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海の闇、月の影
篠原千絵作のミステリーマンガ最終回です。

流水と流風仲の良いそっくりな双児の姉妹。だがある日ハイキングに
出た際、洞窟の中で古代ウィルスに感染し、満月になると宙に浮き
物体を擦り抜ける超能力を身につけた。姉の流水は悪の心を持ってしまい、
流風の恋人、克之を奪う為に殺人を重ねていく。妹の流風は優しい心を持ち
克之と共に流水に対抗するが流水の血のウィルスで両親や家族まで流水に操られる。
そしてついに双児が最初にウィルスに感染した海にて死闘が始まる。

〜海、双児が海を挟んだ崖に立っている〜
”11:18PM 月齢15.0満潮”
流水「やっぱり無事に現れたね、流風」
流風「..最後に制服を選んだあなたの気持ち分かるよ、流水」
流風(これは幸せだった頃の..あたし達が一緒だった頃の象徴)
流水「..行くよ、流風」
流水が宙に浮く。流風「流水!」流風も宙に舞う。
空中でぶつかる双児だが流水の指が流風のかたを貫く。
流風(能力が..違う?互角のはずの能力なのに流水の方が速い?流水の方が強い?)
流水「流風!あんたには負ける訳にはいかないのよ」
流風(流水の能力の方が強い?なぜ?なぜなの?
一卵性双生児のあたし達に能力の差は無いはずなのに!!)

地面に落ちる流風、余裕で着地する流水。流風「流水」
流水「流風、あんたは全ての美徳を手に入れた。優しさ、素直さ、愛情。だから
せめて世界くらいあたしが手に入れる!その為にはあんたに死んでもらうのよ」
流水のキックを受ける流風、体勢を立て直す間も無く流水の攻撃。
流風(スピードが違う、パワーが違う!何故今までの流水とこんなに違う?)
流水「流風!今のあたしはあんたには負けない!」

流風(この感じ..どこかで覚えが有る..どこで感じたんだっけ
このスピード、このパワー。..そう..だ!ジーン.A.ジョンソン!
(双児を利用しようとした科学者)これは彼と戦った時と同じ感触!!)
流風「流水!それはジョンソンさんのパワーだわ!あなた何したの?」
流水のキックを何とかかわす流風。息を切らす流風と余裕の流水。
流水「さすがだね流風、よく気が付いたわ。あたしねジーンの血を注射したのよ」
流風「何ですって..!?」流水「もっともパワーアップしてるのは
一時的な物で持続性は無いんだけどね、ドーピングみたいなもんだね」
流風「そんなの無理だわ!ジョンソンさんはとっくに死んでるのよ!」
流水「イアンとクリスが維持してたジーンの研究室に色んな物が残ってたわ。5つの
能力者の血液サンプル、あたしとあんたのも有った。そしてジーン自身のもね」
流風「それを注射したの!?何てバカな事..どうなるか分かって無かったのに!」
流水「あんたに勝てる可能性が有るなら何でもするわよ!」
逃げる流風の首に流水のネクタイが巻き付く。流風(パワーが..違う!)

〜克之、士郎と共に双児を探している〜
克之「流風!流水どこだ!?」 士郎「克之!あそこだ」
海岸に着いた克之「流風!流水!」 流水「克之さん」流風の首をしばっていた
ネクタイがゆるむ。士郎「おりる気か、気を付けろよ」
流風「来ないで!克行!」 克之「流風」
流風「決着はあたしと流水でつけるわ!手を出すのは克之でも許さない!」
流風(止めてみせる!流水の方が強くとも必ず止めてみせる)克之「流風!」

〜急に双児の能力が薄れ出し、宙でよろける双児〜
史朗「月食だ!月が欠け始めたぞ!」
パトカーが到着、警官「あれだ!」「よし撃ち殺せ!」克之が銃を振り払う
警官「やめろ何するんだ!ジャマすると公務執行妨害で逮捕するぞ!
小早川流水には射殺許可が出ているんだ!」
克之「流風と流水の区別もつかないのに発砲するつもりですか!」
警官「ど..どちらが流水か教えなさい」
克之「どちらも撃たせない!..この肉体で止めても撃たせない!」
士郎「克之」克之「撃たせやしない!」
克之(流風、思い通りにすれば良い。その代わり、その代わり必ず戻って来い)

流風(宙に浮いていられない)流水(能力が薄れてゆく)双児(月食が能力を消している)
史朗「何だどうしたんだ」克之「月食だ!月食が双児の能力を弱めているんだ!」
克之(戻って来いよ!流風)流水が勝負を急ぎ出す。
流水(能力がゼロにならない内に勝負を付けるわ!)流風「!」
流風(戻って来い..克之の言葉に心が揺れた。だけど流水のこのパワーに対抗する
為に生命以外あたしには賭ける物が無いもの。流水の懷に飛び込んで
その指があたしを貫く瞬間にあたしも..)流風「あたしもあなたを殺す!きゃあ!」
波が二人を引き裂く。流水がいない。流風「流水?」
流風(流水が波にさらわれるはずない、どこかであたしを見てる..
どこ?どこにいるの!?) 克之「流風、後ろだーー!!」

