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ウルトラマンネクサスの最終回


18年前、アメリカ・コロラド州。

来訪者研究プロジェクトに所属する1人の青年研究者が、絶望の面持ちで山林をさ迷う。
やがて、空から降ってきた暗黒のエネルギーが青年に憑依。
青年が体がみるみる、暗黒に染まってゆく。

「うわぁっ!? うっ……うぐっ……うぅっ……」


そして現在。

TLT-Jでは、多くの人々の心に蔓延したビーストの恐怖を消去するため、巨大記憶消去装置レーテが再起動しようとしている。

『レーテ起動30秒前』

中央コントロールルームでその様子を見つめる吉良沢優、松永管理官。

吉良沢「来訪者の力は弱まっています。今レーテを起動すれば、彼らのポテンシャル・バリアはさらに威力を失う……」
松永「もちろん理解しています。が……3万人もの人間がビーストの存在を認識してしまった」


何者かに撃たれて倒れていたTLT北アメリカ支部・海本隼人が、異変を察知する。

海本「レーテを……動かしたのか?」

幼い頃の回想。


クラスAの超能力者である彼はかつて、来訪者研究プロジェクトに参加していた。
ある研究者の指示のもと、海本が来訪者からのメッセージを伝える。

研究者「海本、来訪者の意思を伝えるんだ」
海本「我々は……自らの手で、故郷の星を爆破した……」


山林の中に潜むストーンフリューゲル。
その前に、ナイトレイダー副隊長・西条凪が導かれる。

凪「私に……光が……!?」

凪がストーンフリューゲルに触れるや、次の瞬間、彼女はTLT-J内へと転送される。
その手に握られている変身アイテム、エボルトラスター。ウルトラマンの光は凪へと受け継がれた。


ナイトレイダー・コマンドルーム。
石堀光彦がニヤリと笑う。

石堀「来たか……!」
詩織「イッシー、この前もそんな風に笑ってたよね」

コーヒーを勧める平木詩織に、石堀が銃を向ける。

石堀「お疲れさん」
詩織「クスッ。やーだぁ」

いつもの冗談と疑わない詩織に、石堀の放った銃弾が無情にも撃ち込まれる。

和倉「!? 孤門!」

とっさに危険を察知した和倉隊長が、石堀の銃口から孤門一輝をかばう。
孤門を狙った石堀の銃弾が、和倉の肩を抉る。

孤門「隊長!?」

執拗に石堀が孤門を銃撃。孤門が必死に避ける。

和倉「石堀!? やめろ!」
詩織「な……なぜ……?」

銃声。石堀の銃が弾かれる。 ブラストショットを構える凪。

孤門「……!?」
石堀「4番目の継承者……その銃、似合ってるじゃないですか」

石堀の背後の空間が、闇に染まってゆく。

和倉「その闇は……アンノウン・ハンド!?」
凪「あなただったのね。裏切り者は!」
石堀「はい……」
孤門「嘘だ、嘘だ……!」
凪「今までずっと……騙してきたわけ!?」

凪がブラストショットで石堀を撃つ。
しかし銃撃は石堀をさけて背後の闇に吸い込まれ、逆に凪へと撃ち出される。
危うくそれをさける凪。
石堀が悠々と部屋を去る。

和倉「石堀が……?」
孤門「大丈夫ですか、平木隊員!?」


地下最深部SECTION-0。
レーテへ通じる巨大な扉の前に、石堀が立つ。

石堀「来訪者……今の貴様らの力で、俺は止められない」

石堀の力により、扉がゆっくりと開いてゆく。


吉良沢「……ここへ侵入するとは!?」

レーテの前に進み出る石堀。

石堀「もっと恐怖を吸い込め……」

駆けつけた吉良沢が、石堀を銃で撃つ。
しかし石堀は、素手で銃撃を受け止める。

吉良沢「お前は、誰だ!?」
石堀「ダーク……ザギ!」


その名前が、海本の幼少時の記憶を呼び起こす。


海本「ザギが飛来し復活したとき、この星も滅亡する」
研究者「滅亡……!?」


幼い日に海本のそばにいた研究者、山岡一。その顔は……石堀と同じ顔だった。
海本が端末を操作する。
画面に映された個人情報。石堀光彦、山岡一。二つの顔はまったく同じ。
18年前にアメリカで闇にとらわれた青年研究者こそ、山岡一 = 石堀だった。

