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●前回のあらすじ

自らの過去を遡り、秘密組織”九蛇(ヒュドラ)”と”ノワール・プロジェクト”の秘密を暴いたブラック・ジャック。
ピノコとともに日本へ帰ろうとした彼を待っていたのは、ノワール・プロジェクトが生み出した"フェニックス病"に冒された
組織のボス・全満徳だった。
白拍子医師の空飛ぶ病院”スカイホスピタル”でフェニックス病の治療にあたるブラック・ジャックだったが、凶悪な進化を遂げたフェニックス病のウイルスは、スカイホスピタルの内部に広がっていた・・・・・






  (高速で飛行するスカイホスピタル。フェニックス病のウイルスが蔓延した状態で東京へ向かっている)
  (機内では必死にコンピューターを操作している白拍子)

白拍子「くそっ!」

  (隔離されたドアを開けるため、わざと病気の状態になった白拍子は今にも倒れそうだ)

コンピューター「セキリュティ、解除」
白拍子「はあああ〜〜」

  (どうにか操作を終えた白拍子、コンソールに顔を伏せる)
  (自動ドアが開いてブラック・ジャックが入ってくる)

ブラック・ジャック(以下BJ)「白拍子、しっかりするんだ!」
白拍子「ブラック・ジャック、西川君たちは?」
BJ「あの二人なら、満徳と同じようにお前さんの”腫瘍狩り(キャンサー・ハンター)”に入れてきた。とりあえず時間は稼げる」

  (治療カプセルに入れられている全満徳、西川史子、そしてピノコ)

ピノコ「はぁ、はぁ、ちぇんちぇ〜い・・・・」

  (苦しそうに息をして寝返りをうつピノコ)

白拍子「そ・・・・そうか・・・・」
BJ「白拍子、まだだ! こいつの行き先を変更するんだ!」
白拍子「行き先・・・?」
BJ「そうだ! このままスカイホスピタルが東京に着いてみろ。日本全土がウイルスに冒される!」
白拍子「だとしたら私たちはどこへ・・・どこへ行けばいいんだ・・?」
BJ「北だ!」

  (スカイホスピタルの進路が映ったモニターを指差すブラック・ジャック)

BJ「こいつの進路を変更し、北極まで飛んでいくんだ」
白拍子「北極?」
BJ「ああ。ウイルスの活動は低温時に弱まることがわかっている」


  (モニターに東京によらず北へ向かうコースが映される)

白拍子「フライト・プランは修正した・・・・現在北極へ向かって・・・・い・・・・」

  (そのまま倒れる白拍子)

BJ「おい白拍子! 白拍子!!」





●生命(いのち)の尊厳   手塚治虫原作『99%の水』『二人目がいた』





  (ヘリコプターに乗り込もうとしている蓮花)

蒼龍「お待ちください!」

  (蓮花の後を追って来た蒼龍)

蒼龍「本当に行かれるのですか?」
蓮花「ええ、状況が変化したから」
蒼龍「しかし、自ら危険を冒さなくても・・・・!」
蓮花「組織をもう一度立ち上げるためには、進化したウイルスが必要なの」
  「それに、どうしてもこの手でやらなくてはならないことがある・・・・」



  (北へ向かって飛ぶスカイホスピタル)
  (その中ではキャンサーハンターに入った西川史子とピノコが苦しんでいる)

  (医務室で白拍子に注射をしているブラック・ジャック)

白拍子「・・・・・・ブラック・ジャック・・・・! うっ!!」

  (目を覚まして体を起こす白拍子。まだ調子が悪いようだ)

BJ「おい無理をするな。ようやくエピネフリンによる血圧・心拍異常が落ち着いたところだ」

  (言いながら別の注射器で何かを自分に注射するブラック・ジャック)

白拍子「それは?」
BJ「抗ガン剤と免疫力を高める薬を調合したものさ。まあ、気休めくらいにはなるだろう」
白拍子「・・・・これからどうするつもりだ?」
BJ「決まってる。フェニックス病の治療法を見つけ出すまでさ」
白拍子「本気でそんなことを?」

  (ベッドから起き上がる白拍子)

白拍子「我々はフェニックス病について何一つ知らないん・・・・うん!?」


  ピーッ!ピーッ!(突然響く音。どこかから通信が入ったようだ)

