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宇宙の騎士テッカマンブレードの最終回


テッカマンブレードとテッカマンエビルの宿命の対決。
激戦の末、深手を負いながらもブレードは遂にエビルを倒した。

シンヤ「これで、月へ行きなよ…… ケンゴ兄さんが、待っている……」
ブレード「シンヤ!?」

ブレードはエビルのクリスタルの力で、ラダムの本拠地である月に乗り込む決意を固める。

ブレード「Dボゥイも相羽タカヤも今ここで死んだ! 俺はテッカマンブレードだ!」
アキ「Dボゥ──イ!!」

ブレード「オメガ……これですべて終わりにしてやる!!」



燃 え つ き る 命



エビルのクリスタルを手にしたテッカマンブレードがペガスに乗り、クリスタルフィールドに包まれて月を目指す。

ブレード「オメガ…… オメガ、これが最後の戦いだ!」


一方の月面上、ラダム艦。
艦内を埋め尽くす無数の培養槽の中で、ラダムたちが目覚めの時を待っている。

オメガ「時は来た…… 我が目覚めと共にこの船の命も甦る。ラダムよ! 偉大なる民ラダムの生命たち…… 感じているか? お前たちが宿るべき肉体は、着々と誕生し数を増やしつつある」

地球上。ラダム樹の中に捕われた人間たちが、ラダムの肉体として素体テッカマンへと変えられてく。

オメガ「いざ行かん! 我らラダムの新たなる故郷!」

月面上が激しく震え、大地が砕け、ラダム艦が次第に浮かび上がる。


地球、スペースナイツ基地。
オービタルリングに留まっているアキからの通信が入る。

フリーマン「な、何だとぉ!? Dボゥイが月に!?」
アキ「はい。エビルから……いえ、相羽シンヤさんから事切れる前にクリスタルを手渡されると、すぐ……1人で……」
ミリィ「そんなぁ!?」
フリーマン「クッ! 恐れていたことが……」
本田「そりゃあ、どういうこったい!? フリーマン」
ミリィ「チーフ、まさかDボゥイに!?」
アキ「チーフ!」
フリーマン「今のDボゥイは力一杯に引かれた弓だ。これ以上引けば折れてしまうぐらいギリギリのな。もし今、Dボゥイがテッカマン体形のままクリスタルフィールドへ入ったとすれば、その衝撃により彼の脳神経は、最終崩壊を起こしてしまうだろう」
一同「えぇっ……!?」
ミリィ「じゃあDボゥイは、Dボゥイは……」
フリーマン「間もなく……いや、今この瞬間にも、彼は記憶を喪失し、自らの存在すら失っているかもしれない。そう、自分がDボゥイであることも、相羽タカヤであることも……」
ミリィ「そんなぁ!? じゃあDボゥイは月に着いても、どうやってラダムと……」
フリーマン「たとえ全てを失おうと、彼は戦いを挑むだろう」
ミリィ「え……?」
フリーマン「恐らく彼に、Dボゥイに残されているものは、ラダムへの怒りと憎しみだけだからだ」
ミリィ「そんな、そんな……」
本田「フリーマン! 何か、何か打つ手はねぇのか!? 俺たちがDボゥイのためにできることが、何か!」
レビン「嫌ぁ! Dボゥイが死んじゃうなんて、私、絶対に嫌ぁ〜!!」
フリーマン「レビン! 何をしている、レビン! ラダム獣へのレーザー攻撃を続行しろ!」
本田「フリーマン!? ……はっ」

感情を敢えて押し殺しているフリーマンの横顔を察し、本田は口をつぐむ。

フリーマン「今、我々の仲間の1人が、己の宿命に従い、自らの生き様を全うしようとしている…… ならば、我々が仲間としてできることは何なのか? たとえ微力であろうと、彼の力になる(すべ)はないのか? Dボゥイの、仲間たちの、ラダムと戦い犠牲になっていった者たちの命を無駄にしてはならない! Dボゥイは人類を救うべく旅立った。ならば、我々は彼がラダムを倒すことを信じ、1人でも多くの人間を守るべきではないのか? 撃てぇ! レビン、ラダム獣を人類に一歩たりとも近づけるなぁ!!」
レビン「ラ、ラーサ!」