海本「まさか、すべてのデータを……我々の記憶まで、改ざんしていた……!?」


吉良沢「そんなことが!?」
石堀「別に大したことじゃない。俺には来訪者と同じ力がある」

凪が駆けつける。

凪「なぜナイトレイダーに潜入したの!?」
石堀「……」
凪「答えなさい!」
石堀「TLTは、ポテンシャル・バリアが保たれている内に、ビーストを発生させない抗体の開発を進めた」

吉良沢を見やる石堀。

石堀「そのためにお前はビーストの戦いを管理し、調整しようとしてきた。俺のやってきたことも、似たようなもんさ」

孤門と和倉も加勢する。

和倉「凪ぃ!」
孤門「イラストレーター!」
石堀「俺は、凪がウルトラマンの力を手にすることを予知していた」
孤門「……!?」
石堀「ファウストやメフィストを作ってぶつけたのは、光のパワーを強化させるため。斎田リコや溝呂木を利用したのは凪、お前の心に闇を植え付けるため。ナイトレイダーにいるのは、都合が良かったのさ」
和倉「何ぃっ……!」
石堀「すべては、俺がもとの姿を取り戻すための……道具だ」
和倉「ふざけるなぁっ!!」

孤門と和倉がディバイトランチャーを一斉射撃。
だが攻撃は石堀に全く通じず、逆に石堀の放った衝撃で一同が吹き飛ばされ、ランチャーも砕ける。

石堀「俺は、18年前のあの夜から、ずっとこの時を待っていた」

凪の胸に甦る、幼い頃の記憶……


凪「ママはどこ……?」

母を捜す幼い凪の前に、石堀が現れる。

石堀「俺がった」

その足元に転がる、凪の母の死体。

石堀「お前が光を俺に手渡す……その時のために」


石堀「思い出したか?」
凪「……貴様ぁぁ──っ!」

凪がエボルトラスターを構える。

吉良沢「!? ここで変身してはいけない!」
凪「うおぉぉ──っ!!」

制止を聞くことなく、激昂と共に凪がエボルトラスターを引き抜き、ウルトラマンへと変身する。
巨大な拳が石堀に叩き込まれる──が、石堀の寸前で拳が止まる。

レーテから黒い触手が次々に伸び、ウルトラマンを絡め取ってゆく。

石堀「レーテに蓄積された恐怖のエネルギーが、お前の憎しみにシンクロした。結果、光は闇に変換される」

ウルトラマンがレーテに縛り付けられ、胸のエナジーコアから光がレーテへと吸い込まれてゆく。
次第に闇に染まってゆくレーテ。

石堀「来い……!」

レーテに吸い込まれた光が膨大な闇と化し、石堀へと注がれてゆく。

石堀「これで……復活の時だああぁぁ──っっ!!」

石堀がウルトラマンに酷似した黒い巨人、暗黒破壊神ダークザギに変身。空へと飛び去る。
レーテから嵐のように闇が噴出し、ウルトラマンが闇の中へと消えてゆく。

孤門「副隊長……!? 副隊長!!」
和倉「孤門!?」

無我夢中で、孤門が闇の中へと飛び込む。


新宿の街にダークザギが降り立ち、街を襲い始める。

TLT-Jに、次々と被害の報告が飛び込む。惨状に驚愕する東郷長官。

「新宿に黒い巨人が出現!」

東郷「何ということだ……!」

「北米本部より入電。アメリカ全土でビースト因子の活性化を確認!」
「日本支部の情報を求めています。ポテンシャル・バリアの効果はどうなっているんだと」
「ヨーロッパ支部、アフリカ支部よりも同様の報告が!」
「わかりません、もう一度言って下さい!」「シベリア全域で大規模な火災発生!」