通信者「こちらアラスカ州リッキー空軍基地、応答せよ! 繰り返す! こちらアラスカ州・・・・・」
白拍子「アメリカ空軍のスクランブル通信だ・・・・」


  (そのリッキー空軍基地では繰り返し通信が送られていた)

通信者「繰り返す! こちらリッキー空軍基地!」「スカイホスピタルの乗員に告ぐ! 至急応答を! 繰り返す! 至急応答を!」
白拍子「こちらスカイホスピタル」

  (基地のモニターが映し出される白拍子とブラック・ジャック)

白拍子「こちらは不慮の事故により現在・・・・」
通信者「ドクター・ホワイト!」
白拍子「聞いてくれ!機内にあるウイルスが蔓延した!」
通信者「状況は全て把握している。事態収拾にあたり、大統領補佐官から説明がある」「どうぞ!」
補佐官「うむ」

  (通信者に代わってモニターの前に立つ大統領補佐官)

補佐官「補佐官のクラーク・ボーマンだ。諸君らの勇気ある行動に敬意を表したい」
   「現在、国際伝染病研究機関から専門家を選出し、フェニックス病の対策に当たらせている」

  (多くの研究者たちが集まり、フェニックス病を研究している)

クラーク「治療法を見つけ出すまで、諸君らには外部との接触を一切避けてもらう」
白拍子「待ってください! 我々を見殺しにするつもりですか!? クラーク補佐官!!」
クラーク「・・・・・・・」

  (激昂する白拍子の言葉に顔を伏せるクラーク補佐官。と、そこへいきなり誰かが割り込んでくる)

クーマ「聞こえるかブラック・ジャックくん!? 私だ! クーマだ!」
BJ「ドクター・クーマ?! なぜあなたが?」
クーマ「せめてもの罪滅ぼしができればと、私もこのチームに参加した!」
   「事態は深刻だ。だが我々は、決して諦めたわけではない!」

  (何かのディスクを挿入するクーマ)

クラーク「ドクター・クーマ! それは!」
クーマ「現在我々がつかんだデータをそちらに送る!」
クラーク「ドクター・クーマ!?」
クーマ「ブラック・ジャックくん! 君ならば、何か見つけ出せるかもしれん!」「本間先生の愛弟子の君ならば!!」

  (大量のデータが表示され、スカイホスピタルへ送られていく)

BJ(・・・・・・・本間先生・・・・・・・・・)
クーマ「我々も全力を尽くす!」
白拍子「こんな膨大な量の資料、検証するだけでも一ヶ月はかかるぞ・・・」

  (データの量に圧倒され椅子に座り込む白拍子)

BJ「さあ、やるぞ。白拍子」



  (データを送ったリッキー空軍基地では、ドクター・クーマがクラーク補佐官に責められている)

クラーク「なんてことを! このデータはトップシークレットだぞ! それを・・!」
クーマ「21時間だ・・・」
クラーク「なに!?」
クーマ「現在の進化したフェニックス病の死に至るまでの時間をシュミレートした。彼らが生きていられるのは21時間なんだ!」
   「それまでに、何としても治療法を見つけ出さなくては・・・・・!」

  (言いながら歩いていこうとするクーマ)

クラーク「待ってくれ、ドクター! もし彼らが死亡したら、ウイルスはどうなる?」
クーマ「・・・・・・・」

  (無言のまま歩いていくクーマ)

クーマ「なんとも言えんな・・・・・・通常なら感染者の死亡と同時にウイルスも死滅する」



  (スカイホスピタルは北極に到着した)
  (ドアを開けて外を見る白拍子。見渡す限り氷の大地だ)

白拍子「ハッ! なるほど、これならば感染が広がる心配は無いな」



  (キャンサーハンターに入っている三人。ブラック・ジャックが全満徳のカプセルに近づいていく)

全満徳「ううううっ!」

  (呻いて眼を開ける全満徳)

全満徳「ブラック・ジャック・・・・・」

  ウィーーーン!(カプセルが開く)

全満徳「わしは助かるのか?」
BJ「さあね」
全満徳「永遠の命を手に入れたと思ったこのわしが、この様か・・・」
BJ「まったくバカな夢を見たもんだ」
全満徳「お前にはわかるまい・・・・・」「わしは多くの死を見てきた・・・・」

  (かつての全満徳の姿か、幼い子供が戦火に包まれ泣き叫んでいる)

