立ち上がっていた)

ギルガメッシュ「ん?」

  (剣で身を支え立ち上がるセイバー。ギルガメッシュを睨みつける)

セイバー「!?」

  (突然、何かを感じたセイバー。前に手を伸ばす)

ギルガメッシュ「エヌマ・エリシュ!!!」

  (再び放たれたエヌマ・エリシュがセイバーを襲う!)



  (泥の中の士郎。彼もまたセイバーと同じものを感じていた)

士郎「!?」
セイバー(あなたは私の・・・・)
士郎(投影、開始(トレース、オン)!)

  (目を閉じて集中する士郎。投影魔術で何かを生み出そうとしている)


セイバー(あなたは私の・・・鞘だったのですね・・・)


  (士郎が投影した何かは輝きを放っていた)

士郎(彼女が・・・・・夢見た・・・・・・理想郷・・・・)
  (その名は・・・・!)




士郎、セイバー「「全て遠き理想郷(アヴァロン)!!!!!!」」





  (聖剣エクスカリバーの鞘。アーサー王の手から失われたそれが、士郎とセイバーの前にあった)


  (鞘から放たれた黄金の光が士郎とセイバーを包み込む)


  (光に包まれた士郎は泥の球体を再び砕いた)


言峰「と・・・投影魔術だと・・・!?」



  (そしてセイバーは、せまりくるエヌマ・エリシュのエネルギーと対峙)

セイバー「・・・・はあああっ!!!!」

  (剣でエヌマ・エリシュをうけとめたセイバー。そのままギルガメッシュへ弾き返す)

ギルガメッシュ「!?」

  (地面を砕き周囲を粉砕するその様子にひるむギルガメッシュ)
  (その隙を突いて、突撃するセイバー)

セイバー「はああああ!!」


士郎「うおおおおおおおおおお!!!」

  (時を同じくして、言峰に突進する士郎)
  (聖杯の泥を投げて応戦する言峰)


セイバー「でや〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!」

  (光がエクスカリバーに集まり輝きを増していく)

ギルガメッシュ「おのれ! そのような小細工を!!」

  (乖離剣エアが回転し力が放たれる)

セイバー「エクス・・・・」
ギルガメッシュ「エヌマ・エリシュ・・」
セイバー「カリバーーーーーーーーーーー!!!!!」
ギルガメッシュ「!!!!」

  (一瞬速く振るわれたエクスカリバーを袈裟切りに喰らい、血を吐くギルガメッシュ)


  (そして、士郎。聖杯の泥を避け言峰の元へ走る)

士郎「言峰・・・綺礼!!!」

  (言峰に突進する士郎。アゾット剣が言峰の心臓に突き刺さる)

言峰「ぐあああ!!」

  (言峰の心臓に刺さったアゾット剣に拳をたたきつける士郎)

士郎「レスト!!」

  (士郎の解放の言葉とともに、アゾット剣に蓄えられていた魔力が言峰の内部で炸裂した)

言峰「!!!」




  (セイバーに斬られたギルガメッシュは・・・)

ギルガメッシュ「アヴァロン・・・・・かの王が死後にたどり着くといわれる理想郷・・・・・」
       「五つの魔法すら寄せつけぬ・・・・何者にも侵害されぬ究極の護り・・・・」
       「それこそが・・・きさまの真の宝具・・・・・伝説に言う聖剣の力か・・・!」

  (血を吐きながらどこか笑みを浮かべているギルガメッシュ。手を伸ばしセイバーの髪に触れる)

ギルガメッシュ「憎らしい女だ・・・・最後まで・・・このオレに刃向かうか・・・」
       「だが許そう・・・手に入らぬからこそ美しいものもある・・・・」

  (徐々に体が粒子となり薄れていくギルガメッシュ)
  
ギルガメッシュ「ではな・・・騎士王・・・・い〜や・・・なかなかに・・・楽しかったぞ・・・・」

  (粒子となって消え去ったギルガメッシュ)




  (心臓にアゾット剣を突き立てられた言峰。驚愕の表情を浮かべる)

言峰「なぜだ・・・? なぜ・・・お前がこの剣を持っている・・・?」
士郎「それはオレの物じゃない。遠坂から預かった物だ!」
言峰「そうか・・・以前・・・気紛れに・・・・どこぞの娘にくれてやった・・・・」
  「あれはたしか・・・・十年前か・・・・なるほど・・・私も衰えるはずだ・・・・・」
  「グハッ!!!!」

