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ウルトラマンネオスの最終回



光の戦士よ永遠(とわ)
メンシュハイト登場



最強の暗殺怪獣グラールとの戦いで、ネオスは辛くも勝利を収めたものの、自身もエネルギーを使い果たして倒れた。
そこにウルトラセブン21(ツーワン)、ゾフィーの2人が現れる。

セブン21「ネオス。君のエネルギーのほとんどは、今の戦いで失われてしまった」
ゾフィー「君を守るためには、我々の母なる星に戻るしかない。さぁ、帰るのだ。光の国へ」
ネオス「私の命は私だけのものではない…… 命のエネルギーを分離してしまったら、この星の青年は死ぬ」
セブン21「ゾフィー。光の国へ戻り、もう一つの命のエネルギーを」
ゾフィー「ネオス。君はこの太陽の下で戦ってはいけない。私が命のエネルギーを持って戻る前に戦ったら、君もその青年も死ぬ。約束できるね?」

セブン21とゾフィーが、赤い光球となって飛び去る。
変身が解け、憔悴しきったカグラが残されている。そこへ、ナナとザム星人の少年が駆けつける。

ナナ「カグラくん!」
カグラ「はぁ、はぁ……」
ナナ「カグラくん!?」


山中の小屋。ベッドで眠り続けるカグラを、ナナが手当てしている。

ナナ「カグラくん…… しっかりして」

一緒に付き添っていたザム星人の少年が、意を決し、カグラに向けて手を伸ばす。
黄金色の光とともに、命のエネルギーがカグラに吹き込まれてゆく。


一方、HEART本部はキサラギ率いる内閣情報局特別保安部隊によって占拠されていた。

キサラギ「ザム星人を隠してもムダだ。ハートシーバーから発信されている微弱な電波は、このコンピューターにすべて記録され、隊員の位置を知ることができることはわかってる」
アユミ「怪獣は倒したんだし、もういいじゃない!」
キサラギ「状況は何も変わってはいない! メンシュハイトの脅威はまだ去ってはいない」

突如、虚空にメンシュハイトが姿を現す。

ミナト「メンシュハイト! ザム星人はもはや君たちの脅威ではないはず。なぜそこまでザム星人を追い詰めるんだ!?」
メンシュハイト「すべての知的生命体は、ダークマターによる突然変異により生み出される。ダークマターの進化こそが、宇宙の意志だ。そしてその究極の姿が私、メンシュハイトなのだ。我々は宇宙に選ばれた者として、この宇宙の秩序を守り、理想の未来を作り上げる権利を持つ。ザム星人のような野蛮な生命体は、この宇宙の未来に必要ない」
ミナト「神にでもなったつもりらしいな……」
メンシュハイト「君たちもこの宇宙から消して欲しいのか?」
キサラギ「待て! ザム星人は、我々の手で捕える。24時間の猶予がほしい」
メンシュハイト「ワハハハハ…… ワハハハハハ!」

不敵な笑い声を残し、メンシュハイトが姿を消す。


夕暮れの湖畔に佇むザム星人の少年。ナナがやって来る。

ナナ「君の名前、まだ聞いてなかったわね」
少年「ザム星人には、この星の人類のように個人の名前はない。それぞれの役割によって呼ばれるんだ」
ナナ「……」
少年「僕の呼び名は『エスラー』。地球の言葉では『期待する』という意味だ」
ナナ「君は、みんなから期待されているんだ……」

少年が、仲間たちのDNA情報を蓄えたシードレコーダーを見つめる。

少年「僕はいつか、仲間を甦らせるために命のエネルギーを使わなければいけない。でもそのとき、僕は死ぬんだ。それが僕の定めなんだ」
ナナ「君の名前は…… 『希望』とも言えるわ」


夜。小屋の中では、カグラがベッドの上で目を覚ましている。

カグラ「そうか、彼はそんな重い期待を背負っていたんだ」
ナナ「何なんだろう、命のエネルギーって?」
カグラ「命のエネルギーを吹き込まれて、今の俺は生かされているような気がする。人はそこに未来があると確信したとき、命のエネルギーを使うことがあるのかもしれない……」
ナナ「……カグラくんらしくないなぁ、そういうの。……リンゴでも剥くわ。なんか少し食べないと」

