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●前回までのあらすじ
過去の因縁に決着をつけるべく、九龍(クーロン)浮遊島に乗り込んだ面影蒼(おもかげ あおき)。
行く手を遮る怪人や異常強化された呪三郎を倒しつつ進んでいく。そんな彼を行かせまいとする神楽マキ。

一方、蒼の父・面影怨(おもかげ いちず)の意思を持つ新生物”E-キッド”は、その恐るべき本性をあらわし今や九龍を支配していた。
実の息子・蒼への復讐のために・・・・・

今ここに、十数年にわたる親子の因縁の物語に決着がつこうとしていた・・・・






●最終話 あの人・・・






  (ひとり九龍の奥へ進もうとする蒼。その腕を押さえるマキ)

マキ「だめだよ 離せないよ」「先生いっちゃうから・・・」
蒼「神楽・・・・・・マキ」
 「・・・・・・・・・わたしは笑う時に笑えず 悲しむ時に悲しめない人間になっていた」
 「しかし そんな時はあなたがわたしのかわりに笑い わたしのかわりに泣いてくれた気がします」
 「ありがとう それだけで十分です」

  ズズズズズ(九龍全体に異様な音が響く)

  ドッ(一瞬の隙をついてマキに拳を入れた蒼)



  ゴゴゴゴゴゴ(九龍のあちこちで建物が崩壊している)

青海「うおっととっ ちきしょーどうなってやがる!!」

  (腕を縛られながら、瓦礫が振る中を逃げる青海警部。蒼のぶつかる)

青海「あんんたは一味じゃなさそうだな 助かったぜ 俺は刑事なんだ」

  (蒼に腕を縛った縄を解いてもらう青海警部)

青海「連中をただの香港マフィアくずれだとナメてかかったのが運のツキだ やつらとんもねー事をやらかそうとしてたんだよ」
  「おい! 出口はこっちだろ どこに行く?」

  (出口とは反対の方向へ歩いていく蒼に声をかける青海)

蒼「出口から少しの所に女の子が倒れています 彼女を連れてなるべく遠くへ・・・・・・・・・九龍島はまもなく沈みます」
 「そしてその子に伝えてください」
 「わたしは死ににいくのではなく 心を取り返しにいくのだと」

  (そう言いながら鬼の仮面を被る蒼)

青海(!!仮・・・面の男・・・・・・!?)

  (目の前の男こそ、都市伝説にある”仮面の男”であることに気がついた青海)

  (蒼はひとり奥へと進む・・・・)



  ゴゴゴゴゴゴ(九龍崩壊の音が響く中、培養槽の中に浮かぶ”E−キッド”すなわち父親・怨と対面する蒼)

怨「やっと・・・・・・やっと来たか蒼 わたしの呼びかけは聞こえていたはずだ」
 「鬼の面はわたしに対する怒りを表しているのか・・・?」
 「そんなつまらん小道具でしか力を発揮できないとは・・・・・・やはり失敗だな」
 「おまえの能力は完璧だった しかし人格形成の面で大きな失敗をおかした これというのもあの女のせいだ」
 「人間性を求めすぎた そんなものは必要ないのに」
蒼(おの女とは・・・・・・・・・母の事ですか・・・・・・・・・・・・)
怨「ハハハハハ」「母というのはきさまの幻想 あれは卵子提供者に過ぎん」
 「この肉体の欠点は成長が遅い事だ」「こい蒼 わたしと一体になれ」
 「おまえの成人した肉体ならばわたしが乗っ取るにふさわしい その腐った精神は必要ないがなっ」
 「それともわたしを倒すか? 勝てはせんぞ蒼!!」
蒼「・・・・・・・・・!!」

  (鬼の面を被りキッドに近づく蒼)

怨「バカめぇ」

  ズオオオオオオオオ(キッドから稲妻が放たれ地面を粉砕する! だが・・・・)

怨「ギッギギ」

  (蒼の周囲から不思議な力が湧き出している)

怨「なんだこれは・・・? わたしの力がまるで空気の中に失せていく」「おまえか蒼!? おまえが」
蒼「”修正鬼会(しゅしょうおにえ)”最後の一鬼・鎮め鬼」
怨「鎮め・・・・・・・・・?」
蒼「鬼どもの狂宴”鬼会(おにえ)”にて 最後に悪鬼たちを静めた心優しき鬼の面・・・・・・」
怨「や・・・・・・やめろ」

  (徐々にキッドの浮かぶ培養槽へ近づいていく蒼)

蒼「いかに凄まじきあなたの怨念にも 鎮まる時が来るはず」
怨「うう」
蒼「今がその時・・・・・・」

  ピシッ(蒼が培養槽にふれるとそこにヒビが入った)

怨「おのれーっ きさまーっ」「憎いか!! そんなにこのわしがっ」
 「憎むがいい 憎しみでわしを八つ裂きにすればいい」「わしが鬼ならきさまも鬼だっ」

  パキイ(蒼の被る鬼の面が砕け落ちた)

蒼「父を想えばこそその悪業は断たねばならない これは憎しみではありません」「父さん」

  パキィ(蒼が触れた培養槽が砕けていく)




蒼「母を愛し・・・・・・父(あなた)を愛していました」




  (砕け散った培養層。そこから生じた光が蒼自身も飲み込んだ・・・・)








「その日 明けの明星の中 浮かぶ九龍島は東京湾へと着水しました」
「まるで ゆりかごを水辺に浮かべるかのように」
「そうして あの人はついに帰ってはきませんでした」


「帰る主人のいなくなったあの部屋に」
「わたしは今もときどきこうして訪ねて来ます」

  (蒼の屋敷の奥・・・世界の仮面が飾られている部屋に1人で座るマキ)

「あの人は仮面と何を語っていたのだろう」
「本当に仮面(かれら)はあの人の心の裏返しだったのか・・・・?」
「あたしには何も語ってはくれません」


「そしてある日」
「あの少年の写真とともに渡された小包みを」
「わたしはあけてみる決心をしました」

  (蒼から託された小包の中には、とある物といっしょに彼の手紙が添えられていた)

蒼「神楽マキ あなたが一番望んだものです」


マキ「・・・・・・・・・・・・」

  (涙を浮かべるマキ)


マキ(先生の笑うところ見てみたい 見てみたいよ)


  (かつて蒼に何度も言った言葉を思い出すマキ)


  (小包に入っていたのは蒼のライフマスク。それは優しげな笑みを浮かべていた・・・・・)


「きっとまたあの人に会える気がします」

「その時はこのライフマスクのように」

「口元に軽やかな笑みを浮かべ・・・」

「わたしの前に現れることでしょう」




                       ●おもかげ幻舞 完結


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