松永「ザギの恐怖が……世界各地に影響を……!」
東郷「恐ろしい……」


ナイトレイダー・コマンドルーム。
和倉が傷ついた体を引きずるように、出動エレベーターに乗り込む。
隣りを見やるが、出動時にいつもいた仲間たちは、もはや1人もいない……。
その想いを振り切るように叫ぶ。

和倉「出動ぉ!!」


レーテの中。

嵐のように吹きすさぶ膨大な闇の奔流の中を、孤門が突き進む。

孤門「うっ……くっ……副隊長──!」

彼方に見える凪の姿。既に意識を失っている。

孤門「ダメだ……闇に飲み込まれたら……ダメだ!」

凪が次第に闇へ飲み込まれてゆく。

孤門「あなたの厳しさが、僕を支えてくれた! あなたの強さが僕を勇気づけてくれた! 憎しみは乗り越えられる! 副隊長……」

凪が闇へと消えてゆく……。

孤門「諦めるなぁぁ!!」

幼い孤門が川で溺れた際、孤門を力づけた言葉。
孤門を力づけた者。それは、他ならぬ孤門自身だった。

その声に凪が意識を取り戻し、うっすらと目を開く。

凪「孤門……」

孤門が必死に伸ばした手を、凪が握り返す。
結ばれた二つの手から光が放たれ、光がウルトラマンと化して闇を突き破る。

レーテが火を吹いて崩壊してゆく。


ダークザギにもとに飛来するクロムチェスターδ。
コクピットでは和倉が、怪我で痛む手を操縦桿に縛り付け、果敢に操縦している。
その様子を報道するニュースレポーター。

「見たこともない戦闘機が現れ、黒い巨人を攻撃しています!」

だがチェスターの攻撃も、ダークザギには全く通用しない。


松永「地球は……来訪者の星と同じ運命を辿る……」


孤門と凪が、新宿の地に降り立つ。
暴挙の限りを尽くすダークザギ。

エボルトラスターは、孤門の手に握られている。
孤門が凪を見返す。力強く頷く凪。

孤門の胸をよぎる、姫矢准の変身、千樹憐の変身。
そして光が選んだ最後の適能者デュナミストは、孤門一輝。

孤門「絆……ネクサス!」

姫矢、憐、凪と受け継がれてきた絆を確かめるかのように、孤門がエボルトラスターを引き抜く。

孤門「うおおぉぉ──っっ!!」

激昂と共にエボルトラスターを空にかざし、孤門がウルトラマンに変身する。
ダークザギの攻撃を受けて墜落してゆく和倉のチェスターを、ウルトラマンが受け止める。

和倉「ウルトラマン……孤門なのか……?」


吉良沢「もしこの戦いでウルトラマンが勝利したなら……」

傷の痛みに顔を強張らせる吉良沢を、松永が支える。

吉良沢「運命を……変えられるかもしれない!」


ウルトラマンがダークザギに挑む。
ザギの右腕から放たれる強力光弾ザギシュート。ウルトラマンが吹き飛ばされ、建物が砕ける。
もうもうと立ち昇る煙の中、ウルトラマンが苦悶の声を漏らす。

ウルトラマン = 孤門の脳裏に、姫矢の言葉が響く。

(姫矢『立て、孤門! お前は絶望の淵から何度も立ち上がった……だから俺も戦えた!』)

ウルトラマンが力を振り絞って立ち上がり、銀の体のアンファンスから、赤い体のジュネッスに変身。
必殺光線オーバーレイ・シュトロームを放つが、ザギはそれを真正面から受け止める。

ウルトラマンとザギの拳が、蹴りがぶつかり合う。
次々に繰り出されるザギの強力な攻撃の前に、ウルトラマンは次第に劣勢を強いられる。

(憐『負けるな、孤門! 俺も孤門のお陰で最後まで戦えた。ウルトラマンとして!』)