その場を取り繕うように、ナナが果物籠のリンゴを手に取る。

ナナ「ひょっとして…… あなたがウルトラマンネオス?」

カグラのほうを見やると、すでにカグラは眠りについている。クスリと笑うナナ。


翌朝。
カグラたちが身を潜めている小屋を、銃を手にした保安部隊員たちが包囲する。

カグラ「ナナ隊員。俺がおびき寄せている間に、車に走れ」
ナナ「やめて!」
カグラ「大丈夫。俺がミラクルを超えたウルトラマンだってこと、忘れないでくれよ」

小屋を飛び出したカグラが、保安部隊員たちを蹴散らす。
その隙にナナとザム星人の少年・エスラーが、小屋の裏口から脱出。
しかし、あとわずかで逃げ切れる寸前、銃声が轟き、保安部隊員たちが彼らを取り囲む。

隊員「我々の指示に従ってもらう」

エスラーが自分の能力をもって刃向おうとするが、ナナがそれを制する。

ナナ「ダメよ! この力は命を生むための力でしょ? 人を傷つけるためには使わないで」

そこへヒノとウエマツがハートビーターが駆けつけ、保安部隊員たちの足元めがけて銃撃。

ヒノ「お前ら良くないよ! 制服組が束になってさぁ!」
ウエマツ「ここから立ち去れ! 次は外さんぞ」
隊員「やむを得ん…… 武装解除! 撤退!」

保安部隊員たちが去って行く。

ウエマツ「カグラ、後は俺たちに任せろ!」

突如として、虚空からメンシュハイトが姿を現す。

ヒノ「ミディアン砲で吹き飛ばしてやる!」

だがメンシュハイトの攻撃で、ハートビーターの砲塔が砕け散る。

ウエマツ「くそぉ!」

ウエマツが銃撃。しかしメンシュハイトはたやすく銃撃を跳ね返し、ウエマツをも吹き飛ばす。

メンシュハイト「その少年を引き渡してもらおう」
カグラ「ザム星人たちは星を離れ、宇宙に住処を求めた。もうお前がかかわる必要はないだろ!?」
メンシュハイト「私にはわかる。その少年がいずれ我々の脅威になる」
カグラ「この少年には、ザム星人の未来がかかっているんだ。誰がお前に渡すものかぁ!」
メンシュハイト「──話し合いはムダなようだな」

メンシュハイトが巨大化し、その姿が異形の怪物と化す。

エスラー「あれがメンシュハイトの本当の姿!」

そのとき、ウルトラセブン21の宇宙ブーメラン・ヴェルザードが飛来。メンシュハイトがジャンプでかわす。

ナナ「セブン21……!」

ウルトラセブン21が登場し、メンシュハイトが対峙する。

ヒノ「あの姿、どっかで見たような気がするんですが」
ウエマツ「あぁ。人類が憎み嫌っていた、悪魔のイメージそのものだ」

HEART本部では、ミナトたちやキサラギもスクリーンでその様子を見ている。

キサラギ「書物や映像でさんざん描かれてきた悪魔のイメージは、過去の人間の想像の産物じゃなかったのか!?」
ミナト「やっと気づいたか。悪魔に魂を売った人類の末路はどうなる? フェイズ1だ! ハートワーマー出動する!」
アユミ「了解! 部外者はさっさと降りてくれる?」

セブン21が飛び掛るが、メンシュハイトはジャンプでかわし、キックで反撃。
メンシュハイトの念力攻撃、火炎攻撃が執拗にセブン21を苦しめる。

ウエマツ「何ぃ!? セブン21でも敵わないのか?」

戦いの様子を見上げるカグラの脳裏に、ゾフィーの言葉が甦る。

(ゾフィー『ネオス。君はこの太陽の下で戦ってはいけない』)

ミナトとアユミの乗ったハートワーマーが飛来。

ミナト「我々がウルトラセブン21を援護する。アユミ隊員、オービットミサイル・スタンバイ!」
アユミ「了解 ──発射!」

ハートワーマーがミサイルを発射するが、メンシュハイトは片手でそれを受け止める。
さらにメンシュハイトの攻撃が炸裂。ハートワーマーが煙をふき上げつつ、かろうじて山中に不時着する。

我慢しきれずに、カグラが駆け出す。
エストレーラーを手にしたカグラを、エスラーが呼び止める。

エスラー「ネオス。最後の命のエネルギーを使うと…… あなたは死んでしまう」
カグラ「あぁ。わかってる」

晴れ晴れとした表情で空を仰ぐカグラ。

エスラー「なぜ、そんな嬉しそうな顔をしている?」
カグラ「俺が今戦おうとしているのは、宇宙の未来のためだ。君も俺も、宇宙の一部だ。決して俺たちは死ぬことはない。この宇宙の、未来になるんだ!」
エスラー「……」

