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ウルトラマン80(エイティ)の最終回


九州の南原市 今まさに春の真っ盛りであった
暖かい日差しを浴びて 動物たちものんびりしていた
ところが平和なこの街に 奇怪な事件が待っていた


空から白い霧が、南原市の地上へと降り注ぐ。
建築物、木々などが白い霧を浴び、次々に凍りつく。
動物園のライオン、ゾウ、キリンなどもたちまち氷付けとなる。


春の真っ盛りだというのに突如 猛烈な寒波が
暖かい南原市を一瞬のうちに白く凍らせてしまった


あっ!
 キリンも象も
    氷になった
!!


UGM基地。

オオヤマ「九州の南原市が、突然の異常寒波に襲われた。小阪隊員、気象班としての意見は?」
ユリ子「原因はわかりません。ひょっとすると……」
イケダ「なぁに、もし怪獣だったら俺たちUGMが一発で、なぁ!」
フジモリ「うん。ハハハ!」
オオヤマ「イケダ、フジモリ! 軽々しい口を叩くな! 果たして、これまで怪獣を倒してきたのは、本当に我々だっただろうか? とにかく、南原市に異常事態が起こっている。いつでも出動できるよう、待機だ」
一同「了解!」
セラ「南原市の住民は皆、避難したそうです」
オオヤマ「うむ」

ふと、オオヤマが猛に何かを言いたげな様子を見せるが、結局無言で司令室を後にする。

猛 (キャップは、何かを心に決めてるようだ。もしかしたら…… ウルトラマンエイティ……)


そのころ 南原市では


空から降り注いでいる白い霧の中から、巨大な怪獣が現れ、街中で暴れまわる。
UGM基地内に警報が鳴り響く。

『UGM、発進ゲートへ! UGM、発進ゲートへ!』

イトウ「行くぞ!」


UGMは ただちに九州の南原市へ向かった
やはり 異常な寒さの原因はこの怪獣だった
きっとこの怪獣は もっと恐るべき力を持っているに違いない


オオヤマと猛を乗せたシルバーガルを先頭に、UGM機が南原市に飛来する。

オオヤマ「全機、攻撃!」
一同「発射!」「発射!」「発射!」「発射!」

怪獣目掛け、UGM機が一斉に砲撃。
だが砲弾や爆発のエネルギーは、次々に怪獣の体へと吸い込まれ、無力化してしまう。

フジモリ「これは驚いた……」
イトウ「エネルギーを全部、吸っちまってるぞ」
オオヤマ「垂直降下をして、怪獣に接近するぞ」
猛「キャップ! それはちょっと、無茶じゃありませんか!?」
オオヤマ「人間にはできないというのか?」
猛 (やはり、いつものオオヤマキャップとは……何か違う)

シルバーガルが怪獣の前に降下。

オオヤマ「発射!」「発射!」

だが目の前からの砲撃も、やはり怪獣の体に吸い込まれてしまう。
怪獣が次第に接近してくる。

オオヤマ「緊急発進!」

退散しようとするシルバーガルだが、なかなか離陸することができない。

オオヤマ「畜生!」
猛「ダメです! スリップして飛び上がれません!」

そうしている間にも、怪獣はすぐ後ろまで迫っている。
意を決したオオヤマが、一気にノズルを全開にする。


接近した怪獣を反動の壁にして シルバーガルはかろうじて脱出した


どうにか空へと飛び上がったシルバーガル。

イトウ「キャップ、大丈夫ですか?」
オオヤマ「大丈夫だ。いったん、基地へ戻る。作戦の建て直しだ」
イトウ「了解」


冷凍怪獣はマーゴドンと名づけられ UGMの総力を挙げて データが分析調査された
そして その結果が出た


涼子「キャップ、最終データです」
オオヤマ「みんな、そのまま聞け。今度の怪獣は、地球のように炎のある暖かい星のエネルギーを、片っ端から吸い取って冷凍にしてしまう、宇宙から来た凄いヤツだ。一刻も早く怪獣を始末しなければ、日本はもちろん、地球全体は確実に破滅して、暗黒の星になってしまう。これは、私も予想だにしなかった、太陽系全体の破滅に結びつくかもしれん。万一そうなれば、それは皆、我々UGMの責任だ」
一同「……」
オオヤマ「我々はこれまで、色々な怪獣と戦ってきた。しかし今度のヤツこそ、最大で最後のものだと思う。ヤツに勝てば、もうUGMは無敵だ」
イケダ「いやぁ、最悪の場合はウルトラマンエイティに」
セラ「そう、ウルトラマンエイティ様におすがりして、と」
オオヤマ「バカモン! もうウルトラマンエイティは現れない」

