戻る TOPへ

一球さん 

作品解説
一球さんは水島氏の代表作、「男どアホウ甲子園」の流れを汲む漫画で、少年サンデーで連載されました。本作は水島氏お得意の高校野球漫画です。続編という位置づけなのか、男どアホウのキャラが多数登場します。また、日本アニメーション製作でアニメ化もされましたが視聴率不振のため、早期打ち切り(2クール)になり、一球の正体などが不明なまま終わりました。その為、アニメ版と漫画版の最終回は違うようです。漫画の最終回は、一部では中途半端といわれたそうです。

最終回に登場する主な登場人物(並びはアニメ版に順ずる)
真田一球 富士山が故郷の身体能力が抜群に優れた少年。左文字に育てられる。まったくの野球シロウトだが、ひたむきな姿勢で人々の心を掴む。忍者の血筋。
大友俊 巨人学園のエース。一球の出現により、自分の位置が危ぶまれ、たびたびナインとの衝突が絶えなかった。
芦田麗子 大友の思い人で、大金持ちの令嬢。一球に好意を持っている。
3球士 一角、堀田、司、の3人を称してつけられたあだ名。野球センスは抜群。
(男どアホウ甲子園のキャラ)
岩風五郎 通称豆タン。藤村甲子園の恋女房で絆が深い。現巨人学園の監督。大友に辛く当たっていた。
藤村甲子園 男どアホウ〜の主人公。壮絶な野球人生を歩む。非業の阪神エースピッチャーだった。
左文字 南波在学時代藤村のチームメイトとして、彼を助けた。一球の育ての父。
球二、球三 藤村の弟で双子のバッテリー。球二がピッチャー、球三がキャッチャー。

九朗 一球の幼馴染で親友。一球を慕って富士山からやってきた。力はあるが、ルールを覚えられない。

最終回までのストーリー
巨人学園の名門意識を一掃するべく、岩風は野球のエキスパート3球士と野球を知らない真田を連れてきた。しかし大友ら従来の巨人学園のナインらの反発にあい、彼らは野球部を辞めてしまう。3球士のうち2名も、大友が気に入らないので巨人学園を去る。残された一球は、監督を引き受け全員素人を引き連れて甲子園に出場。対するは、かつて阪神の花だった藤村の弟を擁する南波学園。勝負は巨人学園が1点リードしていた。
※「」は人物のセリフ
()は心の中
マスのあきは、カッコ内で段落が変わったことをしめします。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

一球さん最終回「この一球にドラマあり」
甲子園球場・グラウンド
アナウンサー「打った〜〜、藤村球二ふりおくれながら しかし、ついに 真田の剛球をとらえて ライトへ!!」
アナウンサー「しかし、これは平凡な ライト フライです!!」

甲子園球場・スタンド
佐藤「とれ〜〜、文六 とるんだ!!」

甲子園球場・グラウンド
左文字「いけ 一球!!」
一球走りながら。
一球「みんな、九朗のところへ 集まってろ!!」
チームメイト「はい!!」
チームメイト2「はい!!」
一球「いそげ、郷!!」
郷「はい!!」
アナウンサー「ライト文六、かまえた!!」
が、力みすぎたのは後ろに倒れ、ボールを落とした。
ボールは、文六のミットをかすりもしなかった。
アナウンサー「ああ〜〜、バンザイだ バンザイだ!!」
アナウンサー「一塁ランナー 球二はまず まちがいなく 同点のホームインだ!!」
「しかし、なんと 真田が 外野へむかって 走る!!」
アナウンサー「打った 球三は 一塁を ける!!」
アナウンサー「打球は、ライトの いちばん深い ところへ 転てん!!」
一球がいつのまにかライトまで来ている。
一球「文六、おれが いく!!」

甲子園球場・スタンド
佐藤「ラ、ランニングホームラン!?」
「ま、まさか!?」
大友「真田 〜〜、 走れ 走れ!!」
大友は興奮して、一緒に見に来たナインをも押しのけて叫んだ。