全満徳「人の命は何と脆くはかないものなのか・・・・」

  (涙を流しながら何かを決した少年)

全満徳「永遠の命・・・・それは脆弱な我々人類の死に対する挑戦だった・・・・」
BJ「挑戦ね・・・・」

  (話しながら全満徳から血液を採取するブラック・ジャック)

全満徳「わしの血で免疫血清を作るつもりか?」
BJ「可能ならね」
全満徳「簡単にできるとは思えんが」

  (立ち上がり、カプセルを閉めるブラック・ジャック)

BJ「だったら、あんたもここで死ぬだけだ」
全満徳「ブラック・ジャック。本気でフェニックス病が治せると思っているのか・・?」
BJ「あんたと同じさ」

  (ドアの向こうへ戻ろうとするブラック・ジャック)

BJ「挑戦するのは嫌いじゃない」


  (一方、リッキー空軍基地。クラーク補佐官が連絡を取っている)

クラーク「はい、大統領。猶予はあと8時間です・・・・・はい、承知しました」

  (受話器を置くクラーク)

クラーク「最新の超高熱ミサイルを発射できるようにしておけ」
通信者「超高熱ミサイル・・・ですか?」
クラーク「そう。あれなら半径1キロ内の物を完全に蒸発・気化させることができる」

  (凄まじい爆発のイメージが浮かぶ)

クラーク「人間もウイルスもな」
通信者「それでは彼らを・・・!」
クラーク「急げ! これは大統領命令だ!」



  (スカイホスピタルではフェニックス病の研究が進められていた)

BJ「こいつが元のBOPウイルス」

  (フェニックス病のウイルスが進化する前、星のような形をしたウイルスだ)

BJ「そして、こいつが進化した今のウイルスだ」

  (そのウイルスはまるで火に包まれた鳥のような形をしている)

BJ「送信されてきたデータによると、ドクター・ジュルジュはこのBOPをカナダの雪山から見つけたらしい」

  (コンピューターを操作してデータを呼び出すブラック・ジャック)

BJ「太古から存在していたのか、宇宙から飛んできたものから不明だったが、ドクター・ジョルジュはこのウイルスが自ら電気を発生す   る特性に目をつけた」

  (雪山で光り輝くウイルスを発見したドクター・ジョルジュ。研究所で調査する)

BJ「これを利用したのが、ノワール・プロジェクトが開発した人工心臓の内部電池だ」

  (精巧な人工心臓が管につながれている)

BJ「その後、ドクター・ジョルジュはBOPに放射線を浴びせて意図的に進化させたらしい」
白拍子「!」
BJ「繰り返し放射線にあてることにより進化したBOPは、人間のDNAにとりつき細胞の老化を食い止める不老不死の薬となった」

  (放射線をあてられているBOPウイルス)

BJ「だがその反面、BOPは体内に散っていった鉄分や無数の異物、そしてガン細胞などを磁石のように集めてしまう」

  (体内を巡るBOPウイルスのイメージ)

BJ「このため体内に血腫を発生させ、また様々な場所にガンを転移させる」


  (血腫が生じ、あちこちが蝕まれた人体のイメージ)


BJ「おそらく、これがフェニックス病の正体だ」
白拍子「そんな! では私のキャンサーハンターによる放射線治療が、ウイルスをさらに進化させてしまったというのか!?」
BJ(フェニックス病は、その根本原因である発電特性をなくせば病状を抑えることができるはずだ。その鍵は・・・ウッ?!)

  (突然眼が霞みだしたブラック・ジャック)

BJ「これは・・・・!?」

  (体が振るえるブラック・ジャック)

白拍子「私は・・・私はなんということを・・・・・!?」

  ドサッ!(真実に打ちひしがれる白拍子の隣で、突然倒れたブラック・ジャック)

白拍子「!!!どうした!?ブラック・ジャック!? おい!ブラック・ジャック!!」

  (白拍子の声かけにも応答がないブラック・ジャック。見てみると彼の腕には奇怪なアザが)

白拍子「これは! フェニックス病が進行している!」「ブラック・ジャック!!!」




  (吹雪の中を走る二台のスノーモービル。ひとりは蓮花だ)

蓮花「・・・・いたわ!」

  (彼女が探していたのは北極のスカイホスピタル)




  (フェニックス病で倒れたブラック・ジャックを肩で支え、部屋から出ようとする白拍子)

