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●前回までのあらすじ

結婚式が行われている教会の裏、墓参りとていない墓地で行われる本物と偽物の”バネ足ジャック”の戦い。

花嫁・マーガレットの命を狙う”ニセバネ足ジャック”フランシス・ボーモンに挑む、”本物のバネ足ジャック”ウォルター・ストレイドだが、バネ足の性能で勝る偽物に追い詰められていく。

二人の戦いを察知して現場に駆けつけたロッケンフィールド警部が見たものは・・・・・・





  (ここはロンドン黒博物館(ブラックミュージアム)
  (学芸員(キュレーター)の女性が、ロッケンフィールド警部からバネ足事件の顛末を聞かされている)
  (事件の成り行きに興奮した彼女は、ロッケンフィールドに急接近)

学芸員「・・・・・・!!」
ロッケンフィールド(以下ロッケン)「ちょっちょっと近い近い! 学芸員サン!!」
学芸員「それで! 悪いニセバネ足ジャックにやられたウォルターさんはどうなったのですか〜〜〜〜!?」
ロッケン「わかったから下がれって・・・落ち着けよ! さあこれが 『バネ足ジャック』事件のすべての」
    

「顛末さ」




●第6話 バネ足男の退場




ロッケン「ウォルターー!!」

  (二人のバネ足ジャックの姿を見るや叫ぶロッケンフィールド)
  (ウォルター扮する本物のバネ足ジャックは、ボーモンの演じるニセバネ足ジャックの爪を腹に食らい、持ち上げられている)

ウォルター「よ・・・ォ クソ警部・・・・・・・・・無様なトコロ・・・見られちまったな・・・」
ボーモン「警部サンか・・・そういえば一回会ってたね」

  (腹に爪を食らったまま話すウォルター)

ロッケン「フランシス・ボーモン お前が女たちを殺してたんだな。ウォルターを放せ」
ボーモン「くっくっく 残念ながらそれはできない」
    「ウォルターはもう高く飛ばなくなった蝶だ。そんな蝶は・・・死ななければならないのさ」
    「・・・ああ ロンドン&バーミンガム鉄道がおあつらえ向きにその役を果たしてくれるだろう」

  ガショガショガショ!!(トンネルの向こうから黒煙をはきながら機関車がやってくる)

ボーモン「ウォルター覚えているかい? 昔君が言い出して機関車同士を衝突させたことがあったろう」
    「今度は君の番だ」
ロッケン「や・・・やめろボーモン!」
ボーモン「もうフランシス・ボーモンじゃない! 今日から僕がウォルター・ストレイドになるんだ」
    「ぎゃぎゃぎゃぎゃ!」
ロッケン「こいつ・・・・・・」

  (バネ足ジャック独特の笑い声を上げるボーモンに絶句するロッケンフィールド)

ウォルター「・・・け・・・警部・・・」「結婚・・・式は見た・・・か・・・」
ロッケン「ああ」
ウォルター「マーガレット・・・は美しかったか・・・」
ロッケン「天使みてぇだったぜ」
ウォルター「幸せ・・・そうだったか・・・」
ロッケン「世界中の誰よりもな」
ウォルター「・・・そうか・・・・・・」

  (半分だけはずれた仮面の下の素顔で、微笑を浮かべるウォルター)

   ガァ!(接近しつつある機関車)

ボーモン「安心しなよウォルター 後であのメイドも同じトコロへ送ってあげるよォ!」

  ビュウ!(ウォルターを持ち上げ、線路に落とそうとするボーモン)

ロッケン「ウォルター!」

  ドン!!(拳銃を取り出してぶっぱなすロッケンフィールド)

  バキィィン!!!(弾丸は偽バネ足ジャックの仮面を破壊し、ボーモンの素顔を露にする)

  (その隙を突き、バネの両手を伸ばすウォルター。ボーモンを掴む)
  (そのまま二人で線路に飛び込むウォルター)

ロッケン「バ バッカヤロオ!」

  バキィツ(機関車に跳ねられて右のバネ足を失うウォルター。その様子を目撃した機関車の乗組員)

乗組員「ひぃ〜〜〜〜〜」

  (さらにボーモンを引きずろうとするウォルター)

ボーモン「道連れにする気かウォルター」「放せえ〜〜〜!」

  (必死に爪で攻撃するボーモン。血まみれになりながら放さないウォルター)


乗組員「ブ・・・ブレ〜キィ!」

  キイイイイイ(急ブレーキをかけられる機関車。甲高い音が響く)


ボーモン「何だよォ〜!? 背徳の具現者・・・天下のストレイド卿が何でそこまでしてあの女を〜!」

  (ボーモンの叫びに応えないウォルター。脳裏に浮かぶのはメイド服姿のマーガレット・・・)



ボーモン「はァなァ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜せええええええ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!」

  (絶叫とともに爪を伸ばすボーモン。しかし・・・・)

ボーモン「あ・・・あ あ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」

  (偽バネ足ジャックことフランシス・ボーモンは、機関車にひき潰されてこの世から消えた・・・・)

  (続いてひき潰されようとする本物のバネ足ジャックことウォルター・ストレイド)
   がしっ!(と、思いきや誰かがバネ足ジャックの爪を掴んでいる)

