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悪魔くんの最終回 (1989年アニメ版)


四界征服を企む大魔王・東嶽大帝と
この世にユートピア建設を目指す悪魔くんの 夢と希望を賭けた戦いは
ついに決戦のときを迎えようとしていた



最 終 回

夢よ、とどけ君の心に!



悪魔くん「凄い魔力だ…… 学者、これは!?」
ヨナルデ「東嶽大帝(とうがくたいてい)は、我々の生気エネルギーを、すべて吸い取ろうとしているのである……」
メフィスト2世「だ、だから、体の力が……くッ、野郎! 東嶽大帝め!」
こうもり猫「三十六計、逃げるが勝ちでヤンスよ、悪魔くん! こらぁ、見えない学校! なぁにグズグズしてんだよ! とっととズラかるんだよぉ!」
ヨナルデ「無理のようである…… 今まで必死に戦ってくれた見えない学校も、我々以上に傷ついておる…… もはや飛び立つ力も残っていないのである……」
鳥乙女「えぇっ、見えない学校が!?」

見えない学校の屋根にある生命玉(せいめいぎょく)が、次第に光を失ってゆく。

鳥乙女「あぁっ、生命玉の光が弱まっていくわ!」
幽子「まるで、悲鳴を上げてるみたい……」
ピクシー「しっかり、見えない学校!」
東嶽大帝「フハハハ! このときを待っていたのだ! もはやお前たちには、このわしに逆らう力など残っていないはず。わしが四界を征服する! 最後の仕上げとして、今まで邪魔をしてきたお前たちの骨も肉も魂も、吸い尽くしてくれよう!」
悪魔くん「これ以上、見えない学校に迷惑をかけるわけにはいかない。みんな、もう一度力を合わせて戦おう!」
メフィスト2世「よし! 行こうぜ、悪魔くん!」

悪魔くんを背に乗せてメフィスト2世が飛び立ち、一同も力を振り絞ってあとに続く。

東嶽大帝「むぅっ、性懲りもなく!」

悪魔くんたち目がけて東嶽大帝が息を吹きかけると、たちまち吐息が大嵐と化す。
吹き飛ばされた悪魔くんたちが、地面に叩きつけられる。

悪魔くん「うぅっ……! だ、大丈夫か、みんな?」
東嶽大帝「フハハハハハ!」
妖虎(ようこ)「おぉっ、生命玉の光が消えたぞ!」
鳥乙女「えぇっ? ……あっ!」

見えない学校の生命玉の弱っていた光が、完全に消えている。

百目「見えない学校、死んじゃったのかモン? 悪魔くん……」
悪魔くん「み、見えない学校……」
東嶽大帝「ワハハ! 次はお前たちの番だぁ!」
メフィスト2世「野郎! 仇はとってやるぜ、見えない学校!」
こうもり猫「ど、どうやってあいつと戦うってんだよぉ!? 第一、俺たちの魔力なんか通じやしねぇぜ!」
メフィスト2世「くッ、忘れちゃ困るぜ、こうもり猫! 俺たちは、何のためにあのシバの神殿まで行ってきたと思ってるんだ!?」
悪魔くん「そうだよ…… 今こそ究極の六芒星(ろくぼうせい)を使うんだ! みんな、位置について!」
百目「がんばるモン!」
鳥乙女「最後の力を、ふり絞るのよ!」
象人「やるゾウ〜っ!」
メフィスト2世「見てろ、東嶽大帝!」

悪魔くんがソロモンの笛を構える。

東嶽大帝「そうはさせぬぞ!」
メフィスト2世「悪魔くんを守れっ!」

東嶽大帝が魔力を放つ。
すかさず使徒たちが悪魔くんを守るが、強力な攻撃の前に吹き飛ばされ、悪魔くんは魔力に捕われて宙に持ち上げられる。

悪魔くん「わ、わぁ──っ!?」
ヨナルデ「おぉっ、悪魔くんの生気エネルギーが吸い取れられていくである……」
百目「悪魔くぅ──ん!」
メフィスト2世「じょ、冗談じゃねぇっ! 野郎!」