甲子園球場・グランド
アナウンサー「真田、走る、走る!!」
アナウンサー「藤村球三、二塁も けった!!」
アナウンサー「真田、走る、走る!!」
アナウンサー「真田、追いついた!!」
一球ボールをつかむ。
アナウンサー「な、なんと バック ホームだ!!」
うおおおおお
アナウンサー「藤村、三塁もけった けった!!」
一球うなり声をあげて、ボールを投げた。
アナウンサー「あ〜〜、真田 おそるべし 大遠投!!」
甲子園「ぬっ!!」
アナウンサー「す、すごい!! はやい!!」
アナウンサー「ものすごい タマが かえって きます!!」
アナウンサー「ま、まさか ダイレクトで・・・ し、しかし のびるのびる!!」
アナウンサー「ああ〜〜、 おそるべし、強肩!!」
球三「なに!?」
一球の投げた球が、バックホームまじかの球三の視界に入ってきた。
球は球三を追い抜く。
アナウンサー「なんと、本塁上に 内野手が 全員集ま って います!!」
シロウト巨人軍内野手は、皆なれていないのか震えている。
わおおおおお
九朗が勢いよく立ち上がる。
大友「ああ!!」
藤村「なんや、あの キャッ チャー!?」

富士山・小屋
左文字「あの 九朗の 姿・・・・・・」
「まさに 落城寸前の 巨人城!!」
五味(弟)「つまり、九朗は 最後の とりで!!」
左文字「あのへたな そして弱い 足軽どもが 巨人城を 死守 するには あの 方法しか ない!!」

甲子園球場・グランド
ドシイ
九朗「うっ!!」
アナウンサー「呉が 胸にあてて 止めた止めた!!」
アナウンサー「まわりの 内野手が こぼれ球を ひろう!!」
アナウンサー「藤村 球三が すべる!!」
法市「ナ、ナマンダ ナマンダ!!」
一球「法市、タッチ だ〜〜!!」
「体ごと ぶつかって いけ〜〜!!」
法市「う、うん!!」
法市「だっ!!」
法市の体が揺らめく。
ナイン「わっ!!」
思わず叫ぶ、大友。
試合を見守る、麗子、藤村、左文字。
とうとう球三を止められなかった。
審判「セーフ セーフ!!」
アナウンサー「逆転 〜〜!!」
「逆転、逆転!!」
カターン
スコアボードに2点が加算された。
一球「むっ!!」

甲子園球場・スタンド
大友「お、おれたちなら・・・ おれたちが守って いたなら、 ストライクできた あの返球は とれた・・・・・・」
ナイン「い、いや それ以前に あのライト フライなど バンザイ しない・・・・・・」
佐藤「か、勝ってた 試合なのに・・・・・・」
皆わなわなと震えている。中には涙を浮かべている者もいる。

甲子園球場・グラウンド
アナウンサー「強豪のメンツをかけた南波高校、どたん場9回表 二死から藤村兄弟に よって一挙に 逆て〜〜ん!!」
左文字「野球音痴 真田のすばらしい 本塁死守の作戦 だったが、戦をしら ない足軽では・・・・・・ これがせいいっぱいの ところだろう!!」
アナウンサー「豪打 藤村球三、41本のうちの はじめての ランニング ホームラン!!」
「それだけ すごかった 真田一球の 豪腕!!」
麗子「真田くん、あなたって ほんとうに すてきな人!!」
一球「どんまい どんまい!! まだウラが あるぞ!!」
「心臓が 止まるまでは、まだまだ 戦えるぞ!!」

甲子園球場・スタンド
大友「ウ、ウラがある ・・・・・・といっても 真田にはまわって こない・・・二番から だぞ!!」
佐藤「そ、そう!!」
愕然とし、涙を拭いている。