  (ついに力尽き、聖杯の泥の中に落ちる言峰)

  (イリヤのほうを見る士郎)
  (と、イリヤが解放される)

士郎「トレース、オン」

  (布を投影し、落ちてきたイリヤを受け止める士郎)
  (イリヤは穏やかな様子だ)

  (士郎の背後から近づくセイバー)

セイバー「聖杯を破壊します」
士郎「・・・・・・・」

  (士郎の前に立ち、聖杯と対峙するセイバー)

セイバー「マスター、命令を。あなたの命がなければ、あれは破壊できない。最後の令呪を使ってください」
士郎「・・・・・・・」

  (歯をかみ締める様子の士郎)

セイバー「士郎・・・・あなたの声で聞かせて欲しい」
士郎「!・・・・・・・・・」

  (セイバーの言葉に、出会った時のことを思い出す士郎)

士郎(俺は・・・・セイバーを愛している・・・・)

  (おいしそうにご飯を食べ、士郎とデートした時のセイバー)

士郎(誰よりも幸せになって欲しいと思うし、一緒に居続けたいと願っている・・・・・)
  (けれど・・・・)

  (士郎から魔術刻印を分け与えられ頬を染めるセイバー)

士郎(本当に彼女を愛しているならそれは違う)

  (戦いで傷つきなおも立ち上がるセイバー)

士郎(傷つき、それでも戦いぬいたセイバーを愛した・・・・)

  (”アーサー王”としてブリテンの兵を率いたセイバー)

士郎(彼女の誇りを汚すことだけはしてはならない)



士郎「セイバー・・」

  (長く閉じていた目を開く士郎)

士郎「その責務を果たしてくれ」

  (セイバーが構えた聖剣の輝きが増していく)

セイバー「はっ!!」

  (聖剣エクスカリバーが振るわれ、その光が聖杯を破壊し尽くした・・・・)




  (戦いは終わり、明け方に佇む士郎とセイバー)
  (セイバーの背中を見つめる士郎。その手から令呪が消えてゆく・・・・)

セイバー「これで終わったのですね」
士郎「ああ。これで終わりだ」
セイバー「あなたの剣となり敵を討ち、御身を護った。この約束を果たせてよかった」
士郎「そうだな・・・・よくやってきたな・・・」
セイバー「最後にひとつだけ伝えないと・・・・・」
士郎「・・・・・・・・・・」

  (士郎の方に振り向くセイバー)

セイバー「士郎・・・あなたを・・・愛している」

  (答えずとも笑みを浮かべる士郎)

  (日の出の眩しさに目をつぶる士郎。目を開けたときには、すでにセイバーの姿は無かった)

士郎「ああ・・・・本当にお前らしい・・・・・」

  (美しい日の出の光を見つめ続ける士郎・・・・)






  ?「先輩・・・・先輩・・・・」

  (誰かの声に目を覚ますツナギ姿の士郎。声をかけたのは桜だった)

士郎「う〜ん・・・おはよう、桜」
桜「朝食の支度できてますよ先輩」
士郎「えっ? あっ、お前今日弓道部の大会だろう。朝飯ぐらい俺が作ったのに」
桜「いつもと同じ朝を迎えないと、調子が出ないんです」
士郎「あそっか、悪い」
?「キャ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」

  (突然、聞こえてくる悲鳴。庭でバイクに乗った大河とイリヤが暴走している)

イリヤ「タイガ、止まりなさい!!」
大河「ブレーキよ、ブレーキ!!」
士郎「!?」

  (庭に出てきた士郎。暴走する様子を見て絶句する)
  (さらに暴走するバイクはなぜか士郎の方へ突っ込んでくる)

大河「どいてどいてどいてどいて〜〜〜〜〜!!!」
士郎「うわあああ!!」

  ドーーーン(派手にぶつかったらしい三人)


  (どうにか暴走が収まり、食卓に着く衛宮家の面々。顔に絆創膏を貼っている士郎と大河)

大河「いや〜士郎もたくましくなったもんよねえ。バイクを素手で受け止めるなんて」
士郎「そりゃあどうも」
イリヤ「シロウ遠慮せずに言いなさい。いつでもタイガーの寝首をかいてあげる」
大河「何よそれ! ちょっと、親切でうちに居候させてあげてんのに! 生ゴミの日にポイしちゃうぞ!」

  (大河とイリヤのケンカが始まった。ため息をつく士郎)
  (桜が揚げだし豆腐を持ってくる)