メフィスト2世が悪魔くんを救いに向かうが、東嶽大帝の魔力に撃ち落される。

メフィスト2世「悪魔くん! わ、わぁぁ──っっ!」
幽子「メ、メフィスト2世さん……」
悪魔くん「ち、力が抜けてく……」
メフィスト2世「な、何とかしなきゃ…… あ、悪魔くんが……」
東嶽大帝「今のお前は生気を抜かれ、一歩一歩死に近づいているのだ。それと引き換えに、このわしの力はますます高まっている!」
悪魔くん「な、何だって!? うぅ……力が……あ……」
東嶽大帝「今まさにこの力は、妖精界、地獄界、天上界、人間界の四界を覆いつくし、ついにこの東嶽大帝が全ての世界の支配者となろう! ワハハハハハ!」
悪魔くん「うぅぅ……よ、よく聞け、東嶽大帝! どんな強力な力だって、悪の力で世界を支配することなんて、決してできやしないんだ!」
東嶽大帝「何ぃ!? 生意気な!」
悪魔くん「みんなで助け合ってこそ、初めて世界が一つになり、ユートピアを築くことができるんだ!」
東嶽大帝「何を寝ぼけたことを! 所詮、力ある者こそ正義であり、支配者となるのだ! このわしのようにな。それをユートピアなどと、くだらん夢物語だ!」
悪魔くん「夢も信じれば叶う! だから……だから僕たちは今まで戦ってきたんだ!」
こうもり猫「うぅっ…… あ、悪魔くん!」
妖虎「あ……悪魔くん……」
東嶽大帝「えぇい! この期に及んで、まだわしの力がわからぬのか!? 良かろう!」

東嶽大帝が魔力で悪魔くんを四方八方に振り回す。

悪魔くん「わぁぁ──っっ!?」
百目「悪魔くぅ〜ん!」
鳥乙女「あぁっ……!」
メフィスト2世「あ……悪魔くん!」

悪魔くんが力任せに地面に叩きつけられ、首から提げていたソロモンの笛がちぎれ飛ぶ。

幽子「悪魔くぅ──ん! 悪魔くん……! うぅっ……」
東嶽大帝「くたばる前によぉく見ておけ!」

東嶽大帝の体に満ちる膨大な魔力が、地上へと立ち上り、世界の中枢である蓬莱島の摩天楼に津波が押し寄せる。
その様子を、魔鏡で見ているファウスト博士と、漢鐘離(かんしょうり)老人や仙人、賢人たち。

ファウスト「おぉ、蓬莱島のあの摩天楼が!? 漢鐘離老人……」
漢鐘離老人「うむ……ついに東嶽大帝の強力な力が、蓬莱島にまで及んできたようじゃ」
一同「世界のヘソの中心である、蓬莱島の摩天楼が崩れ去れば、世の中の地下で眠る霊魂たちがさまよい出し、人間界は間違いなく滅びてしまいます」「ここまで来ては、わしたちにはもう何もできん……」
漢鐘離老人「この危機を救えるのは、悪魔くんしかおらんのじゃ……」
ファウスト「そうじゃ、あの子しかおらん! 頼むぞ、悪魔くん」


悪魔くんの家の前では、悪魔くんの家族たちと友人たちが、空に立ち込める暗雲を見上げている。

コハル「あなた、ニュースで言ってたけど、世界中で次々と異変が起こってるそうよ。怖いわ……」
茂「こ、こんなときに真吾はまた、どこへフラフラ出かけてるんだ? さぁさぁ、中へ入って」

エツ子「なんだか、やぁな予感がするわ」
キリヒト「ひょっとして、世界の終わりなんでしょうか……」
エツ子「えぇっ!?」
情報屋「じょ、冗談じゃないよ! 悪魔くんが、東嶽大帝なんかに負けるわけないよ!」
貧太「うん。僕たちには何もできないけど、せめて悪魔くんを信じようよ! 頼むぞ、悪魔くん……」
エツ子「お兄ちゃん……」


東嶽大帝「ワーッハッハッハ! お前の住む人間界と悪魔が助け合うどころか、地獄と化すのだ。悪魔くん、お前の愚かな夢から目を覚ますのだな。ワハハハハ!」
悪魔くん「そんなことは……させない! はっ、ソ、ソロモンの笛が!? ソロモンの笛がない! ソロモンの笛…… ソロモンの笛? た、大切なソロモンの笛……」

ソロモンの笛がなくなっていることに気づき、悪魔くんが力なく倒れる。

東嶽大帝「さぁ、ますますこの力を高めてやるぞ!」
幽子「悪魔く──ん!」
メフィスト2世「悪魔く……ん」
鳥乙女「あぁっ!?」
学者「おぉ、東嶽大帝のエネルギーが……」