そう言ってオオヤマが、猛を見る。

オオヤマ「エイティの助けはいらない。断固として、エイティの力を借りないで、怪獣をやっつける」
猛・涼子「……」
イケダ「キャップ。攻撃した熱エネルギーを吸収して冷たくしてしまうんだから、手がつけられませんね」
ユリ子「キャップ、冷たいものは原則として、硬く脆くなっています。その性質を利用した怪獣作戦はありませんか?」
イトウ「硬くて脆い、か。硬くて脆いのは…… セラの頭くらいかな?」
セラ「硬いけど脆くはありません!」
イトウ「キャップ。この間のパトロールのとき、古いビルを壊していましたね」
オオヤマ「そうか…… ビルを壊す、あいつか!」


ビル取壊し用の鉄の玉を使って ジャイアントボール作戦が開始された
鉄の玉で怪獣を打ち砕く作戦だ


イトウとイケダのシルバーガル、フジモリのスカイハイヤーが、怪獣マーゴドンのもとへ飛来する。
2機がかりで巨大な鉄球をワイヤーで吊り下げ、鉄球を振り子のように揺らしつつ狙いを定める。
オオヤマや猛たちも基地から様子を監視している。

オオヤマ「よぉし、次の揺れで行くぞ」
イトウ「了解!」
オオヤマ「よぉし…… ゴー!」

だが決行の寸前、マーゴドンが冷気をシルバーガルに浴びせ、シルバーガル側のワイヤーが切れる。

イトウ「しまった!」

冷気を浴び、シルバーガル自体も制御を失って墜落してゆく。

イトウ「脱出!」
イケダ「了解!」

2人がパラシュートで脱出する。

イトウ「キャップ、ワイヤーが外れて失敗しました。別のシルバーガルで、もう一度トライしましょう」
オオヤマ「よぉし、俺も行く!」

様子を見ていた猛と涼子が頷きあい、司令室を後にする。
基地の外へ飛び出した2人。猛がブライトスティックを手にする。

オオヤマ「矢的! 星!」

2人を追って来たオオヤマ。猛はとっさに、ブライトスティックを隠す。

オオヤマ「これまで、ウルトラマンエイティには」
猛「……」
オオヤマ「ずいぶん助けられた。これまでのお礼を言うよ…… ウルトラマンエイティ」

衝撃を受ける猛。だが、笑顔で答える。

猛「やはり、知ってたんですね。僕がウルトラマンエイティであることを」
オオヤマ「うむ。私と、イトウチーフは知ってしまった。と言っても、ついこの間だ。矢的…… いや、ウルトラマンエイティ。君には感謝している」
猛「……」
オオヤマ「しかし、いつまでも宇宙人である君に、力を貸してもらうことに悔しさもある。地球はやはり、地球人の手で守らなければならん」
猛「でも、広い意味では地球人も宇宙人です。宇宙人同士、力を合せて敵に立ち向かうのは、当たり前ではありませんか?」
オオヤマ「いや、君のほうに事情があることも知ってしまった。ウルトラの星に戻らなければならないんだろう? それに今度の戦いで、君は傷ついてしまった」

先日の怪獣との戦いでエイティは窮地に陥り、ユリアンの助けで勝利したものの、深手を負っていた。

オオヤマ「もう、エイティに変身しないでくれ…… 俺は行くぞ!」

オオヤマが駆け去る。


怪獣マーゴドンのもとへ、オオヤマの乗ったシルバーガルが到着。

オオヤマ「ワイヤーフック!」

シルバーガルが、契れたワイヤーの片方を受け止め、再び鉄球は2機が支える形となる。

オオヤマ「ゴー!」


肝心なとき スカイハイヤーにトラブルが起こった


スカイハイヤーが次第に制御を失う。

フジモリ「燃料がピンチです!」
オオヤマ「あと1分もたないか!?」

そのとき。赤いジェット機が飛来し、エネルギーチューブをスカイハイヤーに繋ぐ。

オオヤマ「なんだ、その赤いジェット機は!?」

ジェット機に乗っていたのは、オーストラリアへ転任した元隊員のタジマとハラダ。

タジマ「オオヤマキャップ、お久しぶりです。タジマです!」
ハラダ「ハラダです。オーストラリアゾーンから駆けつけました!」
タジマ「燃料を空中給油します。安心してください」
ハラダ「キャップ、いいところでやって来たでしょう?」
オオヤマ「ありがとう、ありがとう!」