BJ「白拍子・・まだだ・・・まだ、諦めるのははやい・・・」
白拍子「ああ、わかっている。とにかく応急処置を・・・・」
?「往生際が悪いわドクター・ホワイト、そしてブラック・ジャック先生」

  (突然の言葉に振り向く白拍子。そこには防護服を着て銃を持った蓮花と蒼龍がいる)

ブラック・ジャック「蓮花・・・・」
蓮花「どうやら間に合ったようね」
白拍子「なぜあんたたちがここへ?」
蓮花「進化したフェニックス病のウイルスと治療データを貰いに来たの」
白拍子「そんなもの、一体どうするつもりだ?!」
蓮花「組織のためにはどうしても必要なのよ。蒼龍!」
蒼龍「はっ!」
蓮花「メインコンピュータールームはその奥よ」
BJ「白拍子・・・・セキリュティシステムだ・・・」

  (小声で白拍子に話しかけるブラック・ジャック)

白拍子「!」
蓮花「私はブラックジャック先生と、お父様の血を貰いに行くわ」「さあ、来るのよ!」

  (銃をブラック・ジャックにつきつける蓮花)

  (フェニックス病の患者が眠るメインコピュータールームにやってきたブラック・ジャックと蓮花。全満徳のカプセルに近づく)

蓮花「父上・・・・」

  (ブラック・ジャックに顔を向ける蓮花)

蓮花「よく見ておくといいわ私の顔を」「この顔のおかげで私は、地獄の苦しみを味わった」「許せない・・・あなただけはこの手で始末   してあげる」

  (ブラック・ジャックの顔面に銃を向ける蓮花)

蓮花「お前は自分の母親の顔を見ながら死ねるのよ、ブラック・ジャック!!」


  ピーーッ!!ピーーッ!!(突然、警報が鳴り響き部屋が赤い光に包まれる)

蓮花「何?!」
コンピューター「機内ニ侵入者確認」

  (動揺する蓮花。その隙を突いて体当たりをかけるブラック・ジャック)

蓮花「あああっ!!」

  (勢いで銃がすっ飛んでいく)


蒼龍「貴様何をした?!」

  (白拍子に脅しをかける蒼龍)

コンピューター「機内ノ侵入者、排除」

  ビチューン!(侵入者撃退用のレーザーが発射され、蒼龍の胸を貫く)

蒼龍「うああああ・・・・・・」

  (倒れた蒼龍。一声呻いて絶命する)

白拍子「ブラック・ジャック?!」


  (蓮花を吹き飛ばしたブラック・ジャック)
  (倒れた蓮花。レーザーを避けながら腰にさしたもうひとつの銃を手に取る)
  (一方、レーザーの砲火が腕にかすってしまうブラック・ジャック)

  パン!パン!(それでもどうにか逃れ、レーザー砲を銃で破壊する蓮花)

  (ブラック・ジャックは動けない)

  (二人の争いの最中、誰かが密かに銃を拾う)

蓮花「これで本当に最後よ」
?「待て」
蓮花「!」

  (再びブラック・ジャックへ銃を向けた蓮花。だがその前には全満徳が)

全満徳「待つんだ蓮花。この男を殺してはいかん」

  (蓮花に銃を向けている全満徳)

蓮花「父上・・・」
全満徳「さあ銃を下ろせ。言うことを聞くんだ・・・」
蓮花「・・・・・・黙りなさい!!」「あなたの指図は二度と受けない!!!」

  (発砲する蓮花。同時に全満徳も銃を撃つ)
  (交差する弾丸)

全満徳「・・・・・・おおおお・・・・」

  (額から血を流し倒れる全満徳)

蓮花「・・・・そんな・・・・・」

  (唖然とした表情の蓮花。防護服を着た胸に弾丸が命中していた)
  (全満徳に遅れて倒れこむ蓮花)

白拍子「ブラック・ジャック! こ・・これは・・・?! いったい何が!?」

  (メインルームに入ってくる白拍子)
  (膝をつき二人の様子を見るブラック・ジャック)

白拍子「二人とも死んだのか!?」
蓮花「うううっ」
BJ「この女はまだ手術をすれば・・・」
白拍子「何だって?・・・おい、ブラック・ジャック!?」

  (蓮花を両手で抱えるブラック・ジャック)