東嶽大帝の体からさらに強大な魔力が立ち昇り、その力は妖精界、地獄界へもおよんで行く。

東嶽大帝「ワハハハハハ!」
悪魔くん「ここで諦めたら、すべてが終わってしまう…… でも、でもソロモンの笛が……」

そのとき、どこからかソロモンの笛の持ち主・ソロモン王の声が響く。

ソロモン王「悪魔くん…… 君の勇気とは、ソロモンの笛に頼らなければならないものなのか?」
悪魔くん「はっ…… ソロモン王!?」
ソロモン王「悪魔くん。君の仲間である十二使徒たちは、魔力をなくしても決して勇気を失わなかった。それこそ、真の勇気──」

悪魔くんが歯を食いしばり、必死に立ち上がろうとする。

悪魔くん「夢を……夢を実現させなきゃ!」
メフィスト2世「悪魔く──ん!」
幽子「悪魔く──ん!」
鳥乙女「あ、悪魔くん…… はっ!?」

見えない学校の屋根の魔眼に、何かが光っている。

鳥乙女「魔眼から、涙が!?」
悪魔くん「えぇっ!?」

魔眼から涙があふれ出している。

ヨナルデ「そうか、そうじゃったのか…… 見えない学校は……」

魔眼の涙から光があふれ出し、悪魔くんへと注がれてゆく。

メフィスト2世「あっ、悪魔くんが……?」
こうもり猫「あ、悪魔くん……」
東嶽大帝「何っ!?」

新たな力を得た悪魔くんが、力強く立ち上がる。

東嶽大帝「お前の生気エネルギーはほとんど吸い取ったはずなのに、どこにそんな力が!?」
悪魔くん「傷つき、疲れきった見えない学校が、僕に再び勇気を奮い起こさせてくれたんだ!」
東嶽大帝「えぇい、今度こそ永遠の闇の中へ送り届けてやる!」

東嶽大帝が悪魔くん目がけ、強力な魔力を放つ。
しかし、悪魔くんの周囲を12の光球が舞い、光の壁となって魔力を遮る。

東嶽大帝「おぉっ!?」
百目「悪魔くんが!?」
ヨナルデ「おぉっ、ソロモンの笛を繋いでいた12の珠が、悪魔くんを!」
鳥乙女「まるで、私たち十二使徒の代わりをしているようだわ!」
象人「わしらも負けてられないゾウ!」
メフィスト2世「よぉし……行くぞ!」
幽子「悪魔くん!」
使徒たち「悪魔く──ん!」「悪魔く──ん!!」
東嶽大帝「おのれぇ!」

突然、東嶽大帝の足元の地面が激しく光る。

東嶽大帝「おぉぉっ!?」

光の中からソロモンの笛が飛び出す。

悪魔くん「あぁっ!? ソロモンの笛だ!」

ソロモンの笛がまばゆい光を撃ち出し放ち、東嶽大帝はその光に目が眩み、苦しみ出す。

東嶽大帝「うわぁぁ!?」
悪魔くん「ソロモンの笛!」

ソロモンの笛が、12の珠とともに悪魔くんの手の中に戻る。

メフィスト2世「悪魔くん、今だぁ!」
悪魔くん「よぉし!」

メフィスト2世を始めとする十二使徒が悪魔くんを取り囲み、六芒星の位置につく。
悪魔くんがソロモンの笛を奏で始める。
しかし、百目は傷の痛みに耐え切れず、倒れてしまう。

百目「うぅっ……」
使徒たち「あぁっ!?」
ユルグ「百目!?」
妖虎「しっかりするのじゃ!」
こうもり猫「な、何やってんだよ! 早く立たねぇか! ドジ、バカ、百目!」
百目「あ……悪魔くん……」

訴えるような視線で悪魔くんを見る百目。悪魔くんはじっと、笛を奏で続けている。

百目「ああ……あ、悪魔くん……あぁ……」

立ち上がろうとする百目だが、またもや倒れてしまう。

幽子「百目ちゃん!」

百目を助けようとする幽子。

メフィスト2世「動くな、幽子!」
幽子「え……?」
メフィスト2世「俺たちが信じ合わねぇで、どうして究極の六芒星ができるんだ!? 本当の仲間なら、百目を信じるんだ!」
幽子「メフィスト2世さん……」
百目「あ、悪魔くん…… みんな……」

