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(ブツ)ゾーンの最終回


仏国土(ぶっこくど)の裏切者であるアシュラにより、センジュの仲間たちは次々に倒された。
そんなアシュラの前に、センジュは仏技「因果応報」の構えを取る。

アシュラ「! あの構えは…! 攻撃したもののチャクラを吸収し相手に撃ち返すという究極の仏技(ほとけわざ)因果応報(いんがおうほう)』! ……フッ そうですよね こんな私を許せるはずはありません ましてや慈しむなど…」

センジュ目がけ、アシュラが突進。

アシュラ「やはり私はまちがってはいなかった!! この世に憎しみをこえて慈しめる事などありえないのだ!! それがわかった今 もはやこの世にもあの世にも未練はない! 因果応報おおいにけっこう! さあ 私を砕くがいい! この憎しみのチャクラ 全てあなたにたたきこんであげますよ!
サチ「! ふみこんできた!! まさか死ぬつもりなの!?

アシュラ「いくぞ!! チャクラ全開! 阿修羅神掌(あしゅらしんしょう)!!


(ブツ)19 最終話  未来


センジュの無数の腕が、アシュラの猛攻を受け止め、凄まじい火花が飛び散る。

アシュラ「ヌッ うぬぬぬ!!
センジュ「う… ぐぐぐぐ うぐっ ぐあっ!」
アシュラ「くっ! いつまでそうしてる気ですか!! 何故カウンターを撃たないのです!!!
センジュ「へへ… 言ったはずだよ ぼくはきみの憎しみを全て受け入れると…」
アシュラ「! まさか! 『因果応報』は最初から 私の『憎しみのチャクラ』を吸収するのが目的だったのか!? !? バカな! 早く撃ち返して下さい!! さもないとあなたの心体(しんたい)は…!! オーバーチャクラにたえきれない!
センジュ「だめだ! 君の憎しみは全てぼくがのみこむ!! だから…! 外に出してはいけないんだ」
アシュラ「…!! 何故! 何故そんな事をするのです! 何のために!
センジュ「ぼくはもれなく救う千手観音(せんじゅかんのん) 約束だろ? 君を必ず救ってみせるって… 何のために? きみのその人を気遣うやさしい表情(かお)が見たかったからな…」

虚を突かれたアシュラの顔から、険しさが消える。

アシュラ「!? な…!?」
センジュ「へっへっへ その表情(かお)が一番 …だ よ…」

そのままセンジュが力に耐えきれず、倒れて気を失う。

アシュラ「!! セッ! センジュ様! センジュ様!! センジュ様!!!


気がつくと、センジュは1人、どこかの大地に倒れていた。

センジュ「(? ここは一体…!? それにしても なんてさみしい風景なんだろう… 一体ぼくはどうしちゃったんだ……) ……そうか ぼくはアシュラ君の憎しみのチャクラをあびて そのショックで倒れたんだな」

空は闇に閉ざされ、荒涼とした風景が広がっている。

センジュ「う… なるほど つまりここが… アシュラ君の憎しみの世界ってわけか アシュラ君 ずっとこんな世界に一人ぼっちでいたのか…」

あまりの寒さに、くしゃみをする。

センジュ「…おっと こうしちゃいられないな… なんとかして出口を探さなくちゃ このままじゃぼくまで憎しみの心に凍えてしまいそうだ」


ボロ布をまとい、センジュが世界をさまよい続ける。

センジュ「…… だめだ… どこまでいっても出口どころか ひとっこひとりいない って当たり前か…」

冷たい風が吹き続け、センジュは寒さに震えている。

センジュ「もう何日歩いたろう これは まさに悪夢だよ… 起きたくても起きられない永遠の悪夢なんだ…」


「あの…? お困りですか 旅の方」

1人の美しい少女が現れる。かつてアシュラが愛した少女・舎脂(しゃし)。彼女の死をきっかけにアシュラは修羅の道へと堕ちていた。

センジュ「(え?) 君は… (この()は… アシュラ君が愛した娘 舎脂じゃないか…)」
舎脂「もしよろしければ 出口までご案内いたしましょうか? ていうか…… なんであの時私を助けてくれなかったのよォ──っ」

美しかった舎脂が悪鬼のごとく変貌し、センジュに襲いかかる。

センジュ「!! うわあッ!! 何だ これは!? はっ」

アシュラたちとの戦いで倒れたセンジュの仲間、ジゾウ、バトウ、コマもまた、悪鬼のような顔となって現れる。

センジュ「み… みんな…!」
一同「うう〜 よくもオレ達を殺してくれたな……
センジュ「ああ… もうやめてくれて… こんなの… こんなのやだよ… これ以上こんなとこにいたら本当に気が狂いそうだ! 何なんだ! こいつら一体 何なんだよ──!!

