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うしおととらの最終回

潮も、とらも、息を切らしている。九本あった白面の尾は遂にたった一本だけになった。

白面:よくぞ…この我を…ここまで追い詰めた……!!獣の槍を恐れているのも、今は認めよう……
    前にその槍に追われた時から……我は、いまいましい恐怖にとらわれていたようだ…
    だが、それがどうした!?それで我の憎しみがおさまるか!?
 潮:とら、白面が!
とら:気をつけろ!
白面:この目か!?この目がおまえ達に我のすべてを知らせたか!?ならば、目など要らぬわ!!

大きく目を見開く白面は…その目を自らの手で潰した!

 潮:じ、自分の目をつぶしただとォ!!
白面:もう良い!もう、人も妖も滅ぼすのは、どうでも良い!!
    おまえ達を、おまえ達だけを!殺してやる!!」

そして、白面は今まで以上の速度をもってうしおととらに襲いかかる!
目の見えないはずの白面だが、正確に潮ととらに攻撃をあたえる。

 潮:何で…何でヤツはオレ達がわかる?
とら:し、知るかよ……
白面:わかるのだ、わかるのだよ。我には獣の槍の気配がなァ!
    だが使い手、おまえには、どうすることもできぬ。我は獣の槍でしか倒せぬのだからなァ!!

最終章「うしおととらのの縁」

 守矢:やった!結界内の毒霧が晴れたぞ!!あそこだ!
イズナ:白面があんなに速い…
 一鬼:長ァ、早くヤツらを助けに…
山ン本:無理だ!白面を捉えきれず、同士討ちになる!
 神野:今となってはうしおととらに任せるしか…ない…

白面の速度に対応できずに翻弄される潮ととら。

 潮:くそォォ…何もできねえのかよ。
とら:いやァ、まだ手はあるさ
 潮:!とら、何を…!

とらは、白面が再び接近する前にうしおの腕を取ると、そのまま獣の槍を自らの背中に刺した!

とら:が…あ…
 潮:と、とらァ!
白面:け、獣の槍の気配が、消えた!?

そして…白面も獣の槍の気配を見失い、攻撃を外した。

白面:うおおおどこだァ、獣の槍ィィ。
とら:けけ、白面、あわててやがる。
 潮:とら!
とら:とんま!抜くんじゃねえ!!
 潮:だけどよ!!

とら:五00年前よ、この国で暴れてたわしに、一人のサムライが挑んできた。
   そいつァ獣の槍を持っていて、わしは追い詰められた。
   その時、どうしてだかわからねえが、一瞬…わしの記憶が、津波のように戻ってきたんだ…
   そのサムライは今のおめえみたいに、獣になりかかってた。
   そしてわしは感じたのさ…サムライの背の後方から…獣の槍破壊のための婢妖どもが、山ほど向ってくるのを…

白面:ぬう、話し声がするな!そこかおまえ達!

とら:このままじゃ獣になったこの男から槍は手放される…
   そして、あの婢妖どもに、一気に砕かれてしまうだろう。
   そう考えたわしは─

白面:そうか!われの探索を逃れるため…われと同じ体を持ち、
    同じニオイを持つ…おまえの体に、槍はかくされたのだなァ!
とら:けけけ、ざまーみろ白面!
 潮:そうか…それを知っていたから獣の槍はおまえを…
とら:そうだ…五00年もはりつけにしてたのに、わしを滅ぼさなかったのよ!
白面:おのれ!おのれ〜!!殺してやる殺してやるぞ〜!!

白面が力をためていく。

とら:今度こそ決着がつきそうだぜ、うしお。
 潮:とら槍を抜かせろよ。
とら:まだそんなコトいってんのかよ。
 潮:だって死んじまうだろーが!

そうしている間にも獣の槍が刺さったとらの体は蒸発していく。

 潮:見ろよ!赤い布なしの能力全開の獣の槍なんだぞォ〜〜!
とら:ほかのヤツらが白面にぶっ殺されてもいいのかよ!?

その一喝で、うしおの表情が変わった。

とら:わしはほかのヤツらなんて、どーでもいいと思ってた!
   妖どもは敵。人間どもは食いモンだったよ!
   だけど、おめーとつるんでるうちになんとなくよ!
   白面なんぞに殺させるのが…悔しくなっちまった。

悲しげに潮は押し黙る。

とら:うしお、おめーのせいなんだぜ。
   そのおめーが、今さら…わしの命惜しさで…目的を忘れんじゃねーっ!!

一連の台詞に潮は涙を浮かべて…そして、決意する。

 潮:わかったぜ…とら…
   だけど、おめえだけカッコつけさせてたまるか…
   みんなのためなら、オレだってええ!
とら:よォオし!!

そして、とらの背に槍を刺したまま、うしおととらは駆ける!