百目がみんなの想いに応え、体に力をこめる。

鳥乙女「がんばって、百目ちゃん!」
幽子「百目ちゃん……」
こうもり猫「ひゃ、百目! 根性! 根性でヤンスよ!」
家獣(かじゅう)「バウ、バウッ!」
メフィスト2世「悪魔くんも俺たちも、最後の力を振り絞ってるんだ。だから……だからお前も、立て! 百目! 立つんだ、百目!」

強い口調で言い放つメフィスト2世の目に、涙が滲む。
笛を奏で続ける悪魔くんの目からも、涙があふれ始める。

百目「あ、あ……悪魔くん……」
鳥乙女「もう少しよ! がんばるのよ、百目ちゃん!」
妖虎「もう少しだ、百目!」
家獣「バウーッ!」
幽子「しっかり、百目ちゃん!」

一同が目に涙を滲ませながら励ます。それに支えられるように、ついに百目が立ち上がる。

サシペレレ「やったぞ、百目!」
こうもり猫「百目!」
百目「僕、がんばったモン……悪魔くん……」

悪魔くん (よくやったぞ、百目……!)

東嶽大帝「うおぉぉ! うおおぉぉ──っっ!!」

悪魔くん「僕たちの夢よ、希望の星となって輝け! 究極の六芒星──!!」

東嶽大帝がひときわ激しい魔力を撃ち出す。
だが、十二使徒の描く六芒星の陣形が、光の六芒星となってそれを跳ね返す。
さらに六芒星が空高く舞い上がり、黄金色に輝き出す。

使徒たち「おぉっ……!」
悪魔くん「黄金の天空六芒星!!」
東嶽大帝「バ、バカな!?」

六芒星から黄金色の光が東嶽大帝目がけて降り注ぎ、東嶽大帝が六芒星の中へと吸い込まれてゆく。

東嶽大帝「う、うわああぁぁ──っっ!!」
使徒たち「おおぉぉ!?」
こうもり猫「ありゃりゃ、東嶽大帝が……?」

やがて六芒星の光が消えてゆき、それとともに東嶽大帝も断末魔の声を残し、消滅する。

メフィスト2世「やったぜ──っ! ついに、東嶽大帝を倒したぞ!」
鳥乙女「とうとうやったのね、私たち!」
こうもり猫「やったぁ! やった、やったぁ!」
鳥乙女「百目ちゃん!?」

ふらふらと倒れる百目に、鳥乙女が駆け寄って助け起こす。

鳥乙女「百目ちゃん、しっかりするのよ!」
百目「東嶽大帝を倒したんだモン、僕たち……」
鳥乙女「そうよ、よくがんばったわ……」

六芒星から見えない学校へ、やわらかな光が降り注ぎ、再び生命玉が光を取り戻す。

ヨナルデ「東嶽大帝は宇宙の塵となって消えたである。もう二度と、甦ることはできないのである」

東嶽大帝の力がおよんでいた妖精界、地獄界ももとに戻る。
地獄界の閻魔大王の傍らで、メフィスト2世の父・メフィスト老が安堵の笑みを漏らす。

メフィスト老「悪魔くんが東嶽大帝を倒したんじゃからして、でかしたぞ! 悪魔くん!」

ファウスト博士や仙人たちも喜び合う。

漢鐘離老人「やりましたな、ファウスト博士」
ファウスト「さすが悪魔くんじゃ」


そして、あくる日の見えない学校でのこと。

鳥乙女「どうして、博士!? なぜ、みんなが別れなきゃいけないの!?」
ファウスト「君たちは、悪魔くんに協力し、見事十二使徒の役目を果たした。もはや一人前の、立派な悪魔に成長したのじゃ。これからは、諸君も悪魔くんも、ユートピア実現のために、それぞれの出身地に戻り、人間と悪魔が仲良く暮せる世界を作ると言う、大切な使命を果たすのじゃ。しっかりやるんじゃぞ」
百目「でも僕、悪魔くんやみんなと別れるの、嫌だモ〜ン!」
鳥乙女「私だってそうだわ!」
幽子「私も……」
こうもり猫「あっしだって……もう勉強しなくて済むのは嬉しいけど、このまま別れちゃうなんて寂し過ぎるじゃねぇかよ! 畜生!」
悪魔くん「僕だって……」
ピクシー「僕だって! やだ、やだ、絶対嫌だ──!」
メフィスト2世「みっともねぇぜ!! それでもてめぇら、一人前の悪魔なのかよぉっ!?」
幽子「メフィスト2世さん……」
メフィスト2世「東嶽大帝を倒すことができたのは、悪魔くんや俺たちみんなの心が一つになったからだ! そいつぁこれからも、たとえどんなことがあろうと、変わりはしねぇ! そうだろ、みんな?」
鳥乙女「えぇ……」
サシペレレ「うん……」