波から流水の手が出現、流風は流水の方に駆け出していく
流風(流水の懷に飛び込んで、その指が..あたしを貫く瞬間に..一緒に逝くわ!)
克之「流風ー!流水ー!」双児がお互いの胸を腕が貫いている。

”それは不思議な感触だった、相手を貫いた自分の腕も..貫かれた胸も..
指を染めた血さえ違和感が無い..確かにこれは自分と同じものだ!!”
お互いに腕を抜き、倒れる。駆け寄る克之と警官、士郎のおじさんと教授。

〜流風を抱き抱える克之〜
克之「流風!流風?流風大丈夫なのか?」
流風「あ..克之..あたし..大丈夫..よ..タッチの差で能力は消えて無かったから..
知ってるでしょ..あたし達の能力は対応さえ遅れなければ..
貫かれても何とも無いわ」克之「でも、この血は..」
流風「あたしの血じゃ無い、あたしの傷は初めのかすり傷だけ..」はっとする流風
血だらけで倒れている流水。流風「流水!どうして..?どうしてなの流水!
あなたの方が能力は上のはずじゃない」流水「流風あんた..能力..消えてなかったの?」
教授「流水はジョンソン博士の血で能力を増加させたらしいな」
流風「乃木教授!院長!院長!流水をお願いします!」
流水「そんなのいい!..それよりなぜあたしの能力が先に消えたの..?」
院長「しゃべるんじゃ無い!傷を見せなさい」
流水「教えてよ..何故あたしの能力が..?」
院長「..今の段階では想像するしかないが..能力を増加させた分月食の影響も
大きく受けただろう事は考えられる。だから能力が消える速さも流風より
速かったのだろう」流水「..自業自得ってわけか..」警官が近付く。
流水「来ないでっ!あたしのこの血はあんた達を感染させられるよ!
ぐふっ(血を吐く)」流風「流水!黙って!」流水「流風..幕を下ろそう..
あんた..言ったじゃない..決着はあたし達でつけるって..だからあんたの手で
..幕..下ろしてよ」流風「何言ってるんの!院長手当てを」首を振る院長
流風「え..?」流水「ばか..だね、自分でやっといて..分かんない..の
これは致命傷よ、あんたの..勝ちだ」流風「流水?」

流風(致命傷..確かにそのつもりで戦った..でも、でも!)
流水「あんたの..勝ちだよ..処方せんは..あんたの..もんだ」流風「流水!」
流水「これを..始めたのはあたしよ..だから..幕を下ろすのはあんたの..役目だ」
流風「流..」流水「あたしが..やった事の幕引きは..あんたの義務だ」
流風(あたしの..義務..)警官から拳銃を取る流風。克之「流風!」
流風「義務だからやるんじゃ無い..もし逆の立場だったら..あたしが
望むだろう事をやるのよ」克之「流..」涙を流しながら流水を抱きかかえ、
その頭に拳銃を当てる流風。涙を流す流水「..あんたと双児で結構楽しめたよ」
流風「うん..」(うん、楽しかったね、流水!!)
楽しかった思い出の後、銃声がひびく。銃を落とす流風、流水を抱きしめる
流風「流水ーーーー!!」

”幕は閉じた、月が姿を戻した様に多分時間はこの出来事を
人々の記憶から消し去り浄化してゆくだろう”
教授「これで処方せんが5枚揃った!すぐに治療薬を完成させて感染者に投与しよう」
流風、流水の上着が落ちているのに気が付き取ろうとするがマスクをした
警官に取られてしまう。流風「それは流水の上着よ、どうするの?」
警官「消却処分にする」流風「え?」警官「小早川流水に関わった全ての物を焼却
せよとの政府決定だ。私物はもちろん自宅も同様だ、代わりの家は政府が用意する」
流風「何..ですって」士郎「流風、仕方無いんだ聞き分けてくれよ。ウィルスが
残ってる可能性がある、そうする以外ないんだ」流風「これ以上何を奪うの、
あたしはこの手で流水を殺した!これ以上あたしから何を奪うの?全て燃やして
しまったらあの子の生きてた証が何一つ無くなる!あの子自身だけじゃ無く
それさえも奪うの!?ひとつ位、ひとつ位あたしに流水のかたみを残してくれても
いいじゃない!!」克之「流水のかたみなら有るさ」流風「え?」
克之「君だよ、流風。その髪もその瞳も手も足も、皆流水と半分ずつにした物だろう
きみ自身が流水のかたみだ」泣きながら自分を抱きしめる流風。
流風(あたし自身が流水のかたみ..)流風を抱きしめる克之。

”海が呼吸している、月の鼓動が聞こえる。体にもう1人の自分を感じる。
流水、一緒に行こう、異質な夜を終え正常な朝に向かって..
今、海の闇が明け、月の影が消えてゆく”

終わり

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