白面:獣の槍ィ、シャガクシャア、死ねえ!!

目の見えない白面は、うしお達の方向を狙って炎を放つが、それは潮が身を挺して防いだ。

とら:バカが、今さらおめえ、わしの盾ンなって…
 潮:オレだって…おまえになるんだ…
   こんなの何でもねえ………なんでもねえよ!

そうだ…
今までみたいに…

そうだ…

行こうぜ、

とら。

至近距離に辿り着いたうしおととら。最後の力を込めた獣の槍は、とらの体を貫通し、その切っ先は白面に向かう!
そのまま一丸となって白面の口内に突き刺さった獣の槍が、ついに白面の頭を吹き飛ばした!!

白面:ギエエエ〜ばかな…我は不死のはず我は無敵のはず
    我を憎むおまえの有る限り…シャガクシャアアア!!


我を憎めよ…

不死となった
おまえが我を憎む限り…

我が滅ぶことはない…

とら:あいにくだったなァどういうワケだか
   わしはもう、おまえを憎んでねえんだよ。
   憎しみは、なんにも実らせねえ。

そう告げる傍らにはラーマとラーマの姉の姿が

とら:かわいそうだぜ、白面!

そして、とらの最後の雷が白面へのトドメとなった。

誰か…

名づけよ、我が名を…

断末魔の叫びからでも、

哀惜の慟哭からでもなく

静かなる言葉で…

誰か、我が名を呼んでくれ…

我が名は白面にあらじ。

我が─
呼ばれたき名は…

そして、崩壊する体を追うように、最後の一本の尾が、爆ぜていく…

 潮:白面の、最後の一本の尻尾…

その中から赤子の幻が浮び、そして、それも空に溶けるようにして、消えていった。

 潮:白面は…赤ちゃんになりたかったのかな…
とら:わかんねえ…だが…いい散り様だったな…
   どうやら…わしも…そろそろらしいや…

傷口からとらの体は崩れていく

 潮:…!オレも…獣になっちまうんだ…お互い…様だよな…
とら:くくっ、笑わせんな。獣は涙を流さねえ。
   おめえなんざ…わしにゃなれねえよ。
 潮:バカヤロウ、とらァ、まだ死ぬんじゃねえ。
   まだオレを食ってねえだろうがよォ。
   おまえは…オレを喰うんだろォ!とらァ!

そう言って、差し出されたうしおの手は…消滅するとらの体を掴めなかった。

とら:もう…喰ったさ
   ハラァ…いっぱいだ。

そう言い残して、とらは満足そうに笑って消えていく。

 潮:あ…ああ…ああああ!!とらァァ…

その慟哭を合図にするように、うしおの体は変化する。
以前のように、獣へと変わりながら

 潮:(ああやっぱり…オレは獣になるんだな…
    それもいいさ…オレはとらになるんだ…)

その時、獣の槍からジエメイと、ギリョウが現れる。同時に砕ける獣の槍。

   潮:(ギリョウさん…ジエメイ…さん…やったよね…
      よかったなァこれで、もう…)
ジエメイ:蒼月、今さら幾千の礼を重ねても足りません。
   潮:(いいよ別に)
ジエメイ:だから… だから、私達兄妹の魂を、あなたに…
     冷たい獣の槍で生きた二つの魂を、暖かいあなたの内で休ませて…

二人が潮の中に入っていく。
 
ジエメイ:そうすればあなたは獣にならない。これが…私達にできる精一杯のこと…
     歩めなかった残りの人生を…あなたと共に歩ませてください

二人が完全に入り込むと、髪が抜け、変化は完全に無くなった。

潮:ああ…ああ…帰れるんだ…

それを実感すると、うしおは気を失って、岩柱へと落ちていった。


須磨子:ああ、あなた…うしおが帰ってくる…
 紫暮:うむ
真由子:とら…ちゃん…

とらを想い涙を流す真由子の手を、キリオが強く握りしめた。

真由子:キリオくん

落ちて来たうしおを、紫暮がしっかりと受け止める。見上げると、空中には無数の妖達がいた。

山ン本:人間、大儀であった!
 紫暮:あんたらもな……大したもんだ
山ン本:うしお御苦労と伝えてくれ。
 神野:さらば…
須磨子:もし!何処に?
山ン本:この国は沈み始めている…
 神野:白面が地を支える要を崩した故…
     だから我々妖が、石と化しそこを支える。
 紫暮:何と!
須磨子:いけません!それでは…
山ン本:うしおが眠っていて助かる…まったくそやつときたら、我々と戦ってでも行かすまいとするだろうからな。
 神野:ああ…まったくよ、東の… だが、まちがうな人間ども…
     我々は、人のためにゆくのではないぞ。我々はこの国が好きなのだ。
山ン本:草木が語り…土がなお生きるこの地がな…
     いつでも心せよこの国の礎には、常に我らがあることをな!!