ザギの攻撃をかわしつつ、ウルトラマンが青い体のジュネッスブルーへと変身。
最強ビースト・イズマエルを倒したオーバーアローレイ・シュトロームを放つも、ザギはそれを片手で跳ね返す。

和倉「イズマエルを倒した技も通用しないのか!?」
凪「大丈夫……ウルトラマンは負けません」
和倉「凪……?」

周囲でウルトラマンの戦いを見上げている街の人々。その中の1人の少年が言う。

少年「そうだよ! 前にも新宿で悪い怪獣をやっつけてくれたもん!」
人々「私も覚えてる……守ってもらった」「ウルトラマンは、俺たちのために戦ってくれた!」「ウルトラマン……!」

次々にウルトラマンの名を口にする人々。
それを見たメモリーポリス・首藤沙耶が、役目を終えたことを認めるかのようにメモレイサーをしまい、笑みを浮かべる。

ザギの放つ超重力光線グラビティザギを、ウルトラマンがサークルシールドで食い止める。

人々「ウルトラマン……!」「ウルトラマン!」「ウルトラマン!」「ウルトラマン!」
少年「頑張れぇぇ──っっ!!」

希望を捨てない人々の心の力を浴び、ウルトラマンに奇跡が起こる。
その体が次第に、まばゆい黄金色の光に包まれていく。

和倉「あれは……!?」

ウルトラマンが最後の変身を遂げる。
銀色に輝く神々しい身体。背に伸びた一対の翼。
それこそがウルトラマンの究極ウルティメイト最終ファイナル形態スタイル、ウルトラマンノアであった。

獣のような咆哮をはりあげてザギが突進。
ザギの突き出した拳をノアが真正面で受け止め、ノアの強力な蹴りがザギを吹き飛ばす。
腕から迸る光の刃ノア・スパークがザギを斬り裂く。
その圧倒的な強さは、これまでのウルトラマンとは比べ物にならない。

高熱火炎をまとった豪腕ノア・インフェルノが、ザギを吹き飛ばす。
空高く雲を突き抜け、大気圏外まで追いやられるザギ。

ノアの腕にまばゆい光が漲る。上空目掛けて放たれる、超必殺光線ライトニング・ノア。
ザギも地上のノア目掛け、必殺光線ライトニングザギを放つ。

地球上空でぶつかり合う二つの光線。凄まじいスパークが飛び散る。

次第にライトニング・ノアがライトニングザギを押し戻す。
その威力に驚愕するザギ。

そしてザギ自らも光線を浴び、断末魔の叫びと共に爆発四散──


少年たちが羨望の眼差しで、ノアの勇姿を見上げる。


孤門の脳裏に浮かぶ光景。夕暮れの丘の上で語り合う孤門とリコ。

リコ「私、信じてる。孤門君なら、きっと守ってくれるって……」


1年後。


ビルのオーロラビジョンでニュースが流れる。

『新宿での大災害から1年が経ちました。依然、各地でビーストが出現しています。しかしTLTの活躍により、被害は最小限に抑えられています……』

その画面をかすめて飛来するビーストたち。

逃げ惑う人々。そこへナイトレイダーが駆けつける。


僕たちは生きている

たとえ昨日までの平和を失い 恐ろしい現実に直面しても
大切なものを失くし 心引き裂かれても
思いもよらない悪夢に 立ちすくんだとしても

僕たちは生きる 何度も傷つき 何度も立ち上がり
僕たちは生きる

僕らは ひとりじゃないから

君は ひとりじゃないから


空を飛び交う、いくつものクロムチェスター編隊。
林道から空を見上げる姫矢、憐。


和倉、凪、詩織、孤門が人々を避難させつつ、ビーストを次々に仕留める。

人混みの中、逃げ遅れた1人の少年が転倒。
少年目掛けて襲い掛かるビーストを、孤門が撃破する。

少年に、孤門が力強く手を差し伸べる。


孤門「諦めるな!」


NEXUS

それは受け継がれてゆく魂の絆
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