ラダム獣への攻撃が再開され、オービタルリングからのレーザー攻撃で、次々にラダム獣が撃破されてゆく。


一方、月を目指すブレード。
突然、頭を押さえて苦しみ出す。

ブレード「う……うぁ、うわぁっ!? はぁ、はぁ……」

彼の脳の中で、致命的な何かが砕け散る。

ブレード (き、来てしまったのか……遂に……この時が……)

仲間たちの記憶が脳裏に浮かび、次第に薄れてゆく……

ブレードがペガスから振り落とされ、宇宙空間へ投げ出される。


ミリィ「ペガスの動きが停止しました。地球より30万km地点!」
フリーマン「クッ、あと一息のところで……」
レビン「チーフ、月面裏に重力波キャッチ! 大規模な地震が発生している模様!」
フリーマン「何だとぉ!?」


月面の大地を砕き、ラダム艦がゆっくりと浮上する。


フリーマン「ラダムだ……ラダムの母艦が遂に甦ったのだ!」


アキ (Dボゥイ、生きて……生き続けて…… たとえ記憶を、何を失おうと構わない。ただ生きてさえいればいい。あなたが、あなたのままで帰って来てくれれば、それでいい! だから……だからお願い、生きて……生きて、Dボゥイ!!)

その祈りが通じたか、ブレードの瞳に再び光が宿る。

ブレード「ラダム…… うおおぉぉ──っっ!!」

ブレードが獣のような咆哮をあげ、再びペガスに乗って突進。
ラダム艦は既に月面を離陸している。

ブレード「ラダム……ラダム……! ラダムゥゥ──ッ!!」
オメガ「何っ!?」
ブレード「うぉぉ──っっ!!」

ブレードがラダム艦の外装をぶち破り、内部へ突入する。

オメガ「来たか……!」
ブレード「うりゃぁぁ──っっ!!」

艦内をランサーで次々に斬り裂きつつ、ブレードが突進する。
そして艦内最奥の司令室で、遂にブレードとオメガが対峙する。

オメガ「遂に来たか、タカヤ……いや、ブレード」
ブレード「ラダム……!」
オメガ「ほぉ、よくぞここまで来たな、タカヤよ。……貴様、エビルのクリスタルを!? そうか、フォンもシンヤも死んだということか」

ブレードが足を踏み出そうとしたとき、床から無数の触手が飛び出し、ブレードを締め上げる。

オメガ「不完全な貴様が、よもや我らをここまで追い込もうとはな。それも貴様の信じる、人の心とやらの力か? だが、人の心を信じた貴様がしたことは何だ!? 人としての最大の罪、肉親殺しではないか! 貴様こそは、我ら以上にラダムに相応しい存在よ! さぁ、残るはこの私1人だ。最後の1人を、その手にかけてみるか? この兄を!!」

オメガの胴に、相羽ケンゴの素顔が現れる。

ブレード「ラダム……!」
オメガ「むっ? バカな……貴様、そのような体に? そうか、今のお前に残されたものは、我らに対する怒りと憎しみのみ! だが!!」

ブレードがラダム艦の外へ放り出される。
体を締め付ける触手を、ブレードがランサーで斬り裂く。

オメガもまた、艦の外へと姿を現す。
その背後には地球が。

オメガ「あの星は、我らラダムの第2の故郷。それを目の前にして、貴様如きに敗れるわけにはいかん!!」


レビン「Dボウィ、死ぬんじゃないわよ!」

アキ「Dボゥイ……」

ミリィ「チーフ! ラダム母艦、地球到達まであと4時間!」


ブレードがオメガ目掛けて突撃。
だが攻撃が炸裂する寸前、オメガは瞬時にして姿を消す。
そしてブレードの背後にオメガが現れる。

オメガ「この艦と私は一体だ。そしてラダムこそは、生物として究極の進化を遂げた生命体。その栄光あるラダムの未来を、貴様如きに潰させはせぬ!!」

再びブレードがオメガ目掛けて突撃。
オメガが槍を艦上に突き立てると、艦上から亡霊の如く、奇怪な姿のテッカマンたちが無数に現れる。
ブレードがそのテッカマンたちをランサーで次々に斬り裂き、オメガに飛び掛る。