ロッケン「やっと捕まえたぜ」「三年前のバネ足ジャック!」  
ウォルター「・・・仕事熱心だな・・・・・・棍棒野郎・・・」
ロッケン「ぬかしやがれ・・・」



  プシュウウウウ(停止した機関車。人々が集まっている)
  (そこにはウォルターもロッケンフィールドもいない。ただ、バネ足男の残骸が残るだけだ)

乗組員「な・・・何だこりゃあ」「バ・・・バケモンを轢いちまった〜」



  (雨が上がり光がさす教会。結婚式が終わったようだ)

子供「わあい 雨がやんだよ」
客「やあ本当だ 晴れてきましたな」
 「ステキ! お二人の門出にはなによりね」
 「サァ 二人の世界に向けての第一歩をどうぞ」
 「「「「わああああああああああああ!!」」」」

  (人々の歓声を背中に歩いてくる新郎・ヘンリーと新婦・マーガレット)

客「それにしてもウォルター・ストレイド卿 結局出席しなかったな」
 「まァ気紛れで我がままな男ですからな」
 「詰まるところ新婦が『階下の女』だからよ」
 「使用人ごときをそこまで祝う気持ちはなってコトねえ」

  (姿の見えないウォルターについて色々言う人々)
  (そんな人々の後方、墓地にロッケンフィールドとウォルターはいた)
  (死闘を繰り広げたウォルターは、ロッケンフィールドに支えられている)

  (幸せそうな新郎新婦の様子を見る素顔のウォルター)

ロッケン「傷は・・・?」
ウォルター「・・・コイツの作りは外骨格式で腹に鉄ワクがあってな・・・」

  (人々に祝福され、新郎新婦を乗せた馬車が去っていく。その様子を見守るウォルター)
  (ふと、一度はずした仮面をつけ、歩いていこうとする)

ロッケン「・・・泣いてんのかウォルター・・・」「めでたい鐘が鳴る教会の隅でよ・・・」
ウォルター「・・・誰が泣くか・・・」「・・・オレは 次の悪戯を考えてたんだ・・・」
     「・・・今度は・・・」「おかしな女なんかと・・・出会わない遊びだ・・・・」




  (再び黒博物館。話を聞き終えて落ち着いた様子の学芸員)

学芸員「ふう」「そんなことがあったなんて・・・・・・だからこの足が墓地に残されていたのですね」
ロッケン「ああ」

  (黒博物館に収蔵されているバネ足ジャックの足を見る学芸員)

ロッケン「ボーモンのほうは粉々だったからな・・・今となっちゃその足だけが『バネ足ジャック』がこの世に存在した証ってワケさ」

  (時計を見る学芸員)

学芸員「あらもうこんな時間・・・」「ロッケンフィールド警部 黒博物館そろそろ閉館です」
ロッケン「おう 思わず長話をしちまったな スマン」
学芸員「いいえ私 聞き入ってしまいましたわ」

  (自分も時計を開いて言うロッケンフィールド)

学芸員「・・・・・・でもそのストレイド卿ーーー本物の『バネ足ジャック』さん それからどうしたんでしょうね?」

  (燭台を持って出口まで歩いていこうとする学芸員)
  (その隙を伺うように、そっとロッケンフィールドの手がバネ足ジャックの足へ伸ばされ・・・)

「さあてね きっと・・・あの事件を死ぬほど恥じているんじゃないか」

  (バネ足ジャックの足を取ったロッケンフィールドは窓へ)

  (窓ガラスに映ったその姿はロッケンフィールド・・・・・ではなくウォルター!?)

学芸員「うふふ そんな・・・ステキじゃありませんこと・・・え?」

  ガチャ(物音に振り向いた学芸員だが、そこには窓が開いているだけだった・・・・)






  (馬車でウォルターの屋敷にやってきたヘンリーとマーガレット。だがそこにウォルターはいないようだ)


「親愛なるヘンリー・シェルビィ殿」「急に思い立ってアイルランドへ帰ることにした。私の屋敷は君にやろう。好きに使ってくれ」


  (手紙だけ残して去ったらしいウォルター)
  (新郎新婦の二人は、屋敷であるものを見る)

ヘンリー「この・・・一面のかわいらしい花は何と言うんだろう」
マーガレット「当ててくださいな・・・あなた・・・」

  (二人の目の前には一面に咲くマーガレットの花畑が)

「奥方によろしく。−−−−−−ウォルター・デ・ラ・ボア・ストレイド」






  (黒博物館。窓から身を乗り出して外を見る学芸員)

学芸員「あ・・・・・・」

  (夜の暗闇の中、口から火を噴いて建物のてっぺんに立っているのは・・・バネ足ジャック!)
  (右手には収蔵されていたバネ足を持っている)
  
  (ふと横を見る学芸員。手紙が着いている)


「バネ足ジャックなんていなかったのさ。失敬」


学芸員「まァ」「うふふふふふ」
バネ足ジャック「ぎゃぎゃあぎゃ」
学芸員「おやすみなさい 跳ぶ者(スプリンガルド)」


  (夜の闇の中へ跳ねていくバネ足ジャック・・・・)





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