BJ「オペの準備だ!」



  (オペ室にて蓮花の手術をしようとするブラック・ジャックと白拍子)

白拍子「本当にやるつもりか? ムダだブラック・ジャック」
BJ「見殺しにするわけにはいかない」「メス!」

  (手術を開始するブラック・ジャック)


  (リッキー空軍基地。フェニックス病による死亡推定時間まで6分30秒に迫っていた)

通信者「ドクター・ホワイト! 応答してくれ! こちらリッキー空軍基地! ドクター・ホワイト!!」
クラーク「もういい! あと少しでドクター・クーマが言っていた21時間がたつ。ミサイル発射の準備をしたまえ」
通信者「は・・・はい・・・」


  (残り時間があとわずかな中、スカイホスピタルでは手術が続いていた)

  (メスで蓮花の胸を切り開くブラック・ジャック。そこには・・・)

BJ「これは! 人工心臓!!」「ヒュドラ型人工心臓だ!!」
白拍子「何だってこれが!?」
BJ「ああ! 親父が作った人工心臓がこの人にも・・・!?」

  (オシログラフに異常が見られる)

白拍子「血圧低下! 呼吸も弱い! このままじゃ心臓が停止するぞ!」
BJ「バカな!! 銃弾による人工心臓への損傷は無い!」
  「この心臓はたとえ人体から取り出しても永久的に動き続ける。それが止まるということは・・・・まさか!!!」
白拍子「どうした!? ブラック・ジャック!!」
BJ「もしかしたら、フェニックス病を治せるかも!」
白拍子「何だと!?」
BJ「白拍子。 蓮花の血液を採取するんだ。彼女の血液で免疫血清を作るんだ。私は心臓を移植する」
白拍子「何だって!?」
BJ「詳しい説明は後だ!」
白拍子「しかし、心臓移植といってもどこにドナーが?!」
BJ「あるさ! 彼女の父親・満徳の心臓がな!」



  (空軍基地ではいよいよミサイル発射準備が行われていた)

通信者「ミサイル発射口開きます。目標設定確認。発射いつでもできます」

  (発射ボタンがコンソールにせり上がってくる)

クラーク「よし。発射だ」
通信者「発射!」



 ズゴゴゴゴゴゴゴ!!! (ついにスイッチが押され、超高熱ミサイルが放たれた)


通信者「ミサイル発射成功。目標スカイホスピタル到着まであと720秒」
?「バカな!!」

  (二人が振り向くとクーマがいる)

クーマ「君たちはなんということをしたのだ! 人の命を何だと思っている!」
クラーク「ドクターの言っていた21時間は過ぎた」
クーマ「しかし・・・!」

  (クラークの襟を締め上げて反論しようとするクーマ。そこへ・・・)

白拍子「こちらスカイホスピタル! こちらスカイホスピタル! 応答してくれ!」

  (モニターに白拍子の姿が映る)

クーマ「白拍子くん! 無事だったか!」
白拍子「聞いてください! フェニックス病の治療法が見つかったんです!」
クーマ「何だって!?」

  (二種類のウイルスを並べて説明する白拍子)

白拍子「これがヒュドラ型人工心臓に使われていたBOP」「そして、現在の進化した新BOP」「この二つは電気極性が逆なんです」
   「この二つのBOPを一緒にすると、発電特性が逆になって肉体に対する影響が消えることがわかりました」
   「我々はこれを元に、免疫血清を作り出せます」
クーマ「よく・・・やってくれた!」
通信者「ミサイル到着まで520秒!」
クーマ「!!」
クラーク「ミサイルの軌道修正をするんだ!」
通信者「了解!」


  (北極のオーロラの中、ミサイルが飛んでいく)
  (基地ではミサイルの軌道修正が行われているが・・)

通信者「くそう! なぜプログラムを受け付けない!?」
クーマ「どうしたというんだ!?」
通信者「軌道修正できないんです!」
クーマ「な・・なに!?」
通信者「これはオーロラ!? そうか、オーロラによる磁場の影響で遠隔操作ができないんだ!」
クラーク「バカな! では上空で爆破しろ!」
通信者「はい!」

  (ミサイルは止まる気配も無くオーロラの中を飛んでいる)

通信者「だめです! 爆破もできません! 目標到達まであと210秒!」
クーマ「免疫血清が完成するというのに、それさえも蒸発してしまうぞ!」

  (スカイホスピタルのモニター室にいる白拍子)

クーマ「白拍子くん、ミサイルだ! ミサイルが向かっている!!」
白拍子「何ですって!!!」
クーマ「今すぐそこから離れるんだ!!!」



  (ブラック・ジャックはいまだ蓮花の手術に取り組んでいる)

BJ(くそう! 眩暈が・・・・)

  (フェニックス病に冒されながら懸命に手術をするブラック・ジャック)

BJ(手がだるい・・・感覚も無くなってきた・・・・なぜ私はこの女を助ける? こいつは母を一番苦しめた張本人じゃないのか?)
  (なのになぜ私は・・・・?)