オメガ「笑止な……」
ブレード「うおおぉぉ──っっ!!」

オメガの体から無数の触手が伸び、ブレードを吹き飛ばす。
次々に放たれる触手が、容赦なくブレードの装甲を砕く。

オメガ「どうした、タカヤ!? 貴様の怒りと憎しみとは、その程度のものなのか!? えぇ、タカヤよ!」


アキ (神様、あなたはどこにいるのですか? 彼はもう、持てるもの全てを失いました。愛する父も、友も、兄弟も。その思い出すら……これ以上、彼から何を奪おうというのですか? 1人の人間に、これほど重い定めを背負わせてもいいものなのですか? 1人の……そう、1人の怯える魂に……」


オメガの触手がブレードを艦上に叩きつけ、さらにブレードの胴に突き刺さる。

オメガ「ハッハッハ……ハッハッハ! これまでか? ここまでなのか、ブレードよ?」

アキ (神様……神様、どうか!)

オメガ「さらばだぁ!!」

アキ (Dボゥイに救いを……! Dボゥイ!)

とどめとばかりに、オメガの無数の触手がブレード目がけ、槍のように放たれる。
触手が炸裂する寸前──
ペガスが艦内からオメガの前に躍り出て、盾となってブレードを守る。

ペガス「D……Dボゥイ……」
オメガ「おのれぇ!」

オメガが触手で串刺しになったペガスを持ち上げ、そのボディを粉々に砕く。
ペガスに埋め込まれていたブレードのクリスタルが、真っ二つに裂けて転がる。
ちぎれたペガスの頭部。その目から、オイルの雫が涙のように零れ落ちる。

ペガス「D……ボゥ……イ……」


アキ「Dボゥイ……」


ブレード「うおおぉぉ──っっ!!」

膨大な光の奔流がブレードを包む。

オメガ「何っ!?」

光に包まれたブレードがブラスターテッカマンと化し、ゆっくりとオメガ目掛けて歩いて来る。

オメガ「おのれ、死に損ないがぁ!」

オメガが手から無数の光弾を放つが、ブレードはそれをものともしない。
やがてブレードを包む光の奔流が、オメガをも包み込む。
光の中、ブレード = 相羽タカヤと兄シンヤの姿が浮かび上がる。

タカヤ「帰ろう……うちへ……」

次々に去来する、家族と仲間たちの記憶。

ブレードの放つボルテッカが、艦上に炸裂する。


大爆発──


オメガ「うああぁぁ──っっ!?」

オメガの姿が跡形もなく消し飛ぶ。


アキ「Dボゥ──イ!!」


砕け散ったラダム母艦の無数の破片が、流星の如く地球へ落下してゆく。
ブレードもまた、赤熱化しつつ地球へ落下してゆく……


それから何日かが過ぎた──


スペースナイツ基地。

サングラスの男が松葉杖をついて歩いている。

ミリィ「えっ、お出かけですか? あんまり無理しちゃダメですよ」
本田「おぅ! 早速、デートかい?」
レビン「あっ、ついでにシャンプー買って来て。切れちゃって、困ってたの」


復旧作業の続く街中。
サングラスの男がジープを飛ばす。


夕暮れ。

海岸に建てられた一軒のバンガロー。海鳥の声が響く。
ジープから降りた男がサングラスを外す。ノアルである。

海に面したテラスで、髪を短く切ったアキが車椅子に付き添っている。
彼女の姿を見つめるノアル。その肩を誰かが叩く。

ノアル「チーフ……」
フリーマン「忘却を、苦しみから逃れる手段に使ってはならない。だが、彼だけにはそれが許される……いや、許されるような気がする。もし神がいるのなら、それは神が与えたもうた、救いなのだ……」

ノアル (ゆっくり休んでくれ……何もかも忘れて……)


アキ「冷えてきたわね。中に入りましょう、Dボゥイ」

車椅子の上のDボゥイ。

Dボゥイ「ア……キ……」
アキ「フフッ……」

たどたどしい口調で答えるDボゥイ。アキが優しく笑い返すと、Dボウィもかすかに微笑を返す。

甘えるようにDボゥイの膝に頭を埋めるアキ。
夕焼け色の空と潮騒の音が、2人をいつまでも優しく包み込む。


アキ「Dボゥイ……」


(終)
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