突如センジュのそばに、1人の美しい女性が寄り添う。

女性「彼らはみなアシュラが作り出した自分の中の罪の意識 一生許しも施しも受けることの出来ぬ自分の中の他人…
センジュ「あなたは…!?」
女性「さあ 憎しみや悲しみたちよ この光を受けて浄化されるがよい

左手が地を、右手が空を指す。


天上天下唯我独尊(てんじょうてんげゆいがどくそん)


まばゆい光があふれ、世界のすべてを包み込んでゆく。

センジュ「天上天下唯我独尊!! かつてシャカ様が地上に生まれた時にやった偉いポーズ!? なんて光だ! 全てを包み込むようにこの世界が砕けてゆく! こんな光を放てるのは大日如来(だいにちにょらい)様やシャカ様しかいない… あの人は……!


どこかの和室の寝床で、センジュが目覚める。

センジュ「ミロク様!! え…?」

サチがセンジュに寄り添い、眠り込んでいる。

センジュ「サッちゃん…? ?? ? ??? …ぼくは一体? それにここは……」
アンナ「西岸寺(さいがんじ)よ」

庭でアンナがくつろいでいる。

センジュ「!! アンナ! どうしてきみが!?」
アンナ「ったく どうしてじゃないわよ あんたが恐山で倒れて49日間 大変だったんだからね! そりゃもうおおさわぎよ」
センジュ「ええっ そんなに!? じゃ もしかしてその間マーラは…!?」
アンナ「きたわよ 3回も でもその度に七人の部下をひきつれた かっこいいあの人があらわれて 敵をスパーンと切り刻むの」

アンナの脳裏には、月夜をバックに舞うアシュラの姿が浮かんでいる。

アンナ「月のシルエットにしなかやかな肢体をなびかせて それはもう素敵この上ないのよ そして最後にこうささやくの 『これが私のせめてものつぐないです いつも見守っていますよ』 いや〜ん 素敵すぎだわ!!
センジュ「…!! そうか アシュラ君がきてくれたんだ!!」

アンナ「でもやっぱり すごいのがサッちゃんよね なんたって彼女 あなたが倒れて以来 今までずっと看病してたんだからね 夜も寝ないでつきっきりなんて あたしにはとてもマネできないわ」
センジュ「ずっと…!? (じゃあまさか 夢に出てきたあの人はやっぱり…!) ハハ… まさかね… だって歳も背かっこうも全然違ってたじゃないか… フフ…」


センジュたちの故郷、仏国土。

仏王(ぶつおう)・大日如来と、その部下の不動明王(ふどうみょうおう)フドウ、愛染(あいぜん)明王アイゼン。

大日如来「人は成長のしかたでどんなものにでもなれる あれこそは地上に降りて1999年に悟りを開いたサチ36歳の姿 弥勒(みろく)

フドウ「36歳といえば シャカ様が悟りをひらいた歳 しかし何と奇妙なこともあるものか… サチの未来の姿ミロクがセンジュを助けるため 心の中に現れるとは…」
アイゼン「いや 私は信じるね 何故ならそれこそが愛の奇跡なのだからな… クックックックッ」
大日如来「愛染のいうとおりです サチの一途な『救いたい』という想いがセンジュを救った… それこそ悟りの第一歩 あなた達もそう思いませんか?

アシュラたちとの戦いで倒れた地蔵菩薩(ぼさつ)ジゾウ、馬頭観音(ばとうかんのん)菩薩バトウ、七福神、狛犬のコマが仏国土に戻っている。

大日如来「地蔵菩薩に馬頭観音菩薩── そして七福神のみなさん シャバではおつかれさまでしたね

バトウ「そんな めっそうもございません 大日如来様」
ジゾウ「ケッ 愛の力ってか なめんなってかんじっスよ オレは」
コマ「ワオン
七福神たち「いやー まいったまいった まさかあんなスグやられちまうなんて思いませんでしたよ」「まったくねー あたし もっと出番ほしかったわ──」「またオレら手伝いいってもいいスかね──?」「コラコラ」

大日如来「もちろんですよ 私たち仏の役目は人々を救いへと導くこと そのために全ての仏の力をそそいででも ミロクの悟りを実現するべきなのですから…


西岸寺。眠り込んでいたサチが目覚める。

サチ「ん… んーッ なんだかとっても不思議な夢をみたような」

ベッドはもぬけの空。

サチ「あっ… センジュ君が…!?」


すでに回復したセンジュが、微笑みの顔で立っている。

和尚や寺の皆が見守る中、サチが目に涙をため、センジュの胸に飛び込んでゆく。


これは1975年 サチが12歳のときの物語です
1999年 36歳になったサチが悟りを開くその日まで
彼らの旅は続きます


(終)
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