  (闇に包まれていく手術室。そこへ現れたのは、死んだはずの紅蜥蜴)

紅蜥蜴「兄さん・・・・」
BJ「!? お前は・・・・!」
紅蜥蜴「そんな女、助ける価値無いわ。そんなに人の命って大切なの?」
BJ「ああ、そうだ」

  (複雑な表情をする紅蜥蜴。そこへ誰かの笑い声が聞こえてくる)
  (声の主はドクター・キリコだった)

キリコ「フフフフフフフ」
BJ「キリコ!」
キリコ「相変わらずの正義感ぶりだなブラック・ジャック。生き物は死ぬ時には自然に死ぬものだ。それを人間だけが無理に生きさせよう    とする」「どっちが正しいのかな?」
BJ「黙れキリコ! お前に何が!」
?「ブラック・ジャックくん」

  (激昂するブラック・ジャック。そこへ背後から現れたのは恩師・本間丈太郎)

BJ「本間先生!?」
本間「君も肝に銘じておきたまえ。医者は人を治すんじゃない、人を治す手助けをするだけだ」
BJ「先生・・・・・・」
?「黒男・・・」

  (ブラック・ジャックを本名で呼ぶ声。それは懐かしい母・みおと、若かりしころの姿をした父・影三だった)

BJ「お母さん! お父さん!」

  (マスクと帽子を脱ぎ二人に駆け寄ろうとするブラック・ジャック)

影三「黒男、よくやった」
みお「おいで黒男、もう十分よ。さあ、いっしょに行きましょう・・・・」

  (ブラック・ジャックに手を差し伸べる二人。フラフラと歩いていくブラック・ジャック)

?「待って先生!」

  (その声に振り向くブラック・ジャック。闇の中に光り輝く女性がいる)

?「患者さんが待ってるわ!」
BJ「君はピノコか!」
ピノコ「そうよ、ピノコは18歳だもの。これは本来の姿」
BJ「・・・・ピノコ!」
ピノコ「いつまでもピノコは先生と一緒よ」「先生、がんばって!!」


  (18歳に成長した姿のピノコ。その輝きが闇を打ち消した)

  (手術室に座り込んでいたところを目を覚ますブラック・ジャック)

BJ「ここは!?」

  (オシログラフを見ると、蓮花の心臓が停止している)

BJ「しまった!」

  (弱った体で立ち上がろうとするブラック・ジャック)

BJ「くそっ! まだだ! まだあきらめんぞ!」




  (一方、スカイホスピタルの操縦席に座る白拍子)

通信者「オーロラの影響でオートパイロット機能は役に立たない。手動操作で始動しろ!」
白拍子「わかった!」「頼む、動いてくれよ!」
通信者「ミサイル到着まであと21秒! 急げ!!」

  (オーロラの彼方から飛んでくるミサイルの光が見える)


  (なおも諦めず、蓮花の手術に向かっているブラック・ジャック)

BJ「わたしは、命を救う!」

  


  (スカイホスピタルを飛び立たせようとする白拍子)

白拍子「さあ! 上がるんだ!!」

  


  (心臓を直接つかんでマッサージをするブラック・ジャック)

BJ「さあ! 生きるんだ!!」



  (目前にまで迫ったミサイル!!)



BJ「生きろ!!!」



   ゴゴゴゴゴ!!  (ついに飛び立ったスカイホスピタル)

通信者「ミサイル到着まであと15秒!」

  (操縦桿を必死に握る白拍子)

白拍子「上がれーーーーーーーーーーーーーー!!!」


  (氷の大地から飛び立つスカイホスピタル)




通信者「10!」「9!」「8!」「7!」「6!」「5!」「4!」「3!」「2!」「1!」




  (飛び立ったスカイホスピタルはミサイルを避けようとする!!)