メフィスト2世が涙を堪えて一同を見渡す。みんな、瞳に涙をためながら頷く。


ついに別れのときがやって来た。
悪魔くんがソロモンの笛と魔法のふろしきを、ファウスト博士に返す。

ファウスト「じゃ、元気でな……」
悪魔くん「はい……」

百目「悪魔くん……」
悪魔くん「百目。僕たちはどこにいても、いつも一緒だよ」
メフィスト2世「エッちゃんによろしくな、悪魔くん」
幽子「さようなら、悪魔くん……」
豆幽霊「さようなら悪魔くん〜ヨロレイヒ〜」
鳥乙女「さようなら、悪魔くん」
こうもり猫「お達者で! 悪魔くん大先生、大明神! よっ、大統領! 最後のヨイショでヤンスよっ! ヨイショッ、あ、ドッコイショっと!」
悪魔くん「元気でね、みんな! 見えない学校、君にもさようなら! そして、ありがとう……!」

大きく手を振るファウスト博士を乗せ、見えない学校が空へ飛び立っていく。


こうして、十二使徒は世界中、それぞれの地へと散らばって行った。


第一使徒、メフィスト2世。
フランスの夜のシャンゼリゼのオープンカフェで、人々が目を丸くする中、父とともにカップラーメンを食べている。

メフィスト2世「エッちゃん、ラーメン美味かったよ!」

第二使徒、ユルグ。
アフリカの草原で、空を照らす夕日を見つめている。

ユルグ「美しい……」

第三使徒、ヨナルデ・パズトーリ。
メキシコの街角で、子供たちに講義を行なっている。

ヨナルデ「で、あるかしらして、そういうわけなんだわさ」

第四使徒、幽子。
日本の古寺で、子供たちと遊んでいる。

幽子「ふふふ……」

第五使徒、ピクシー。
ギリシャで遺跡の立ち並ぶ中、ケガをした子供たちの手当てに活躍している。

第六使徒、百目。
日本の町角で、母子に襲いかかる野良犬を退治する。

第七使徒、妖虎。
中国の悠久の景色を眺めながら、酒を愛でている。

妖虎「我が大地よ……」

第八使徒、家獣。
ハワイで小鳥や動物たちと戯れている。

家獣「バウ──!」

第九使徒、象人。
相変らずの食欲で、インドでバナナを盗んで、人々から追い回される。

象人「あぁ、ゾウもゾウも……」

第十使徒、鳥乙女。
ペルーのナスカ高原で、地上絵を見下ろしながら、空を舞う。

鳥乙女「うふふ……」

第十一使徒、サシペレレ。
ブラジルのサッカースタジアムで、歓声を浴びながら大活躍。

サシペレレ「竜巻大回転キ──ック!」

第十二使徒、こうもり猫。
イタリアで、フーテン姿で胡散臭い露店を開き、なぜか頭蓋骨を売っている。

こうもり猫「シャレにもならないシャレコウベ、ヨイショっ!」


ファウスト博士は、見えない学校への見学者の列を案内している。


そして、日本。古寺の丘で、夕日を見つめる悪魔くんたち。

エツ子「お兄ちゃん…… 百目ちゃんやメフィスト2世さんとは、もう二度と会えないのかしら……」
悪魔くん「会えるさ。いつか悪魔と人間が、仲良く暮せるユートピアを築くことができたとき、きっと」
エツ子「うん……」

「悪魔く──ん!」

悪魔くんが後ろを振り向くと、なんと百目が駆けて来る。

百目「悪魔く〜ん!」
悪魔くん「百目!?」
百目「帰って来ちゃったモ〜ン!」
悪魔くん「百目……」
百目「エヘヘ……だモン!」
悪魔「こいつぅ!」

照れ笑いする百目に、悪魔くんが目を潤ませてウインクする。

「悪魔く──ん!」「悪魔く──ん!」

その声に、悪魔くんが空を振り返る。

夕焼け空の中に、十二使徒たちの姿が浮かび、みんなが笑顔で手を振っている。
メフィスト2世の言ったとおり、世界中にちらばってもみんなの心は一つ。

悪魔くん「みんな……!」

悪魔くんが目を潤ませながら、夕日を見つめ続ける。


エロイムエッサイム エロイムエッサイム

我は求め訴えたり

夢よ届け 君の心に──


おわり
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