大河「きゃ〜〜〜! 朝から揚げ出し豆腐〜〜〜」
イリヤ「タイガーはしたな〜〜い」
大河「こいつ!」

  (機嫌が直ったのもつかのま、イリヤの一言にまたも怒った大河。イリヤを捕まえて大回転させる)

桜「『おいしい』って言ってくれたから・・・」
士郎「あっ・・」

  (懐かしげに揚げだし豆腐を眺める士郎)



  (桜が舞散る道。学生たちが通っている)

男学生「好きだ〜〜〜〜! 俺は俺が大好きだ〜〜〜〜!!!」
女学生1「なんだあれ?」
女学生2「昨夜のトレンディドラマの見すぎ」

  (カバン片手に信号を待つ士郎。ふと見ると、道路の向こうに凛がいる)


士郎「言峰教会に新しい神父が来たらしいな」
凛「そうね。柳洞寺の再建も進んでいるし、とりあえずは元通りってとこかしら」

  (道を歩く二人。凛が士郎に振り返る)

士郎「?」
凛「もっと、落ち込んでいるかと思った」
士郎「フッ、じゃあ落ち込んでいたら、慰めてくれるのか?」
凛「まさか。蹴り入れて一日で立ち直らせてやったわよ」
士郎「プッ・・・」
凛「なによお!」
士郎「フフッ! 未練なんてきっと無い」
凛「士郎の中では決着をつけたのね?」
士郎「ああ。いつか記憶が薄れて、あいつの声も、あいつの仕草も忘れていくかもしれない」
  「それでも、セイバーってやつが好きだったことだけは、ずっと憶えてる」

  (凛に背を向けて行く士郎)

凛「士郎!」
士郎「先に行っててくれ!」

  (道路の向こうへ走っていく士郎。その後姿をじっと見ている凛)





  (森の中。騎士に抱えられ、木陰にもたれかけられた”セイバー”ことアーサー王)

騎士「アーサー王。すぐ兵を呼んでまいります。今はこちらに」
セイバー「ベディヴィエール」
ベディヴィエール「!! 意識が戻られましたか!」
セイバー「うん、少し夢を見ていた・・・」
ベディヴィエール「夢ですか・・・?」
セイバー「ああ、あまり見たことがないのでな。貴重な体験をした」
ベディヴィエール「では、お気遣い無くお休みください。また目をつぶれば、きっと夢の続きが見られるはずです」
セイバー「夢の続き・・・同じ夢を見られるのか?」
ベディヴィエール「・・・・・・はい、私にも経験があります。強く願えば・・・・」

  (苦しげに顔をゆがめるベディヴィエール)

セイバー「そうか・・・そなたは博識だな」「ベディヴィエール。我が剣を持て」
ベディヴィエール「!」
セイバー「よいか。この森を抜け、あの血塗られた丘を越えるのだ。その先にある深い湖に、我が剣を投げ入れよ」

  (馬に乗り駆けてゆくベディヴィエール)

セイバー「ゆくのだベディヴィエール」

ベディヴィエール「・・・・・!」

  (顔をゆがめるベディヴィエール)

  (大樹に寄りかかるセイバー)



  (こちらは冬木市。桜や大河、イリヤに凛たちが日々を送っている中、士郎はひとり橋にいる)
  (一陣の風が冬木市に吹く。それはアーサー王の時代にも同時に吹いたようだ・・・)

士郎「こんなに近くに感じるのに、手を伸ばしてもつかめない」
  「それでも、届かなくとも、胸に残るものがあるだろう」
  「同じ時間にいて、同じものを見上げた。それを憶えているのなら、遠く離れていても、ともにあると信じられる」
  「今は走り続ける。遠くを目指していれば、いつかは目指すものにも手が届くはずだから・・・・」




  (森の中、馬で駆け戻ってきたベディヴィエール)

ベディヴィエール「王。剣は湖の婦人の手に、確かに」
セイバー「そうか。胸を張るが良い。そなたは王の命を守ったのだ」
ベディヴィエール「・・・・・・・・」
セイバー「ベディヴィエール・・・・」
ベディヴィエール「あ・・はい」
セイバー「今度の眠りは・・・・少し・・・・・長く・・・・・・・」

  (ゆっくりと両目を閉じるアーサー王)



ベディヴィエール「見ているのですか・・・・アーサー王?」「夢の続きを・・・・・・」



  (ベディヴィエールの問いに答えることもなく、アーサー王は穏やかな眠りについた・・・・)





F I N



Fate/stay night












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