   ドガガガガガガがガーーーンンン!!!!(大爆発を起こしたミサイル)

通信者「爆破確認。スカイホスピタルはレーダーから消えました・・・」
クーマ「すまん・・・・ブラック・ジャックくん。許してくれ・・・」

  (うなだれるクーマ。だが・・・)

白拍子「こちらスカイホスピタル! こちらスカイホスピタル!」
クーマ「おおお!!!」

  (雑音が混ざるも白拍子の声がする。モニターにも映し出された)

クーマ「生きて・・・生きていてくれたか!!」

  (爆発の上を飛んでいくスカイホスピタル)

白拍子「はい・・・何とか・・・・」


  (一方、ブラック・ジャックも・・)

BJ「術式終了」

  (マスクをはずすブラック・ジャック。ふと見ると、母と若いころの父の姿が・・・・)

BJ「父さん、母さん、やりましたよ・・・・」


  (オーロラの中を飛ぶスカイホスピタル)





  (こちらは記者会見場。白拍子、クーマ、西川史子がいる)

白拍子「このフェニックス病はすでに免疫血清が完成しており、要望があればどなたでも無料で提供します」
記者「こんなすごい薬が無料!? 本当ですか!?」
白拍子「はい。どのような国でもこれを独占することは許されません」
クーマ「なお、この免疫血清を『本間血清』と呼ぶことにしました」
記者「本間血清?」
クーマ「そうです。かつて本間丈太郎先生は、BOPが原因である本間血腫にたったひとり立ち向かっていった」
   「そして本間先生とその愛弟子のおかげで、本間血清が完成したのです。私達は敬意を込めてそう呼ばせていただきます」

  (喫茶店「Tom」ではマスターと久美子がこのニュースを見ている。涙ぐむマスター)

マスター「本間先生・・・・」
久美子「よかったわね、お父さん・・・・」


  (本間丈太郎の墓の前に立つブラック・ジャック)

BJ(ただ今戻りました。本間先生・・・・)



  (再びTom。和登と写楽がきている)

写楽「は〜〜〜〜〜〜」
久美子「写楽くん元気ないわね?」
和登「この子、ピノコちゃんがいなくなってからずっとこの調子」
写楽「姉ちゃんだって、ブラック・ジャック先生がいなくなって元気ないじゃん!」
和登「! 何を〜!」

   (顔を赤くしてくってかかる写楽。同じく赤らめてやり返す和登。ケンカが始まった)

久美子「先生、どうしてるかな・・・・・」

  チリンチリン・・・・(ドアが開いて誰かが入ってくる)

久美子「いらっしゃ・・・・・!」

  (なぜか口を押さえる久美子)

和登「だいたいあんたはいっつもピノコちゃんにどなられてば〜〜っかっで!」
写楽「そ・・・そんなことないよ! ぼくの方がお兄さんなんだから!」
?「しゃらく!!」
写楽「!!??? ご、ごめんなさい!!!」

  (顔を青くして謝る写楽)

写楽「・・・あれ?」

  (そこにいたのはいつもの調子のピノコ)

ピノコ「だ〜〜れがお兄さんなのよさ!」
写楽「ピノコちゃん!」

  (そしてピノコの隣にはもちろん・・・・)


「「「「ブラック・ジャック先生!!!」」」」


  (微笑を浮かべるブラック・ジャック)

和登「いつ戻ってきたの!」
写楽「ピノコちゃん寂しかったよう!」
ピノコ「長い旅だったのよさ」
BJ「そうだな」
マスター「先生、おかえりなさい」
BJ「ただいま」


  (青空をカモメが飛びまわる中、走っていくピノコとラルゴ)

ピノコ「ちぇんちぇい! はやくはやく〜〜!」

  (ピノコとラルゴnあとからゆっくりと歩くブラック・ジャック)
  (ふと前を見るが、爆弾で吹き飛ばされた岬の診療所はもう存在しない)
  (そこは出発した時と同じ、瓦礫の山になっていた)

ピノコ「あの時のまんま。ねえちぇんちぇい、ここにほんとうにおうちたて直すの?」
BJ「ああ。また一から始めるか」
ピノコ「あらまんちゅう!!」
ラルゴ「ワンワン!!」

  (診療所のあった岬に立つ二人と一匹・・・・・・)



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