そして、二人の長も海中に向かう妖達に続く。
白面の開けた大穴に空屋敷が収まり、その隙間を埋めるように妖達が群がり、石となっていく…

イズナ:行っちまうよう…仲間達が…

その様子をイズナ、雷信、かがり達、人と深く関わってきた妖達が寂しそうに見送る。

イズナ 雷信 かがり…

おまえ達は、人と深く関わってきた…

そのような妖どもをひきいて…

お主らはここに残れ…妖が棲まぬ国は滅びる。

それに…

いつか我らが帰りし時、仲間が一匹も居らぬではさびしいのでな…

信じられない!安定!!地震が止まった!日本は沈むのをやめました。


遠野

 勇:ダメ…
礼子:だめよ、小夜ちゃん。
小夜:でも…冥界の門は内側からでないと閉められないの。
    だから私が入って…閉めないと…ね。
 勇:そんな…
礼子:そんなぁ…

覚悟を決めている小夜の前に… オマモリサマが躍り出る。

    小夜:オマモリサマ…
オマモリサマ:さや…おらはもうながいこといきた。おまえのばあちゃんやかあちゃんの…せわになってな…
    小夜:いっ、いいえ!オマモリサマ、おれは小夜が決めたことです。
オマモリサマ:やさしいさや、おらのおむかえは、もうきておるで……しんぱいするな…
    小夜:オマモリサァ!

そして、オマモリサマは門の中へと向かう。そこにいたのは…迎えにきたのは小夜の母だった。

    小夜:お…おかあ…さん…
オマモリサマ:さや…たっしゃでな……
    小夜:オ…オマモリサマァ!

母は微笑みかけ、オマモリサマはそのまま扉を閉めていく。
二人の姿が門に完全に阻まれ… 冥界の門はそっと消えていった。

 勇:さ、小夜さん
礼子:小夜ちゃん
 勇:おかあさんのおっしゃった…とおり…
礼子:元気…だしてね。
小夜:え…二人とも…聞こえたの!?

今度は
あなたの人生を
お歩きなさい…

四月二十二日午後一時八分 戦いは終結した。
翌年
3月─

   真由子:うわ─8時だーっ。
真由子の母:ほら、真由子、卒業式に遅刻したらだめでしょ。
        ダメよ、2年生の時みたいに、ハンバーガー屋さんに寄って学校行っちゃ!

とらの大好物だったハンバーガー…真由子は涙を流す。

キリオ:お姉ちゃん……
真由子:うふふ、ダメねえ私…まだ、ハンバーガーって聞くと…泣いちゃうんだ…
     さ、行こ、キリオくん。
キリオ:そんなモン全部ぼくが食べちゃうよ!
真由子:キリオくん…
キリオ:おねーちゃんまわりのハンバーガーはみーんな!
     おなかぱんぱんになってもへーきだもんね。
     おねーちゃんがほしいっていっても…あーげないよ。
真由子:うん。ずうーっと、食べてね


紫暮:うしお、卒業式に遅れそうなのに、のん気に朝メシなぞ食っとるバアイかーっ。
 潮:死んでものこさねえ!
   ごちそーさん、行って…
須磨子:まって、うしお。口のまわりをちゃんとふいて…

照れて硬くなる潮をからかう紫暮に湯飲みをぶつけ潮は家を出る。

須磨子:いってらっしゃい。
 紫暮:あー、須磨子…さん、お茶を〜
須磨子:はい、あなた。

笑顔で家を出る潮を見送ると、紫暮も須磨子との団らんを噛み締めるようにお茶を頼む。

門を出ようとする潮の目は、倉を映していた。獣の槍と…とらと出会ったあの場所を。
泣きそうになりながら…それでも涙は流さないまま、潮は目を閉じた。

 潮:でも…おもしろかったよなァ…
   なあ、とら。

と笑みを浮かべ、眩しい目で前を見据え、歩き出す。
麻子や真由子、キリオの待つ場所へと歩いていった。

さてさて…

これにて
うしおととらの
ながぁいお話はおしまいだ。

あん、何?寂しいって!?

この国から妖怪達がいなくなって悲しいと…
あんたらはいうのかい…

ふっふっふっ
いいかね、よォくお聞き。

人間は
土に生まれて
土に死ぬ…

土に死ねば、この世に
再び帰ってはこない…

にもかかわらず……

その土からさえ
この世に立ちかえってくるもの。

それが、妖怪なのだよ。

だから、
さからさ、ひょっとして…

いつの日か…

行っくぞーっ、とらーっ!

うるっせーんだよ、うしおーっ!!

うしおとら

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