プレイボール 最終話
墨谷高校再出発の巻
ファーストベースに当たるラッキーなヒットを放った五十嵐だったが、
セカンドベースへ突っ込みギリギリでタッチアウトになりチェンジになってしまう。
五十嵐が谷原高校の守備陣に話し掛けられる>>
谷原「きみ一年生?」
イガラシ「は はあ」
谷原「ナイスバッティング たいしたものだ」
イガラシ「なにあれしき これからスよ」
キャプテン谷口が五十嵐に近づく>>
谷口「何か言ったのか?」
イガラシ「べつに…」
墨谷ナインがベンチ前で円陣をくむ>>
谷口「いいかみんな この回からのバッターは甲子園でもならしたほどの打線だ我々の力ではまず抑えきれる相手ではない ただ胸を借りるつもりで全力でぶつかることだ」
選手交代をチームメイトに告げる>>
谷口「ショートに五十嵐 ライトに松本 センターに井口が入る」
谷口が審判に交代を告げる>>
谷口「ショート ライト センターかわります」
谷原側ベンチで>>
村井「ほーう 墨谷も万全の構えをしいてきたな」
谷原監督「円陣をくめ!」
谷原ナインが呆然としている>>
谷原監督「聞こえんのか!円陣を組めというのが!!」
慌てて円陣を組む>>
谷原監督「やつらのスコアブックにはたとえエラーによる得点とはいえエース村井にかわってから三点と記されてるはずだ しかもそのうち一点はレギュラーに入れ替わってからとったものとやつらは記憶していうだろうそうだな?」
佐々木「は はい」
谷原監督「墨谷を徹底的に叩け! 叩きのめして谷原への恐怖心でこれまでの試合を忘れさせてやるんだ!!」
この回のトップバッター(背番号3)が滑り止めをつけながら>>
三番「ムキになっちまってまあ 三点の内容なんてエラーとベースに当たったラッキー安打じゃねえか 監督にはあの墨谷が要注意にうつったんだろうか」
このバッターがバッターボックスに入る>>
谷口「まず左バッターか たのむぞバック!!」
キャッチャー倉橋がサインを考えながら>>
倉橋「妙なかまえだな とりあえずここらで様子をみよう」
谷口の第一球が外角に外れる>>
谷原監督「長打はいらん まずは出塁だぞ」
三番「わかってます」
倉橋がサインを考える>>
倉橋「そうとうな自信だな もうすこし内側をついてみるか」
谷口「む」
谷口の第二球が外角に外れる>>
倉橋「谷原のレギュラーとあってかたくなってるかな」
倉橋が外角カーブのサインをだす>>
谷口の第三球が打たれ、打球が一,二塁間を抜ける>>
谷原監督「よしよし それでいい」
谷口「内角のヒザもとのタマを…」
倉橋がマウンドへ行き>>
倉橋「ドンマイ ドンマイ このさい守備を信頼していこう!」
次のバッターが素振りをしている>>
谷原監督「まずはランナーをためるこったぞ 宮田!」
宮田「はい」
井口「かるーく振ってるようだけど音が違うな びゅうなんちゃって」
丸井が井口の態度を不満そうに見ている>>
井口「ヘイヘイ バッターこい」
倉橋がサインをだす>>
倉橋「練習試合なんだ 気楽に気楽に」
谷口の第一球をセカンド丸井の頭の上を越えてセンター井口の前に落ちる>>
丸井「サードだ!」
井口「ん」
谷原ベンチが驚くような豪速球を井口が送球する>>
ランナーコーチ「つっこめ!!」
しかしサード横井のタッチが浅くセーフ>>
佐々木「す……すごい返球だ」
谷原監督「背番号のないところをみると彼も一年生だな」
倉橋がタイムをとり、マウンドへ向かう>>
倉橋「コースをついたところで通じそうもないし 落ちるタマをおりこんだらどうだろう?」
谷口「ああ やってみる」
倉橋「バック!!」 >>守備陣に指示する
次のバッターが滑り止めをつけながら>>
八番「バックホーム態勢か」
谷原監督「ヒッティングだ」
八番「は」
倉橋が真ん中フォークのサインをだす>>
谷口「む」
宮田「リーリー」
谷口のフォークが打たれ、レフトオーバーのツーベースヒットになる>>
宮田「まずは一点と」
谷口「フォ フォークまでもが…」
谷原監督「驚くのはまだ早い 叩くってのはこれからだ」
やはり甲子園で活躍した谷原である
谷口の懸命なピッチングも谷原打線のパワーの前では
もはや力の差を見せ付けられるばかりであった
佐々木がセンターにホームランを放ち、ホームに戻ってくる>>
佐々木「えーとオレで五点目だっけ?」
そして9回>>
横井の打った打球はセカンドフライ、これをセカンドがとりゲームセット>>
丸井「キャ キャプテン」
谷口「あ」
全員がホームベース前に整列する>>
野田(主審)「墨谷対谷原の試合は五対―― えーと」
佐々木「いいから」
野田「れ 礼!!」
全員「オッス!!!」
谷原ベンチ>>
佐々木「さすがにこたえたようですね」
谷原監督「む ちょっとやりすぎたかな 五回だったか一挙に五点とられたときは なんとも底知れぬチームに思えてな」
監督が立ち上がる>>
谷原監督「シード権を得たばかりの新生チームだってのに気の毒なことをしたよ しかし何れは頭角を現すチームになるだろう まだ先のこったろうが」
谷原の監督と谷口が握手をする>>
帰りの電車の中、谷口が試合の事を思い返している>>
谷口「やはり あれが甲子園へ行く力量なんだろうか」
一年生と丸井が谷口のチャックが開いてることに気づく>>
谷口「どうした?」 >>谷口がチャックを見る
丸井「ご心配なく ほかの乗客は全く気づいておりません」
墨谷駅に到着し、丸井と倉橋が話している>>
丸井「学校へ戻るんスかね?」
倉橋「さあ」
倉橋が谷口に話し掛ける>>
倉橋「なあ谷口 一応学校で解散てことにするか」
谷口「か 解散て 今日は帰って練習だってこといわなかったか」
倉橋「いや オレは構わねえが お前は谷原相手に投げぬいたんだし今日は家に帰って体を休めたら」
井口「そうスよ なあ!」
谷口「よせやいたった一試合ぐらいで もしやあんな負け方したんで練習する気がそがれたんじゃあるまいな」
倉橋「ま まさか そうとも あの程度でしょげていちゃいつまでたっても谷原にゃおいつけないものな」
谷口「ん」
倉橋「さあ まだ汗を流してない者は学校までランニングだ!」
一年生数人が走り出す>>
倉橋「それから途中から出場した者も一緒だ」
井口ら途中出場したものが走り出す>>
いうまでもなく谷口は墨谷と甲子園のあまりにも大きなへだたりと
谷原に猛打を浴びたショックと疲れで今にもしゃがみたいほどであった
しかし墨谷の明日を荷う後輩の前では歯を食いしばらなければならなかった
もちろんナインだちはそれを知っていた
墨谷の甲子園への道は遠くはない
プレイボール ―完―