再び ジャイアントボール作戦が開始された


オオヤマ「攻撃開始!」
ハラダ「怪獣に、冷凍液をお見舞いします」

ハラダたちのジェット機が、怪獣マーゴドンに冷凍液を浴びせる。
マーゴドンの全身が氷漬けとなり、全身に次第に亀裂が走る。

続けざまにオオヤマたちが鉄球を揺らし、マーゴドンに叩きつける。
氷漬けのマーゴドンが、粉々に砕け散る。

オオヤマ「やった……!」

猛「やった!」
セラ「やったぁ!」
猛「さぁ、みんなを迎えに行こう!」
涼子「はい!」


南原市は 春の日を浴びる平和な街に戻った


一同「ハハハ!」「一度はどうなるかと思ったが」「良かったなぁ!」

UGM基地に帰還した一同。殉死したはずの城野エミ隊員がいる。

一同「あ!?」「城野…… 城野エミ!?」
エミ「ハイ。私ハ・UGM科学班ガ作ッタ・城野エミ・ノ・アンドロイド・デス」
イトウ「アンドロイド!?」
ユリ子「はい。皆さんが、いつまでも亡くなった城野隊員を懐かしく思われているので、私とセラさんがこっそり頼んで、科学班に作って頂いたんですよ」
エミ「本物同様・カワイガッテクダサイ」

オオヤマが猛の肩を叩く。

オオヤマ「いよいよ、お別れだな。ウルトラマンエイティ」
一同「えぇっ!?」


一同の驚きが消えないまま 2人のお別れパーティがささやかに行われていた


司令室に料理の山が並べられ、一同がグラスを手にする。
猛と涼子には、花束が渡されている。

オオヤマ「これまで我々は、いつもエイティの助けを借りてきた。我々はいつも弱かった…… それは、知らず知らずのうちにエイティに頼ろうとする気持ちが、みんなの心のどこかにあったからだろう」
フジモリ・イケダ「……」
オオヤマ「残念ながら、私もそうだ。しかし、私はあるとき決心した。自分たちの手で戦い抜かなければならない! それは、ウルトラマンエイティが怪獣との戦いで傷つき、さらにウルトラの星に事情ができて、星涼子隊員こと、このユリアンがウルトラマンエイティを呼びに来たことがわかってしまったからだ。今、我々は怪獣に勝った。エイティの助けを借りないで、地球最後かもしれん大怪獣をやっつけることができた」

タジマとハラダが頷く。

オオヤマ「これで我々は胸を張って、ウルトラマンエイティとユリアンに、さよならを言える。2人は今日限り、ウルトラの星に帰って行く」
イトウ「どうしても、そうしなければならないのか?」
猛「えぇ…… 我々2人は一旦ウルトラの星へ帰り、しばらく休養すると、また別の星へ派遣されます」
涼子「私はほんの短い間でしたけれど、この美しい星、地球のことは絶対に忘れません」

ユリ子が我慢できず、顔を覆って泣き崩れる。

猛「いろんなことが、いっぱいありました! みんなことは、いつまでも忘れません!」
オオヤマ「今日の別れは永遠の別れではなく、また逢うときまでの借りの別れのつもりでいてほしい。本当は、本当は…… ウルトラマンエイティにいつまでもいてほしかった」

ついに本音を口にしたオオヤマが、大きくグラスを煽り、目に涙をためて猛を見つめる。

猛「さよならは終わりではなく、新しい思い出の始まりっていいます。じゃあみんな、元気で!」
一同「乾杯──!!」

一同がグラスを掲げ、猛と涼子と握手をかわす。


2人は 地球での思い出を胸に焼き付けるため 地球最後の1日を思い切り楽しむことにした

ウルトラマンエイティの物語は今 終わろうとしている
だが 我々のために新しいウルトラマンが きっとやって来るに違いない

ウルトラの星がいつまでも輝き続ける限り


猛と涼子が、地球最後の日を過ごす。

街中の買物、遊園地、桜の花の咲き誇る並木道。
笑顔で海岸を駆ける2人。

やがて、2人の頭上に光が閃く。
それを合図に、決意の表情で2人が顔を見合せる。

猛がブライトスティックを、涼子がブライトブレスレットを天に掲げる。
光に包まれ、猛がウルトラマンエイティに、涼子がユリアンに変身。

2人が頷きあい、地球を飛び立つ。

宇宙へと飛び立ったウルトラマンエイティとユリアンが、遥かウルトラの星を目指して飛び去って行く。


(終)
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