甲子園球場・南波側ベンチ近く
球三「サヨナラに する つもりかよ!?」

藤村「一球という 男・・・・・・ でかい!! ほんまにでかい!!」
一球「さあ、みんな、 いくぞ〜〜!! まだ首の皮 一枚のこって いるぞ〜〜!!」
場面変わって、北海道に帰った一角の家。妹の妙子と二人、テレビを見る一角。
妙子「おにいちゃん 負けるかしら!?」
一角「いや、負け ないよ!! 一球さんは 絶対 負けない 人だよ!!」
司がテレビを見ている。
司「真田、またいっしょに やりたく なったぜ!!」
堀田球場内のどこか?で見ている。
堀田「あのやろう、銭かねぬきでも いつもいっしょう けんめいやのォ!!」
私立南波高校前・入り口でラジオを聴く豆タン。

甲子園球場・グランド
アナウンサー「五番豊中、三球三振!! みごとな真田の 剛球です・・・しかし この回ついに南波、 ひっくりかえしたの です!!」
アナウンサー「九回裏、もはや 二、三、四番は 敵ではない!! バットにかすりもせず、9球で 三者三振!!」
マウンド上、得意げな球二。法市はバットを持ったまま動けなかった。

富士山・小屋
アナウンサーの声(テレビ中継)「善戦巨人学園、い、いえ 真田一球は 敗れ去った のです!!」
左文字「終わった か・・・・・・」
左文字小屋から出る。気がついた五味兄弟もそれに続く。
左文字「真田雪村に つかえた同姓の忍者 真田一心、その19代目 真田鉄心でこの長い 忍者真田家の 歴史は終わった!!」
「しかし、この一球によって 新しい歴史が始まる!! 忍者真田家の系図に 明日から野球忍者 一球の名が かきこまれるのだ!!」
五味(兄)「で、では 真田は もうここには 帰って こないと いうの ですか!?」
左文字「そうだ!!」
左文字「そして、このわしも 山を降りる!!」
「真田一球、そして 九朗との 思い出と共に この山の生活は 一生忘れまい!!」

甲子園球場・グラウンド
校長(野球人以前に 人間として 生きていく上の ルールがある!!)
(選手が監督を 批判する・・・しかも 同等の立場で 平然とはむか っていく!!)
おきの かもめえ〜と どアホ〜 もーのはよォ
どこで 死ぬやーら ダンチョネ
おれが死んだ〜らよ 三途〜の 川〜でよォ 鬼をあつめ〜て
野球〜する ダンチョネ〜
南波が校歌を歌っている。
校長(もってのほかである!! 監督と同時に 人生の先輩である!! 人間関係のけじめを 忘れては ならないのだ!!)
(弱小を率いて 甲子園にやって きた 真田は、大友たちに それがいいた かったのだ!!)
負けて、不服そうな巨人学園ナインたち。
豆タン(甲子園 球場で 待って いろ!!)
(こんど 真田一球が この甲子園に 現れるとき、そのときこそ!!)
ネットごし藤村。
藤村(そのときこそ わが南波の 敗れる ときかも 知れん!!)
「いや・・・・・・ 真田は破れ てはいない ・・・・・・・・・・・・・・・ 勝負に勝って 試合に負け たのだ!!」
九朗「一球さん、南波の歌、歌ってるだーよ!!」
文六「ち、ちがう!! よく聞いてみろ、あの歌は・・・・・・」
皆は一球のほうに耳を済ませる。
九朗はっとする。
九朗「きょ・・・・・・ 巨人 学園の 歌だ!!」
文六「い、 一球さん・・・・・・・・・・・・」

若人集う
学びの棟に〜
輝く文化のあけぼのよ
八十余州の
英知を集め〜
築く世界の
礎を〜
巨きな人よ
燃えいでよ〜
その名は巨人学園
わが母校
だれもいなくなったマウンドと共に、巨人学園校歌が映る。

一球さん・完



inserted by FC2 system