カグラ「ネオ──ス!!」

光の柱に包まれ、ウルトラマンネオスが登場。セブン21と並び立つ。

メンシュハイトの角が光り、背から1対の翼が出現、体が宙に浮く。
翼の羽ばたきで強烈な突風が巻き起こり、大地がえぐれ、木々が引きちぎれ、家々が砕け散る。
ネオスとセブン21も必死にこらえるものの、遂に吹き飛ばされ、大地に叩きつけられる。

さらにメンシュハイトの額の目が光ると、大地から炎が吹き上がる。
炎に取り囲まれ、ネオスとセブン21が苦悶の声を上げる。

戦いの様子を見上げるエスラーのもとへ、ナナが駆け寄る。

ナナ「カグラくんは!?」
エスラー「……」

ネオスとセブン21のカラータイマーが点滅し、エネルギーの消費を知らせる。

エスラーが、シードレコーダーをナナに手渡す。

ナナ「これは……?」
エスラー「10億人の仲間の命を、預かって」
ナナ「待って!」
エスラー「僕の名前は、『希望』なんだろ?」
ナナ「だからダメよ! 死んじゃあ!」
エスラー「死ぬんじゃない! 未来に生きるために、この力を使うんだ」

決意の表情とともに、エスラーが駆け出す。

エスラー「僕の…… 僕の最後の力を、受け取って!」

エスラーが地球人少年の姿から、真の姿であるザム星人へと姿を変える。
ネオスとセブン21めがけ、エスラーが両手を広げる。
命のエネルギーがネオスらに降り注ぎ、2人の体が光に満ちる。

力尽きたエスラーが、光の粒子と化して消滅する。

光の柱に包まれ、エネルギーを注ぎ込まれたネオスとセブン21が力強く立ち上がる。
驚愕の声をあげるメンシュハイト。

ネオスとセブン21が、光線技で嵐のような連続攻撃。
メンシュハイトの角が砕け、翼が引きちぎれる。
地上に墜落したメンシュハイトに、ネオスとセブン21のパンチ、キックが次々に撃ち込まれる。

メンシュハイトが光弾を発射する。
ネオスとセブン21も同時に、それぞれの最強光線のネオマグニウム光線、レジア・ショットを放つ。
双方の光線が空中で激突。
ネオスとセブン21が、光線を放つ腕に渾身の力を込め、光線をメンシュハイトめがけて押し戻す。

2人の光線をあびたメンシュハイトが、爆発四散し、最期を遂げる。


メンシュハイトの脅威は去ったが、HEARTの面々に笑顔はない。

ミナト「カグラと、あの少年は?」
アユミ「先ほどから、連絡を取ろうとしてるんですが……」
ヒノ「まさか、カグラが死んじまうなんてこと!?」
ウエマツ「よせ!」
ナナ「カグラくんは、自分の使命を見つけたって……」
ウエマツ「カグラが? そんなこと言ってたのか!?」
ナナ「えぇ…… あのザム星人の少年も、カグラくんも、宇宙の未来を守るために……」

声「お──い!」

彼方から、カグラが笑顔で駆けて来る。

ヒノ「カグラぁ!?」
ミナト「よく無事で帰った……」
ヒノ「こいつぅ、心配させやがってぇ!」
ウエマツ「しぶといヤツだなぁ!」
アユミ「今度からは、ちゃんと連絡してください!」

ナナ「これを、あの少年から……」

ナナが、エスラーに託されたシードレコーダーを差し出す。

ミナト「尊い犠牲だったな」
カグラ「いえ。あいつはきっと、一足先に未来に行ったんですよ」

最後の変身のときと同様、カグラが晴れ晴れとした表情で空を見つめる。

ナナ「そうね……」

ミナト「ダークマター満ちるアンバランスゾーンから、太陽系はもうすぐ抜け出すだろう。我々HEARTと怪獣との戦いは終わるが、大事な使命が残ったな」
カグラ「えぇ。10億人の仲間たちは、今は俺たちの手の中だけど、人類の科学力で甦らせる。いつか…… きっと!」


地球を離れたネオスとセブン21が、宇宙の彼方へ飛び去って行く。


(終)
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